阿奥アアオ
Ā-ào
中国雲南地方の紅河(ソンコイ川)南岸及び奥地に住む哈尼(ハニ)族が信仰する大地の神。
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Ā-ào
中国雲南地方の紅河(ソンコイ川)南岸及び奥地に住む哈尼(ハニ)族が信仰する大地の神。
Äi
Aiatar
もしくは「アジャタル」とも。フィンランドの民間伝承において森に住むとされる蛇を育てている怪物。地域によって「アヤタル(Ajatar)」、「アヤッタラ(Ajattara)」とも、エストニア南部では「アイ(Äi)」、「アイヤタル(Äijätär)」とも呼ばれる。蛇やドラゴンの姿で現れるが、普段は人間の女性の姿をしているされる。森でアイアタルに出会ったり目撃したりするとひどい病気にかかるという。
Ai Apaec
ペルーのモチェ文化と、続くチムー文化における、天空神および創造神。天空神の息子とされる場合もある。
モチェでは人間と隔絶し山頂に住む創造神が存在し、この化身であるアイ・アパエクが積極的に人間に関与する役目を担っていたと考えられている。上下二対の剥きでた牙を持ち、蛇の形のベルトを身につけた姿で表された。また蛇の頭の耳飾り、ジャガーの頭飾りをしているときもあった。アイ・アパエクについてはまだ分かってないことも多く、この名称が神名ではなく「創ること」を意味する言葉ではないかとする研究もある。
Aeon, Æon
「アイオーン」とも。グノーシス主義において、至高神の神性の顕れであり、神の最初の被造物たる高次の霊に対する総称。神の思想が実体化したものであり、男女の一組で流出し、「プレロマ(永遠の世界)あるいは神の充満を形成する」。キリスト教では天使の階級の一つして扱われる場合もある。またセフィロトの各セフィラに照応する神の流出としての被造物とされることもある。世界の創造以来アブラクサスを筆頭として、少なくて8、多くて365のアイオンが存在したとされる。
あいかひめのみこと
「出雲風土記」に言及される女神。出雲風土記に拠れば、秋鹿郡(現在の島根県松江市北西部辺り)という地名はこの地に秋鹿日女命が鎮座することからの名だという。出雲風土記に「秋鹿社」として記載されている現「秋鹿神社(あいかじんじゃ)」(島根県松江市秋鹿町)は祭神として秋鹿日女命を蛤貝比売と同神として祀っている。
Aigamuxa
アフリカ大陸南部に棲むコイコイ人の神話に登場する怪物。
砂丘に出没するとされる。人を襲って食べるが、目が足の甲についていたために周囲を見回すためには逆立ちしなければならなかったという。
Rāgavajra
仏教における菩薩の一尊で「五秘密(ごひみつ)」および「四金剛(しこんごう)」の一。サンスクリット名を「ラーガヴァジュラ(Rāgavajra)」といい、これを訳して愛金剛菩薩と称する。「普賢金剛薩埵略瑜伽念誦儀軌」・「金剛頂瑜伽金剛薩埵五秘密修行念誦儀軌」においては「愛金剛(あいこんごう)」、「大楽金剛薩埵修行成就儀軌」においては「金剛愛(こんごうあい)」、「金剛頂瑜伽他化自在天理趣会普賢修行念誦儀軌」においては「愛縛(あいばく)」、「金剛王菩薩秘密念誦儀軌」においては「愛楽金剛(あいらくこんごう)」の名でそれぞれ言及されている。欲望の経路を表す「欲・触・愛・慢」のうちの「愛」、つまり愛して離れたくなくなる心を司る菩薩であり、また如来大悲の衆生を愛愍する徳を表す。金剛界曼荼羅の理趣会において中尊の金剛薩埵の四親近の一尊として西方(上)に置かれる。その尊容は青の身色で摩竭幢(→摩竭魚)を両手に持つ。五秘密法においても金剛薩埵の後ろ左手側に青色身で摩竭幢を持った姿で表される。
種字は「बं(baṃ)」、「सु(su)」、印相は金剛幢印(両手を金剛拳にし右肘を高く挙げ左拳を右肘の下に置く)、三昧耶形は摩竭幢。真言は「唵羅日囉儗里斛」
Aishim
Ays
アルメニアの言葉で「風」を意味すると同時に、風の中にいて狂気をもたらすとされる悪霊のこと。
Eisenberta
Rāgarāja, Mahārāga
仏教における明王の一。サンスクリットでは「ラーガラージャ(Rāgarāja)」、「マハーラーガ(Mahārāga)」、あるいは「ヴァジュララージャプリヤ(Vajrarājapriya)」と呼ばれる。「愛染明王」、「愛染王(あいぜんおう)」と呼ばれるほか、音写では「羅誐羅闍(らがらじゃ)」、「摩訶羅誐(まからぎゃ)」などと訳す。この「ラーガ」は染めること、赤いこと、あるいは激しい欲望などを意味する。
インド神話の愛の神カーマが仏教に取り入れられたものと考えられている。愛欲を本体とする神で敬愛を司るとされる。全身赤色で一面三目六臂、頭に獅子の冠をいただき、顔には常に怒りの相を表わす。一般に金剛薩埵の教令輪身(きょうりょうりんじん)とされる(ひいては総本地を大日如来とする)。近世では、恋愛を助け、遊女を守る神としても信仰された。また、俗に、この明王を信仰すると美貌になると信じられていた。
密号は「離楽離愛(りらくりあい)」、種字は「हूं(hūṃ)=吽」、真言は「吽擿枳吽弱(うんだぎうんじゃく)」、「唵 摩賀囉誐 嚩日路瑟抳灑 嚩日羅薩埵嚩 弱 吽 鍐 穀(おん まからぎゃ ばざろさだしゃ ばざらさだば じゃくうんばんこ)」、印相は外五鈷印、三昧耶形は五鈷杵。
南北朝時代
メトロポリタン美術館(The Metropolitan Museum of Art)蔵
Copyright: public domain
「諸尊図像鈔(写)(しょそんずぞうしょう)」(不明)より
ページ:v04p013
著者不明
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v02p021
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v02p021
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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Aitvaras
もしくは「アイトヴァラス」とも。リトアニアの伝承における怪物の一種。ドイツのプークやエストニアのピスハンドの類いの小さなドラゴン型の魔獣。アイトワラスの場合、家の中では黒猫ないし黒い雄鶏の姿をしているが、外に出ると空を飛ぶ翼を持ったドラゴン、あるいは火の尾をもつ蛇になる。アイトワラスは魂を引き換えに悪魔から買ったり、7歳の雄鶏の卵から生まれたりすることで手に入る。あるいは家の中にいつのまにかいることもあるが、いずれにしても追い出すことはとても難しいとされる。アイトワラスが家にいつくと家の所有者は裕福になるが、これはアイトワラスが牛乳や穀物、お金をよそから盗んでくるからである。勿論この被害に遭うのはたいていその家の隣人である。そしてアイトワラスは見返りとしてオムレツを要求する。
ある民話には教会で清めたロウソクでアイトワラスを照らしたところ消滅したと書かれている。アイトワラスは1547年の文献に始めて登場する。
Aini
ユダヤの魔神で聖書などに登場する。「アイン(Ain)」、「アイム(Aim, Aym)」、「ハボリュム(Haborym)」などの名でも呼ばれる。「火炎公」、「破壊公」等と称され、蛇と猫と人間の頭を持った三つ首の姿で、人間の頭の額には五芒星の印がついていることもある。右手には決して消えない松明(または火の玉)を持ち、この世に火炎地獄を作るため、見るもの全てに放火しようとする。常に赤みがかった煙に包まれ、地獄の毒蛇(またはトカゲ)にまたがっている。法律に詳しいともされる。ソロモン王に封印された72柱の魔神の一人(→"ソロモンの霊")。
アイヌにおける人魚。渡島半島の内浦湾に棲むという。上半身が人間、下半身が魚の姿で捕まえると逃してくれと助けを求めたり、食べると長寿になるなど本州の人魚ほぼ同じ伝承が伝えられている。
アイヌ民族における英雄的なカムイ。オキクルミと同一視される。名前である「アイヌラックル」は「アイヌ(人間)みたいな人」といった意味があり、神(カムイ)であるにも関わらず地上でアイヌと共に暮らしたことから付けられた名前だとされる。「アイヌモシリ(人間界)」に顕現するときは人間と同じ姿になる。
コタンカラカムイが国造りのために地上に降りてきた時、同行したシマフクロウのカムイであるコタンコロカムイの止まり木としてハルニレのカムイであるチキサニカムイが誕生した。天上界にいた雷のカムイであるカンナカムイがこのチキサニカムイに一目惚れをしてそば近づいたが、ハルニレ(チキサニカムイ)に雷(カンナカムイ)が落ちた結果、チキサニカムイは火に包まれてしまった。この炎の中からアイヌラックルが生まれた。
Äijätär
Aiyappan
Rāgavajriṇī
Airavata, Airāvata
Avalokiteshvara, Avalokiteśvara
仏教における仏尊の一人で、広範囲の地域で信仰を受けるボーディサットヴァ(菩薩)。名前は「慈悲深き眼をした主」ないし「高所より見守る王」を意味する。仏教独自の神だが、一説にペルシアの古い神アナーヒターやアールマティー(→スペンタ・アルマイティ)を起源とすると考えられている。アミターバ(阿弥陀如来)から発現したボーディサットヴァであり、アミターバの浄土に留まりそこから人間や動物に救いの手を差し伸べるとされる。加護を求められればあらゆる衆生に救いの手を差し伸べる慈悲深き神であり、その慈悲の力は灼熱地獄に苦しむ者や昆虫や芋虫にまで及ぶという。あらゆる状況・場面において慈悲の力を発揮するために姿を変えてあらわれるという。チュンディ(=准胝観音)、ハヤグリーヴァ、エーカーダシャムカ(=十一面観音)、チンターマニチャクラ(=如意輪観音)、アモーガパーシャ(不空羂索観音)、サハスラヴジャなどは全てアヴァローキテーシュヴァラの変化した姿だとされる。
チベット仏教においてはチェンレーシク、中国においては観音(グアンイン)、日本においては観音菩薩などと呼ばれ、それぞれの地域で独自な変化を遂げ信仰されている。
Afanc
イギリスのウェールズやアイルランドに伝わる邪悪な精霊。名前は「川」を意味する単語から派生したもの。「アバック(Abac,Abhac)」、「アダンク(Addanc)」、「アヴァンク(Avanc)」、「アヴランク(Afranc)」などの名でも呼ばれる。湖の中に動物を引きずりこんでむさぼり食う。また湖の水を溢れ出させ、あたりを凄まじい水害に巻き込むとされている。アーヴァンクの引き起こした洪水によってグレートブリテン島の人間は男女二人を残して全員溺死し、この二人がイングランド人の祖先となった、という伝説が残っている。地方ごとの様々な湖がその住処として伝わっている。
Ahuiatéotl
アステカの官能の神の一人。アウィアトル(Ahuíatl)とも呼ばれ、アウィアテテオの一人であるマクウィルショチトルの別名。ショチピリの化身の一人とも言われる。
Ahuiateteo
メキシコ中央部、アステカの神。5人一組の神で、飲酒、賭け事、性交その他の快楽が度を越した場合の危険と罰を象徴している。それぞれ、「マクイルクェツパリン(Macuilcuetzpalin=五のトカゲ)」、「マクイルコスカクアウトリ(Macuilcozcacuauhtli=五のコンドル)」、「マクイルトチトリ(Macuiltochtli=五のウサギ)」、「マクウィルショチトル(Macuilxochitl=五の花)」、「マクイルマリナリ(Macuilmalinalli=五の草)」という名前をもっている。ある種の奇形と病気は不謹慎な行為に対してアウィアテテオの神たちが与えた罰だと考えられていた。彼等は南の方位に関連付けられた神で、彼等の口の部分には5という数字を示す人間の手が描かれる。
Ahuíatl
Awitelin Tsita
Averruncus
ローマにおいて禍を転じて福と成すという神。
Averekete
アフロ・ブラジリアンカルトのバトゥーキ(Batuque)におけるエンカンタードの一人。「夜の主」ないし「夜の聖者」と称され、黒人とされるパレルモの聖ベネデット(Benedetto di Palermo)と同一視される。ダオメーの同名の神に由来し、威厳ある老人の姿で描かれる。「バデ(Badé)」ないし「ケヴィオソ(Kevioso)」とよばれる一族に属しているとされる。
Awonawilona
ネイティブアメリカンの一部族、ズーニー族の神話で、「全てを包容する者」とされる両性具有の存在。
一切が闇と空虚であったとき、様々な思念から霧を創造したという。霧が濃くなるとそれは雨となり、原初の空虚を広大な海洋で満たした。そしてアウォナウィロナ自身は太陽となった。さらにアウォナウィロナは自分の一部を剥いで、海洋の上に緑なす苔としておいた。この苔は固まると2つの巨大な被造物となり、永遠と結びつくようになった。この二つは母なる大地「アウィテリン・ツィタ」と父なる天「アポヤン・タチュ」となった。
Auki
ペルーのケチュア族における山の精霊。アンデス高地に棲んでおり、ビクーナ(ラクダ科の動物)やコンドル、精霊猫コアらはアウキのしもべであるとされる。人間の病気を治す精霊でもあり、ブルーホと呼ばれるシャーマンによって呼び出され治療法を指示する他、予言の手助けもする。
Auster
ローマ神話における南風の神。ギリシアのノトスにあたる。
Austri
Audhumbla, Audumla
Auf
Auriaria
Aurgermir
Aurora
ローマ神話における曙の女神。ギリシアのエオスに相当する。自然現象である「オーロラ」の語源となった。
Aeglun
テュアナのアポロニウス(Apollonius of Tyana)が著したとされる「ヌクテメロン(Nuctemeron)」中の「魔術的黄道十二宮に類似する十二の象徴的な時間」を支配する守護霊(Genius)、いわゆる「時間の鬼神」の一人。11時の霊の一人で雷光を司る。
11時の霊はアエグルンを筆頭にズフラス(森)、ファルドル(託宣)、ロサビス(金属)、アジューカス(岩)、ゾファス(五芒星)、ハラコ(哀れみ)と7人がいるがこれらは象徴するものによって関連があるように語られる。つまり雷は森の木に火をともし松明となり、託宣へと導く。金属は形を変えお守りとなり、岩は運ばれ宮殿や神殿に使われ、そこに掲げられた五芒星が意味を持つようになり、それは強力な情を結び哀れみとなると。
Aesuma
Aeriae potestates
アダム=マクリーン(Adam McLean)著、「天使の魔術論(A Treatise on Angel Magic)」において言及される、「邪悪なデーモンの位階(The orders of wicked demons)」(→"デーモンの階級")における第6階級。この階級の君主は「メリジム(Merizim)」とされる。「アエリアエ・ポテスタテス」は「空の軍勢」を意味し、雷と稲妻によって人々を害し、空気を汚して、疫病などの空を介する害をばら撒くものたちが属するとされる。
Aërico
バルカン半島の南西部アルバニアの民間伝承において、特定の木(特に桜の老木)に住むとされる悪魔。木に近づいた者を容赦なく攻撃してくるという。アエリコの住む木の影に触れると痛みを伴う手足の腫れが引き起こされるとされている。
あおあんどん
日本の妖怪の一種。「あおあんどう」とも読む。鳥山石燕の「今昔百鬼拾遺」に描かれている。百物語をするとあらわれるという。百物語は、夜数人が集まって交代で怪談を語るもので、百本の蝋燭、または行燈に百本の灯心を入れてともし、一つの話が終わるごとに一本ずつ消していくものだった。これを百本全部行った時にあらわれる妖怪、或いは起こる怪異のことを青行燈と称するようだが詳細は不明。江戸中期には百物語を行う際は行燈に青い紙を張るという約束事があったようなので、名前はそこから来たと思われる。「今昔百鬼拾遺」には行燈の傍に立つ長い髪の鬼女の姿を描いている。
「百鬼夜行拾遺(ひゃっきやぎょうしゅうい)」(1805)より
ページ:v02p004
鳥山石燕著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
燈きえんとして又あきらかに/影憧々としてくらき時/靑行燈といへるものあらはるゝ事ありと云/むかしより百物語をなすものは靑き紙にて行燈をはる也/昏夜に鬼を談ずる事なかれ/鬼を談ずれば怪いたるといへり
あおかしきねのみこと
あおぬまぬおしひめ
「古事記」において、大国主神の子孫の系譜が語られる段に記されている女神。「あおぬまうまぬまおしひめ」とも読む。一名を「青沼馬野押比売命(あおぬまのおしひめのみこと)」ともいい、名義不詳ながら「青沼馬野」は地名であり、「押比売」は「大姫」を意味するのではないかとされている。敷山主神の子神であり、美呂浪神とともに布忍富鳥鳴海神の親神とされる。それぞれの神ともに名称に「山」、「波」、「沼」、「海」といった字が見られ、自然との関連が見て取れる。
東京都調布市の「青渭神社(あおいじんじゃ)」はこの神を「青沼押比売命(あおぬまおしひめのみこと)」として祭神の一柱とする(ほかに「青渭大神(あおいのおおかみ)」、「水波能売大神(みずはのめのおおかみ)」→弥都波能売神)。
あおはたさくさひこのみこと
「出雲国風土記」に言及される、須佐乎命(→須佐之男命)の御子神とされる神。「青幡佐久佐丁壮命」、「青幡佐草壮丁命」、「青幡佐草日子命」などの字でも表記され、いずれも「あおはたさくさひこのみこと」と読む。風土記中では言及される個所は二ヶ所で、一つは大草郷の地名由来の段で、「この神が坐す場所なので大草という地名が付いた」と説明されている。この青幡佐久佐日古命が祀られた神社は「延喜式」に記載される「佐久佐神社」のことと思われ、現在島根県松江市佐草町にある「八重垣神社(やえがきじんじゃ)」、及び松江市大草町にある「六所神社(ろくしょじんじゃ)」が論社となっている。
またもう一か所、「高麻山(たかさやま)」の地名由来の段では青幡佐久佐日古命が麻の種をまいた場所なのでこの名前になったと説明されている。また高麻山には青幡佐久佐日古命の御魂が坐すとされており、「高麻神社(たかさじんじゃ)」という青幡佐久佐日古命をまつる神社があった(現在は御代神社境内社)。これらのことからこの神は麻とそれによって作られる麻布を司る神であったと考えられる。
あおぼうず
日本の岡山県邑久郡地方にあらわれる妖怪。衣服もしくは体が青い色をした大坊主で、空家などに現われるという。鳥山石燕の「画図百鬼夜行」にも一つ目の法師姿の青坊主が描かれているが、説明が無い為にその詳細は不明。
Ào-mă
Áoléibāěrhàn
中国の少数民族、達斡爾(ダフール)族が祀る病気治癒の神。キツネやイタチのような動物が仙化したもので「狐仙爺(こせんや)」とも呼ばれる。豚、鶏などを殺して供え、加護を祈ると病気が治るという。
Akaanga
ポリネシアのクック諸島にあるマンガイア島において信じられている悪魔の一種。冥界の女王ミル・クラの配下であり、死んで旅立った魂を網で捕まえてミル・クラへと引き渡してしまう。
あかえいのうお
日本における妖怪、あるいは想像上の生物。竹原春泉画、桃山人文の「絵本百物語」で紹介されているもの。身の丈三里(約12km)以上という巨大な赤いエイで、背中に砂が積もるとそれを落とすために時々浮上する。海に浮いている姿は島にしか見えず、巨体ゆえに草木(正体は珊瑚や海草かもしれない)まで生えているという。人に危害を加えようとするものではないが、舟で近寄ったりすると急に沈もうとしたりするので、その波で舟が転覆することもあるという。
沖縄において赤い髪の赤ん坊のような姿をした、本州における座敷童子のような妖怪のこと。語義は「赤+ガンタァ(垂れ下がった子供の髪)」。旧家の広間に居て、寝ている人の枕を返したり、人を押さえつけたりするという。茶目っ気があり親しみやすい性格の妖怪だと考えられている。
Agathion
ユダヤ系の魔術師が使う使い魔のうち、実態がない使い魔の総称。アガシオンはたいてい、壺や指輪、護符、魔法円などに封じられており、魔術師の命によって出現し、用事が済むと再び封印される。その出現時の姿はまちまちで、小動物の姿もものも異形の姿で出現するものもいる。
あかした
日本において、川に住んでおり弱者の見方をしてくれるという妖怪の一種。いつも赤い舌を出しているので赤舌という。鳥山石燕の「画図百鬼夜行」には水門の上で黒雲をまとい、獅子鼻をして舌を出した、三本の鍵爪を持つ四足獣のような姿で描かれている。かつて津軽の用水路に出現したという言い伝えがあり、水門の番をする妖怪だと考えられていたようだが、これは「画図百鬼夜行」の絵柄からの連想であろうと思われる。もともと赤舌とは陰陽道における赤舌神(しゃくぜつじん)がモデルだったことは間違いないが、赤舌神は水門などに全く関連が無い。
Aghasura
インド神話においてアスラ族の一人とされる存在。アガースラとは「アガ」という名のアスラ、という意味。悪王カンサの将軍であると伝えられる。ヒンドゥー教経典の一つ、「バーガヴァタ・プラーナ」によれば、アガースラはアジャガラという巨大な蛇の姿で、英雄神クリシュナとその仲間たちを飲み込もうと画策する。アガースラの口は見たところ洞窟の入り口そっくりだったので、クリシュナを除く仲間たちと、その家畜は騙されて中に入ってしまう。このことを知ったクリシュナは、仲間たちを救い出し、アガースラを倒したとされる。この経典中では、クリシュナはヴィシュヌのアバターラ(化身)と一つとされているので、アガースラはヴィシュヌに倒されたことになる。
あがつひめのみこと
「伊賀国風土記」の逸文に言及される女神。猨田毘古神の娘神とされ、猨田毘古神が二十万年余の間治めていた伊賀国を受領し代わって治めていたとされ、吾娥津媛命の治めていた国なのでこの地を「吾娥(あが)」、またのちにこれが訛って「伊賀(いが)」となったという。天照大御神から三種の宝器のうち「金鈴」を賜り和都賀野(わつがの)という場所で守っていたとされる。同じ件を引用したであろう他の逸文では「伊賀津姫(いがつひめ)」と表記されている。「先代旧事本紀」には伊賀臣(いがのおみ)の祖である大伊賀津彦(おおいがつひこ)の娘として「大伊賀津姫(おおいがつひめ)」の名が見え同神と考えられる。
現在の伊賀に当たる三重県の伊賀市白樫にある「岡八幡宮(おかはちまんぐう)」では、「伊賀津彦命(いがつひこのみこと)」、「伊賀津姫命(いがつひめのみこと)」の両神を祀っている。
あかでんちゅう
日本の徳島県鳴門市大麻町大谷に見える化け狸。「殿中」とは殿中羽織の略で木綿の袖なし羽織のことをいう。赤殿中は赤い殿中を着た子供に化けて通る人に背負ってくれとせがみ、背負ってやると背中で足をバタバタさせ、キャッキャッと喜ぶという。
Akatriel Yah Yehod Sebaoth, Akathriel Yah Yehod Sebaoth
タルムード文献や神秘学において言及される天使。単に「アカトリエル(Akatriel, Akathriel)」とも呼ばれる。また「アカトリエル・ヤハウェ(Akatriel JHWH, Akathriel JHWH)」、「アクタリエル(Achtariel)」、「アクトリエル(Aktriel)」、「イェハドリエル(Yehadoriel)」、「ケテリエル(Ketheriel)」などの名でも呼ばれる。「旧約聖書」で主自身を指す言葉としてたびたび登場する「主の天使」と同一視され、120万の奉仕天使を率い、全ての天使の上位に位置する偉大な審判の王たる天使だという。
沖縄における想像の生物。全身真っ赤な毛で覆われたサルのような姿をした生き物だという。夕焼けが赤いのはアカナーの家が燃えているからだとされる。
あかなめ
日本の妖怪の一種。「垢舐り(あかねぶり)」とも言う。風呂屋や荒れ果てた屋敷に住み、真夜中人気の無い頃に出現しては、風呂場にこびりついた人間の垢をペロペロ舐める。廃墟や古い風呂屋に溜まった塵や垢から生まれる妖怪で、風呂場が汚れている家ほど住み着きやすいという。足に一本の鉤爪を持つ散切り頭の醜い童子の姿をしている。
あかぶすまいぬおおすみひこさわけのみこと
「出雲国風土記」に言及される神。同訓で「赤衾伊農意保須美比古佐和気能命」とも表記される。国引の神である八束水臣津野命の御子神であり、地名の由来譚として秋鹿郡の伊農郷、及び出雲郡の伊努郷の段に登場する。それに拠れば、秋鹿郡の伊農郷は赤衾伊努意保須美比古佐倭気能命の妃神である天甕津日女命が出雲を巡り歩いていた時、この地で「伊農波夜(いぬはや=伊農よ、と夫神に呼びかけた)」と言ったので「伊農」という地名になったという。また出雲郡の伊努郷はこの神の坐すところであるがゆえに「伊農(いぬ)」と呼ばれるようになり、その後「伊努」と字を改めたという。この伊努郷にある神社とは「延喜式」に記載される「伊努神社(いぬじんじゃ)」のことだと思われ、現在の島根県出雲市西林木町に位置し、今でも赤衾伊努意保須美比古佐倭気能命、及び天甕津日女命が祀られている。
神名に冠される「アカブスマ」とは寝具であり、続く「イヌ」は赤衾にかかり「寝(い)ぬ」と解釈できる。「オオスミ」については解釈が分かれるが、この神が水の神である八束水臣津野命の子神であることを考えれば「大洲見」、つまり大きな砂州を司る神であったと考えられる。この神は出雲神話固有の神だが、出雲国風土記では「阿遅鋤高日子命(あじすきたかひこのみこと)」などの名で見える阿遅鉏高日子根神と同一神ではないかという説もある。これは両神の妃神が「天甕津日女命(あめのみかつひめ)」、「天御梶日女命(あめのみかじひめ)」と名前が似通っている点やどちらも多久(現在の出雲市多久町付近)と関連付けられている点からの説である。
沖縄において赤の黒の美しい縞の斑蛇を指す言葉。「マッタブ」とも呼ばれる。美男子に化けて村の娘を誘い子供を孕ませるという。アカマターは古い鍋蓋や壊れて捨てられたカカシの下などに棲むと考えられたため、鍋蓋を捨てる時は逆さにしたり、木の枝にかけて捨てる。奄美群島でもアカマターは女を孕ませるとされ、アカマターを見たら唾を三回吐いて追い出す。蛸はアカマターと化けた姿であり、アカマターが波打ち際で潮につかりながら自分の体を盛んに岩に打ち付けて、蛸に化ける様が良く見られるという。
Aka Mana
ゾロアスター教における悪魔の一人。名前は「悪しき思い」を意味する。6人のアメサ・スペンタに対抗する6人の悪魔の一人(ただし諸説あるせいで全員挙げると6人以上いる)。名前は「悪しき思い」を意味し、アカ・マナフに支配された人間は正と邪、善と悪などの区別が出来なくなるという。
Achamoth
グノーシス主義においてピスティス・ソフィアの娘とされるアイオン。またヤルダバオトは自身の母であるアカモトを自身によって生じさせたとされることがある。「バルベロ(Barbelo)」の別称ともされる。
Agaliarept
あかりなしそば
本所七不思議に数えられる怪異現象の一つ。「燈無蕎麦」とも書かれる、本所(現在の東京都墨田区南部)の南割下水にあったという明かりのついてない人気もしない蕎麦屋台のことで、誰かが気を利かしてその蕎麦屋の行灯に火を灯してもすぐ消えてしまう。さらにこうして火を灯した人の家では必ず不幸が起こったという。逆に「消えずの行灯」と呼ばれる、誰も油を足していないのに無人の蕎麦屋台でずっと消えずに燃え続ける行灯の話もある。
Ākarṣaṇī
Agares
ユダヤの魔神で聖書などに登場する31個師団をその配下におさめる大公。「変化の公爵」の異名を持ち、地獄の東方を治める。かつては力天使であったとされる。弱々しい賢者の姿をしていて、手の甲に大鷹(またはカラス)をとまらせ、大きなワニ(または陸亀)に乗っている。声は老人のように震えているといわれる。未来を見通す力があるが、全てを謎めかして語り、しかも時々嘘を混ぜるため、その言葉は容易に信用できない。人間の行方を探る能力があり、また多くの言語を知っている。また、地震を起こす事ができるといわれる。ソロモン王に封印された72柱の魔神の一人(→"ソロモンの霊")。
「The lesser key of Solomon, Goetia : the book of evil spirits」より
大英博物館(British Museum)蔵
Copyright : pubric domain
沖縄に出現する妖怪の一種。赤ん坊の死霊で、アカングァーマジムンとは「赤ん坊の魔物」という意味。この妖怪に股をくぐられると死んでしまうという。このように股をくぐらせてはいけない妖怪は沖縄を含む南西諸島に多く見られ、片耳豚などもその一例である。
あきぐいのうしのかみ
「古事記」や「日本書紀」に見える神。古事記では飽咋之宇斯能神、日本書紀では「開囓神(あきくいのかみ)」と記される。黄泉の国から逃げ帰った伊邪那岐命が、身を清めようと禊をした時に化生した神の一人で、伊邪那岐命が投げ捨てた冠から生まれ出でたという(日本書記では褌(この場合はかまのこと)より成ったとされる)。名前はおそらく「開いて食う主の神」と言った意味で、冠の形状を名前にしたものか、あるいは「穿き食い(ハキクイ)」の転訛で、はかまを穿き込む(着込む)ことを表したものと思われる。愛知県知多郡阿久比町にある「阿久比神社(あぐいじんじゃ)」は飽咋之宇斯能神を主祭神として祀る。また島根県松江市八雲町にある式内社「熊野大社(くまのたいしゃ)」の境内社である「伊邪那美神社(いざなみじんじゃ)」などに配祀されるほか、大阪府堺市堺区甲斐町にある式内社「開口神社(あぐちじんじゃ)」はもとは飽咋之宇斯能神を祭神としていたのではないかとされる。
あきびめのかみ
ミクロネシア、パラオにおける創世神話に登場する、天に住んでいたシャコガイ、ウヘル・ア・ヤングヅによってい地上に下ろされ、ウヘル・ア・ヤングヅの代わりに二番目の神ラッツムギカイを生んだ。また、女陰が無く子供を埋めなかったラッツムギカイに自らのブレーデル(外套膜)を貸して子供を産ませた。
Ah Kinchil
Aquilo
ローマ神話における北風の神。ギリシア神話のボレアスに相当する。
Agwé
ハイチのヴードゥー教における海の神。崇高な神であり、この神の棲むとされる海底の宮殿に貢物を捧げるために、信奉者は貢物が山ほど積まれた船を海に沈める。
Archangel
Arch She-Demon(s)
グリモアにおいて言及される上級の女性型の悪魔で、「アグラト・バト・マラト(Agrat bat mahlat)」、「アスタルテ(Astarte)→アスタロス」、「バルベロ(Barbelo)」、「エイシェト・ゼヌニム(Eisheth Zenunim)」、「リヴァイアサン(Leviathan)」、「リリス(Lilith)」、「ナアマ(Naamah)」、「プロセルピネ(Proserpine)」の8人のことを指す。
Akṣayamati
Agdistis
Ākèdìēndūlì
中国の少数民族、鄂倫春(オロチョン)族における雷の神。鑿と槌を持っており、それを打つと雷鳴が起こるという。
Aguni
インド神話における火の神。アーリア人の拝火信仰を起源とする古い神だと考えられている。黄金の顎と歯、炎の頭髪、3~7枚の舌を持つ姿で描かれ、火中に投じられた供物を好むという。天空地三界に顕現し、天上においては太陽と同一視され暗黒を駆逐し、空中においては電光としてひらめき、地界においては祭火として燃えるとされた。火中に投じられた供物を天上へと運ぶため、神と人との仲介者、または使者、賓客として、あるいはアグニ自身が優れた祭官として崇拝された。「リグ・ヴェーダ」において彼に捧げられた賛歌は全体の5分の1をしめる。後世、インドラ、ヴァルナ、ヤマなどとともにローカパーラ(世界守護神)の一つとして崇拝され、南東に住むと見なされた。ゾロアスター教のアタールに相当する。また仏教に取り入れられ、「阿耆尼(あぎに)」ないし「火天(かてん)」と漢字に訳される。
Aguna
南太平洋のソロモン諸島南東部において信じられている、すべての野菜や植物を作ったとされる蛇の神。ハトゥイブワリはアグヌアの別名とも、支配下にある神ともされる。
Acpaxaco
メキシコ盆地の北方から西方に住んでいた、オトミ族における水の神。アステカのチャルチウィトリクエに相当、ないし近似している。
Akrasiel
Agrat bat mahlat
カバラや悪魔学における天使ないし堕天使、または淫魔。「イグレト・バト・マハラト(Iggereth Bath Mahalath)」とも呼ばれる。娼婦ないし売春の四天使の一人であり、サマエルの妻の一人ともされる。グリモアにおいてアグラト・バト・マラトは8人のアーク・シーデーモン(大女悪魔)の一人とされる。
Aclahayr
テュアナのアポロニウス(Apollonius of Tyana)が著したとされる「ヌクテメロン(Nuctemeron)」中の「魔術的黄道十二宮に類似する十二の象徴的な時間」を支配する守護霊(Genius)、いわゆる「時間の鬼神」の一人。「アクラハイェ(Aclahaye)」とも呼ばれる。4時の霊の一人で娯楽を司る。
Achlis
スカンジナビアの島に住むと考えられた想像上の動物。プリニウスの「博物誌」に記述がある。ヘラジカに似た草食動物だが、その身体的特徴にはいくつかの欠点があった。一つに上唇が異常に肥大化していること。このためにアクリスは後ずさりして無理やり口を開きながらでないと草を食べられなかった。また一つに後ろ足に関節が無いこと。この足はアクリスを俊足にしているが、しゃがんだら立ち上がることが容易ではなくなる為に、アクリスは木に寄りかかりながら寝なければならなかった。この習性は致命的なもので、猟師たちは前もってアクリスのお気に入りの木を見つけ、ノコギリで簡単に倒れるように切れ目を入れておくだけでアクリスを捕獲できた。なぜならばアクリスがこの木で休もうとした途端木は折れ、一度しゃがんでしまったアクリスは身動きが出来なくなってしまうからだ。
Aguriporu
アラビア北部のパルミュラの月の神。鎌のような月を額、ないしは両肩に乗せている。名前は「ボルの雄牛」を意味すると考えられることもある。月は元来雄牛の角に見立てられていたらしい。
Acheliah
Aker
Argopelter
アメリカの噂話やほら話を起源とする怪物、フィアサム・クリッターの一種。名前は「アルゴ船の(Argo)投擲器(pelter)」から来ているものと思われる。滅多に見ることができないので外見はっきりしない。森の中の木のうろに住んでおり、近くを通りかかった者に木片や枝を投げつけるという。それ以上何かをしたという記録は無い。
Asa
Æsir
北欧神話において主要な神々が属する神族。総じて戦闘的な種族だとされる。本来は北欧の人々だけではなく、他のゲルマン民族からも崇拝されていた存在だと考えられている。「アサ」は複数形で、単数形では「アース(Áss)」。世界の秩序が神格化された存在であり、多様な特質をもつ神々によって構成される。ヨツン(巨人)族の祖であるユミルとともに最初の生き物として生まれた牡牛アウズフムラが、餌として舐めていた石から誕生したブーリという男を祖としている。ブーリの息子ボルを父とするオーディンを王とし、ヨツン族と常に敵対関係にあるが、この世が終わる時までは正面から戦うことはなく警戒的平和の中にある。人間はアサ神族によって創造されたといわれており、これによって古代北欧ではアサ神族は人間の保護者として崇拝されていた。またもう一つの神族である、ニョルズ率いるヴァナ神族とも対立関係にあり、両神族の間には激しい戦闘は繰り広げられたこともあったが、結局人質を交換して和解した。
Asa
アフリカのケニアのカンバ人における創造神。語義は「父」の意。他の部族でムルングと呼ばれる。霊達の上位に位置する主であり、慰めと生命維持の神でもある。天災による被害から自然の立ち直りの遅い時、或いは人間による援助が間に合わない時などに人間界に干渉し助けてくれるとされる。
あさいひめのみこと
「近江国風土記」逸文に見える女神。霜速比古命の子神の多多美比古命の姪(あるいは妹の誤記か)にあたる神で、多多美比古命が夷服岳=伊吹山の神であるように浅井岳を司る神で「浅井岳神(あさいだけのかみ)」とも呼ばれる。夷服岳(多多美比古命)と浅井岳(浅井比咩命)で丈の高さを競った時、浅井岳が一夜にして大いにその高さを増したので多多美比古命は大いに怒り浅井比咩命の首を切ってしまったという。この首は琵琶湖まで飛び島となったが、これが竹生島であるという。竹生島にある「久夫須麻神社(つくぶすま じんじゃ)」は「浅井比売命(あざいひめのみこと)」として浅井比咩命を祀る。
Asa Vahista
Asael, Asa'el
キリスト教や神秘学における堕天使ないし天使の一人。名前は「神が創った者」を意味する。旧約聖書外典「第1エノク書」に言及される神に反逆した200人の堕天使の一人であり、背教の軍勢の20人いる、「数十の首長(Chief of Tens)」の一人とされる。
Azael
Azazel, Azaziel Azael
旧約聖書偽典、旧約聖書外典「第1エノク書(エチオピア語写本)」において、グリゴリの一員であり、統率者の一人だったとされている天使。「アサセル(Asasel)」、「アザエル(Azael)」などの名でも知られる。旧約聖書「レビ記」においては固有名詞としてではなく、悪魔を意味する一般名詞と同じように扱われている。「アザエル(Azael)」、「ハザゼル(Hazazel)」などの名でも呼ばれる。その名は「遠くへ去る」、「神の如き強き者」、「完全なる除去」、「荒野」、「山羊」などの意味がある。シェミハザなどと共に人間の娘と結婚し神に反逆した。元々の起源はシリアの神だったと考えられている。人間の娘達に剣や盾などの戦争に使う武器の製造法や男性を誘惑するための化粧法を教えたとされている。アザゼルは神の軍勢に捕縛された後、オリオン座において逆さ吊りの刑に処されたとされる。この逸話がタロットカードの「吊られる男」の起源となったのではないかと考えられている。
ユダヤの律法学者の間においては「アゼル(Azel)」と呼ばれ、神から魔術の秘密を盗み出しエヴァ(イヴ)に与えるという大罪を犯したと考えられた。イスラム教ではイブリースと同一視されアラーに反逆する悪魔と考えられた。
堕天使(悪魔)としてのアザゼルは「地獄の君主」、「人間の誘惑者」、「羊の守護者」などと呼ばれる。また贖罪の日に生贄となる山羊を受け取る悪魔としても知られている。しばしばサタンと同一視され、7つの蛇頭と14の顔、12枚の翼を持ち、蛇にまたがった姿で表される。ソロモン王に封印された72柱の魔神の一人(→"ソロモンの霊")。
1863
コラン・ド・プランシー(Collin de Plancy)著
「地獄の辞典(Dictionnaire infernal)」より
フランス国立図書館(Bibliothèque nationale de France)蔵
Copyright : public domain
Azarel
マグレガー・メイザース(Samuel Liddell MacGregor Mathers)の「ソロモンの大きな鍵(The Key of Solomon The King)」において、「イアカディエル(Iachadiel)」とともに月の第5のペンタクルにヘブライ文字で記される天使。
あしあらいやしき
本所七不思議に数えられる怪異現象の一つ。「足洗邸」とも書く。本所の三笠町(現在の東京都墨田区亀沢)にあった旗本屋敷(小宮山左善或いは味野某の屋敷と伝わる)で起こった怪異で、夜中、天井からバリバリという音がしたかと思うと巨大な足が下りてくるというもの。この巨大な足は土や泥で汚れていて、丁寧に洗ってやると何もせず消えうせたが、おろそかに扱うと家を壊さんばかりに暴れたとされる。
あじすきたかひこねのかみ
日本記紀神話において、農業神とされる神。古事記では「阿遅鉏高日子根神(あじすきたかひこねのかみ)」、「阿遅志貴高日子根神(あじしきたかひこねのかみ)」、「阿治志貴高日子根神(あじしきたかひこねのかみ)」、または「迦毛大御神(かものおおみかみ)」、日本書紀では「味耜高彦根神(あじすきたかひこねのかみ)」と表記される。さらに播磨国風土記では「阿遅須伎高日子尼命」、出雲国風土記では「阿遅須枳高日子命」、出雲国造神賀詞では「阿遅須伎高孫根命」と表記され、いずれも「あじすきたかひこねのみこと」と読む。「あじ(あぢ)」は美称、「すき」は単純に農具の耜(すき)か、あるいは磯城(しき=岩石を敷き詰めた祭場)の転訛と考えられる。
大国主神と多紀理毘売命との間に生まれた神。阿遅鉏高日子根神は穀霊神である天若日子とても親しく、彼が死んだ時も弔問に訪れたが、二人の顔恰好がとても似ていたために、その葬儀の場で死んだ天若日子が生き返ったと間違われた。阿遅鉏高日子根神は死んだ者と間違えられるという無礼に腹を立て、葬儀場を滅茶苦茶にして帰っていってしまった。この説話は二人の神格がとてもよく似ている、或いはもともと同一神だったということを暗示していると考えられる。また、生きている阿遅鉏高日子根神、死んだ天若日子という対象性は農業における秋には実り枯れて、春には芽吹き成長するというサイクルを象徴したものとも考えられる。
鋤は春に田畑を耕し農地を開拓するという役割のほかに、昔は田の神を祀る時の呪具としても使われた。阿遅鉏高日子根神はもともとそういった鋤を御神体とする農業神であったとされる。また昔は鋤には雷神(水の神)が宿るとも考えられたので、阿遅鉏高日子根神は農業神であるとともに、雷神を呼ぶ力を持つ神、ないし雷神と同じ力を発揮できる神だと考えられるようになった。
別名である「迦毛大御神」の名の通り、賀茂上下社の祠官であった賀茂氏の祖であるが、現在は賀茂上下社では阿遅鉏高日子根神を祀っていない。ただ、「都都古和気神(つつこわけのかみ)」として都都古別神社に、「高賀茂大神(たかがものおおかみ)」として高鴨神社に祀られている。
Ajitā
Ajitā
Aži Dahāka, Azi Dahaka, Azidahaka, Azhi Dahaka, Aži Dahak
古代ペルシアの民族宗教「ゾロアスター教」の聖典「アヴェスタ」に出てくる竜。悪神アンラ・マンユが生み出した、「苦痛」、「苦悩」、「死」を象徴する3つの頭が持ち、それぞれの頭には6つの目と三組の牙があるという。またその巨大な翼は天を覆い隠すといわれる。ただし、叙事詩「シャー・ナーメ」には首から二匹の蛇が出た人間に似た姿のものとして描かれている。バビロンにあるクリンタ城に住み、千の魔法を駆使してあらゆる悪をなし、炎の神アタールとも激しく戦った。その後、エータナオ(ファリードゥーンとも)という英雄が退治しようとしたが、英雄が剣を突き刺すと傷口からサソリ、トカゲ、カエルなどの有害な無数の生き物が這い出したため殺すことが出来ず、捕縛してダマーヴァンド山に幽閉したという(幽閉したのはアータルだともされる)。しかしやがてアジ・ダハーカは鎖を千切り自由の身となって世界を荒らすとされている。
アイヌ民族における妖怪の総称。語義は「ア(私達が)」+「シトマ(恐れる)」+「プ(者)」といった意。
あしなだかのかみ
「古事記」において、大国主神の子孫の系譜が語られる段に記されている名義不詳の神。国忍富神とともに速甕之多気佐波夜遅奴美神の親神とされる。「八河江比売(やがわえひめ)」という別称があるが、これも名義は不詳である。岡山県倉敷市にある「足高神社(あしたかじんじゃ)」は現在大山津見神、「石長比賣命(いわながひめのみこと)→石長比売」、「木之花咲耶比賣神(このはなさくやひめのかみ)→木花之佐久夜毘売」を祭神とするが、一説に葦那陀迦神を祀っていたとされる。また滋賀県甲賀市にある「矢川神社(やがわじんじゃ)」は祭神を「大己貴命(おおなむちのみこと)→大国主神」と「矢川枝姫命(やがわえひめのみこと)」としており、矢川枝姫命は八河江比売=葦那陀迦神のこととされる(ただし古事記には応神天皇の妃の一人として「矢河枝比賣(やがわえひめ)」の名前が見える)。
あしなづち
日本記紀神話に登場する男神。配偶神である手名椎とともに櫛名田比売の親神。また大山津見神の子神の一人。足名椎は古事記での表記で、「日本書紀」では同訓で「脚摩乳」と記される。ほかに「脚摩乳命」、「足名椎命」、「足名槌命」、「足名稚命」、「足摩乳命」(どれも「あしなづちのみこと」と読む)、「脚摩乳大神(あしなづちのおおかみ)」などの表記もみられる。神名は「足を撫で慈しむ」といった意と考えられ、手名椎とともに親の慈愛を表現したものとなっている。もともと足名椎らの夫婦神には櫛名田比売を含め娘が八人いたが、毎年やってくる大蛇八岐大蛇に一人ずつ食べられてしまい、とうとう櫛名田比売一人になってしまった。彼らはそこへ来た須佐之男命に訳を話し、八岐大蛇を退治してもらった。その後、古事記によれば足名椎は須佐之男命から「稲田宮主須賀之八耳神(いなだのみやぬしすがのやつみみのかみ)」という名を賜り須賀の宮の首(おびと=首長のこと)を任されることになったという(日本書紀では手名椎とともに「稲田宮主神(いなだみやぬしのかみ)」の名を賜ったとされる)。
京都府京都市東山区にある「地主神社(じしゅじんじゃ)」、三重県志摩郡磯部町にある「磯部神社(いそべじんじゃ)」、岡山県赤磐市和田にある「足王神社(あしおうじんじゃ)」、長崎県壱岐市郷ノ浦町にある「國津神社(くにつじんじゃ)」などに足名椎とともに祀られ、名前から足の病気などに効験があるともされる。
あしはらしこおのかみ
Acipenser
15,6世紀のヨーロッパの旅行家よって伝えられた、ヨーロッパ北方の海に生息するとされた怪魚。普通の魚と異なり鱗が尾から頭に向かって生えているためにうまく泳げない魚だという。チョウザメを誇張して表現したものだと考えられる。
Asha
Asha Vahishta
Aśvaśīrṣa
Aśvinī
Adjuchas
テュアナのアポロニウス(Apollonius of Tyana)が著したとされる「ヌクテメロン(Nuctemeron)」中の「魔術的黄道十二宮に類似する十二の象徴的な時間」を支配する守護霊(Genius)、いわゆる「時間の鬼神」の一人。11時の霊の一人で岩を司る。
Akṣobhya
仏教における如来の一尊。名前はサンスクリット名である「アクショーブヤ(Akṣobhya)」を音写したもの。他に「阿閦仏(あしゅくぶつ)」、「阿閦婆(あしゅくば)」、「阿閦鞞(あしゅくひ)」などに音写されるほか、名前の「振動せられざる者」、「ゆるぎない者」といった意味から「不動仏(ふどうぶつ)」(大般若経など)、「無動仏(むどうぶつ)」(華厳経など)、「無怒(むぬ)」(正法華経)などの名前でも呼ばれる。
はるか過去に大日如来の教化を受けた一人で、悟りを開いたあとも東方善快浄土で今なお説法を続けている仏尊だという。その菩提心が揺ぎ無く堅固であることから阿閦如来と呼ばれる。五智如来の一尊として「大円鏡智(心を鏡にし全てのものを写し取る智恵)」を象徴し、金剛界曼荼羅では東方に配されるので、胎蔵界曼荼羅で同じように東方に配される宝幢如来と同体とされることがある。後期密教では大日如来の代わりに五仏の中心に据えることもあった。その像形は無冠で、左手で衣の端を握り、右手は伏せて五指を伸ばし地に付ける触地印を結ぶ。
密号を「不動金剛(ふどうこんごう)」ないし「怖畏金剛(ふいこんごう)」、種字は「हूं(hūṃ)=吽」、真言は「唵噁乞芻毘夜吽(おんあくしびやうん)」(羯摩会)、「嚩日囉枳惹南吽(ばざらぎじゃなうん)」(三昧耶会)、印相は阿閦触地印(羯摩会)か二手外縛し中指を針のごとく立て合わせる印、三昧耶形は五鈷杵。
「諸尊図像鈔(写)(しょそんずぞうしょう)」(不明)より
ページ:v01p008
著者不明
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
金剛界五仏中の一として。
「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v04p009
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
十三佛の一尊(十一)として
Aṣṭāviṃśati nakṣatrāṇi
Asvin
インドのリグ・ヴェーダに書かれた神。たいていの場合、それぞれ「ナーサティヤ(Nasatya)」、「ダスラ(Dasra)」という名前持つ双子の神格とされている。名前は「馬を御するもの」を意味する。ビヴァスヴァットとサラニウーの子神。神々と人間との橋渡しをする神であり、しばしば人間の味方をする。彼らは病人や不幸な人と共に行動しこれを助けていた。神々の目にはこれがよく映らず、アシュビンらは天上界から拒絶されていた。しかし彼らの力で若返りを果たしたチャヴァナ仙がそのお礼にインドラに口を利いてアシュビンらを天上界に入れるように説得したという。若く美しく聡明で、病気にかかった者は神であろうが人であろうが分け隔てなく癒す治療の神とされる。蜜を特に好み、多量の蜜を馬のひずめから注ぐといわれる。双神の乗る車は蜜色で、蜜を運び、鳥または有翼の馬に引かれている。彼らは太陽の娘スーリヤと親密で、人々を厄災から救い、優れた医術をふるう。彼らは早朝に出現するという。
Ashmodai
Asura
インド神話における超自然的種族であるアスラ、ひいてはゾロアスター教の最高神アフラ・マズダが仏教に取り込まれもの。ほかに「阿蘇羅(あそら)」(金光明最勝王経など)、「阿素羅(あそら)」(一切経音義など)、「阿修倫(あしゅりん)」(長阿含経など)、「阿素洛(あそら)」(般若経など)などに音写されるほか、略して「修羅(しゅら)」とも呼ばれる。さらにサンスクリット名の「神でないもの」あるいは「整っていない(醜い)もの」を意味訳し「非天(ひてん)」(瑜伽師地論など)、「非類(ひるい)」、「不端正(ふたんせい)」、「酒を飲まない」と解釈して「無酒神(むしゅじん)」(一切経音義など)などとも漢訳する。
「非天」、つまり「天部(→天)にあらざる者」であり、帝釈天と戦う悪神とされるが、一方で仏法を護る天竜八部の一部を担うともされる。天竜八部のなかでも特に大勢力を有し、須弥山の北にある「阿修羅宮」を住処としている。阿修羅衆を率いる主領は「阿修羅王(あしゅらおう)」と呼ばれ、しばしば固有名を伴い仏典に登場する。例えば「長阿含経」には「羅呵阿須倫王(らかあしゅりんおう)」、「波羅呵阿須倫王(はらかあしゅりんおう)」、「毘摩質多阿須倫王(びましったあしゅりんおう)」、「睒摩羅阿須倫王(せんまらあしゅりんおう)」の四大の阿修羅王が登場するが、このうちの羅呵阿須倫王は羅睺(→羅睺曜)のことでインド神話においてもアスラ族とされている(→ラフ)。ほかにも「踊躍阿修羅王(ようやくあしゅらおう)」、「奢婆羅阿修羅王(しゃばらあしゅらおう)」、「陀摩睺阿修羅王(だまごあしゅらおう)」などの名がみえる。 胎蔵界曼荼羅では外金剛部院(最外院)の南方(右側)に二か所に配される。その像容は赤色の身色で忿怒形で甲冑を着け、右手に華棒を持ち左手は腰に当て筵に坐し両脇に使者を従えるもの、および二者がならび慈悲相で右手に剣を持ち坐すもの。そのほかにも様々な異像がみられる。
種字は「अ(a)」、真言は「南麼三曼多勃馱喃囉吒囉吒特?耽沒囉波囉(なうまくさまんだぼだなんらたんらたんとぼうたんばらはら)」(諸阿修羅真言・T0848)、「唵毘摩質多羅阿蘇羅地波多曳莎訶(おんびましたらあそらちはたえいそわか)」。
「大正新脩大藏經図像部 第1巻」
「大悲胎藏大曼荼羅 仁和寺版」より
大蔵出版
©大蔵出版及びSAT大蔵経データベース研究会(Licensed under CC BY-SA 4.0)
胎蔵界曼荼羅外金剛部院の南方(右側)における図像。両脇に使者を従える。
「大正新脩大藏經図像部 第1巻」
「大悲胎藏大曼荼羅 仁和寺版」より
大蔵出版
©大蔵出版及びSAT大蔵経データベース研究会(Licensed under CC BY-SA 4.0)
胎蔵界曼荼羅外金剛部院の南方(右側)南門内における図像。
「大正新脩大藏經図像部 第6巻」
高野山光明院蔵「図像法華経法(観音応化身像)」より
大蔵出版
©大蔵出版及びSAT大蔵経データベース研究会(Licensed under CC BY-SA 4.0)
「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v04p006
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
觀音廾八部衆(→二十八部衆)の一尊として
Aśleṣā
Ajok
アフリカのナイル川上流(スーダンなど)に住むロトゥコ人の信仰に登場する天空神。「アデョク(Adyok)」、「ナイジョク(Naijok)」とも呼ばれる。アジョクは慈悲深い神だが、その慈悲は継続的な生贄と祈りを必要とするものと考えられている。死んだ人間を蘇らせる力を持っているが、かつてその力を使ったせいで人間の家族に不和を起こしたので、アジョクは二度と死んだ人間を蘇らせなくなった。
Ājiāolǔ
中国の少数民族、鄂倫春(オロチョン)族における祖先神。氏族の祖先が死後に神となったものとされ、人間や家畜、農作物などを守護するという。人間の前に直接現れることはなく、シャーマンを使者として交流するという。
Ashrah, Aṯrt, ʼAṯirat
アシラトとも。「海の貴婦人」と称されるカナアンの女神。バールなどの多くの神々の母であり、また大后でもある。生まれたばかりの神々は、彼女の乳を吸って育つとされる。ユダヤでは魔神とされ、バールとよく対になって出てくる。
Áss
Az-i-wû-gûm-ki-mukh-ťi
ヨーロッパ人の旅行家、エドワード・W・ネルソンが著した「ベーリング海峡周辺のエスキモー(The Eskimo about Bering Strait, 1900)」の中で言及している生物。それによれば、イヌイットの信仰と伝承に残る生物で、セイウチに似ているが頭と四本の足は犬のものであり、輝く黒い鱗に覆われ巨大な魚の尾を有すという。この尾で殴られると人間は即死してしまう。ネルソンはこの生物のことを「セイウチ犬(walrus dog)」と呼んだ。
As-Iga
シベリアのオスチャク族における、親切な精霊。名は「オブの古老」を意味する。オブとはシベリアを貫いて流れる大河の名前。
Azcatl
アステカにおいて神ではないが、神話に登場し、ケツァルコアトルを案内する役を担う赤蟻。名前はそのまま「蟻」を意味する。アステカ神話では第5の太陽の時代(現在の世界)、新しく人類が創造されたあと、神々の次の仕事は新しい人類に食料を与えることだった。偶然トウモロコシ(メイズ)の種を担いで走っていたアスカトルを見つけたケツァルコアトルは、どこにそんな素晴らしい食料があるのかとアスカトルに尋ねるが、アスカトルは答えたがらなかった。しかしケツァルコアトルの嫌がらせと脅しに負けたアスカトルは、ついには食料のある場所───トナカテペトル(Tonacatepétl 「食料の山」の意)───を白状し、ケツァルコアトルをその山へ案内する。その後トナカテペトルはナナウアツィンの提案によって、4方位の風と雨の神、そして4人のトラロケによって分割され、植物の種は風によって四方の大地にばら撒かれた。
Asgaya Gigagei
ネイティブアメリカンの一部族、北米の北東部に住むチェロキー族に伝わる雷神。名前は「赤い人」を意味する。
あずきあらい
日本の妖怪で小川などに住み着く。「小豆磨ぎ(あずきとぎ)」、「小豆摺り(あずきすり)」、「小豆しゃらしゃら」、「小豆ごしゃごしゃ」など地方によって多彩な名前がある。シャカシャカとまるで小豆を洗うような音を出すが一向に姿は見えない。小さな老人とも老婆の姿をしているとも言われる。音だけなので害はないが、正体を突き止めようとした者はからかわれて河に落とされる。また、地方によっては「小豆磨ごうか人とって喰おうか」などと物騒な事も言う。
Astarte, Astarete
カナアンやフェニキアに伝えられる古代セム族の豊饒と生殖の女神。バビロニアの神であるイシュタルやイナンナに由来する神と考えられている。或いはフェニキアにおける万能の母神「アストローチェ(Astroache)」を起源とするという説もある。神名は「子宮」あるいは「子宮から生まれる者」といった意味だと考えられている。バールの配偶神で頭に三日月型の角をつけた姿や、牡牛の頭をした女性の姿で表される。
アスタルテはエジプトの神話体系にも取り込まれ、ファラオとファラオの乗る戦車を守護する神とされる。セトの妻でありセクメトと同一視される。エジプト神話の中でアスタルテは潮の流れに巻き込まれて溺れそうになっているところをエジプトの神々に助けられ、プターの養女として迎えられたとされている。また一方でハトホルとも同一視されるためレーの娘ともされる。
Astaroth, Ashtart, Astarte, Ashtaroth, Astoreth, Asteroth, Astarath, Ashteroth, Ashtoroth, Astorath, Asthoreth, Ishtar, Aphrodite
ユダヤの魔神の一人。その起源は古代セム族の豊饒と生殖の女神であるアスタルテ(Astarte)や、バビロニアの美の女神イシュタル(Ishtar)にあるといわれている。「恐怖公」「地獄の大公」等の異名をとり、また元々座天使であったという説から「座天使の公子」等とも呼ばれる。その姿は唇を血で濡らした全身黒ずくめの黒い天使で、右手には毒蛇を持ち、地獄の龍(または蛇)にまたがっているという。過去と未来を見通す力があり、まるで自分は堕落していないかのように天使たちが天から落とされた時の事を語る。常に安楽に過ごし、安逸をむさぼる事を好み人を怠惰に導く。ソロモン王に封印された72柱の魔神の一人(→"ソロモンの霊")。
Asteraoth
旧約聖書偽典「第3エノク書(ヘブライ語エノク書)」に言及される天使の一人。7人の偉大な惑星の支配者の一人。コニベア(Conybeare)の「ソロモンの誓約(The Testament of Solomon)」に拠れば、"力"と呼ばれる女デーモンを倒すことができるただ一人の天使だという。
Asderel
Asto Vidatu
古代ペルシアの死神。もともとは「アストー・ヴィダーツ」と発音した。名前は「肉体の粉砕者」という意味を持つ。最初は小悪魔のような存在だったが、時代が下ると逃れられない死神のような存在とされるようになった。ゾロアスター教では「アストー・ウィーザートゥ」と呼ばれ、あらゆる人間にとって避けられぬ「死」を司る、比類なく強力な悪魔だとされ、全ての人間を死に引きずり込むために虎視眈々と狙っているという。母親の胎内の赤子ですらアストー・ウィーザートゥの獲物であり、流産が起こるのもこの悪魔のせいだとされた。
民間伝承によれば、この魔物は投げ縄を得意としており、この世に生まれた全ての人の首に縄をかけるのだという。人が死ぬと、善人の首の縄は外れるが、悪人は縄を引かれて地獄に連れて行かれる。
Asto Vidatu
あすはのかみ
日本の神道の神の一柱で、「古事記」や「延喜式」などに言及される神。「阿須波(あすは)」、「阿須波乃可美(あすはのかみ)」、「阿須波之神(あすはのかみ)」、「阿須波大神(あすはのおおかみ)」などの表記も見られる。大年神と天知迦流美豆比売の間に生まれた子神の一柱。「古事記伝」においては「アスハ」を「足場」の変化と解し、足で踏み立つ場所を護る神だとしている。また万葉集中の防人の歌に「庭中の阿須波の神に小柴さし吾は斎わん帰り来までに」とあり、庭の神域において祀られる神で旅中や家を離れた者の無事を祈る神であったと思われる。古くは旅立ちのことを「鹿島立ち」といったが、これは防人(さきもり)や武士が旅立ちの際、鹿島の阿須波神に祈りをささげたことに基づくという説がある。これは現在千葉県船橋市海神にある「龍神社(りゅうじんじゃ)」のことで古くは「阿須波明神」と呼ばれていた。延喜式においては宮中を護る「座摩神」の五柱のうちの一柱とされる。
大阪府大阪市中央区にある「坐摩神社(いかすりじんじゃ)」、大阪府岸和田市積川町にある式内社「積川神社(つがわじんじゃ)」、福井県福井市足羽にある式内社「足羽神社(あすわじんじゃ)」などに坐摩神とともに祀られるほか、大阪府大東市平野屋にある「坐摩神社(ざまじんじゃ)」では波比岐神とともにまつられる。
Asparas
Aspis
中世ヨーロッパの伝説・伝承に登場するドラゴン型の怪物。文献によって翼の有無が分かれるが、いずれにしろ小型で60cm程しかない。その体に触れただけで生死に関わるほどの猛毒を持っており、一度噛まれればどんな生物であろうと即死してしまうという。ただ、アスピスは音楽がめっぽう苦手であり、音楽を聞かせると地面と自分の尾を使って耳をふさごうとする(つまり横倒しになる)。この状態に持ち込めば人間でもやすやすと逃げることができる。
「自然の魅力(Der naturen bloeme/The Flower of Nature)」(1350)より
ページ:f122ra
ヤーコブ・ファン・マールラント(Jacob van Maerlant)著
オランダ国立図書館(Koninklijke Bibliotheek/Royal Library of the Netherlands)蔵
Copyright : public domain
「動物寓話集(ジェラルド・オブ・ウェールズのトポグラフィア・ヒベルニカからの追加を含む)(A bestiary with additions from Gerald of Wales's Topographia Hibernica)」(12世紀後半-13世紀前半)より
ページ:f061r
著者不明
大英図書館(British Library)蔵
Copyright : public domain
「動物寓話集(Bestiary Bodleian Library MS. Bodl. 764)」(1226–1250)より
ページ:f096r
著者不明
ボドリアン図書館(Bodleian Library)蔵
Copyright : public domain
Aspidochelon
古代ヨーロッパの旅人や船乗りに伝わる海の怪物の一つ。「アスピドデロン」とも呼ばれる。名前はギリシア語で「蛇亀」の意。ラテン語では「ファスティトカロン(Fastitocalon)」、中東では「ザラタン(Zaratan)」と呼ばれた。途方も無い大きさの亀で、その巨大な甲羅の上には槌が積もり木や草が生い茂っていて、まさしく海上に浮かぶ島のようであったという。アスピドケロンは口から甘い匂いを発して魚をおびき寄せて食っているという。生き物と知らずにアスピドケロンに「上陸」した船乗り達が甲羅の上で焚き火をした途端、アスピドケロンは叫び、のたうって船や船乗り達を道連れにものすごい勢いで海中深く潜ってしまう。聖書のヨナを飲み込んだ魚や中世キリスト教における地獄の入り口の描写は、この怪物がモデルになっていると考えられている。
「動物寓話集(ジェラルド・オブ・ウェールズのトポグラフィア・ヒベルニカからの追加を含む)(A bestiary with additions from Gerald of Wales's Topographia Hibernica)」(12世紀後半-13世紀前半)より
ページ:f069r
著者不明
大英図書館(British Library)蔵
Copyright : public domain
「動物寓話集(Bestiary Bodleian Library MS. Bodl. 764)」(1226–1250)より
ページ:f107r
著者不明
ボドリアン図書館(Bodleian Library)蔵
Copyright : public domain
Aspidodelon
Azbuga
旧約聖書偽典「第3エノク書(ヘブライ語エノク書)」に言及される天使。「アズブガ H(Azubuga H)」「アズブガ・ヤハウェ(Azbuga YHWH)」、「アズブガ・ヤハウェ(Azbogah YHVH)」、「アスボガ(Asbogah)」、「アズブガイ・ヤハウェ(Azbugay YHWH)」などの名前でも呼ばれる。その名前は「力」を意味し、メタトロンより高位とされる審判の座の偉大な支配天使であるメルカバの8人のうちの一人とされる。栄光の王座の秘密を知る天使であり、正義や敬虔な行いによって天国へ到達した者を擁護するという。またアズブガの名は病気や傷を癒し悪霊を祓うために唱えるべきものとされる。第3エノク書においてアズブガはゼハンプリュより上で、ソフリエルより下の位として描かれている。
Asbeel
Earth Maker(s)
Asmodee
Asmodeus
ユダヤ教のタルムード文献などに見られる悪魔。「アシュモダイ(Ashmodai)」、「アスモデ(Asmodee)」、「カマダイ(Chammaday)」、「シュドナイ(Sydoney)」などの別名がある。ペルシアの魔神アエシュマが元となっている。「悪魔の頭」、「魔神王」、「剣の王」等と呼ばれ、配下に多くの魔神を従えている。その顔は炎のように燃えており、天を駆けるための翼をもっている以外は、ほぼ人間と同じ容姿をしている。未来を見通して人の定めを知ったり、大地を見通して宝石や貴金属のありかを知る事ができ、また様々なものに変身する能力をもっているといわれる。夫婦の仲を邪魔し不和や嫉妬心を生じさせる。天界では熾天使であったとも言われている。ソロモン王に封印された72柱の魔神の一人(→"ソロモンの霊")。旧約聖書外典「トビト書」では好色な悪魔として描かれ、大天使ラファエルに撃退される。
コラン・ド・プランシー著「地獄の辞典」では、ドラゴンの翼と首を持つライオンに乗り、牛と王冠を戴いた火を噴く人、羊の3つの頭と蛇の尾を持ち、脚が鳥のもの、という異形の姿で描かれている。
Asura
古代インド神話に登場する超自然的な種族の総称。名前は「神でないもの」あるいは「整っていない(醜い)もの」といった意味を持っている。神々たるデーヴァ族に対抗する種族とされるが必ずしも悪魔のような存在とはされない。ヒンドゥー教の聖典「ヴィシュヌ・プラーナ」ではブラフマーの太ももから生まれたとされる。また祭儀書「シャタパタ・ブラーフマナ」ではデーヴァとともに創造主プラジャーパティから生まれたが、デーヴァが真実を追求する道をとったのに対し、アスラは虚偽の道を選んだとされる。両種族は互いにいがみ合っているが、場合によってはいやいやながら手を組むこともある。例えば霊薬アムリタを手に入れるときなど、両種族は協力して天海を攪拌した。代表的なアスラとして、アガースラ、ジャランダラ、ハヤグリーヴァなどがいる。アスラは仏教に取り込まれ、日本や中国などでは「阿修羅」と称される。
Asrulyu
Asrai
イングランドのチェシア地方、シュロップシア地方の伝承に見える小人の水の精霊。緑色の長い髪と水かきのある足を持つ美しい女性の姿をしているとされる。アスレイ達は水から離れると水になってしまうため、捕まえてたりといった行為は徒労に終わる。またアスレイに触れた部分はみみずばれのようなあざになり一生消えないとされる。スコットランドにも「アズレイ(Asrais)」もしくは「アシュライ(Ashrays)」と呼ばれる同じような水の精が伝わっている。
Azeuph
テュアナのアポロニウス(Apollonius of Tyana)が著したとされる「ヌクテメロン(Nuctemeron)」中の「魔術的黄道十二宮に類似する十二の象徴的な時間」を支配する守護霊(Genius)、いわゆる「時間の鬼神」の一人。10時の霊の一人で子供の殺戮者を司る。
Azel
あそつひこ
Ataensic
ネイティブアメリカンの一部族、イロコイ族における地母神、あるいは天空の女神。善なる者ハーグウェーディユと悪なる者ハーグウェーダエトガーの双子を生んだ後死んだとされる。母アタエンシクの死後ハーグウェーディユはその亡骸から世界を創造したという。
あだかやぬしたききひめのみこと
「出雲国風土記」に言及される姫神。「所造天下大神(あめのしたつくらししおおかみ)」、つまり大国主神の御子神とされる。同訓で「阿陀加夜奴志多岐喜比売命」、「阿陀加夜怒志多岐吉比売命」などの表記も見られる。また「阿陀加夜努志多伎吉毘売命(あだかやぬしたききびめのみこと)」、「多伎吉比売命(たききひめのみこと)」の名でも呼ばれる。出雲国風土記において神門郡多伎郷(現在の出雲市多伎町や湖陵町差海辺り)の地名の説明において、この神が坐すが故に「多吉(たき)」という地名であり後に「多伎」と字を改めた、とある。
神名の「タキキ」については諸説あるが(地名、氏族名あるいは"高津"の変化など)、「アダカヤ」は地名と思われ、風土記にも意宇郡の項に「阿太加夜社(あだかやのやしろ)」という社名が見える。また松江市東出雲町にある地名である「出雲郷」は現在も「あだかえ」と読み、元々の地名に「出雲郷」の字を宛てたものと考えられる。つまり阿陀加夜努志多伎吉比売命は元々は「阿太加夜」の場所の主(ぬし)で、他の場所でも祀られるようになったものと考えられる。
前述の阿太加夜社にあたる島根県東松江市出雲町の「阿太加夜神社(あだかやじんじゃ)」、出雲市多伎町の「多伎神社(たきじんじゃ)」や「多伎藝神社(たきぎじんじゃ)」、出雲市稗原町の「市森神社(いちもりじんじゃ)」に祭られる。
あたけまる
日本に伝わる生きた軍艦。「阿宅丸」、「阿武丸」とも書く。寛永12年(1635)に将軍徳川家光が造らせた水夫200人を擁す47メートルほどの大型軍艦だった。志の低い者や罪人などが入船しようと看板に踏み込むとうなり声をあげ威嚇し乗船拒否をしたといわれる。後に江戸の深川御船蔵に入れられていたが、夜な夜な「伊豆に行こう伊豆に行こう」と泣きながらうなり、とうとう嵐の晩に勝手に動いて伊豆に向かおうとした。結局神奈川県の三浦半島の三崎沖で拿捕されその後解体されたとされる。伊豆は安宅丸が造船されたところだった(三浦で造られたので三浦に向かっていたという説もある)。この話から、だだをこねる人の「安宅丸」と揶揄する。安宅丸の霊を鎮めるための塚が安宅町(現江東区)に築かれたとされるが現在は残っていない。また安宅丸の廃材を買って穴倉の蓋に使った家の妻に安宅丸の霊が憑き、狂ってしまったという話も残っている(しかし安宅丸は解体後焼却されたという話もある)。
あたつくしねのみこと
Atatiel
Adad
Atapiel
Ataphiel
Atar
もしくは「アータル」とも。ゾロアスター教において火を司る神霊。「アードゥル(Adur)」、「アーダル(Adar)」とも呼ばれる。ヒンドゥー教の火の神アグニがその元であるとされる。火を崇高のものとするゾロアスター教で数多くの天使や精霊の中でも力が強く善なるものとされた。「崇拝に値する者達」ヤザタの一人で、アフラ・マズダの息子といわれる。人間に安楽と知恵をもたらし、世界を邪悪から守るといわれていた。勇敢な戦士だとも言われており、賛歌「ザムヤード・ヤシュト」においては「クワルナフ(光輪)」を手に入れるために悪竜アジ・ダハーカと激しい戦いを繰り広げたとされる。稲妻であるとも考えられ、雨を降らせないことで旱魃を起こそうとした悪魔を退治したとも言われている。
Adar
Atargatis
古代シリアにおける大女神。豊穣を司り、魚およびほとと結びつきが深く、上半身は人間の女、下半身は魚の形で表されることもあった。シリアにおいてもっとも信仰されていた神と言われる。また、ハダトという夫の神がいたとされる。
Atarniel
Adaro
ポリネシアやメラネシアにおいて、普遍的に信じられている海の精霊。人間に魚の尾、イッカクのような角が生えた姿をしている。また耳の後ろにはエラがあるとされる。有毒なトビウオの群れを引き連れていて、海に出た虹を渡って旅をしているとされる。水中の縄張りを侵した人間は容赦なく殺す。
Aatxe
フランス南西部やスペイン北西部に住むバスク人における邪悪な精霊。「エツァイ(Etsai)」とも呼ばれる。名前は「若い牡牛」を意味する。牡牛の姿で現われることが多いが、変身できるので人間の姿で現われることもある。山にある洞窟に住んでいて、嵐の夜だけ出てきて周囲に大惨事を引き起こすとされる。
Ah Chicum Ek
Acalā
Acintyamati
Acintyamatidatta
アイヌに信じられていたカムイの一人でモモンガを顕現体とする。名前は「多く産むカムイ」を意味する。モモンガは一回で三匹から五匹ほどの子を産むが、アイヌではモモンガは鳥の一種とされ、一回で30匹もの子供を産むと信じられていた。このためアイヌでは妻に子供がなかなか生まれないとき、モモンガの肉を夫が妻に食べさせるという習慣があった。ただしこれが妻にばれると多産の効力を失うだけでなく、全く子供を身篭らなくなってしまうとされたため、夫はモモンガの肉だとばれないように他の鳥の肉と一緒に食べさせたという。
Acca Larentia
イタリアにおける大地の女神。12月23日のラーレンタリア祭の主神。元はローマの遊女だったといわれる。
アイヌに伝わる妖怪。「アツィナ」(海の木幣)とも言う。北海道の内浦湾(噴火湾)に住むという大蛸。1ヘクタールほどの大きさでで、通りかかる漁船を襲ったという。アッコロカムイのいるところは体の赤い色が海面に反射して遠くからでも分かったという。また一説には巨大魚とされるが、その場合でも特徴は変わらない。一説には礼文華(豊浦町)の山にいた大蜘蛛ヤウシケプが海に入ってアッコロカムイになったとされる。
Assur, Ashur
Attar
イスラム教以前の時代にアラビア半島南部で崇拝された神。戦いの神で、「大胆に戦う者」と呼ばれることが多い。シンボルの一つに槍の穂先がある。アッタルの聖なる動物はアンテロープ(カモシカ)である。金星を支配する力があるとされており、人類に水をもたらす神と考えられていた。
Attis
小アジアのプリュギアにおける神でキュベレの夫神。神々に去勢されたアグディスティスの性器からアーモンドないしザクロの実が生え、それにより妊娠した川の神の娘、ナナの子とされる。アッティスは恋人であったキュベレがいるにも関わらず不貞を働いたため、キュベレにより正気を失わされ、自らを去勢して死んでしまった(別の伝承ではあるいはキュベレと引き離されたため絶望して去勢した)。その血に触れた草木は異常な速さで成長したとされる。のちにキュベレはアッティスを生き返らせ、二人は結ばれたという。
植物の生成を司る神であり、毎年3月の終わりになるとアッティスを祀る五日間の祭りが催された。この祭りの中でキュベレの神官達はアッティスに倣い自らを去勢しその血をアッティスの像に撒いた。
Apple-tree Man
コーンウォール、デヴォン、サマセットといったイングランド東部の民間伝承にみえる林檎園の主の精霊。リンゴ園の一番古い林檎の木に棲んでいるとされる。その果樹園の全てを熟知しており、毎日良い行いをしている人を助けるという。ただし、アドバイスは声だけで姿はわからない。ある昔話では、財産を少しも貰えなかったものの毎日真面目に働いた長男に、クリスマスイブの夜に宝物の在り処を教えたとされる。その家の末っ子は全財産を受け継いだが、毎日遊んでいたので、家畜たちが彼について喋る悪口だけを聞かされたという。昔から毎年、公現祭の前日である1月5日にアップルツリーマンの棲んでいる木の前で宴を開くことが習慣となっている。
Yà-yǔ
中国神話における怪物の一種。「窫窳」とも書く。もとは天神だったが、天神である弐負(じふ)とその臣下の危(き)に殺され、怪物と化したとされる。地理書「山海経」の北山経によれば、少咸山という山にいる牛のような姿の獣で、赤い体で人面・馬足、赤ん坊のような声で鳴き人を食べるという。また海内南経では弱水という川にすむ龍の頭をもつ獣だとし、海内西経では蛇身人面だとする。他にも人面竜身だとか、狸に似た獣だとか、竜頭虎身で馬の尾を持つ巨大な怪物だとか、文献によってその姿には様々な説があるが、人を食うという点は共通している。怪物と化した猰窳は五帝の一人である堯の統治していた時代に猛威を振るったが、弓の名手であった弓の名手であった羿によって殺されたという。
「山海經(せんがいきょう)」(不明)より
ページ:v02p010
郭璞(伝)著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
「山海經(せんがいきょう)」(不明)より
ページ:v03p029
郭璞(伝)著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
窫窳龍首 居弱水中
「山海經(せんがいきょう)」(不明)より
ページ:v03p034
郭璞(伝)著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
窫窳者 蛇身人面 貳負臣所殺也
Allah
Allocen
「アロケン」とも。ユダヤの魔神。「アロケス(Alloces)」、「アロケル(Allocer)」とも呼ばれる。「戦士公」などと称される地獄の大公の一人。獅子の顔をした戦士で、肌は赤い黄金のように光り、輝く鎧に身を包んで、巨大な戦車に乗っている。荒野にとどろく荒々しい声を発し、その燃える瞳を覗き込んだものは自分の死に様が見え、そのショックでしばらく眼が見えなくなるという。占星術、文法、論理学、修辞学、算数、幾何学、天文、音楽などの各種文芸に通じているとされる。ソロモン王に封印された72柱の魔神の一人(→"ソロモンの霊")。
「The lesser key of Solomon, Goetia : the book of evil spirits」より
大英博物館(British Museum)蔵
Copyright : pubric domain
Atea
Aditi, Āditi
インド神話においてアーディティヤ神群の母とされる「母性」、「無限」などを象徴する女神。「A-diti」は無拘束、無限を意味する。「リグ・ヴェーダ」で彼女に捧げられる独立賛歌は3詩節のみである。ちなみにアーディティヤ神群とは、ヴァルナとミトラを首長として、アリアマン(歓待)、バガ(分配、幸運)、アンシャ(配当)、ダクシャ(意力)などを含む12神のことである。アーディティは子神や配偶神に多数の異なった記述が見られる。例えば配偶神はブラフマーや聖仙カシュヤパとされ、子神としてアーディティヤ神群の他にヴィシュヌを生んだとされる。ブラフマーとの間にダクシャを生んだが、ダクシャはアーディティを生んだという。
Atira
ネイティブアメリカンのポーニー族における地母神であり、創造神ティラウ・アティウスの妻。
Ādīngbóér, Adingboer
中国の少数民族、鄂倫春(オロチョン)族における風の神。
Adyok
Aten
「アトン(Aton)」とも。エジプトの太陽の神。名前は「太陽の円盤」を意味する。エジプト第18王朝のアメンヘテプ4世(在位前1352~36)は世界最古の宗教改革者として従来の他の神々への信仰、特にアモンへの信仰を禁じ、アテン宗教のみを公式の宗教として認めた。そして自らの名をアメンヘテプ(「アモンは満足する」の意)からアクエンアテン(「アテンの栄光」の意)へと改めた。アテンは元々太陽円盤を頭部に頂いた隼、もしくは隼の頭部を持った人間の姿をしていたが、唯一神とはってからは巨大な赤い日輪と、そこから伸びる先端が手の形をした光線とであらわされるようになった。この光線はアテンの美しさを王にまで及ぼすものと考えられた。アテンはレーを起源とする神と考えられる。
Atua
ニュージーランドのマオリ族において、目に見えない超自然的な存在に対する総称。動物や虫などの姿をとって人間の目に見えるようになった状態では「アリアー(Ariā)」の名前で呼ばれ、マオリの人々に恐れられている。ほとんどのアトゥアは人間に敵意を持っており、特定の人間や特定の部位に病気や痛みといった悪影響を引き起ことされる。
アイヌ民族においてシャチ(或いはクジラ)の姿で顕現するカムイ。語義は「海を領有するカムイ」。
Atuesuel
カバラやグリモア「モーセ第6、第7の書」において言及される天使で、儀式において唱えられる、偉大な力を発揮するという8人の万能の天使の一人。
Atum
エジプト神話に数多く登場する太陽神の一人。二重王冠をかぶりアンクとウアス笏を持った人間の姿、あるいは雄羊の頭部を持つ男性などの姿で表される。原初の混沌の海であるヌンから自らを誕生させ、その後神々を生み出したとされる。アトゥムは誕生したとき生命と復活の象徴である蛇の姿をとって生まれたが、世界が破滅する時もやはり蛇の姿をとりヌンへと還るとされた。アトゥムはこうした神々の始祖、創造神としての性格の他に、また太陽神としても信仰もあった。太陽の船によって運航される太陽は、レーやケペラ、アウフといった様々な姿をとって毎日空を循環しているが、アトゥムはその中で沈む太陽の役割を与えられた。これは恐らくアトゥムは太陽神の中でも特に古くから信仰されていたことを示すと考えられる。太陽神を象徴するベンベン石は元々彼を象徴するものであり、アトゥムはベンベン石の上に立って世界を照らしているとされたが、この役目はレーやアモンにとって変わられるようになった。
アトゥムは自らを生み出し、なおかつ一人で神々をも生み出した両性具有の神と考えられていたが、後世に至ると男性神として信仰されるようになり、妻として「イウサーアス(Iusâas)」、「ヘテペト(Hetepet)」といった女神を与えられることとなった。ただし、これらの女神はあくまでもアトゥムの一部分、つまりアトゥムが自分の手を切り離して女神としたものであり、単一神としては扱われなかった。
Adur
Adroa
東アフリカのザイール共和国とウガンダ共和国とにまたがる地域に住むルグバラ人の信仰する神。アドゥロアには「アドゥロア(天空神)」と「アドゥロ(地上神)」という相対する二面性を持っている。天空神アドゥロアは超越的で人間から遠く、オニル(onyiru="善")であるが、地上神アドゥロは親近的で人間に近くオンジ(onzi="悪")である。かつてはアドゥロを鎮めるために人間の子供が生贄としてささげられていた(1930年代からは雄羊がささげられるようになった)。アドゥロア=アドゥロはすべての源泉であり、ルグハラ人の祖先を通して彼らに社会秩序を制定したとされるが、ルグハラ人の祖先とアドゥロアに関する伝承は残っておらず、ただ「我々は祖先を忘れ、雄羊を山々へと送る」という言葉が残っている。アドゥロアは遠い存在であるためその姿について語られないが、アドゥロに関しては人間が二つ持つべきものを一つしかもってない姿────つまり、一つ目で耳も腕も足も一つしかない半身の姿をしており、死期の近い人には見えるとされる。
あとおいこぞう
日本の神奈川県丹沢地方に見られる妖怪。いわゆる後神の一種。山中で気配を感じて後ろを振り返っても木や岩の影に隠れたようで誰もいない。これは山霊ないし後追い小僧の仕業である。特に害はないが、余りにもしつこい場合は何か食べ物を置いておくとよいという。道案内をするかのように前を歩く場合もある。夜間より昼間、特に午後に多く現われ、夜間の場合はちょうちんのような火を灯して人の前後に現われるという。
Adoniel
Adnis
フェニキア神話に登場する植物の神。特にビュブロスにおいて信仰された。神名の「アドニス」は「我が主」を意味するセム語「アドニ」に由来する。太陽の熱で干からびた植物を象徴する神で、アドニスが冥界からこの世に来た時は急に草木が枯れたり花がしぼんだりするとされる。後にギリシア神話に取り込まれた。またカルタゴのバールとも同一視される。
Ad-hene
マン島ゲール語で「彼ら自身」ないし「あの人たち」といった意味を持つこの言葉は、妖精たちを呼ぶ際の遠まわしな呼称として使われた。妖精たちの本名を直接言ったり、間違った名前で妖精たちを呼ぶことは彼らの機嫌を損ねる可能性があるからである。
Atmuhakat
ベトナムのチャム族における女神。インド哲学の「アートマン(自我・あるいは物一般の本質のこと。宇宙原理ブラフマンと同一視される)」を擬人化した存在。宇宙に12個の太陽があった頃、子の年の6月、月曜日3時から世界を管理し始めたという。
Y Ddraig Goch
イギリスのウェールズにおいて伝説に登場するドラゴン。名前はウェールズ語で「赤い竜(The Red Dragon)」を表す。俗に「ウェルシュ・ドラゴン(Welsh Dragon=ウェールズのドラゴン)」と呼ばれることもある。赤い体をしたドラゴンで舌と尾の先端が矢尻状にとがった姿で描かれる。イングランドを征服していたサクソン王ヴォーティガーン(ウォルティゲルン)がウェールズのスノードニア山地に砦を築こうとしていたとき、決まって朝になると石材が消えていた。これが怪物の仕業であることが分かったので砦を作ろうとしていた場所を掘り下げてみたところ、地下に大きな洞窟があり赤と白の二匹の怪物がいることがわかった。急に棲みかに踏み込まれた怪物たちは興奮状態となり互いを戦いだした。この結果白い怪物グウィバーが負け、赤い怪物ア・ドライグ・ゴッホが勝利した。
ア・ドライグ・ゴッホはウェールズの守護者であり、これはサクソン人のイングランドからの撤退を暗示していたとされる。ア・ドライグ・ゴッホの姿はウェールズの国旗として採用されている。
Atlatonan
Adramelech, Adramalek, Adrameleck, Adramelek, Adrammelech
グリモア「ソロモンの誓約(The Testament of Solomon)」などに言及される、地獄の序列において最高位とされる悪魔ないし堕天使の一人。起源はアッシリアの神であり、旧約聖書の第二列王記にはセファルワイム(アッシリアに占領された都市)の神々の一人として言及されており(17章31節)、それに拠れば生け贄として子供が火で焼かれ捧げられたという。カバラにおいては第8セフィラ「ホド(Hod)」に対応する反セフィラとされる。コラン・ド・プランシー(Collin de Plancy)の「地獄の辞典(Dictionnaire infernal)」では、冥界の大法官であり、悪魔の君主(つまりサタン)の衣装部屋の管理者であり、また悪魔の最高評議会の議長で、ロバの姿か孔雀の姿で姿を現すと説明されている。
1863
コラン・ド・プランシー(Collin de Plancy)著
「地獄の辞典(Dictionnaire infernal)」より
アメリカ議会図書館(Library of Congress)蔵
Copyright : public domain
Atrigiel
Atrugiel
Atrugniel
Aton
Ana
放浪民族ロマニー族(ジプシー)の民間信仰に登場する妖精(ケシャリイ)達の女王。名前はサンスクリット起源で「栄養」の意。純真で美しく、山の城に住んでいるという。悪魔族ロソリコの王の姦計にはまり、アナは眠ったまま犯され、その過程で様々な悪魔が生じた。999年が経ったらロソリコの王と結婚するという約束でどうにかロソリコの王と別れたアナは、今は恥辱と絶望に悲しみながら自分の城に引きこもっているとされる。しかし稀に金色のヒキガエルの姿で現われることもあるという。
Anaye
アメリカのネイティブアメリカンの一部族、ナヴァホ族における怪物の一団を指す言葉。アナイエに含まれる4つの怪物種は頭のないテルゲス(テルゲット)、手足のないビナイェ・アハニ、怪鳥ツエ・ニナハレエエ(ツァナハレ)、そして名前のない怪物である。この最後の怪物はまるで「岩肌に生えた根」のような毛皮を使い砂漠の岩にしがみついていて、とおりすがった旅人を食うとされる。彼等は父親なしにこの世に悪意を持ったある女性から生み出されたとされ、人間と世界に害を成すように運命付けられている。彼等は最終的に戦神ナイェネズガニとトバディシュティニによって打ち負かされるが、彼等でさえもアナイエの兄弟である「寒さ」、「飢え」、「老い」、「貧しさ」を退治することは出来なかった。彼等は今も人間達を苦しめつづけている。
Anael
ユダヤ教、キリスト教における天使の一人。「アリエル(Ariel)」、「オノエル(Onoel)」、「ハニエル(Haniel)」、「ハミエル(Hamiel)」などの別称をもつ。神の世界創造を手伝った七天使の一人であり、プリンシパリティーの指揮官とされる天使の一人。七層に分かれた天上の第二天(ラクイエ)の長とされることもある。「旧約聖書」イザヤ書においてラクイエの城門を開けと布告するのはアナエルとされている。
Anachiel
Anazachia
Anat, Anath
Anani
Anane
Ananel, Anan'el
Anahael
Anavatapta
仏教における八大竜王の第六尊。八大竜王の中でも最も徳が高いとされる。尊名の「阿那婆達多(あなばだった)」はサンスクリット名である「アナヴァタプタ(Anavatapta)」を音により漢訳したもの。他に「阿耨達龍王(あのくだつりゅうおう)」(長阿含経など)、 「阿耨大龍王(あのくだいりゅうおう)」(仏説興起行経)、「阿那婆答多龍王(あなばとうたりゅうおう)」(大唐西域記)と音写されるほか、住んでいる池の名前から「阿耨達池龍王(あのくだっちりゅうおう)」、「阿耨大池龍王(あのくだいちりゅうおう)」、サンスクリット名の意味訳から「無熱惱池龍王(むねつのうちりゅうのう)」、「無熱池龍王(むねつちりゅうおう)」、「無熱龍王(むねつりゅうおう)」とも称される。大雪山の山頂にあり、人間界を潤す源泉となっているとされる、「阿耨達池(あのくだっち)」と呼ばれる池に住んでいるとされる。
Aāhitā, Anahita
古代ペルシア神話における聖なる水の女神。ゾロアスター教ではヤザタの一員とされる。名前は「純潔な者」、「汚れ無き者」の意。「アナーヒド(Anahid)」、「ナヒード(Nahid)」とも呼ばれる。また「アルドヴィー・スーラ・アナーヒター(Aredovi Sū-ra Aāhitā=湿潤にして強力且つ汚れ無き者)」という敬称を持っている。同名の河を神格化したもので、インドのサラスバティーとの共通点が多く見られる。世界に広がる河はつまりアナーヒターであり、人々に豊穣や財産、子宝など全ての恵みを与える神として信仰された。また星の間に住み、勇気ある高貴さを備えて、四頭立ての戦車に乗って進み、悪魔や暴君を打ち負かす戦神として金星に象徴される。敵であるはずのダエーワ達でさえ彼女に祈りを捧げたという。自然と生物の多産を約束し、鳥獣や牧場を保護し、王権を守護する。その姿は、千の星で飾られた金の冠と四角い金の首飾りをつけた痩身の気高く美しい処女、あるいは千の入り江と千の水路を有した巨大な川そのものであらわされる。
Anahid
Anafiel, Anaphiel
キリスト教、ユダヤ教における天使で、旧約聖書偽典「第三エノク書(ヘブライ語エノク書)」にその名が見える。名前は「神の技」を意味し、「アンピエル(Anpiel)」、「アナピエル・ヤハウェ(Anapiel YHVH)」の名でも呼ばれる。エノクを天上へ運んだのはセミルとラスイル(→ラグエル)だとされるが(第二エノク書)、第三エノク書ではアナフィエルとラグエルだとされる。秘密の保持者で水の支配者であり、ケルブの長、あるいはメルカバの8人いる長の一人だとされることがある。7天中第7天である「アラボト(Araboth)」にある、7つの宮殿の鍵を守る天使であり、ザクザキエルより上位でソテラシエルより下位の天使とされる。
Anahel
Anansi
西アフリカから西インド諸島、南アメリカにまで広範囲に伝わる妖精ないし神。西アフリカのハウサ族は「ギゾー(Gizō)」、アカン族は「クワク・アナンセ(Kwaku Ananse)」と呼ぶ。また西インドのハイチでは「ティ・マリス(Ti Malice)」、キュラソー島では「ナンシ(Nansi)」と呼び、北米のサウスカロライナは「アント・ナンシー(Aunt Nancy=ナンシーおばさん)」や「ミス・ナンシー(Miss Nancy)」と呼ぶ他、アメリカでは「ミスター・スパイダー(Mister Spider)」とも呼ばれる。いたずら好きの変身ができる精霊で、変身やその他の超自然的な能力で他の生物を騙そうとしたり或いは逆に助けたりする話が伝わっている。
ある時山火事から逃げ遅れたアナンシは蜘蛛に変身してメスのアンテロープの耳に隠れ、アンテロープを的確に指示を出して誘導し、ともに火から逃れた。その後アンテロープは子供といたところを狩人に出くわし、子供を助けるために狩人をひきつけて一生懸命走り回った。疲れきったアンテロープは元の場所に戻ってきたが子供はいなかった。アンテロープは子供が殺されたとおもったが、子供は無事に帰ってきた。アナンシが巨大な蜘蛛の巣の中に子供を隠してくれていたのである。
Ananta
Anantasvaraghoṣa-cakravartin
Anila Mahā-senāpati
仏教において夜叉の頭領の一人であり、薬師如来の眷属である十二神将の一人。サンスクリット名を「アニラ・マハーセーナーパティ(Anila Mahā-senāpati)」といい、「摩尼羅(まにら)」、「安濕羅大将(あしらたいしょう)」とも訳される。「アニラ(anila)」は「風」を意味し、風の神であるヴァーユと関連している。如意輪観音を本地とし十二支のうち辰ないし未の神とされる。
国訳秘密儀軌編纂局 編
「新纂仏像図鑑 天之巻」より
国立国会図書館蔵
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白色の身色で天衣と甲冑を着け、髪は逆立ち忿怒形。頭上に竜頭を戴き右手に剣、左手に矟を持つ。
「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v04p003
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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藥師十二神將(→十二神将)の一尊(未)として
Anu
Anu
Anuket
Anubis
エジプトにおける冥界神の一人。本来は「インプ(Inpw)」の名で呼ばれた。冥界への門を開き、死者をオシリスの裁きの間へと導く役目を持つ。オシリスとネフティスの子であるが、本来ネフティスの夫はセトであるのでアヌビスは「不義の子」ということになる。それ故アヌビスは生みの母ネフティスに捨てられてしまうが、オシリスの妻であるイシスに拾われ育てられた。ただしこれは後から出来た神話で、本来は太陽神レーの四番目の息子とされていた。
元々は単純な冥界神、あるいは冥界の番犬(番人)のような神格だったと思われるが、複雑なエジプトの神話体系に取り込まれることによってその役割も細分化した。マートの「真実の羽」と死者の魂を天秤にかけて計量する仕事や死んだファラオのミイラに命を吹き込む仕事はアヌビスの役割とされる。また医学や薬術に長けており、オシリスがセトに殺害された時に、その身体に布を巻いてミイラにしたという神話からミイラ作りの神としてミイラ職人に崇拝されていた。また墓地の守護神としても信仰され「聖なる土地の主」と称された。
冥府へ死者を導くことからギリシャのヘルメスと同一視され、「ヘルマヌビス」と呼ばれることああった。黒いジャッカル或いはイヌの頭を乗せた黒っぽい皮膚の男、或いは単純に犬の姿で表される。
Anurādhā
Anulap
太平洋中西部、ミクロネシアのカロリン諸島における神。邪神オロファットを殺すために、首に綱を巻いたり、棒で打ちかかったりするもののことごとく失敗する。
Áine
ケルト神話における愛と豊穣・多産の女神。海神マナナン・マクリルの里子であったエオガバルの娘。人間の愛を鼓舞する女神だが、彼女自身をものにしようとした者はアーネの魔術により死を遂げたという。6月23日(夏至祭前日)には彼女に捧げる祭礼が盛大に行われた。これは豊穣や多産を祈るもので、アーネは穀類に豊かに実るように、家畜が沢山子供を生むように命じる者だったとされる。
Ā-nòu guān-yīn
仏教において変化観音(→観音菩薩)の一種であり、三十三観音の一尊。妙法蓮華経の一節「或漂流巨海/竜魚諸鬼難/念彼観音力/波浪不能没(=大海を漂流しているときに龍や魚や鬼による難があっても、彼の観音の力を念ずれば、波でさえその者を侵すことができない)」に対応する仏尊とされる。「阿耨」という尊名は阿那婆達多竜王の住む「阿耨達池(あのくだっち)」と呼ばれる池の名前から。岩上に立てた右膝を両手で抱える形で坐し滝を眺める姿で描かれる。
「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v02p017
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
三十三観音の一尊として。
あのくたどうじ
仏教において不動明王の眷属である八大童子の一尊。「無熱(むねつ)」とも称する。「八大童子秘要法品」に拠れば、蓮華部より出現し、蓮華の池水より生じた純粋無垢な使者であることを以て阿耨達童子という(阿耨達は「アナヴァタプタ(Anavatapta=池の名前)」の音写)。青い龍に乗り、金色の身色で金翅鳥王(こんじちょう→迦楼羅)を頂き、右手に独鈷杵、左手に紅蓮華を持った姿で表される。
国訳秘密儀軌編纂局 編
「新纂仏像図鑑 地之巻」より
国立国会図書館蔵
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「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v03p012
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
八大童子の一尊として
Augh-iska
Aughisky
Each Uisge, Eač Uisge
もしくは「エフ・ウシュゲ」ないし「エフ・イシュゲ」とも。アイルランドやスコットランド高地地方において、海や塩水湖の塩水の中に住むといわれる馬の怪物の一種。名前は「水馬」の意。「アハイシュカ(Aughisky)」、「アハ・イシュカ(Augh-iska)」とも呼ばれる。鳥や美男子の姿でも現われるとされるが、たいてい美しい馬の姿で岸辺や湖岸にいて、興味を持った人が背中に乗りたくなるように誘ってくる。しかし人が背中に乗るアハ・イシュケは海や湖に向かって走り出し、降りようとしても不思議な力が働いて降りれない。こうして水中に引きずりこまれた人間は肝臓を残してアハ・イシュケにむさぼり食われ、残った肝臓だけが翌日の岸辺に打ち上げられるという。ただ、岸にいるアハ・イシュケに鞍と手綱をつけることができれば、水場に近づけない限り人間でも扱える優れた乗馬用の馬になるとされる。
Ahau Kin
Apauša, Apaoša, Apaosha
アイヌ民族におけるタヌキ(ムジナ)の姿で顕現するカムイ。名前は「戸口を守るカムイ」の意。男女一対のカムイと考えられることもある。
Abaasy
シベリアのヤクート族において、邪悪な存在とされる悪霊たちのこと。地下世界に住み、「アバース・オイクボ」と呼ばれる特別な穴を通って人間のもとに現れる。邪神ウル・トヨンによって支配されてとされることもある。アバーシの頭目の息子は眼が一つしかなく、鉄の歯を持っているといわれる。
Abath
16世紀のヨーロッパの旅行家による想像上の生物。マレーシアの森に住む、額に一本の角を持つ雌の一角獣であるという。実際アバスの角をされるものがアラブと取引されていたが、これは実際マレーシアに生息するスマトラサイの角だったと思われる。
Abassi
西アフリカのエフィク人の神話に登場する天空神。妻は「アタイ(Atai)」。彼ら夫婦神は最初の人間を創造したが、人間が自分たちの能力を超えることを恐れ、自分たちのそばに住まわせ自分達の管理下においた。この管理は子供を作ることや働くことを禁じる厳しいものだったが、結局人間の夫婦はこれらの制約を無視し始め、自分で耕した畑で自分のたちのための穀物を育て、交わり子供を産んだ。アタイはこの人間の夫婦に死を与え、子供たちに不和の原因を作ったという。この伝承は人間に訪れる死や諍い、病気などの負荷は、人間が神から離脱したための代償であることを説明するものである。
Abaddon, Abbadon, Abadon
ユダヤの魔神で、「疫病のイナゴ王」、「死の闇天使」、「奈落の魔神」などと称される。「アバドン」はヘブライ語名であり、「ヨハネの黙示録」にはアポルオン(Apollyon)という名で出てくる。その名は「破壊」、「滅亡」、「廃墟」、「墓」、「冥界」、「死」などの意味があり、ギリシアの太陽の神アポロンとも関係があるとされる。鎌状の翼を持った恐ろしい姿で、見たものはショック死するとされる。地獄の奥底に住む堕天使で 、最後の審判が訪れる時に、イナゴに似た使い魔を放って人間を苦しめ抜くという。
「ヨハネの黙示録」によれば、「底なしの淵の使い」であり、千年の間サタンを束縛しつづける天使とされる。死海文書に含まれる「感謝の賛歌」という文献には「アバドンの冥土(シオウル)」、「アバドンへ流入するベリエル(ベリアル)の奔流」などの形で言及され、更に外典「聖書古代誌」によればアバドンとは魔神や天使ではなく冥土ないし地獄の名称だとされている。「アバドン」という名称を始めて擬人化したのは聖ヨハネだと考えられている。
Apāyajaha
Aparājitā
Aparājitā
Aparājitavidyārājñī
Abariel
マグレガー・メイザース(Samuel Liddell MacGregor Mathers)の「ソロモンの大きな鍵(The Key of Solomon The King)」において月の第2のペンタクルに記される天使。
Abaros
アビガミ
日本の広島県の漁師に信仰される漁業の守護神。「アビ」と呼ばれる海鳥(シロエリオオハム)の群れが円をなしてイカナゴの群れを追い込む習性を利用し、アビの群れを目印にイカナゴとそれを狙うスズキや鯛を釣り上げる、「アビ漁」と呼ばれる漁法の守護神。アビは鯛漁の神として尊重され、漁師の間ではアビを決して捕獲しではいけないという決まりがあった。アビに釣り針が掛かって誤って殺してしまった場合でも、その死んだアビを船に隠し、寄港してから丁寧に葬り冥福を祈ったという。現在は環境破壊による瀬戸内海のイカナゴの減少に伴い、瀬戸内海で見られるアビ類も減少したためアビ漁は行われていないが、呉市豊浜町の豊島には阿比神祠があり、漁師に信仰されている。
Abigor, Abigar
ユダヤの魔神で、「冥界の大公」と称される。王笏をもった見た目よい騎士の姿であらわれる。未来を予言する能力と、軍の指揮能力を有する。アビゴルはエリゴルの別名とされることがある。
1863
コラン・ド・プランシー(Collin de Plancy)著
「地獄の辞典(Dictionnaire infernal)」より
フランス国立図書館(Bibliothèque nationale de France)蔵
Copyright : public domain
Abhijit
Abyss
エジプトにおいて、牡牛の姿をした豊穣の神。
Apis
エジプト神話に見える雄牛の神性。メンフィスを中心として信仰されていた。「ハピ(Hapi)」、「エパポス(Epaphos)」ともいう。エジプトの他の雄牛の神性と同様に、もともと 多産豊穣の神で、鳥獣の繁殖に関係していたが、のちプターやオシリスと結びつくようになった。アピス信仰では実際の牛を信仰の対象としていて、しかるべき理由(兄弟が居ない、稲妻や天上からの光に打たれた母牛から生まれた、体に聖なる模様がある、など)によりアピスとなる牡牛を選び、その生涯が終わるまで神として祭り上げる。そのアピスが死亡すると王公貴族のように飾り立てたミイラにして石棺に納め、サッカラにある地下墓地に葬られたあとに、また次代のアピスを神々の陪審員(おそらく神官が受け持ったと思われる)が選定した。
Abhyudgatoṣṇīṣa
Abbey lubber
イングランドの民間伝承に伝わる小悪魔。名前は「大修道院のでくの坊」という意味。修道院に棲んでいて敬虔な修道士達を誘惑して酒浸りにさせたり、贅沢な生活に溺れさせたりすることで彼らを堕落させ、地獄に落ちるように仕向けるという。15世紀以降の堕落した修道院に向けられた人々の不満が生み出した悪魔といえる。またアビー・ラバーは食料室の精霊としても知られる。
Af
沖縄の読谷村に出現する妖怪で「マジムン」の一種。一連の股をくぐられると死んでしまう妖怪の一つで、あひるが化けたものだとされる。ある農民がアフィラーマジムンに石を投げつけたところ、沢山の蛍になって散り、農民の周りを飛び回ったが、一番鶏の鳴き声で消え去ってしまったという。
アイヌ民族において天然痘として顕現するカムイ。悪いカムイとは考えられていない。名は「歩くカムイ」の意で、アイヌ人には天然痘が村から村へ渡り歩くように見えたことからの名。霰の模様の入った服を着ている。同じ意味での「パイェカイカムイ(うろつくカムイ)」、一種の死神としての「パコロカムイ(寿命を司るカムイ)」・「オリパクカムイ(恐れ多いカムイ)」、併発症を伴うところから「ウアタラコロカムイ(眷属をもつカムイ)」など、多くの名前で呼ばれる。
Apsaras
インド神話における女の妖精の総称。「アスパラス(Asparas)」とも呼ばれる。元々は水の精だったが時代が下ると森の精と考えられるようになった。彼女らは川、雲、電光、星の中に住み、みずからの姿を水鳥に化する。また、ミヤグローダ(バニヤンの樹、榕樹)や菩提樹、バナナやイチジクの木に住むとされる。人々に精神異常や狂気を起こさせたり、修行者を誘惑し堕落させたりする。男の妖精であるガンダルヴァはアプサラスの配偶神として知られている。有名なアプサラスとして、プルーヴァラス王の妻となった「ウルヴァシー(Urvasi)」、ドゥシュヤンタ王の妻となった「シャクンタラー(Śakuntalā)」などがいる。
Apsû, Abzu
Ah Puch