阿遅鉏高日子根神
あじすきたかひこねのかみ
日本記紀神話において、農業神とされる神。「あじ(あぢ)」は美称、「すき」は単純に農具の耜(すき)か、あるいは磯城(しき=岩石を敷き詰めた祭場)の転訛と考えられる。
「大国主神(おおくにぬしのかみ)」と「多紀理毘売命(たきりびめのみこと)」との間に生まれた神。阿遅鉏高日子根神は穀霊神である「天若日子(あめのわかひこ)」とても親しく、彼が死んだ時も弔問に訪れたが、二人の顔恰好がとても似ていたために、その葬儀の場で死んだ天若日子が生き返ったと間違われた。阿遅鉏高日子根神は死んだ者と間違えられるという無礼に腹を立て、葬儀場を滅茶苦茶にして帰っていってしまった。この説話は二人の神格がとてもよく似ている、或いはもともと同一神だったということを暗示していると考えられる。また、生きている阿遅鉏高日子根神、死んだ天若日子という対象性は農業における秋には実り枯れて、春には芽吹き成長するというサイクルを象徴したものとも考えられる。
鋤は春に田畑を耕し農地を開拓するという役割のほかに、昔は田の神を祀る時の呪具としても使われた。阿遅鉏高日子根神はもともとそういった鋤を御神体とする農業神であったとされる。また昔は鋤には雷神(水の神)が宿るとも考えられたので、阿遅鉏高日子根神は農業神であるとともに、雷神を呼ぶ力を持つ神、ないし雷神と同じ力を発揮できる神だと考えられるようになった。
別名である「迦毛大御神」の名の通り、賀茂上下社の祠官であった賀茂氏の祖であるが、現在は賀茂上下社では阿遅鉏高日子根神を祀っていない。ただ、「都都古和気神(つつこわけのかみ)」として都都古別神社に、「高賀茂大神(たかがものおおかみ)」として高鴨神社に祀られている。
- 《阿遅鉏高日子根神の別称一覧》
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- 味鉏高彦根尊
- あじすきたかひこねのみこと
※他に数多くの表記、別称が存在する(→付表:日本記紀神話 神名相関表(アジスキタカヒコネの項))。