し行

Si

ペルーのモチェ文化、また後代のチムー文化における月の女神ないし男神。モチェ、チムーにおける神体系の支配者で、最高神であり、どこにでも姿をあらわし、季節や自然的要素、嵐、また作物の豊穣をも司る。その起源は無名だがアイ・アパエクに匹敵するほど重要視されていた、輝きを放つ武装した戦いの神にまでさかのぼる。モチェとチムーの人々は潮の干満をはじめとする海の動きや、毎年の雨期の到来が月の満ち欠けに関係していることを知っていた。それゆえにシに偉大な力を感じ、食糧の供給や家畜の多産はシに恩恵によるものと考えられた。反対に太陽の神は彼らにとって比較的に地位の低い神とされた。シ、つまり月は、太陽が昼しか見えないのと異なり、夜でも昼でも見られることから、太陽よりも強力であると考えられた。食現象は太陽と月の戦いと解釈されていたので、月食は災害の兆候として恐れられたが、日食はめでたいこととされた。また月の光は夜を闇を照らし出し泥棒の悪事を暴くことから、シは公共物を守る神ともみなされた。チムー社会において高度なレベルで制御されていた再分配システムを維持するためにも、シのような所有物の守護者が重要視されていたことが推察される。

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Chī

中国において最古の地理書とされる「山海経」に言及されている怪鳥。それによれば、西山の三危山に棲む鳥で「?(らく=鷹の仲間)」のような姿で頭一つに三つの体を持つ鳥だという。

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中国において最古の地理書とされる「山海経」の海内南経に言及される生物。舜葬(帝舜が葬られた場所)の東、湘水の南にいるとされ、牛の様な姿で体は蒼黒色をしており、角が一つ生えているという。

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シアチ

Thjazi, Þjazi Thiazi, Tjasse, Thiass

北欧神話に登場する巨人ヨツン族の一人。「シアスィ(Thiassi)」とも呼ばれる。名前は「氷」を意味する。カーリの4人の子供の一人で、嵐の巨人の一員。人の姿ではなく、巨大な鷲の姿でいることを好む。ヘーニルオーディンロキの3人が牛を料理しているときも、シアチは鷲の姿で舞い降りてきて、3人を騙して牛を丸々と飲み込んでしまった。ロキが槍でシアチを突き刺したがものともせず、シアチはロキをぶら下げたまま空へと舞い上がって、ロキを返す代わりにイズンをヨツンヘイムに連れて来いと神々を脅迫した。イズンは不死のリンゴの所持者であり、シアチ達は神々の不死の秘訣であるこのリンゴを手に入れたかったのだ。イズンと不死のリンゴはシアチの元に運ばれた。不死のリンゴがないと神々であっても老いて死んでしまう。ことの原因になったロキは神々に脅され、自分の鷲に変身してリンゴを取り返しにいった。ロキはシアチをおびき出すことに成功し、そこで待っていた神々達によって焚かれた火で羽を燃やされて墜落し、トールに殺された。トールがシアチの巨大な目玉を点に放ったところ、それは星になったという。

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シアルル

Sialul

テュアナのアポロニウス(Apollonius of Tyana)が著したとされる「ヌクテメロン(Nuctemeron)」中の「魔術的黄道十二宮に類似する十二の象徴的な時間」を支配する守護霊(Genius)、いわゆる「時間の鬼神」の一人。7時の霊の一人で繁栄を司る。

7時の霊はシアルルをはじめとしてサブルス(滋養)、リブラビス(隠された黄金)、ミズギタリ(鷲)、カウスブ(蛇の魔法)、サリルス(扉の開放)、ヤゼル(愛の強要)、と7人がいる。7は魔術の勝利を象徴し、7時の霊もこれに関連する霊とされる。

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吉羅ジイラ

Jí-luó

中国の少数民族彝(イ)族の人々が信仰する精霊の一種。涼山彝族の人々にとって精霊とは、自然の中の石や棒などに宿っているものだが、このような精霊が各家庭の中にある祖先の遺品や家畜などに宿ると、吉羅といわれる特別な精霊になるという。吉羅は幸運を呼び、その家を守護するようになるとされる。したがってそれぞれの家で吉羅の宿っているものは違う。ある家では古びた鋤が吉羅であり、ある家では一頭の馬が吉羅とされたりする。宿るものが違うと吉羅は別々の力を帯びる。ある家の吉羅は争いごとを避けるのに役立ち、ある家の吉羅が農作の生産を促進する。また吉羅はあくまでもついているその家の守護精霊なので、他の家にとっては害になる場合もある。そのため彝族の人々はみな自分の家の吉羅を崇拝し、必要な時には祈りを捧げる。

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シヴァ

Siva, Shiva, Śiva

ヒンドゥー教、インド神話における主神格のひとつ。名前は「めでたい」、「吉祥」などを意味する。「リグ・ヴェーダ」に単数、ときに複数で現れるルドラ神が、民間信仰と混合し、ヒンドゥー教の最高神に発展したものとみられる。ヴィシュヌブラフマーと共に三大主神格を構成する神として知られている。神話ではヒマラヤ山中に住んで苦行している。4面3眼で頭に三日月をいただき、頭上に天から降下したガンジス川を受け、白い雄牛に乗る。獣の主として象皮をまとい、大蛇を帯とし、槍、弓、三叉の矛、斧を武器とする。彼はダクシャが神々を招いて祭祀を催したとき、自分だけ招かれないことを怒り、祭式の庭に乗り込んでこれを破壊し、鹿となって逃亡する「祭式」を弓を手にして追跡し神々を畏怖させた。さらにシヴァはヒマラヤ山脈のカイラーサ山で苦行していたとき、愛の神カーマが自分を誘惑しようとしたので、怒ってその第3の目より火を発してカーマを焼き殺した。このように怒りやすい反面、神々を請いを入れ、天空地の3カ所に金銀鉄の城を築いて神々を苦しめていた悪魔を退治して安堵させ、また乳海攪拌のおりに現れた猛毒カーラクータを恐れる神々のために進んでそれを飲み干し、その結果彼はのどを焼かれのどが青くなり、「ニーラカンタ(Nīlakaṇtha="青いのどを有する者")」の異名をとるに至った。他にも「ナタラージャ(Naṭarāja="舞踏の王")」、「マハーカーラ(Mahākāla="偉大な時間"ないし"偉大な黒")」、「トリヤンバカン(Tryambakam="三つ目の")」といった多くの別名がある。仏教に取り入られ、大自在天に帰化する。 また日本では「湿婆」と漢訳する。

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シウコアトル

Xiucóatl

アステカにおける火の蛇の女神。語義は「トルコ石の蛇」。「とぐろを巻いた火」であり、シウテクトリの配偶神でもある。善神の蛇の神であるケツァルコアトルとは対照的に、シウコアトルは火の力・乾燥・旱魃といった危険な暴力を象徴していた。アステカの神話では、トルコ石の蛇は日の出に東から昇る太陽を正午に天頂まで運ぶ役割を担っており、実際そのような蛇が二匹、1790年にテノチティトランで発見された巨大なアステカの「カレンダーストーン」の縁を囲んでいる。どうやら「トルコ石の蛇」はウィツィロポチトリテスカトリポカの装身具の一つだったらしい。

「終わりの無い」円周の姿(いわゆるウロボロスのような)をとる、シウコアトルの巨大な石造彫刻は、テノチティトランないしその境界線をかたどっている。また、これらシウコアトルの郡列はテノチティトランの北方の都市テナユカにある、巨大なピラミッド基壇にも刻まれている。

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シウテクトリ

Xiuhtecuhtli

メソアメリカにおける初期の神。ウエウエテオトルと同一視される。名前はアステカの言葉で「老いた者(長老)」ないし「老いた火の神」を指す。その起源は、メキシコ盆地の先古典期(前2500年−前300年頃)文化ないし、湾岸地域にいたオルメカ人たちの、例えば"第I神"にあると考えられている。また、オトミ族(メキシコ盆地の北方から西方の地域にすむチチメカ紀元の人々)の間では「オトンテクートリ(Otontecuhtli)」ないし「ショコトル(Xocotl)」と呼ばれていた。

通常老人の姿で登場し、しわ深い皮膚や歯の無い口を持ち、香炉を頭上に載せている。またアステカのセンポワリ(暦日)の9番目であるアトル(水)の守護神であり、「昼の神々」トナルテウクティンと「夜の神々」ヨワルテウクティンの一番目でもある。アステカの18ある歴月(ベインテーナ)の最初の月「イスカリ(復活の意)」に祀られるのはシウテクトリである。数字の「3」と関連し、メソアメリカの伝統的な日常具である火鉢石の象徴でもある。配偶神は火の蛇シウコアトルである。

シウテクトリはまた、古くから世界に存在する巨大な柱だとも考えられていた。その火は、ミクトラン(「我々の下にある場所」=自然死したものが行く地下世界の国)から始まり、蛇の女神コアトリクエの国と地上のあらゆる炉火を経て、トパン(「我々の上にあるもの」=神々の住む天界、ミクトラン(地下)、トラルティクパク(地上)に対応するところの天上のこと)にまで至ったという。全ての家々の火が消され、新しい火が灯されるトシウモルピリア(「年を束ねる」の意。現在の太陽の存続を保証するための盛大な再生儀式で52年ごとに行われる)を統括するのはシウテクトリであり、大地に吸収された死者の魂を助けたのも、この神であったとされる。

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ジェー

Jahi

ゾロアスター教における女悪魔。古くは「ジャヒー(Jahi)」と呼ばれ、「性悪女」ほどの意味だったが、ササン朝ペルシア時代に入り、「悪神アンラ・マンユのつくった中で最強の存在」とまで呼ばれるようになった。

善神アフラ・マズダはこの世界を創るとき、邪魔になるであろうアンラ・マンユを呪文で縛り上げてその隙に世界を創った。呪文が解けて世界を見たアンラ・マンユは、アフラ・マズダの創ったものの一つである人間を見て急に気落ちしてしまった。というものの人間がたいそう良く出来た種族だったからである。アンラ・マンユの配下の悪魔達は言葉巧みにアンラ・マンユを慰めようとしたが、彼は落ち込んだままだった。ただ、女悪魔ジェーだけは最後にアンラ・マンユを元気付けるのに成功したという。

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ジエイエン

Djieien

アメリカ北東部に住むネイティブアメリカンの一部族、セネカ族の伝説や信仰に登場する高さが180cmを超えるという巨大な怪物蜘蛛。巨大であるだけでなく、心臓を体から放して土の中に隠していたため不死身だった。しかし英雄「オセイグウェンダ(Othegwenhda)」はこの蜘蛛を殺すことに成功した。彼がジエイエンを狙って放った枝がそれ、幸運にも地面の下のジエイエンの心臓に刺さったからである。

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ジエーシュター

Jyeṣṭhā

シェズ

Shedu

バビロニア神話において、神殿を守っているとされる悪魔。暴力と破壊を好み、牡牛の姿をしているという。

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シェッカソー

Shekkasoh

ミャンマーの民間伝承に登場する木の精霊で樹木に住むナット達のこと。木の幹に宿るとされる。木に住むナットには他にもアカカソーブーマソーフミンなどがいる。

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地慧童子じえどうじ

Vasumatī

仏教において文殊菩薩の眷属とされる文殊八大童子、文殊五使者の一尊。サンスクリット名を「ヴァスマティー(Vasumatī)="大地"の意」といい、単に「地慧」と呼ばれるほか「地恵幢童子(ちえどうどうじ)」、「財慧童子(ざいえどうじ)」などの名でも呼ばれる。音写では「縛蘇摩底(ばそまてい)」と称し、また「文殊師利使者女(もんじゅしりししゃにょ)」と呼ぶこともある。文殊菩薩の富財の徳を司るとされ、胎蔵界曼荼羅の文殊院の南方(右側)中央より第四位に配される。その像容は黄色の身色の三髻の童子形で、左手に細葉の青蓮華を持ち、右手に独鈷戟のついた幢幡を持ち赤蓮華に座す姿で表される。
種字は「हि(hi)」、「लि(li)」、「कृ(kṛ)」、「ह्री(hrī)」、密号は「般若金剛(はんにゃこんごう)」、三昧耶形は幢、印相は左手を胎拳にして薬指と小指を立て親指で残りの二指の甲を抑えるもの、真言は「南麼三曼多勃馱喃(なうまくさまんだぼだなん)係娑麼囉壤那計覩(けいさんまらじゃなうけいと)莎訶(そわか)」(T0848)、「南麼三曼多勃馱喃係履(なうまくさまんだぼだなんきり)」(財慧童子真言・T0848)。

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ジェニー・グリーンティース

Jenny Greenteeth

イギリスのランカシャー地方の湖や川に棲んでいるという、人間に害をなす妖精の一種。名前は「緑の牙のジェニー」を意味する。姿ははっきりしていない。子供たちが水辺で遊んでいたり、船に乗っていたりすると、水の中からぬっと手を伸ばして、子供の足首をつかんで水の底まで引っ張り込むという。緑の水草が浮かんでいるような流れのない場所に棲んでおり、水草の陰から誰か獲物はいないかといつも様子をうかがっている。子供たちに水遊びの危険さを教えるための妖精だと考えられる。

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ジェフゥティ

Djehuty

シェミハザ

Shemihaza

旧約聖書外典「第1エノク書(エチオピア語写本)」において、人間の娘と結婚し神に反逆した天使の軍団「グリゴリ」においてアザゼルと共に統率者と目される天使。「セムヤザ(Semyaza, Semjaza)」、「セミアザ(Semiaza)」、「シェムハザイ(Shemhazai)」、「シャマズヤ(Shamazya)」、「シェムヤザ(Shemyaza)」、「アメズヤラク(Amezyarak)」、「アマザレク(Amazarec)」などの名でも呼ばれる。魔術師と薬草堀りに技術を伝えた。神に逆らった罪により七層の天界の牢獄として利用されている「第五天」に他のグリゴリと共に幽閉されている(天と地の間にぶら下げられオリオン座の星になったともされる)。元々シェミハザはこの反逆の計画に反対していたが、結局多数意見に押されて首謀者の一人となってしまったとされている。全ての悪意ある魔法使いの生みの親とされる。

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シェーラ

Sjöra

スウェーデンの民間伝承に登場する水の精。名前は「湖の精」といった意味。スウェーデン南部のスモーランド地方にあるヘルガ湖(Helgasjön)に棲むとされる。

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シエン

Thien

ミャンマーの民間伝承に登場するナットの一種。雨の精霊であり星に宿るという。雷雨はシエンたちの持つ武器がぶつかった時の閃光や音であり、雨はシエンが星から出てきて模擬戦争をすることで降るとされる。土地が干上がるとミャンマーの人々は村で綱引き競争を行うことで、シエンたちを刺激して雨を降らせようとした。

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ジェントル・アニー

Gentle Annie

スコットランドのクロマティー湾に棲む妖精、ハッグの一種。「ジェントル・アニス(Gentle Annis)」とも呼ばれる。青黒い顔の老婆の姿で知られており、凪の海に嵐を起こして船を沈めたり、予期せぬ大雨を降らしたりする。ジェントルは親切な、穏やかな、といった意味だが、このハッグにこの様なまるで逆の形容詞がついているのはひとえにこの恐ろしいハッグの気に触れないようにという配慮である。また、アニーの呼称はケルトの神ダヌからきたものと考えられている。

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シェンラ・オエカル

GShen-lha-od-dkar

チベットの土着宗教であるボン教における最も重要な神。名前は「白い光の知恵」を意味する。「シェン・ラー・オドカー」とも。すべての神々はシェンラ・オエカルから発現したとされる。まだ何も存在していなかった頃、まず黒と白の二つの光が現れた。さらに虹が出現し、そこから硬度、流動性、熱、運動、空間が生じると、これらの現象は混じりあい、巨大な宇宙卵の形をとった。そしてその卵から黒い光は病や疫病、苦痛、そして数々の悪魔を生み出し、白い光は喜び、繁栄、そして多くの神々を生み出した。神々と悪魔達はあらゆる種類の生き物を生み出し、それらの生き物は山や木や湖を埋め尽くした。

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シェン・ラブ

gShen-Rab

チベットのボン教において、古代より信仰されていた神。はるかな高みにいる創造神だとされていた。蓮華にのり右手に鍵十字の笏を持った姿で表される。

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シオカムイ

アイヌにおいて風邪を顕現体とするカムイ。他に病気を顕現体とするカムイにはカムイなどがいる。

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塩椎神

しおつちのかみ

日本記紀神話において「山幸彦(日子穂穂手見命)」の物語などに登場する神。「塩椎神」は古事記での表記。兄の大事にしていた釣り針をなくして途方にくれていた日子穂穂手見命の前にあらわれ事情を聞くと、海の神である綿津見神の住む海中の宮に行って事情を話せば助けてくれるかもしれないと助言し、小船を作ってそれに日子穂穂手見命を乗せ見送った神である。小船は勝手に良い潮流を選び、日子穂穂手見命は無事に綿津見神の宮に着くことが出来た。「しおつち」とは「潮の霊」を意味するため、塩椎神は潮と海路を司る神だと考えられる。

日本書紀では「塩土老翁(しおつつのおじ)」、「塩筒老翁(しおつつのおじ)」、「事勝国勝長狭(ことかつくにかつながさ)」などの名前で登場する。この他にも邇邇藝命や神武天皇(=神倭伊波礼毘古命)の前に現われて良い土地のある場所を教えるなど、やはり旅先案内人のような役割で登場する。また日本書紀では塩椎神を伊邪那岐命の御子神とする。

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塩の長司

しおのちょうじ

日本における怪異の一種。竹原春泉画、桃山人文の「絵本百物語」に見られる。この怪異は「塩の長司」と呼ばれるものの、怪異の原因は馬の祟りないし馬憑きであって長司はその被害者である。「塩の長次郎(しおのちょうじろう)」ともいう。むかし加賀国(現在の石川県)の小塩(おしお)の浦に「塩の長司」と呼ばれる者がいた。彼は馬をたくさん飼っていたが悪食で、死んだ馬を食べたりする人間だった。彼はついには馬肉食いたさに年老いた馬を殺して食べてしまったが、その晩に老馬が自分の喉元に食いつく夢を見た。それからというもの、馬を殺した時刻になると長司の口から馬の霊が入り込んで、腹の中で暴れ長司を苦しませるようになった。一日六時間ばかりこの状態が続き、100日たった頃には馬が重荷を背負うような姿で死んでしまったという。絵本百物語には仏説を含んだ教訓じみた話が多く収録されているが、この話も殺生を戒めるためのものだと考えられる。

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時間の鬼神

Spirits of Twelve Hours

テュアナのアポロニウス(Apollonius of Tyana)が著したとされる「ヌクテメロン(Nuctemeron="昼に照らされた夜"の意)」の中で語られる、「魔術的黄道十二宮に類似する十二の象徴的な時間」を各時間ごとに象徴する存在に対しての通称。時間の鬼神は一つの時間に7人ごといて、各々が色々な力を象徴しており、その時間ごとに力が最も強力になるという。

《時間の鬼神》
時間名称

1時

2時

3時

4時

5時

6時

7時

8時

9時

10時

11時

12時

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式神

しきがみ

「識神」とも書く。陰陽道において、陰陽師が使役するという鬼神。陰陽師の命令に従って変幻自在、不思議な術をなすという。広義には依代(よりしろ)や符によって呼び出された人や鬼といった形をとる、陰陽師が呼び出す使い魔のことを指すが、狭義には、安倍清明の使役したという「十二神将」と呼ばれた十二支の神々を呼び下ろしたものや、蘆屋道満の使役した10の猛禽の事を指す。

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敷次郎

しきじろう

愛媛県の別子銅山や岡山県の小泉鉛山などの鉱山に現れたという妖怪。敷とは鉱山内の一鉱区を指す。坑内に棲んでいる妖怪で普通の人のように見えるが顔は青く言葉が通じない。また発掘する時の音や水を汲む時の音に似た音をたてるという。人間に会うと食べ物をねだり、拒否すると噛み付くとされる。この噛み傷は普通の薬では治らず、打敷や袈裟の布切れを焼いた灰を油で練ったものを塗る必要があるとされた。

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志芸山津見神

しぎやまつみのかみ

日本記紀神話に登場する山神。「古事記」では「志芸山津見神」、「日本書紀」では「䨄山祗(しぎやまつみ)」と表記される。伊邪那岐命火之迦具土神を斬ったときに、火之迦具土神の斬られた体の一部分から生まれた神の一柱。古事記では左の手から、日本書紀では両足から生まれたとされる。名前の「シギ」には諸説あり、「繁木(しぎ)」と解釈して木の茂った山のこと、或いは鳥の「鷸(しぎ)」と解釈してシギの長い脚のように細長い山のことと考えられている。

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敷山主神

しきやまぬしのかみ

「古事記」において、大国主神の子孫の系譜が語られる段に記されている、名義不詳の神。青沼馬沼押比売の親神とされる。名前の「シキ」は不詳だが山を司る神と思われる。

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シギュン

Sigyn

ゲルマン神話に登場する女神。「シグン(Sigunn)」、「シグリュン(Sigryn)」とも呼ばれる。姦計の神ロキの誠実な二番目の妻で、ロキとの間にヴァーリナルヴィをもうけている。ロキは自分の行き過ぎた行いによってアサ神族の神々に拘禁され、岩に縛り付けられ上から絶えず蛇の滴らす毒を受け続ける、という拷問を受けることになったが、シギュンはその毒はロキにかからないように器で受け続けた。しかし、器はすぐ毒液でいっぱいになるため、シギュンはしばしば器に溜まった毒を捨てに行かなければならなかった。その度ロキは毒をまともに体に喰らい激しく苦しんだとされる。

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茈魚しぎょ

Zǐ-yú

中国の最古の地理書とされる「山海経」に言及されている怪魚。東山の東始山を流れる泚水に多く棲息しており、1つの首に10の体がついている、鮒のような魚だという。センキュウ(セリ科の多年草)のような匂いがする。この魚を食べると屁をしなくなるとされる。

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四凶しきょう

Si-xiong

中国において古代の尭帝の時代に、西方の地に住んでいたとされる四匹の凶悪な怪物たちのことを言う。すなわち、渾沌窮奇饕餮梼杌の四匹のこと。それぞれ偉大な帝王の血を引くものとされるが、生まれつき凶暴で、一説には舜帝の時代に流罪となり、西方から魑魅魍魎が侵入してくるのを防ぐ役割を与えられたという。しかし、もともと凶悪な彼らはすぐに役目を忘れ暴虐の限りを尽くし、このために四凶と呼ばれて恐れられたのだという。

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持経観音

じきょうかんのん

仏教において変化観音(→観音菩薩)の一種であり三十三観音の一尊。観音菩薩が姿を変えて人々を救済するという「三十三応現身」のうちの「声(聲)聞身(しょうもんしん=教えを受ける修行者としての姿)」にあたるもの。名前の通り右手に経を持ち、岩上に座した姿で描かれる。

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シクソープ

Sik Sawp

北ミャンマーのカチン族(中国で言う景頗(チンポー)族)の世界創世神話に見える女性の精霊。世界の始まりには、霧の塊が幾つも漂っていた。次に「中つ国(天穹のことだと考えられる)」が生成された。最後に神の力によって大地が固まった。大地にはありとあらゆる精霊が住んでいたが、長年立つ間に姿を消してしまった。そこで登場したのが女で天の精霊であるシクソープ、男で地の精霊であるクリプクロープである。この二人はチャヌムウォイシュンという精霊を生み、この二人から天地の万物が生まれたという。

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持国天じこくてん

Dhṛtarāṣṭra

仏教において四方を守護する四天王の一尊で東方の守護神として知られる。サンスクリット名では「ドゥリタラーシュトラ(Dhṛtarāṣṭra)」と呼ばれ、「持続する王国を持つ者」と訳せるところから持国天、「持国天王(じこくてんのう)」と称する。また東方を守護することから「東方天(とうほうてん)」と呼んだり、音写により「提頭頼吒(だいずらた)」、「提頭頼吒天(だいずらたてん)」とも称する。名前の通り国家安泰の功徳があるとされる。須弥山の東方中腹に住む。一般的に忿怒形に赤い体に鎧をまとい、右手に宝珠、左手に刀を持った姿で表される。帝釈天の眷属であり、自身は八部鬼衆の「乾闥婆(けんだつば)」と「毘舍闍(びしゃじゃ)」を従える。また十六善神にも名前が連ねられる。東方の守護神として、胎蔵界曼荼羅でも外金剛部院の東方(上)中央に配置される。

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持金剛鋒菩薩じこんごうほうぼさつ

Vajrāgradhāri

密教における菩薩の一尊。サンスクリット名を「ヴァジュラーグラダーリ(Vajrāgradhāri)」といい、ヴァジュラは「金剛」、アグラは「頂点」や「尖端」、ダーリは「持つこと」を意味するため、「持金剛鋒菩薩」、「金剛鋒持菩薩(こんごうほうじぼさつ)」などと意味訳するほか、「縛日羅蘖囉駄哩(ばじらぎゃらたり)」などと音写する。発心猛利の徳を司る菩薩として胎蔵界曼荼羅の金剛手院の第一列(むかって左側)東方(上方)より第五位に配される。赤肉色の身色で左手は拳を作り右手は金剛鋒を持ち、右に金剛使者、左に金剛鉤女菩薩が侍る。種字は「हूं(hūṃ)」、密号は「迅利金剛(しんりこんごう)」、三昧耶形は一鈷戟。

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持金剛利菩薩じこんごうりぼさつ

Vajrāgradharaka

密教における菩薩の一尊。サンスクリット名を「ヴァジュラーグラダラカ(Vajrāgradharaka)」といい、ヴァジュラは「金剛」、アグラは「頂点」や「尖端」、ダラカは「運ぶ者」を意味するため「持金剛利菩薩」と意味訳するほか、「嚩日囉仡囉駄囉句(ばじらきらだらく)」等と音写する。智慧猛利の徳を司る菩薩として胎蔵界曼荼羅の金剛手院第二列(中列)東方(上方)より第七位に配される。像容は肉色の身色で左手に三鈷杵、右手は数珠を持ち、左ひざを立て白蓮華に坐す。種字は「हूं(hūṃ)」、密号は「般若金剛(はんにゃこんごう)」、三昧耶形は三鈷杵、独鈷杵。

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シーサー

沖縄において、魔物を追い払う力があるとされている怪物。語源は「獅子」にあるとされている。フィーダマ(火の玉)を追い払う力があるとされており、家の屋根や門などにシーサーの姿をかたどった焼き物が置かれる。

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師子宮ししぐう

Siṃha

密教の宿曜道における十二宮の一つ。サンスクリット名を「シンハ(Siṃha)」といい、ライオン(獅子)を意味することから師子宮、「獅子宮(ししぐう)」、「師子神主(ししじんしゅ)」と訳すほか、音から「𦂅呵(しんか)」とも呼ばれる。西洋占星術における獅子座にあたり、期間としては立秋から処暑に至るまで(7月から8月にかけて)を指す。また二十七宿の星宿張宿翼宿にあたる。官位や財福を司るとされ、胎蔵界曼荼羅では北方(左側)に獅子の姿で描かれる。

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獅子吼菩薩ししくぼさつ

Siṃhanāda

仏教において二十五菩薩に数えられる菩薩の一尊。同訓で「師子吼菩薩」とも書く。サンスクリット名を「シンハナーダ(Siṃhanāda)」といい、「獅子の咆哮」を意味することから獅子吼菩薩、あるいは「獅子吼観音(ししくかんのん)」と称する。獅子吼は決定(けつじょう=信じて疑わないこと)の説法を表し、獅子の咆哮によってあらゆる獣たちが降伏するように、無畏の威徳を持つ菩薩だとされる。二十五菩薩中の尊容は、天衣をまとい手に楽器を持ち蓮の上に立つ、あるいは座った姿で表される。

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持地菩薩じじぼさつ

Dharaṇidhara

密教における菩薩の一尊。「持地」は「じち」とも読む。サンスクリット名を「ダラニダラ(Dharaṇidhara)」といい、「大地を支持する」、「大地を保持する」といった意味を持つため、意味訳で「持地菩薩」と称するほか「馱囉抳馱囉(だらにだら)」などと音写する。大地が全てを持するように一切の衆生を保持する仏尊であるという。胎蔵界曼荼羅の地蔵院の東方(上方)より第七位に配される。その像容は身色白黄色の菩薩形で左手に三股の載った蓮を持ち右手は膝の上で与願印を結び赤蓮華に座す姿で表される。
種字は「ङं(ṅaṃ)」、密号は「内修金剛(ないしゅうこんごう)」、「浄戒金剛(じょうかいこんごう)」、三昧耶形は蓮華上三鈷杵、宝上二首金剛(また両頭、一鈷中に五鈷杵のある形)、印相は金剛三昧耶印、真言は「南麼三曼多勃馱喃(なうまくさまんだぼだなん)達囉尼達囉(たらにたら)莎訶(そわか)」(T0848)、「南麼三曼多勃馱喃噞(なうまくさまんだぼだなんかん)」(持地真言・T0848)。

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觜宿ししゅく

Mṛgaśīrā

密教の宿曜道において二十八宿及び二十七宿の一つ。インドでは「ムリガシラス(Mṛgaśiras)="鹿の頭"の意」と呼ばれ、觜宿、「鹿首宿(ろくしゅしゅく)」、「烏頭天(うずてん)」と呼び、「沙哩誐失羅(しゃりがしら)」、「篾㗚伽尸囉(めちりかしら)」と音写する。また日本では「畢(とろきぼし)」の和名を当てる。胎蔵界曼荼羅では東方(上側)に配され、像容は右手を胸に当て左手に玉の乗った蓮華を持つ。

種字は「मृ(mṛ)」、「न(na)」、「रो(ro)」、真言は「唵麋梨伽尸羅莎呵(おんびりかしらそわか)」、三昧耶形は蓮上星。

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四攝菩薩

ししょうぼさつ

仏教において金剛界曼荼羅で、金剛界月輪の外塔四門に配される、一切衆生に対する化他(他人を導くこと)の徳を具象化した、金剛鉤菩薩(東)、金剛索菩薩(南)、金剛鎖菩薩(西)、金剛鈴菩薩(北)の四菩薩のこと。「四攝金剛(ししょうこんごう)」、「四攝衆(ししょうしゅう)」などとも呼ばれる。一切衆生に対して「鉤」をもって釣り、「索」をもって引き、「鎖」をもって縛し、「鈴」をもって喜ばす、という四つの攝("取り込む"の意)を表す。

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"豕身人面神"ししんじんめんしん

Shǐ shēn rén miàn shén

中国最古の地理書とされる「山海経」の中山経の中次七経において言及される山神のこと。苦山(休輿之山、鼓鍾之山、姑媱之山、苦山、堵山、放皋之山、大𩇵之山、半石之山、少室之山、泰室之山、講山、嬰梁之山、浮戲之山、少陘之山、太山、末山、役山、敏山、大騩之山の十九山)の神のうちの十六神(残り三神は"人面三首神")のことで、体は豕(いのしし)で頭部は人間といった姿をしているという。この神を祀るには毛(獣のこと)の牷(いけにえ)として一匹の羊の羞(ご馳走)を、嬰(儀式の一種)には一つの藻玉を用いてこれを埋めよと記されている。
※"豕身人面神"は固有名称を持たないための(サイト上の)便宜名です。

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静か餅

しずかもち

日本の栃木県芳賀郡益子町に伝わる吉凶の兆しとなる怪異。夜中にコツコツと遠くで餅の粉をはたくような音が聞こえるもの。音が近づいてくるように聞こえた場合は「搗きこまれた」と言って吉兆とし、逆に遠ざかっていくように聞こえた場合は「搗きだされた」と言って凶兆とする。「搗きこまれた」場合は蓑を後ろ手に出すと財産が手に入るとされている。

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ジズフ

Zizuph

テュアナのアポロニウス(Apollonius of Tyana)が著したとされる「ヌクテメロン(Nuctemeron)」中の「魔術的黄道十二宮に類似する十二の象徴的な時間」を支配する守護霊(Genius)、いわゆる「時間の鬼神」の一人。8時の霊の一人で神秘を司る。

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シスラウ

Sislau

テュアナのアポロニウス(Apollonius of Tyana)が著したとされる「ヌクテメロン(Nuctemeron)」中の「魔術的黄道十二宮に類似する十二の象徴的な時間」を支配する守護霊(Genius)、いわゆる「時間の鬼神」の一人。4時の霊の一人で毒を司る。

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シセラ

Sisera

テュアナのアポロニウス(Apollonius of Tyana)が著したとされる「ヌクテメロン(Nuctemeron)」中の「魔術的黄道十二宮に類似する十二の象徴的な時間」を支配する守護霊(Genius)、いわゆる「時間の鬼神」の一人。2時の霊の一人で欲望を司る。

2時の霊はシセラをはじめとした、トルウァトゥス(不和)、ニティブス(星)、ヒザルビン(海)、サクルフ(植物)、バグリス(度量と平衡)、ラベゼリン(成功)、 といった7人の霊で、「欲望」から「成功」に至るまでの障害や律するべきものを象徴している。

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䖪鼠しそ

Cí-shǔ

中国最古の地理書とされる「山海経」の東山経に記されている、凶兆とされる鳥。栒状山という山に棲んでいる鳥で、姿は鶏のような鳥だが、毛は鳥の羽毛ではなく鼠の毛のようだという。この鳥が国に現れると大旱魃が起こるのだとされる。

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地蔵王じぞうおう

Dì-cáng wàng

インドのクシティガルバの中国での呼び名。さらに日本に伝わると地蔵菩薩と呼ばれるようになった。

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地蔵菩薩じぞうぼさつ

Kṣṭitigarbha

菩薩の一。サンスクリット名を「クシティガルバ(Kṣitigarbha)」といい、音写では「 乞叉底蘗婆(きしゃていぎゃば)」等と記し、「地蔵」はこの意味訳で「大地を包蔵する」という意味を持っている。「地蔵尊(じぞうそん)」、「地蔵薩埵(じぞうさった)」などの名称でも呼ばれる。罪と業に苦しむ全ての生きる者を苦難から救い、幸せにすることを悲願としている。また、地獄に落ちた人々の身代わりになって痛みや苦しみを受けるという「代受苦」の菩薩とされている。仏教では生前の業が消えない限り命ある者は例外なく「六道(ろくどう/りくどう)」と呼ばれる六つの迷いの世界の間で生死を繰り返す。地蔵菩薩はこの六道全ての教化に務める菩薩とされ、各道ごとに名前の違う六種の地蔵菩薩が表れるとされる。これは総称して「六地蔵」と呼ばれる(下表参考。ただし文献によって各地蔵の名称は異なる)。俗信では小児の成長を守り、もし夭折した時はその死後を救い取ると信じられた。普通、頭をまるめた僧形で表され、宝珠を持ち、平安中期以降は宝珠と錫杖を持つ姿が一般化し、多く石に刻まれて路傍に建てられ、民衆とのつながりが強まった。その救いや霊験、形、置かれた地名などによって、親子地蔵、子安地蔵、腹帯地蔵、疣地蔵、火焼地蔵、雨降地蔵、とげぬき地蔵、延命地蔵などの名がある。

胎蔵界現図曼荼羅では菩薩形で赤い身色で赤蓮華座に坐し、右手に日輪を掲げ持ち、左手は宝幢幡の立った蓮華を握り腰に当てる姿で表される。二十五菩薩の一尊としては「無辺身菩薩(むへんしんぼさつ)」の名で右手に錫杖を持ち左手に宝珠を乗せ蓮の上に座る、あるいは立った姿で表される。
真言は「曩莫三滿多沒馱喃訶訶訶素怛弩娑嚩」(地蔵菩薩真言・T0852)、「曩莫三滿多沒馱喃訶訶訶尾娑麼曳娑嚩賀」(地藏菩薩真言・T0852)

《「覚禅鈔」における六地蔵》
No.六道尊名
01

地獄道

大定智悲地蔵菩薩
だいじょうちひじぞうぼさつ
02

餓鬼道

大徳清浄地蔵菩薩
だいとくしょうじょうじぞうぼさつ
03

畜生道

大光明地蔵菩薩
だいこうみょうじぞうぼさつ
04

修羅道

清浄無垢地蔵菩薩
しょうじょうむくじぞうぼさつ
05

人間道

大清浄地蔵菩薩
だいしょうじょうじぞうぼさつ
06

天上道

大堅固地蔵菩薩
だいけんごじぞうぼさつ
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子孫娘娘しそんにゃんにゃん

Zǐ-sūn niáng-niáng

中国道教において女性に子供を授けてくれる女神。道教では子授けから出産、そして幼児が健康に育つまでの過程の各段階を担当する複数の娘娘神がおり、このうち、子授けから出産までを担当するのが子孫娘娘、送子娘娘催生娘娘で、子孫娘娘はこの最初の過程である「子授け」を担当している。人々の願いを聞き届けて子宝を授ける女神であり、どんな子が生まれてくるかは子孫娘娘によって選定される。(参考:乳母娘娘

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シーター

Sita, Sītā

インド神話におおいて農耕や植生を司る女神。名前は「畦(あぜ)」を意味する。雷霆神インドラの配偶神であるが、叙事詩「ラーマーヤナ」ではヴィシュヌの化身(アヴァターラ)の一つである英雄ラーマの妻として登場している。

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次第高

しだいだか

日本の山口県、広島県、岡山県などの地域に伝わる妖怪。見越入道と同種の妖怪で、見上げれば見上げるほど身長が高くなるが、逆に見下げれば小さくなるとされる。

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下光比売命

したてるひめのみこと

シータラー

Shitala, Sitala, Śītlā

ベンガル(現在のインド北東部(ベンガル州)、バングラデシュ共和国周辺)における疱瘡(天然痘)の女神。病気をもたらす力と治す力をあわせ持ち、また日照りをもたらしたり、雨をもたらしたりする力を持つ。天然痘やはしかなどの吹き出物は、彼女が信者の身を「真珠で飾った」ものだから、ことさらに恐れる必要は無く、大抵はすぐに直ってしまう。村人が集まって祭りをすれば、女神は怒りを鎮め、疱瘡の粒々を引っ込めて恵みの雨粒を降らせてくれる。シータラー女神は土地ごとに姿が異なり、カーリーとそっくりだったり、ロバにまたがったホウキとざるを持った黒い肌の老女だったりする。「不可触民(アウトカースト=賎民)の女の身体とバラモン(カーストの最上位)の女の首」を持っていることもある。他に「シータラデーヴィー」、「マーリヤンマン」、「セリヤンマン」、「ジエシュター」、「シエーッタイ」などと呼ばれる疫病と治癒、旱魃と慈雨をもたらす女神が各所に土地神として祀られている。

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七倶胝仏母しちくていぶつも

Cundī

七人御先

しちにんみさき

日本の高知県を中心とした一帯に出現する死霊ないし妖怪。七人一組の集団で、海で死んだ者の亡霊だという。いつも七人で連れ立って歩き、これに出会ったものは死んでしまう。こうして死んだ者は後列に加わり、先頭の者は成仏することができる。つまり七人の数にはいつまでたっても変わりは無いのだという。

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七福神

しちふくじん

日本において七種類の現世利益を司るとされる、現代においてもポピュラーな七柱の民俗神。室町時代末に興ったもので、「仁王般若経」という大乗仏教の経典にある「七難即滅 七福即生」という語に基づいて生まれたとされている。この仁王般若経における「七福」とは「律義(悪行を行わないように未然に防いでくれること)」、「有福(富み栄えること)」、「威光(権威があること)」、「愛嬌」、「大量(度量が大きいこと)」、「人望」、「寿命」を示している。こうした仏教由来の神群ではあるが中国の道教に由来する神や日本独自の神を含み、なおかつ仏教由来の神も、日本の神と習合しているので民間的な神だといえる。七柱の内訳は下表の通りだが、寿老人は福禄寿と同一神だとして寿老人の代わりに吉祥天を含める場合もある。七福神を一同に集めて祀る社寺は少ないが、大黒天恵比寿はよく併称され、民家などで共に祀られることも多かった。また都市ごとにある七福神各神を祀った社寺を巡拝する、「七福神参り」の風習が今も伝わっている。

《七福神》
No.名前備考
01
恵比寿
えびす

商売繁盛、豊漁、豊作の神。事代主神と置き換えられることがある。

02
大黒天
だいこくてん

福徳と財宝を授ける。大国主神と習合している。

03
毘沙門天
びしゃもんてん

財宝冨貴の神。

04
弁財天
べんざいてん

福徳や財宝、知識と技芸の神。

05
布袋
ほてい

円満と福徳の神。

06
福禄寿
ふくろくじゅ

幸福、封禄、長寿の神。

07
寿老人
じゅろうじん

長寿の神。

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七歩蛇

しちふじゃ

日本に伝わる想像上の蛇。浅井了意著「伽婢子」によれば、京都東山に現われた蛇で、12cm程の体に、耳と足が生えた小さな竜のような姿をした蛇で、鱗が赤色、鱗の間は金色をしているという。この蛇に噛まれた人間はその毒で七歩と歩かぬうちに死んでしまうという。

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七仏薬師しちぶつやくし

台密において修じられた山門四箇大法の一つ、「七仏薬師法(しちぶつやくしほう)」において、薬師如来の分身・異名とも別の仏尊ともされる、薬師如来自体を含む七体の本尊のこと。チベット仏教では「メンラ・チェードゥン(sMan bla mched bdun, Menla ché dün)」("メンラ=薬師の七兄弟"の意)と呼ばれる。「七仏導師(しちぶつどうし)」、「薬師七佛(やくししちぶつ)」とも呼ばれる。また単に「七仏(しちぶつ)」と呼ばれる場合もある(多くは過去七佛のこと)。「薬師琉璃光如来本願功徳経」(T0450)を本拠とし、また「薬師琉璃光七仏本願功徳経」(T0451)には各尊の本願が、「薬師琉璃光王七仏本願功徳経念誦儀軌」(T0925)には尊容が説かれる。息災、増益、安産などを祈念するもので、二仏は八大願、続く四仏は四大願、最後の薬師瑠璃光如来が十二大願の合わせて四十四の大願を立てたという。また「仏説北斗七星延命経」(T1307)においては七星と七仏薬師を対応させ、本師を釈迦牟尼仏とする(尊名に相違が見られる)。この釈迦牟尼仏を加えた八尊を「薬師八仏(やくしはちぶつ)」と呼ぶ場合もある。

七仏薬師
No.名称備考
01
善名称吉祥王如来
ぜんみょうしょうきちじょうおうにょらい

東方の四殑伽河沙を経た先にある光勝浄土の教主。
光勝大願を発する。
北斗七星貪狼星に対応する。

02
宝月智厳光音自在王如来
ほうげつちごんこうおんじざいおうにょらい

東方の五殑伽河沙を経た先にある妙宝浄土の教主。
妙宝大願を発する。
北斗七星の巨門星に対応する。

03
金色宝光妙行成就如来
こんじきほうこうみょうぎょうじょうじゅにょらい

東方の六殑伽河沙を経た先にある円満香積浄土の教主。
円満香積大願を発する。
北斗七星の禄存星に対応する。

04
無憂最勝吉祥如来
むゆうさいしょうきちじょうにょらい

東方の七殑伽河沙を経た先にある無憂浄土の教主。
無憂大願を発する。
北斗七星の文曲星に対応する。

05
法海雷音如来
ほうかいらいおんにょらい

東方の八殑伽河沙を経た先にある法幢浄土の教主。
法幢大願を発する。
北斗七星の廉貞星に対応する。

06
法海勝慧遊戲神通如来
ほうかいしょうえゆうげじんつうにょらい

東方の九殑伽河沙を経た先にある善住宝海浄土の教主。
善住宝海大願を発する。
北斗七星の武曲星に対応する。

07
薬師瑠璃光如来(→薬師如来
やくしるりこうにょらい

東方の十殑伽河沙を経た先にある浄琉璃浄土の教主。
浄琉璃大願を発する。
北斗七星の破軍星に対応する。

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七本鮫

しちほんざめ

日本の三重県鳥羽市にある、亀島(現在の神島)に伝わる祟りをもたらすという鮫。「七本鮫」とは七匹の鮫のことで、毎年夏のある期間になると七匹の鮫が伊勢参りをするために湾を上ってくるので、この期間は海に船を出したり、漁をしたりしてはいけないとされていた。昔、ある漁師が子供とともに漁をしていたところ、鮫に息子をさらわれてしまった。漁師は復讐のために七本鮫の一匹を捕まえ、腹を裂いてみたが中には何もなかった。その数日後に起きた突風で多くの漁師が水死し、七本鮫を殺した漁師の家も、謝罪の供養をしたが没落したという。このため七本鮫は今は6匹しかいないとされる。

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シチマジムン

奄美群島の喜界島において、南山で死んだ女性がマジムンになったもののことをいう。「ヒチマジムン」とも呼ばれる。夜に天を地を繋ぐ黒煙の大円柱の姿で現れる。また沖縄の国東地方では形の見えない雲か風のような姿だとされ、板戸の節穴から出入りし、人間を連れ出して迷わすという。出会った人間に対して白飯は赤飯を振舞うが、実のところ白飯は波飛沫、赤飯は赤土である。シチマジムンに会った時はオトコは褌、女はメーチャ(下袴)を頭にかぶるとわざわいを受けなくて済むとされる。沖縄の中城村においてはシチマジムンは黒い棹のような背の高い妖怪であるとされる。これに出会って見上げていると、見越入道のようにどんどん高くなり、最後にはいきなり倒れてきて見上げていた人のシー(性)を奪うとされる。このシチマジムンは豚に化けたりもするとされる。「シチチリ、シチチリ」と唱えて根元を刈る真似をすると追い払えるとされる。さらに沖縄東風平町では龕が悪霊と化した大きな黒い魔物で、与那城では天まで届いたり、地面一杯に広がったりするとても恐ろしマジムンだとされている。

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七母女天しちもにょてん

Sapta-mātṝkā

インド神話のサプタ・マートリカーが仏教に取り込まれたもの。「七母天(しちもてん)」、「焔摩七母(えんましちも)」とも呼ばれる。仏教では閻魔ないし大黒天の眷属とされ、「大黒天神法」に見える。また「大楽経顕義抄」や「大毘盧遮那成仏経疏」には「七摩怛里(しちまたり)」の名で紹介されている(摩怛里はマトーリカーを音より漢訳したもの)。サプタ・マートリカーを元としているものの、諸尊の内訳はサプタ・マートリカーとは若干異なっている。真言は「南麼三曼多勃馱喃(なうまくさまんだぼだなん)忙怛𭌆弊(まいたりびゃく)莎訶(そわか)」(七母等眞言・T0848)。

《七母女天》
No.漢名梵名備考
01
左問拏
さもんだ
チャームンダー
Cāmuṇḍā

ヤマの配偶神。

02
嬌吠哩
きょうはいり
カウベリー
Kauberī

クベーラの配偶神。

03
吠瑟拏微
はいしちなみ
ヴァイシュナヴィー
Vaiṣṇavī

ヴィシュヌの配偶神。

04
嬌麼哩
きょうまり
カウマーリー
Kaumārī

クマーラ(=スカンダ)の配偶神。

05
印捺里
いんだり
インドラーニー
Indrānī

インドラの配偶神。

06
勞捺里
ろうだり
ラウドリー
Raudrī

ルドラの配偶神。

07
末羅呬弭
まらしみ
ヴァーラーヒー
Vārāhī

ヴァラーハの配偶神。

※「大黒天神法」(T1287)に拠る。

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室宿しつしゅく

Pūrvabhadrapadā

密教の宿曜道において二十八宿及び二十七宿の一つ。インドでは「プールヴァバドラパダー(Pūrvabhadrapadā)」といい、プールヴァは「最初の」、バドラは「祝福された」、パダは「足」を意味する。漢訳では室宿、「前賢迹宿(ぜんけんしゃくしゅく)」、「賢鉤天(けんこうてん)」、「前跋達羅鉢柁(ぜんばだらはだ)」、「富盧婆伽陀羅跛陀(ふるばかだらばだ)」と称する。また日本では「室(はついぼし)」の和名を当てる。胎蔵界曼荼羅では北方(左側)に配され、像容は右手に赤珠の乗った蓮を持つ。

種字は「भ(bha)」、「रो(ro)」、真言は「唵発羅縛迦陀羅跛陀莎呵(おんほつらばかだらばだそわか)」、三昧耶形は蓮上星。

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シッタ

Shitta

ミャンマーのカチン族が信仰するナットの一種。月の精霊であるとされ、他の意地悪いナット達と異なり良い精霊だとされた。

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質多羅童子しったらどうじ

Citrā

仏教において文殊菩薩の眷属とされる文殊八大童子、文殊五使者の一尊。サンスクリット名を「チトラー(Citrā)="斑"の意」といい、単に「質多羅(しったら)」と呼ばれるほか「質怛羅童子(しったらどうじ)」、「救護慧童子(くごえどうじ)」、「救護慧菩薩(くごえぼさつ)」などの名前でも呼ばれる。また「文殊師利使者(もんじゅしりししゃ)」と呼ぶこともある。文殊菩薩の普現色身の徳を司るとされ、胎蔵界曼荼羅の文殊院の南方(右側)中央より第三位に配される。その像容は黄色の身色の三髻の童子形で、月輪のその上に星型がついた杖の右手に持ち、左手は細葉の青蓮華を持った姿で表される。
種字は「मि(mi)」、「लि(li)」、「मृ(mṛ)」、密号は「吉祥金剛(きちじょうこんごう)」、三昧耶形は杖、印相は右手を拳にして親指を立てたもの、真言は「南麼三曼多勃馱喃弭履(なうまくさまんだぼだなんみり)」(質多童子真言・T0848)。「曩莫三滿多沒馱喃弭𭌆質多羅娑嚩賀」(質怛囉童子真言・T0852)

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地天じてん

Prtivī

仏教を守護するの一人で、大地を司るとされる仏尊。インド神話における大地の女神プリティヴィーが仏教に取り込まれたものだが、仏教では男神とすることも多い。また「ダラニーダラ(Dharaṇīdhara)」の訳である「堅牢地神(けんろうじじん)」は同体とされる。ほかに「堅牢地天(けんろうじてん)」、「堅牢地祇(けんろうじぎ)」、「堅牢神(けんろうじん)」、「地神(じじん)」などと称する。十二天の一尊として上方(天)を守護する梵天に対応して下方(地)を守護する仏尊とされる。地水火風の四大天にも数えられる。一般的に菩薩形で、花を盛った器を持った姿で表される。胎蔵界曼荼羅では外金剛部院(最外院)の東方(上方)に妃である「堅牢神后(けんろうじんこう)」とともに配される。
種字は「वि(vi)」、「पृ(pṛ)」、三昧耶形は宝瓶、鉢、印相は瓶印、真言は「南麼三曼多勃馱喃(なうまくさまんだぼだなん)鉢㗚體梅曳莎訶(はりちびえいそわか)」(地神真言・T0848)、「南麼三曼多勃馱喃微(なうまくさまんだぼだなんび)」(地神真言・T0848)、「唵部欠(おんぼくけん)」(地神持次第真言・T0852)。

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四天王してんのう

Cātur-mahā-rāja-kāyika

仏教において帝釈天の眷属とされる、四方位を守る四尊の護法神のこと。「四王(しおう)」、「四大天王(しだいてんのう)」、「四天王衆(してんのうしゅう)」、「四大王衆(しだいおうしゅう)」、「護世四王(ごせしおう)」、「護世四天王(ごせしてんのう)」などの名でも呼ばれる。またサンスクリットでは「チャートゥル・マハーラージャ・カーイカ(Cātur-mahā-rāja-kāyika)」と言い、これは「四人の大王の衆」と言った意味。帝釈天は須弥山の頂上にある「忉利天(とうりてん)」(三十三天とも。サンスクリットではトラヤシュトリムシャ(Trayas-triṃśa))に住んでいるが、四天王はその下、須弥山中腹の「四大王天(しだいおうてん)」(四大王衆天とも。サンスクリットではチャートゥルマハーラージカ(Cāturmaārājika))の四方位にそれぞれ住んでいる。八部衆(→天竜八部)あるいは八部鬼衆を率いて仏法と国家、および仏法に帰依する人々を守護するとされる。インドでは貴人の姿で表現されたが、中国や日本では忿怒形の甲冑を身に着けた武人の姿で表現される。

《四天王と方位》
方位漢名梵名
東方
持国天
じこくてん
ドゥリタラーシュトラ
Dhṛtarāṣṭra
南方
増長天
ぞうじょうてん
ヴィルーダカ
Virūḍhaka
西方
広目天
こうもくてん
ヴィルーパークシャ
Virūpākṣa
北方
毘沙門天
びしゃもんてん
ヴァイシュラヴァナ
Vaiśravaṇa
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梓潼帝君しどうていくん

Zĭ-tóng dì-jūn

シトゥンペカムイ

アイヌにおいて、黒ギツネを顕現体とするカムイ。一般のキタキツネのカムイであるチロンヌカムイと違って、格の高いカムイとされており、岬を守護し、人間に危機の到来を告げるとされた。

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指徳童子

しとくどうじ

仏教において不動明王の眷属である八大童子の一尊。「忠徳(ちゅうとく)」とも称する。「八大童子秘要法品」に拠れば、羯磨部より生じ、前三部(金剛部、宝部、蓮華部)の徳を指し、果を得るが故に指徳童子という。夜叉に似た姿で三目で甲冑を纏い、右手に三叉鋒、左手に羯磨金剛を持った姿で表される。

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シードッグ

Sea dog

イギリスの紋章に見られる混成動物。イギリスに生息していた「タルボット・ハウンド」と呼ばれる犬種に似ているが全身を魚の鱗に覆われていて、足には水かきがある。また背中に背びれが生えている場合が多い。ラムパント(後ろ足で立った状態)で描かれる。イギリスと特に海と関係のある地域の紋章として多く採用されている。

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ジドラ

Jidra

中世ヨーロッパの旅行家によって伝えられた奇妙な生物。獣であるが植物のように根が生えておりそこから移動できないとされる。周囲のものは動物、植物問わずに飲み込んでしまうので近づくのは危険とされたが、ジドラの骨は高値で取引されるため、危険を承知で取ろうとする者も多かったという。ジドラを殺すには根を矢で射とおして切断する方法が効果的とされ、切断に伴いジドラはマンドラゴラのように金切り声を上げるという。

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シトラリクエ

Citlalícue

「シトラリニクエ(Citlalinicue)」とも呼ばれる。語義はナワトル語(トルテカとアステカの共通語)で「星のスカートをはいている者」ないし、「星のスカートの女神」。アステカで天の川の呼称のひとつであった。アステカにおいて13層からなる宇宙の3番目を支配する女神であり、シトラトナ=オメテクートリの女性配偶神であり、オメテオトルの女性的側面をあらわす。

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シナー

Sinaa

ブラジル、シング川流域に住むフルナ族における猫科動物の始祖。巨大なジャガーである父親と人間の母親の間に生まれたとされる。シナーは老いることがなく、「自分の皮を袋のように頭の上に引き上げ(しわを無くすということ)」、沐浴のたびに若さを取り戻したとされる(脱皮して若返っていたともされる)。シナーが空を支えている巨大な先割れの棒を取り去ったとき、世界が終わると考えられている。

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志那都比古神

しなつひこのかみ

日本記紀神話に登場する風の男神。「志那(しな)」は「風長(しな)」ないし」「息長(しな)」を意味し、風の神と解されている。「古事記」において伊邪那岐命伊邪那美命の神産みの際に生まれた三十五神の一柱で18番目に数えられる。

「日本書紀」の一書には「級長津彦命(しなつひこのみこと)」の名がみえるが、これは「級長戸辺命(しなとべのみこと)」の別名としてであり、この神は志那都比古神に対応する女性神志那都比売神と考えられている。この両神は奈良県にある竜田神社の社伝に見え、同神社の祭神である天御柱神及び国御柱神と同一視される。

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視肉しにく

Shì-ròu

中国最古の地理書とされる「山海経」において各所(下表参考)にいるとされる生物。山海経中の「海内南経」に付けられた郭璞の注によれば、「聚肉(じゅにく/Jù-ròu])」ともいい、その姿は目が二つついた牛の肝のようであり、また食べても尽きることなく、元通りに再生するという。太歳と共に、「肉芝」や「肉霊芝」などと呼ばれる霊芝の一形態や粘菌類の一種を指したものと思われる。

《山海経中の視肉の出現場所》
場所
海外南経狄山
海外北経平丘
海外東経𨲠
海内西経開明北
開明南
大荒東経東北海外
大荒南経蒼梧之野
岳山
蓋猶の山の東
南類之山
大荒西経沃之野
大荒北経附禺之山
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シノンゴル

Sinonggol

フィリピンのルソン島における創造神、世界の始まりの時の女王。この世の初め世界は無く、死者の共同体だけがあって、そこには女王シノンゴルとその弟スアラ(Sualla)がいた。スアラは薬草に詳しく神々の病を治していた。シノンゴルは宮殿の東にあった丈夫な八体の木の像から一つを選んで人間の男にした。その肋骨から人間の女を作った。二人は夫婦となり息子のメンタララン(Mentalalan)が生まれた。しかし男は女王シノンゴルの怒りを買い病気になってしまった。そこでスアラは男に薬を与えたが、この薬は誰も触れてはならないものだった。何故なら触れると息子が死ぬからだ。しかしシノンゴルは弟スアラより優れていることを示すために悪魔に命じてこの薬に触れさせた。当然メンタラランは死んだが、シノンゴルがメンタラランの死体と土を別世界に送って埋めると、そこが盛り上がり、木々が生えて世界が出来たという。

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シハイ

Sihai

インドネシアのニアス島で信じられている、根源となった原初の生命。世界樹はシハイの心臓から生え、右目は太陽に、左眼は月になったという。

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芝右衛門狸

しばえもんだぬき

日本における高名な化け狸の一人。兵庫の淡路島を根城としていた。太三郎狸(屋島の禿狸)と変化の腕勝負をしたとき、太三郎狸は合戦の様子を丸ごと変化の術で再現した。これに対して芝右衛門狸は大名行列を変化で再現、そのあまりの見事さに太三郎狸は大声で褒め称えたが、実はこれは本物の大名行列で、太三郎狸は無礼者として武士にその場まで刺し殺されてしまったという(太三郎狸の死因について他にも説がある)。芝右衛門狸は芝居が大好きでよく人の姿に化けて芝居興行を見にいっていたが、徳島県まで出かけていって芝居見物をしていたときに犬に正体を看破されて噛み殺されてしまった。ただ芝右衛門狸の変化の術は見事で、死んでからも半月以上は解けなかったという。この頃ちょうど徳島の金長狸六右衛門狸との間で合戦があったので、芝右衛門狸はどちらかの加勢をしに徳島まで来ていたのではないか、とされている。現在、洲本八幡神社に芝居の神様として祀られている。

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シパクナ

Zipacnà

マヤの一部族キチェ・マヤ族に伝わる聖書「ポポル・ヴフ(Popol Vuh)」に見える巨魔。名前は「大地を積み上げる者」を意味する。ヴクブ・カキシュの長男で、いつも山を背もたれにして眠っていた程の巨人だという。自分で山を作り上げてはその山を相手に球技をして遊んだという。弟のカブラカンと一緒に父子3人で人間を支配しようとしたため、フンアフプーとイシュバランケという双子の神によって滅ぼされた。シパクナは蟹が大好物で、偽物の蟹でおびき出され、山崩れを引き起こされて殺されたという。シパクナは死んだ後、大きな岩となったという。

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芝天

しばてん

日本の高知県や徳島県に伝わる妖怪。「芝天狗(しばてんぐ)」、「坊主子(ぼうずこ)」とも呼ばれ、天狗の仲間とも言われる。川原などに棲んでいて小さな子供のような姿で現れる。河童のように相撲が大好きで、人間を見かけると相撲を挑んでくるが、これに付き合うと一晩中相撲をとらされる羽目に合うという。

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四波羅蜜菩薩

しはらみつぼさつ

密教において、金剛界曼荼羅で大日如来の前後左右に配される女形の4尊の菩薩。大日如来の傍で侍女の役を務め、四仏を出生する役目を担う。或いは四仏の女性的部分の独立として生じ、十六菩薩を出生するとも解される。いずれにしても大日如来の生じる力、生み出す力を神格化したものと考えられる。

《四波羅蜜菩薩》
方位名称出生する如来
東方(下)
金剛波羅蜜菩薩
こんごうはらみつぼさつ
阿閦如来
あしゅくにょらい
南方(右)
宝波羅蜜菩薩
ほうはらみつぼさつ
宝生如来
ほうしょうにょらい
西方(上)
法波羅蜜菩薩
ほうはらみつぼさつ
無量寿如来
むりょうじゅにょらい
北方(左)
業波羅蜜菩薩
ごうはらみつぼさつ
不空成就如来
ふくうじょうじゅにょらい
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シービショップ

Sea Bishop

中世ヨーロッパで海に棲むとされた、怪物の一種。シービショップは「海の司教」という意味だが、シーモンク(海の修道僧)とも呼ばれる。顔は人間のようで頭はつるつるしており、身体はウロコで覆われているが修道士の服を着ているようであり、腕の代わりにヒレがあり、下半身は尾になっているという。

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シビレー

Sibille

イタリアのアブルッツォ地方に伝わる妖精の一種。女の妖精で菩提樹や神聖な木立に棲んでおり、宝を守るという。

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シフ

Sif

あるいは「シヴ」。北欧神話においてアサ神族の女神でトールの妻。「髪美しき神」と呼ばれ、まばゆく輝く黄金の髪を持っていたが、ロキの気まぐれによりその髪を眠っている間に刈り込まれてしまう。それにトールは怒り、その怒りに怯えたロキは、「イーヴァルディの息子達」と呼ばれるドヴェルグの細工師に魔法の金糸を紡がせてシフに弁償した。この金糸はシフの頭に根付き、本物の髪と同じように伸び、シフは前にも増して美しくなったという。黄金が神格化された存在と考えられることが多く、またその金色の髪は豊かに実った穀物の穂と関連付けられ、豊穣神としても信仰された。性的には奔放で、トールではない男との間にウルを産んだり、またロキとも関係があったという。トールとの間には憤怒の神モージを産んでいる。

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弐負じふ

Èr fù

「貳負」とも表記する。中国における天神の一人で、臣下であるとともに猰窳を殺した。「山海経」の海内北経には弐負の尸(なきがら)のある場所について、戈を持った「大行伯」という神(のいる場所)の東で「鬼国」(→)の南にあるとしており、死んでいる(処刑された)ことが分かる。またその姿について人面蛇身であることも記されている。

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ジフィウス

Ziphius

中世ヨーロッパの旅行記に登場する巨大魚。頭の部分以外は普通の魚だが、頭はフクロウに似てグロテスクな目、楔形のくちばしを持っている。北方に棲んでおり船を襲うという。

オラウス・マグヌスの描いた海図「カルタ・マリナ(Carta Marina)」にはアザラシを飲み込もうとするジフィウスが描かれている。

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ジブリール

Jibril

イスラム教における四大天使の一人(他はアズラーイール、イスラーフィール、ミーカール)。ユダヤ教、キリスト教におけるガブリエル。「誠実なる霊」、「我等が霊」、「聖なる霊」などと称される。イスラム教の教祖ムハンマド(マホメット)に唯一神アラの言葉を啓示し聖典「コーラン」を書かせた。ガブリエルは女性的な天使とされるがジブリールは男の天使とされる。ジブリールは一般的に王冠をかぶり背に翼の生えた男として描かれる。場合によっては背中ではなく腕と胴体の間に翼が生えている姿で描かれることもある。イスラム教でもっと重要な神殿である、メッカのカーバにおいて北東の角に立っているとされる。

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シーヘアー

Sea Hare

「海ウサギ」の意。中世ヨーロッパの民間信仰において信じられた海の怪物。魚の体にウサギの足、耳、頭がついていて、耳の後ろにヒレがあるという。陸のウサギと異なり獰猛で、手の届くところにいる生物は見境なく襲い掛かり、獲物と見るや遠くても執拗に追いかけてくるという。当時の旅行家や船乗り達が自分の手柄を誇張した話から生まれたと考えられる。また当時は海や空にも陸のものと似た生物が住んでいると信じられていた。

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シペ・ギアルモ

Sipe Gialmo

チベットの土着宗教であるボン教における三つ目を持つ女神。「世界の女王」と称される。

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シペ・トテック

Xipe Totec

赤のテスカトリポカであり東を司る神。語義は「生皮を剥がれた者」。メソアメリカ中央部における春と農耕の神、種子と播種の守護神で、アステカの20あるセンポワリ(暦日)の15番目である「クアウートリ(Cuauhutli=ワシ)」の守護神であり、365日暦上では「1のオセロトル(Océlotl="ジャガー")」を呼称とする。ウィツィロポチトリケツァルコアトル、テスカトリポカら3神と共にオメテオトルオメシワトルオメテクートリ)から生まれた。

シペ・トテックはメソアメリカ南部高地が起源だと思われるが、最終的には古代オルメカの"第IV神"ないし、ゲレロ南部高地のヨペ人の信仰から派生したものだと考えられる。シペ・トテックは特にトラスカラ族に崇拝されたが、南部高地のサポテカ人やミシュテカ人、さらにはタラスコでも崇められた。後古典後期(後1250年−後1521年頃)になって初めて少数のマヤの都市国家に信仰されるようになり、オシュキントクやチチェン・イツァ、マヤパンなどの都市にその神像が登場する。金属細工の職人技の伝統が長く保たれていたオアハカ=ゲレロの南部高地では金属細工職人と石細工職人の守護神とされた。

シペ・トテックは苦悩と密接に関連した神でもあり、毎年の豊作を保証する見返りとして多くの人身供犠を要求した。アステカの18暦日の3番目の月である春の祭礼「トラカシペウアリストリ(Tlacaxipehualiztli)」では、この神の恩恵を乞う様々な儀式が執り行われたが、そこで生贄は皮を剥がれ、神官達がその皮を身にまとって踊りを踊ったという。これらの生贄はいずれもショチヤオヨトル(Xochiyaóyotl=生贄を補給するための儀礼的な戦い)の戦争捕虜で、供犠の目的は古代の豊穣儀礼を喚起するところにあった。

シペ・トテックの神像と仮面は、肥満した体に加えて、犠牲者から剥いで伸ばした皮をまとった神官として描かれる。二重になった唇やくぼんだ目であらわされるのも皮をかぶっていることによるものである。全身像の場合は、皮が背中で紐によって結ばれている。こうした生贄から剥いだ皮を着るという行為は、皮が植物の種皮を連想させることで、植物生命の再生を象徴していた。また、皮を剥ぐという行為は植物が毎年自己犠牲として皮を落として再生することと同様の意味を持っていた。生贄の死との関連で、シペ・トテックは地下世界ミクトランとも結び付けられ、そこから転じて天然痘や疫病、皮膚病やかさぶた、失明といった恐ろしい病を人間に送り込む神とも考えられた。

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慈発生菩薩じほっしょうぼさつ

Maitryabhyudgata, Mahāmaitryabhyudgata

密教における菩薩の一尊。サンスクリット名は「マハーマイトリヤビユドガタ(Mahāmaitryabhyudgata)」ないし「マイトリヤビユドガタ(Maitryabhyudgata)」といい、「(大いなる)慈心の現れ」といった意味があり、「慈発生菩薩」、「大慈生菩薩(だいじしょうぼさつ)」、「慈生菩薩(じしょうぼさつ)」、「大慈起菩薩(だいじきぼさつ)」、「大慈出超菩薩(だいじしゅっちょうぼさつ)」などと意味訳される。衆生が自ずから慈悲を発生されることを象徴する仏尊だとされる。胎蔵界曼荼羅の除蓋障院において東方(上方)から第七位(あるいは第六位)に配される。その像容は肉色の身色で左手に無憂樹を持ち右手は膝の上に掌を上にして置き、開敷蓮華に座す姿で表される。
種字は「ठं(ṭhaṃ)」、密号は「悲念金剛(ひねんこんごう)」、「慈念金剛(じねんこんごう)」、三昧耶形は未敷蓮華・梵篋、印相は右手の親指と人差し指を相捻して花を取るような形にするものなど、真言は「南麼三曼多勃馱喃(なうまくさまんだ)娑嚩制妬嗢蘗(そわせいとどぎゃた)莎訶(そわか)」、「南麼三曼多勃馱喃諂(なうまくさまんだぼだなんたん)」(「大慈生真言・T848)。

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シマーブー

奄美群島喜界島において、夜間に出歩く人の行手にあらわれて通行を妨げるとされる妖怪。枝を広げた木のような姿をしているという。

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シミエル

Simiel

キリスト教において7人の大天使(→アークエンジェル)である御前の七天使の一人とされる天使。「カムエル(Chamuel)→カマエル」の別名とされるほか、「セミベル(Semibel)」とも呼ばれる。745年のローマ公会議において崇拝を禁じられた、いわゆる「拒絶された天使」の一人。

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持妙金剛菩薩じみょうこんごうぼさつ

Suvajradhara

密教における菩薩の一尊。サンスクリット名を「スヴァジュラダラ(Suvajradhara)」といい、「ス(Su-)」は「高潔な」、「優れた」、ヴァジュラダラは「金剛を擁する」といった意味があり、「持妙金剛菩薩」、「妙執金剛(みょうしゅうこんごう)」などと意味訳するほか、「蘇縛日羅駄洛(そばじらだら)」などと音写される。仏の内証を司る仏尊とされ、胎蔵界曼荼羅金剛手院の第三行(向かって右側)東方(上方)より第六位に配される。その像容は白肉色の身色で左手は忿怒三鈷杵を膝上で持ち右手は親指と人差し指の間に独鈷を立てて持ち赤蓮華に坐す。
種字は「हूं(hūṃ)」、密号は「微細金剛(みさいこんごう)」、三昧耶形は羯磨鎮壇(忿怒三鈷杵に似た両頭三叉戟)。

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シムキエル

Simkiel

旧約聖書偽典「第3エノク書(ヘブライ語エノク書)」に言及される天使。神が指名した破壊の天使たちの長であり、人間を浄化し、裁きを執行する役目を担っているとされる。

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シームルグ

Sīmurgh

イラン(ペルシア)神話に登場する神鳥。「セーンムルヴ(Sēnmurw)」とも呼ばれる。ゾロアスター教聖典「アヴェスター」では「サエーナ・メレゴー(meregho saêno)」と呼ばれており、この綴りを入れ替えたサエーノ・メレゴーが変化してシームルグ、或いはセーンムルヴと呼ばれるようになったと思われる。ゾロアスター教神話では、太古の海に二本の木があり、そのうちの一本に棲んでいたとされる。この木の上でシームルグが羽ばたくと種子が撒き散らされ、その種子からあらゆる種類の植物が生えたという。しかしこの木(サエーナの木と呼ばれる)は、後に悪魔(ダエーワ)たちによって打ち倒され、枯れてしまったので、シームルグはエルブルス山という人間が登ることもできないような東方の仙境に居を移したという。また学識豊かで人語を放す鳥だともされる。ワシや鷹のような猛禽類の鳥の姿をしていたとされる。

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シャ

Shā

中国少数民族の侗(トン)族が信奉する悪鬼の中で最高の悪神で、すべての悪鬼たちを支配する。それゆえ悪をなすこともあるが、悪を取り締まることも出来ると考えられ、侗族の人々に恭しく祀られている。

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シャイターン

Saitan, Shaitan, Shaitant

アラビアにおいてのサタン。ただしイスラム圏ではシャイターンは固有の悪魔の名前ではなく、「悪魔」を意味する普通名詞として使われる。また、アラビアにおいて精霊(→ジン)を5つの階層に分けたうち、その第3階層をシャイターンと呼ぶこともある。

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ジャヴェルザハルセス

Javelzaharses

アルメニアの民間伝承において結婚を司る精霊。名前は「永遠の花嫁」を意味する。無垢な花嫁の化身で、姿は人間に見えないが、結婚の衣装や祭礼など準備に関わっている精霊とされる。

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シャウシュカ

Shaushka

フリ人における重要な神であり、バビロニアにおいて愛欲、大地、戦を司る女神であるイシュタルと同一の神だと思われる。イシュタルと同じく、シャウシュカも二人の女にかしずかれ、ライオンの上に立った翼のある姿で描かれる。二重の性格を持つ神とされていたと思われる。

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趙独羅尼巴ジャオドゥルオニパ

Zhào-dú-luó-nì-bā

中国の少数民族、崩竜(デェアン)族における独自の小乗仏教上で、生命を司るとされる神。天神困士戛の配下の神。

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シャカクィエル

Shachaqiel

旧約聖書偽典「第3エノク書(ヘブライ語エノク書)」などに言及される天使。「シャハキエル(Shahakiel)」とも呼ばれる。第4天を支配する天使の一人であり、また神の御座に仕える御前の七天使の一人とされ、ラビの教説に登場する天使の位階「シャハキム(Shahakim)」の起源となったとされる。

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娑伽羅竜王しゃがらりゅうおう

Sāgara-nāga-rāja

仏教における八大竜王の第三尊。名前はサンスクリット名「サーガラ(Sāgara=海)」を音より漢訳したもの。「娑伽羅」は「さがら」とも読む。また「裟竭羅龍王(さかつらりゅうおう)」(妙法蓮華経)、「娑羯羅龍王(しゃからりゅうおう)」、「沙竭(しゃかつ)」、「沙竭龍王(しゃかつりゅうおう)」などさまざまに音写されるほか、意味訳より「海龍王(かいりゅうおう)」、「大海竜王(たいかいりゅうおう)」とも呼ばれる。降雨を祈祷する「請雨法」の本尊であり、また千手観音の眷属である二十八部衆の一尊としても知られる。

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シャカル

Shachar

フェニキア神話において、最高神であるエルの子供で夜明けの金星の神。「シャール(Shar)」、「シャヒル」とも呼ばれる。シャリムとは異母兄弟。古代都市ウガリトで発見されたラム・シャムラ文献によれば、エルが海に向けて波のように手を伸ばすと、2人の妻が受胎し、シャカルとシャリムが生まれたのだと述べられている。一般にはこの2人の妻とは、アシェラとアナトだと考えられている。

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社宮司神

しゃぐうじしん

日本の関東、東海地方における咽喉、風邪の神。「しゃぐうじ」という発音に類してこれに当てる漢字はとても多く存在しており、例えば「左宮司(さぐうじ)」、「社宮神(しゃぐうしん)」、「左久神(さくのかみ)」、「作神(さくがみ)」、「左口神(さぐちしん)」、「社口神(しゃぐちしん)」、「社子の神(しゃごのかみ)」、「左護神(さごのかみ)」、「釈護神(しゃごしん)」、「遮愚儞(しゃぐうじ)」、「遮軍神(しゃぐんしん)」、「三宮神(さんぐうしん)」、「三狐神(さぐじ)」、「山護神(さんごしん)」、「射軍子(しゃぐんし)」、「杓子(しゃくし)」、「赤口神(しゃっこうしん)」、「蛇口神(じゃぐちしん)」といった具合である。この内の幾つかは社宮司神を根元とするのではない別の神だろうが(三狐神や赤口神など)、名前の類似のせいで同化したと思われる。社宮司神が元々なんの神だったのかということについては幾つかの説が有る。石神を起源としているのではないかという説、社を改修などの折りに一時遷宮した時の跡地に祭られた神ではないかという説、諏訪大社の神官である守屋氏の氏神みしゃぐじ神を起源とするのではないかという説、太閤検地で使われた尺竿を埋めて祭ったものではないかという説などである。

社宮司神は御杓文字様と同一視され咽喉の病気や風邪を治すとされる。蛇苦止明神は社宮司神の変形だとする説がある。

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杓子岩

しゃくしいわ

日本の岡山県にある怪石。いわゆる「夜泣き石」や「呼ばわり石」などに代表される声や怪音を出す石のバリエーションの一つ。苫田郡鏡野町の旧箱神社の近くにあった石のことで、夜中に近くを通りかかると「味噌をくれ」と声がして岩から杓子が出てきたとされる。柳田國男は元々は味噌を供えて祀っていた石だったのではないかと推測している。

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蛇苦止明神

じゃくしみょうじん

日本の鎌倉にある妙本寺に祀られる祟り神。鎌倉時代、比企能員(ひきよしかず)を筆頭とする比企氏と北条政子を筆頭とする北条氏は源頼家の後継問題で対立していた。源頼家と比企能員は組んで北条氏を討伐しようとしたが失敗し、比企一族は自害(能員は謀殺された)、頼家は幽閉、後に殺されるに至った。能員の娘であった若狭局(わかさのつぼね)もこの時自害したが、その霊は大蛇となり北条政村の娘に取り憑き、痛苦を与えつづけたという。蛇苦止明神はこの若狭局の霊を鎮める為に祀られたものだと伝えられている。また一方で蛇苦止は梵語の「荼枳尼(だきに)」の転訛とも社宮司神の変形だとも考えられる。

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石神

しゃくじん

日本の石を顕現体、御神体とする神霊に対する総称。「石神」で「いしがみ」、「さぐじ」、「しゃくじ」とも読む。また「御石神(おしゃごじ)」とも呼ばれる。安産、良縁、治療、子育てなど色々な効験があるとされるが、特に耳だれ、耳の病を治す神とされることが多い。石神とされる石は特徴ある形をした石であることが多い。その発音から社宮司神御杓文字様蛇苦止明神などと混同される。江戸時代には高輪にあった釈地大明神を「御石神(おしゃごじ)」と呼んだこともあった。

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シャクラ

Shakura

北米平原に住むネイティブアメリカン、ポーニー族の太陽神。バンドによっては「サクル(Sakuru)」とも呼ばれる。神の意である「アティウス(Atiusu)」を付けて、「シャクラ・アティウス」とも呼ばれる。ポーニー族はシャクラのために、「サン・ダンス」と呼ばれる儀式を行いシャクラを祀る。最高神であるティラウ・アティウスにより、東に立つことによって西に立つ月(パー)を照らし、昼の間大地(地球)に光と暖かさを与えるように命じられた。また、シャクラとパーの間に生まれた「最初の息子」はトカパレカタ(宵の明星)とオパリカタ(明けの明星)の間に生まれた「最初の娘」と一緒になり、この二人はポーニー族の始祖となり、人間の精神を構成する二つの要素、つまり感情と知性は、シャクラとパーによって与えられたものだとされる。

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寂留明菩薩じゃくるみょうぼさつ

Śivāvahavidyā

密教における菩薩の一尊。サンスクリット名を「シヴァーヴァハヴィドヤー(Śivāvahavidyā)」といい、「寂留明菩薩」と意味訳するほか「尸縛縛哥尾地也(しばばかびちや)」などと音写する。寂静心留の徳を有するため寂留明菩薩と称するという。胎蔵界曼荼羅の第二列(中列)東方(上方)より第七位に列される。その像容は赤肉色で左手四指を屈し人差し指を立てて胸に当て、右手は外に向かって高く挙げ天衣を着け左ひざを立てて赤蓮華に座す姿で表される。種字は「स(sa)」(両部曼荼羅私抄)。密号は「定光金剛(じょうこうこんごう)」、三昧耶形は開敷蓮華。

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"蛇身人面神"じゃしんじんめんしん

Shé shēn rén miàn shén

中国最古の地理書とされる「山海経」の北山経の北次二経において言及される山神のこと。管涔之山をはじめとして少陽之山、縣雍之山、狐岐之山、白沙山、爾是之山、狂山、諸餘之山、敦頭之山、鈎吾之山、北嚻之山、梁渠之山、姑灌之山、湖灌之山、洹山、敦題之山に至る十六山(文中では十七山)の神とされる。身体は蛇、頭は人間という姿をしている。祀る時の毛(獣のこと)は雄鶏と彘(いのこ)を用い、一つの璧、一つの珪を埋め、糈(神饌)は用いないという。北山経の北次二経のこの神は「其神皆蛇身人面」、首経の山神は「其神皆人面蛇身」(→"人面蛇身神") と記されており、書き方は異なるが姿は一緒である。
※"蛇身人面神"は固有名称を持たないための(サイト上の)便宜名です。

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灑水観音

しゃすいかんのん

仏教において変化観音(→観音菩薩)の一種であり三十三観音の一尊。妙法蓮華経の一節「若為大水所漂/称其名号即得浅(=もし大水により漂うことになっても、その名を称すれば浅い場所にたどり着ける)」に対応する仏尊とされる。右手に灑杖、左手に灑水器を以った姿で描かれる。

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シャスティ

Sasti, Shashthi, Ṣaṣṭhī

インドにおいて家庭と子供を守護するとされる女神。名前は「第6」を意味し、各月の6日目に礼拝が行われる。元々はインド東部で民間信仰されていた神と考えられている。豊穣と多産の神でもあり、不妊の者でも子供を授けるとして、特に女性に信仰されている。

多くは猫に乗った女性の姿で表されるが、膝に子供を乗せたり、子供を連れていたりする女性、あるいは黒猫そのものなど、いろいろな姿で表される。元々はスカンダの養母の一人とされたが、今ではスカンダの妻の一人である「デーバセーナ(Devacena)」と同一視されている。

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ジャタ

Djata

インドネシアのボルネオ島のダヤク族における女神。ただし一部の伝承では男性神とするときもある。人間界の下にある下界のバスフン・ブラウ(金が積もった川)に住み、ワニを眷属とする。また創造神話では上界の金の山という所に住んでいる。正式名称を「バウイン・ジャタ・バラワグ・ブラウ(Bawin djata balawang bulau="金の戸口を持つ女のジャタ")」といい、「金の戸口」とは女性器をさす。また本来の名前を「タンボン(水蛇)」といい、水蛇の姿で人々の前に現れるという。マハタラ(→ティガグ)の敵対者とされるが、両者は時に両性具有の神であり、子供達がそこから世界にやってくるという、世界樹そのものであるとも言われる。マハタラと違ってイスラム教時代、キリスト教時代に改名されなかったのは、両宗教ともにこの女神を認めていなかったからである。

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シャタビシャー

Śatabhiṣā

シャチー

Śacī

インド神話の雷霆神インドラの神妃で、ジャヤンタの母。ヴェーダ文献ではインドラーニーの名で呼ばれるが、叙事詩やプラーナ聖典ではシャチーと呼ばれ、悪鬼プローマンの娘であるともされる。

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吉雅奇ジヤチ

Jíyăqí

中国の少数民族、鄂温克(エヴェンキ)族の牧畜地帯の大神で、家畜の繁殖を主催する牧畜の神。家畜を売るときは家畜の尾の剛毛を切り取って吉雅奇の神像にかけるなど、吉雅奇の加護を願う様々な習慣があるという。

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シャックス

Shax

ユダヤの魔神でソロモン王に封印された72柱の魔神の一人(→"ソロモンの霊")。「スコックス(Scox)」、「チャックス(Chax)」とも呼ばれる。「掠奪公」と称される。召還されると大きなコウノトリの姿であらわれる。しわがれた聞き取りにくい声で話す。人の耳、口、目を使えなくしたり、隠された財宝を探し出したりしてくれる。また地獄で使うためによく馬や金を略奪する。またシャックスはいいなりになる振りをして騙す癖があるので召還者は注意しなければならないとされる。

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シャッグ・フォール

Shag Foal

イングランド東部のリンカンシャー地方に伝わる奇怪な獣。「タッター・フォール(Tatter Foal)」とも呼ばれる。大きな目の毛むくじゃらの馬、あるいはロバの姿をしていて、暗い道で一人で歩いている人間の背後から出現して追いかけてくる。ただ追いかけてくるだけで危害は加えてこないとされる。

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ジャック・フロスト

Jack Frost

イングランドの民間伝承に登場する寒さを具現化する精霊。名前は「霜男」の意。ツララの垂れた真っ白な衣装をきているとされる。寒い日に外に出ると手足の先を寒さでかじかみ鼻頭が赤くなるが、これはジャック・フロストの仕業である。ジャック・フロストの触れたところには霜柱がつくとされている。

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シャトクィエル

Shatqiel

ユダヤ・キリスト教における天使の一人。旧約聖書偽典「第3エノク書(ヘブライ語エノク書)」などにその名が見える。御前の七天使の候補の一人であり、天の第五層を護衛する天使達の支配者とされる。

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シャナイシュチャラ

Śanaiścara, Shanaishcara

シャニ

Śani, Sani, Shani

ヒンズー教において土星と土曜を司る神で、「ナヴァグラハ(Navagraha=九曜)」の一人。「シャナイシュチャラ(Śanaiścara)」の名でも知られる。名前は「ゆっくり動く」を語源としており、これは土星の公転周期が30年であることに起因すると考えられる。太陽神スーリヤの息子であり、影と闇を司る女神「チャーヤー(Chāyā)」を妻とする。シャニは危険な神とされ、ガネーシャはシャニと目が合っただけで頭が火に包まれてしまい、頭がなくなったガネーシャはブラフマーにより止む無く象(→アイラーヴァタ)の頭が首に据えられた、という話がある。

仏教ではシャナイシュチャラを「賒乃以室折囉(しゃないいしせつら)」(宿曜経)と音写され、胎蔵界曼荼羅の外金剛部院(最外院)西方に配置される。

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ジャーネ

Giane

イタリアのサルデーニャ島に伝わる妖精。洞窟に棲んでいて、身長は1.5m程、長髪で鋼の爪を持ち、垂れ下がった乳を肩に担ぎ、毛皮を纏い動物の皮で作ったとんがり帽子をかぶっているという。ジャーネは織物に長けており、普段は糸紡ぎや刺繍をして暮らしている。彼らの服を一片でも手に入れること出来た人間は幸福になれるという。

しかしジャーネの性格は決して温厚でも人間に好意的でもなく、その美しい歌声を利用して洞窟に人間をおびき寄せ殺して血をすするとされる。しかも人肉を食べたジャーネは三日後には新しいジャーネを生み、背負ったかごに入れて連れ歩くとされる。またジャーネは占いにも長けており、小さな糸車をポケットに入れて持ち歩いており、糸車をじっと見ることで未来を予測できるという。現在に伝わる伝承では昔よりその姿は小さくなっているとされ、農夫の格好で洞窟で暮らしているともされる。

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シャフィエル

Shaphiel

旧約聖書偽典「第3エノク書(ヘブライ語エノク書)」などに登場する天使。7つの天のうちの第3天である「シェハクィム(Shehaqim)」をバラディエルとともに支配する天使とされる(二人に代わりアナヘルが支配天使とされる場合もある)。

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シャマシュ

Shamash

バビロニア神話における太陽の神。父親はシンとされる。全てを見通す神であり、それゆえ正義と占いの神とも考えられた。シュメール人にはウトゥという名で呼ばれていた。王座に座っている姿で描かれる。シャマシュの放つ光線はあらゆる不正と欺瞞を暴き、またシャマシュの目は未来さえも見通す千里眼として機能したという。このため占い師はシャマシュにお伺いを立てて未来を占った。毎朝、蠍の男が巨大なマーシュ山の門を開き、シャマシュは天空への旅を始める。やがて夕暮れが近づいてくるともう一つの大きな山の方へと馬車を進め、また門へと消える。夜の間シャマシュは地下を旅し、最初の門まで戻ってくる。アヤという名の妻がおり、二人の間には公正の神キトゥ、法と正義の神ミシャルの二人の子供がいる。

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シャマンティン

Shamantin

西アフリカに住むトゥイ族やアシャンティ族の信じる女の森の精霊。「スラーマン(Srahman)」とも呼ばれる。ササボンサムの妻で、ササボンサムと同じように森の中やパンヤの木の下に住んでいる。夫と同様に木にぶら下がって下を通る不注意な人間を足ですくい上げて捕まえるが、夫のように危害を加えるわけではなく、森の中の動物や草木について教えてくれる。

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シャムシエル

Shamsiel, Shamshiel

旧約聖書外典「第1エノク書」や「ゾハル」などに言及される天使ないし堕天使の一人。名前は「日の光」あるいは「神の強き太陽」を意味する。「シムシエル(Shimshiel)」、「シャムシェル(Shamshel)」、「シャシエル(Shashiel)などの名前でも呼ばれるほか、サムサペエルとも同一視される。神に反逆した200人の堕天使(→グリゴリ)の長の一人とされ、人間に「太陽の宮」を教えるという罪を犯した。

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シャメン・エク

Xamen Ek

「ア・チクン・エク(Ah Chicum Ek)」とも呼ばれるマヤの旅人を守護する神。「シャメン」は北を意味するので、シャメン・エクは北極星の神だと考えられている。コデックス(絵文書)では、しばしば「黒い戦王」ないし「黒い星」エク・チュアとの関連が見られる。獅子鼻で頭に黒い斑点がある姿をしており、それゆえに猿面神とよく関連付けられ、マヤの暦日チュエン(猿の意)を司っている。その象形文字も猿の頭に似ており、「北」を示す。善神であり、チャクとともに現れる場合が多い。北極星としては、商人の守護神かつ案内人であり、マヤ人の遠距離交易網はマヤ文明において非常に重要であった。マヤ文化圏のユカタンやペテンと緯度を同じくする地域では、北極星は一年中位置を変えない星であった。そうしたシャメン・エクのとりなしと恩恵を求めるため、沿道に特別に設けられた祭壇に祈祷とポンの香(コパルの木の樹脂)が捧げられた。アステカのヤカテクートリに相当する。

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ジャヨーシュニーシャチャクラヴァルティ

Jayoṣṇīṣacakravarti

シャラタンガ

Xaratanga

メソアメリカ西部、メキシコ盆地の北部と西部のパツクアロ湖畔(現ミチョアカン州)の住んでいたタラスコ人が信じていた月の女神。クリカウェリクェラウァペリの娘。新月、発芽、豊穣、成長そして食料を司る。古くからの豊穣の女神であり、その信仰の中心地はパツクアロ湖に浮かぶハラクアロ島だった。

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ジャリ

Jarri

ヒッタイトにおける疫病とペストの神。疫病が発生すると人々はジャリに救いを求める。またジャリは「弓の王」という名称で呼ばれることもあり、王たちを戦いにおいて助けるともいう。

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シャリム

Shalim

フェニキア神話において、最高神であるエルの子供で夕暮れの金星の神。「シャルム」とも。シャカルとは異母兄弟。古代都市ウガリトで発見されたラム・シャムラ文献によれば、エルが海に向けて波のように手を伸ばすと、2人の妻が受胎し、シャカルとシャリムが生まれたのだと述べられている。

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ジャール

Djall

ドレキ(Dreqi)」とともにアルバニア語で「悪魔」を意味する言葉。ラテン語の「ディアボラス(diabolus)」(→ディアボロス)に相当する。

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ジャーン

Jān

ミャンマーの民間伝承に登場するナットの一種。空中に住んでいるとされる。

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ジャン

Zhǎn

中国の少数民族、門巴(メンパ)族の原始宗教おいて三位のうち中位の神。他に高位の括、低位のがおり、いずれの人間に協力的な神で、白い姿をしているという。

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ジャンカウ

Junkgowa

オーストラリア北部、アーネムランド半島のウランパ族が信じる夢の時代(ドリーム・タイム)の存在。二人の姉妹ととその兄弟三人の五人をジャンカウと呼ぶ。宇宙に存在するすべてのものをドゥワ半族に属するものとイリチャ半族に属するものとに分けたとされる。ジャンカウは東のドゥワのブルラグ島から、明けの明星をたどって「太陽の地(現在のポート・ブラッドショー)」に上陸した。そこから野山を越えて歩く途中、姉妹が「ヤムイモ棒のランガ」(ランガとは杖であり男性のシンボル)を大地に突き刺すと水が沸いた。「木のランガ」を突き刺すと木々が芽吹いた。兄弟達は絶えず姉妹を妊娠させ、子宮から次々と子供を取り出した。最後に、ランガの紋章と「ナラ」の儀式を教えた。

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じゃんじゃん火

じゃんじゃんび

日本の奈良県で見られるという怪火。ジャンジャンという音を伴うのでこういう。奈良市白毫寺町にある白毫寺と大安寺の墓地から火の玉が一つずつ出てきて夫婦川のあたりで落ち合いもつれ合って飛ぶのだという。これは心中した男女を別々の墓地に埋葬してしまったからだという。また郡山市の佐保川に架かっている打ち合い橋にもじゃんじゃん火の伝説が残っていて、毎年6月7日になると東西から人魂が飛んできてジャンジャンと音を立てながら飛び回ったという。

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ジャンペルヤン

'Jam dpal dbyangs, Jampelyang

チベット仏教における「マンジュシュリー(Mañjuśrī)」=文殊菩薩。語義は「柔らかな幸運の音」でマンジュシュリーを訳したもの。略して「ジャンペル('Jam dpal, Jampel)」とも呼ばれる。仏部、蓮華部、金剛部のうち仏部を代表する仏尊として、蓮華部の「チェンレーシク・チャクシパ(sPyan ras gzigs phyag bzhi pa, Chenré zikchak zhipa)」、金剛部の「チャクナドルジェ(phyag na rdo rje, chakna dorjé)=金剛手菩薩(→執金剛神)」とともに「リクスム・グンポ(Rigs gsum dgon po, Riksum gönpo)=三部主尊」と称し祀られる。この仏尊は日本における五髻文殊(ごけいもんじゅ)と同じく、「अ(a)」、「र(ra)」、「प(pa)」、「च(ca)」、「न(na)」の五字を真言とする。赤金色の身色で、五つの髻を戴き、右手で剣を振り上げ、左手に般若経の梵篋が乗った青蓮華を持った姿で表される。

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シャンルン

Zhang blon, Zhanglön

チベット仏教における独自のチョキョン(=護法神=ダルマパーラ)の一種。「シャン(Zhang)」は(国王を補佐した)外戚、「ルン(Blon, Lön)」は大臣を意味し、総じて国王の補佐をした者達の総称だが、護法尊の名前ともなった。シャンルンはヌージン(=ヤクシャ)に属するとされ、このため「ヌージン・シャンルン(gNod sbyin zhang blon, Nöjin zhanglön)=ヤクシャのシャンルン」とも呼ばれた。また別名を「デプン・ドルジェドゥートゥル(sDe dpon rdo rje bdud 'dul, Depön dorjé dündül)="金剛伏魔将軍"の意」といい、魔(ドゥー)、つまりマーラを調伏するヤクシャの大将だと考えられた。また一方でサンギャメンラ(=薬師如来)のタンカに眷属として描かれたため、病魔を退散させる護法神としても信仰されたことが分かる。

青黒色の身色で忿怒相の一面二臂像で、右手に宝珠か宝棒、左手に宝で満たされた瓶を持ち、供物をささげる妃の「ドルジェ・クントゥプマ(rDo rje kun 'grub ma, Dorjé kündrupma)」を伴う姿で描かれる。またドルジェ・クントゥプマのほかにも「ノルラ(Nor lha, Norlha)」、「グンポ(mGon po, Gönpo)」、「ドクネー('bRog gnas, dRok né)」、ヴァイシュラヴァナ(=毘沙門天)などの眷属を伴う場合がある。

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シュー

Shu

エジプト神話における大気の神で、ヘリオポリスの九柱神の一柱。神名は「空虚」、「上に支える者」などの意と考えられている。妻である湿気の女神テフヌトとともに、最高神レー(ラー・アトゥム)の口から唾もしくはくしゃみとして誕生した。エジプト神話の最初の夫婦神であり、後に二人はゲブヌートをもうける。レーのもとを去ったシューとテフヌトは、時が始まったその瞬間から存在するという深淵ヌンの探検に出かけた。レーは子供を失ったと思い大いに悲しんだ。それだけに2人が戻ってきた時の喜びはひとしおで、レーの目からうれし泣きの涙がほとばしり出たという。そしてこの涙から最初の人間が誕生した。シューはレーを継いで王位に上るが、アペプの崇拝者達の攻撃に絶えず悩まされていたためうんざりし、自分は天界に退き、息子のゲブに王位を譲った。

大気、ひいては大気の動きによってできる風や雲を司る神であり、さらに聴覚と人間の思考を支配する神であるとされる。レーは太陽の舟に乗って毎日空を回ることによって大地を照らすとされるが、レーに生命の息吹を吹き込んで毎日レーを生き返らせるのはシューの役目だとされた。大地であるゲブと天であるヌートを引き離す形で、大地(ゲブ)の上に立ち天(ヌート)を支えた姿で三神一体で描かれることが多い。トゥトアンクアメン王墓から発見された象牙製の枕はこのイメージを継承して枕を支えるシューの像がデザインされている。シューは普通人間の姿で描かれるが、レーの息子としてライオンの頭部を持つ獣頭人身の姿で描かれることもある。

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しゅ

Zhū

中国の伝承に登場する怪鳥。古代の地理書「山海経」の南山経によれば、柜山という山に棲んでいる鳶(とび)のような姿の鳥で、人の手のような足を持ち。「鴸」と(つまり自分の名で)鳴く。この鳥が現われると追放される人が増えるという。鴸は人面で描かれることもある。これは今でいうフクロウの一種だったと思われる。

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蚩尤しゆう

Chī-yóu

古代中国において、炎帝神農の息子ないし子孫、あるいは宰相だったとされる神。中国最古の地理書とされる「山海経」の大荒東経などに言及される。神農が天帝を退いた後、次の王位を黄帝と争ったが敗北し、首を刎ねられた。荒ぶる神であり、悪霊や雨師、風伯を配下とする。戦争や全ての武器を発明した神であり、また踊りの名手ともされている。四つの眼と六本の腕、角のついた鉄の頭、槍のように鋭い髪の毛をもった姿で表され、その脚は牛の脚であったという。同じ姿をした兄弟が80人程いたとされている。また砂と石ばかりを食べるともされる。

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十一面観音じゅういちめんかんのん

Ekādaśamukhāvalokiteśvara

仏教において数多く存在する変化観音(→観音菩薩)の一つで、千手観音とともに最初期に考えられた一尊。「十一面観世音菩薩(じゅういちめんかんぜおんぼさつ)」、「十一面観自在菩薩(じゅういちめんかんじざいぼさつ)」、「大光普照観音(だいこうふしょうかんのん)」とも呼ばれる。インド起源の変化観音の中でも古くから信仰されていたものの一つであり、名前はサンスクリットの「エーカーダシャムカーヴァローキテーシュヴァラ(Ekādaśamukhāvalokiteśvara)=略して"エーカーダシャムカ"とも」を訳したもの。音写では「翳迦娜舎目佉(えいかだしゃもくきゃ)」と記される。

本来の頭の上に冠のように小さな顔が集まってついているが、本来の頭を入れて十一面のものと、入れないで十一面のものとがある。この十一の顔は菩薩面、忿怒面、笑面などの様々な表情をとっており、仏の救済が多面的に行われることを象徴しているとされる。詳しくは十の面は因位(菩薩が修行中に経る中途の段階)の十地(じっち)を、残る最頂部の一面が仏果(修行が成就し成仏した結果)を象徴するものであるとか、三面ずつ九面で大空・大智・大悲の徳を、最頂部の一面で悲智不二の徳を表すなど、様々な解釈が説かれる。六観音の一人として阿修羅道の教化にあたるほか、胎蔵界曼荼羅では蘇悉地院の北方(左側)の中央から四番目に配される。

種字は「ह्रीः(hrīḥ)」、「क(ka)」、「स(sa)」、密号は「変異金剛(へんいこんごう)」、「慈愍金剛(じみんこんごう)」、三昧耶形は軍持、開蓮華、印相は金剛合掌して指先を深く交えるもの、真言は「唵摩訶迦嚧尼伽莎訶(おんまかきゃろにきゃそわか)」。

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十王

じゅうおう

中国、日本における独自の仏教信仰において、地獄にいるとされる死者を裁く十人の神の総称。中国の「預修十王生七経」や日本の「地蔵菩薩発心因縁十王経」に説かれる十王の固有名のほとんどは中国のものでありなおかつ道教と混交している。日本では閻羅王、つまり閻魔が、中国では泰山王つまり泰山府君がとくに重要視される。十王は一般的に笏を持ち道服を着た忿怒形であらわされる。

《『玉歴至宝鈔』における十王》
No.名称説明誕生日

第一殿

秦広王
しんこうおう

人間の寿命と吉凶を決める。

2月1日

第二殿

楚江王
そこうおう

活大地獄、剥衣亭、寒泳地獄の主。

3月1日

第三殿

宋帝王
そうていおう

黒縄大地獄の主。

2月8日

第四殿

五官王
ごかんおう

合大地獄、血の池地獄の主。

2月18日

第五殿

閻羅王
えんらおう

叫喚地獄の主。

1月8日

第六殿

卞城王
べんじょうおう

大叫喚地獄、枉死城の主。

3月8日

第七殿

泰山王
たいざんおう

熱悩地獄の主。

3月27日

第八殿

都市王
としおう

大熱悩地獄の主。

4月1日

第九殿

平等王
びょうどうおう

阿鼻大地獄の主。

4月8日

第十殿

転輪王
てんりんおう

各地獄からの報告で転生の区別を決める。

4月8日

※誕生日は旧暦によるもの。

《『仏説地蔵菩薩発心因縁十王経』における十王》
忌日名称本地

初七日

秦広大王太素好広真君
しんこうだいおうたいそこうこうしんくん
不動明王
ふどうみょうおう

二七日

初江大王陰徳定体真君
しょこうだいおういんとくていたいしんくん
釈迦如来
しゃかにょらい

三七日

宋帝大王洞明善静真君
そうていだいおうどうみょうぜんせいしんくん
文殊菩薩
もんじゅぼさつ

四七日

五官大王広徳五霊真君
ごかんだいおうこうとくごれいしんくん
普賢菩薩
ふげんぼさつ

五七日

閻羅大王最勝耀霊真君
えんらだいとうさいしょうようれいしんくん
地蔵菩薩
じぞうぼさつ

六七日

変成大王宝粛昭成真君
へんじょうだいおうほうしゅくしょうせいしんくん
弥勒菩薩
みろくぼさつ

七七日

泰山府君玄徳妙生真君
たいざんふくんげんとくみょうせいしんくん
薬師如来
やくしにょらい

百日

平等大王無上正度真君
びょうどうだいおうむじょうしょうどしんくん
観音菩薩
かんのんぼさつ

一周忌

都市大王飛魔演慶真君
としだいおうひまえんけいしんくん
阿閦如来
あしゅくにょらい

三回忌

転輪大王五化威霊真君
てんりんだいおうごかいれいしんくん
阿弥陀如来
あみだにょらい
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シュヴォド

Shvod

アルメニアにおける家事の精霊。冬は家の中に引き篭もっていて外に出てこない。春になっても家の中の暖かさになれ、シュヴォドはそのまま引き篭もってしまうので人々は家の壁を叩いてシュヴォドを家から追い出す。そうすると夏の間シュヴォドは外で仕事するという。

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鰼鰼しゅうしゅう

Xí-xí

中国の最古の地理書とされる「山海経」に記されている怪魚。「鰼鰼魚(しゅうしゅうぎょ)」ともいう。北山の涿光山を流れる黄河の支流である嚻水に生息する。鵲(かささぎ)のような姿の魚であり、また翼が10あり、羽の先に鱗がついているという。この魚は鵲(かささぎ)のような声で鳴くとされ、防火に用いることができ、食べると黄疸にならないという。山海経には他に文鰩魚蠃魚といった翼を持った魚が紹介されている。

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從從じゅうじゅう

Cóng-cóng

中国最古の地理書とされる「山海経」の東山経に記されている生物。栒状山という山に棲んでいる獣で、犬のような姿をしているが脚が6つ生えているという。自分の名で(つまり「從從」と)鳴くとされる。

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"獣身人面神"じゅうしんじんめんしん

Shòu shēn rén miàn shén

中国最古の地理書とされる「山海経」の東山経の東次二経において言及される山神のこと。空桑之山をはじめとして曹夕之山、嶧皋之山、葛山、餘峩之山、杜父之山、耿山、盧其之山、姑射之山、北姑射之山、南姑射之山、碧山、緱氏之山、姑逢之山、鳧麗之山、䃌山に至る十六山(文中では十七山)の山神。身体は獣、頭は人間のようで觡(枝のある角)を(頭に)いただくという。この神を祀るには毛(獣のこと)は一羽の雞を用い、祈と嬰(儀式の一種)には一つの璧を用い埋めるという。
※"獣身人面神"は固有名称を持たないための(サイト上の)便宜名です。

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衆徳夜叉しゅうとくやしゃ

Śatagiri

仏教において毘沙門天の眷属とされる夜叉で、八大夜叉大将の一人。サンスクリット名を「シャタギリ(Śatagiri)」といい、これを意味訳して「衆徳夜叉」、「威神大将(いしんたいしょう)」、ないし単に「衆徳(しゅうとく)」というほか、「娑多吉哩(しゃたきり)」、「娑多祁哩(しゃたきり)」と音写する。

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十二宮じゅうにぐう

Rāśi

メソポタミアを起源とする横道十二宮の考え方がインドの天文学・占星術を元として密教にとりいれられたもの。サンスクリットでは「ラーシ(Rāśi)="宮"の意」、「ラーシチャクラ(Rāśicakra)="宮の輪"の意」などといい、十二宮のほか「十二房(じゅうにぼう)」とも呼ばれる。太陽の天球の通り道を星座の名の元に12分したものであり、それぞれの宮は吉凶や種々の物事と関連付けられている。十二宮はすべてが月天の眷属とされ、胎蔵界曼荼羅の外金剛部院に四方に分けて配されるほか、星曼荼羅にも見られる。

《十二宮》
方位名称梵名

師子宮
ししぐう
シンハ
Siṃha

女宮
にょぐう
カニヤー
Kanyā

西

秤宮
ひょうぐう
トゥラー
Tulā

西

蝎宮
かつぐう
ヴリシュチカ
Vṛścika

西

弓宮
きゅうぐう
ダヌス
Dhanus

摩竭宮
まかつぐう
マカラ
Makara

瓶宮
べいぐう
クンバ
Kumbha

魚宮
ぎょぐう
ミーナ
Mīna

羊宮
ようぐう
メーシャ
Meṣa

牛宮
ごぐう
ヴリシャ
Vṛṣa

男女宮
なんにょぐう
ミスナ
Mithuna

蟹宮
かいぐう
カルカタカ
Karkaṭaka
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十二神将

じゅうにじんしょう

日本仏教において仏法を守り、薬師経を読む者を守護するという十二の大将。薬師如来の眷属である夜叉の一群のこと。「十二夜叉大将(じゅうにやしゃたいしょう)」、「十二薬叉大将(じゅうにやくしゃたいしょう)」と呼ばれることもある。いずれも悪鬼、或いは恐ろしい形相の武者として描かれ、各々7000(あるいは700)の眷族を従えて、薬師如来の教えと、教えを志す人々を守護するといわれている。十二尊ということから昼夜十二時の護法神とされ、やがて十二支と関連付けられるようにもなった。このため、十二支の動物を冠に戴いている十二神将像もある。各々の十二神将は下に示すように十二支と関連していると考えられているが、その順番は諸説ある。また十二神将の殆どは持物(仏像の持っている物)が一定していないため、混乱したものとなっている。

《十二神将》
No.名称十二支本地
01
宮毘羅大将
くびらたいしょう

子/亥

弥勒菩薩
みろくぼさつ
02
伐折羅大将
ばさらたいしょう

丑/戌

阿弥陀如来
あみだにょらい
03
迷企羅大将
めきらたいしょう

寅/酉

勢至菩薩
せいしぼさつ
04
安底羅大将
あんちらたいしょう

卯/申

観音菩薩
かんのんぼさつ
05
頞儞羅大将
あにらたいしょう

辰/未

如意輪観音
りょいりんかんのん
06
珊底羅大将
さんちらたいしょう

巳/午

虚空蔵菩薩
こくうぞうぼさつ
07
因達羅大将
いんだらたいしょう

午/巳

地蔵菩薩
じぞうぼさつ
08
波夷羅大将
はいらたいしょう

未/辰

文殊菩薩
もんじゅぼさつ
09
摩虎羅大将
まこらたいしょう

申/卯

大威徳明王
だいいとくみょうおう
10
真達羅大将
しんだらたいしょう

酉/寅

普賢菩薩
ふげんぼさつ
11
招杜羅大将
しょうとらたいしょう

戌/丑

大日如来
だいにちにょらい
12
毘羯羅大将
びからたいしょう

亥/子

釈迦牟尼仏
しゃかむにぶつ

※01: 宮毘羅は「倶毘羅」とも書く。

※02: 伐折羅は「跋折羅」、「縛日羅」、「伐闍羅」とも書く。

※03: 迷企羅は「めいきら」とも読む。

※04: 安底羅は「あんていら」とも読む。

※05: 摩儞羅は「頞儞羅(あにら)」とも書く。

※06: 珊底羅は「さんていら」とも読む。

※07: 因達羅は「因陀羅」とも書く。

※08: 波夷羅は「はいら」とも読む。また「婆夷羅(ばいら)」とも書く。

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十二天

じゅうにてん

日本仏教において、八方を司る八方天に上方(天)・下方(地)と日月を加え十二尊としたもの。全ての天・竜や鬼神、星宿などを統べる力を持つとされる。

《十二天》
方位漢名梵名
帝釈天
たいしゃくてん
シャクラ
Śakra
東南
火天
かてん
アグニ
Agni
閻魔天
えんまてん
ヤマラージャ
Yamarāja
西南
羅刹天
らせつてん
ラークシャサ
Rākṣasa
西
水天
すいてん
ヴァルナ
Varuṇa
西北
風天
ふうてん
ヴァーユ
Vāyu
毘沙門天
びしゃもんてん
ヴァイシュラヴァナ
Vaiśravaṇa
東北
大自在天
だいじざいてん
マヘーシュヴァラ
Maheśvara
梵天
ぼんてん
ブラフマー
Brahman
地天
じてん
プリティヴィー
Pṛthivī
日天
にってん
アーディティヤ
Āditya
ないし
スーリヤ
Sūrya
月天
がってん
チャンドラ
Candra

※西南は涅哩底王(ねいりちおう)/ニルリチ(Nirṛti)とされる場合がある。

※東北は伊舎那天(いしゃなてん)/イーシャーナ(Īśāna)とされる場合がある。

※下は堅牢神(けんろうじん)/ダラニーダラー(Dharaṇīdharā)とされる場合もある。

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住無戯論菩薩じゅうむけろんぼさつ

Niṣprapañcavihārivajradhara

十羅刹女

じゅうらせつにょ

仏教において法華経と法華経の持経者を守護するとされる十人の羅刹女の総称。元々は人の精気を奪う鬼女であったが鬼子母神らとともに入仏し、心を改め神女となった。同じく法華経の守護者とされる普賢菩薩の眷属とされる。

《十羅刹女》
No.漢名梵名
01
藍婆
らんば
ラムバー
Lambhā
02
毘藍婆
びらんば
ヴィラムバー
(Vilambhā
03
曲歯
きょうし
クータダンティー
Kūṭadantī
04
華歯
けし
プシュパダンティー
Puṣpadantī
05
黒歯
こくし
マクタダンティー
Makuṭadantī
06
多髪
たはつ
ケーシニー
Keśinī
07
無厭足
むえんそく
アチャラー
Acalā
08
持瓔珞
じようらく
マーラーダーリー
Mālādhārī
09
皐諦
こうたい
クンティー
Kuntī
10
奪一切衆生精気
だついっさいしゅじょうしょうき
サルヴァサットヴォージョーハーリー
Sarvasattvojohārī
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柔利人じゅうりじん

Róulì-rén

中国の古代の地理書「山海経」の海外北経に記されている奇妙な人々。一目人の住む「一目國」の東方にある、「柔利國」という国に住む人々のことで、腕と足が一つずつしかなく、また膝が逆向きに曲がるという。

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十六大菩薩

じゅうろくだいぼさつ

仏教において金剛界曼荼羅の四方四仏に侍る親近四尊を合わせた16尊の総称。成身会、微細会、供養会、降羯摩会(金剛薩埵を除く)に配される。また四印会では各方位の代表として金剛薩埵、金剛宝菩薩金剛法菩薩金剛業菩薩が配され、理趣会では金剛薩埵が主尊として中央に配される。

胎蔵界曼荼羅の金剛手院には、十六大菩薩のうち金剛薩埵、金剛王菩薩金剛牙菩薩金剛拳菩薩が配される。

《十六大菩薩》
方位主尊名称
東輪
阿閦如来
あしゅくにょらい
南輪
宝生如来
ほうしょうにょらい
西輪
阿弥陀如来
あみだにょらい
北輪
不空成就如来
ふくうじょうじゅにょらい
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朱厭しゅえん

Zhū-yàn

中国の最古の地理書とされる「山海経」の西山経にみられる凶兆となる生物。小次山に棲んでおり、白い首に赤い脚を持つ、猿のような姿の獣で、これが現われると大戦が起こるとされる。

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孰湖じゅくこ

Shú-hú

中国の最古の地理書とされる「山海経」に記されている、奇妙な生物。西山の崦嵫山にいる、人面獣身の馬のような姿の獣で、翼があり、また尾は蛇になっているという。人懐こい性格らしく、人を抱き上げるのが好きだという。山海経には他にも有翼で人面馬身の英招という神が記載されている。

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祝融しゅくゆう

Zhù-róng

中国神話に登場する火と南方を司る神。また夏の神だともされる。「山海経」の海外南経などに言及される。それによれば人間の頭に獣の体、といった姿をしており、両龍(二匹の龍)に乗るという。また「春秋左氏伝」によれば、顓頊の子「犁」が祝融だという。ある伝承では水神共工とどちらが強いかを決めるために力比べをし、見事に共工を打ち負かしている。これを恥じた共工が怒りのあまり不周山に頭を打ち付けたところ、不周山は天を支える柱の一つだったので、これが崩れ大地が欠けてしまったという。

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シュクラ

Śukra, Sukra, Shukra

ヒンズー教において金星と金曜と司る神で「ナヴァグラハ(Navagraha=九曜)」の一人。名前は「鮮明さ」や「清らかさ」を意味する。

仏教では「戌羯羅(じゅつきゃら)」(宿曜経)と音写され、胎蔵界曼荼羅の外金剛部院(最外院)北方に配置される。

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執金剛神しゅこんごうじん

Vajradhara, Vajrapāṇi

仏教における一尊。同字で「しゅうこんごうじん」とも読む。名前は雷神インドラの別称あるいはヤクシャの一人である、「ヴァジュラダラ("ヴァジュラ(金剛杵)を所有する"の意)」或いは「ヴァジュラパーニ("ヴァジュラを手に持つ)」を意味から漢字にしたもの。同じく意味訳から「持金剛(じこんごう)」、「金剛手(こんごうしゅ)」などと呼ばれる他、ヴァジュラダラの音訳より「伐折羅陀羅(ばさらだら)」、ヴァジュラパーニの音訳より「跋闍羅波膩(ばじゃらはじ)」とも呼ばれる。

如来の堅固の智を象徴する金剛杵をもって仏法を守護する護法神とされる。ただ、「執金剛」や「金剛手」などといった名称は、手に金剛杵を持つ仏尊(つまり胎蔵界曼荼羅金剛部院の諸尊)全ての総称として使われたり、十九執金剛の主尊である「金剛手秘密主(こんごうしゅひみつしゅ)」(=金剛薩埵)を指すこともある。「増一阿含経」などによれば密迹金剛と同体であり釈迦を護る脇侍であったが、寺院などの聖域を守護する神とされるに至って阿形(口を開けた像)と吽形(口を閉じた像)の二体で表されるようになり仁王と呼ばれるようになった。

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しゅじゅ

Zhū-nòu

中国の最古の地理書とされる「山海経」の東山経に記されている、凶兆とされる生物の一つ。耿山という山に棲息している、魚のひれをもつ狐のような獣で、自分の名で(つまり「朱」と)鳴くという。この獣が現われた国は恐慌になるとされる。

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ジュジュ

Juju

かつて南ナイジェリアにおいて、呪物に宿るとされた悪魔。今は魔法やタブーを表す一般名詞として使われる。

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シュシュカムイ

アイヌにおいて柳を顕現体とするカムイ。柳は雌雄異株で女性の方を「カミレッタマッ」、男性の方を「カミレッタ」と呼ぶ。雌雄同株であるはずのハンノキを顕現体とするケネカムイも女性側と男性側の呼び方がそれぞれある。

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シューツ

Shutu

バビロニアにおける風の悪魔の一人。南風を吹かせるとされる。ただ悪魔といえ空の神アヌの配下なので神の命令で雨をもたらす良い風を吹かせることもあるという。シューツはエアの息子アダパに羽をもがれたことがある。アダパをからかおうと、アダパが舟に乗って釣りをしているとき風を吹かせて船を転覆させて怒らせたからである。

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出世螺

しゅっせぼら

日本の妖怪の一種。竹原春泉画の「絵本百物語」に紹介されているもの。山に潜り棲む巨大な法螺貝のことで、山に三千年、里に三千年、海に三千年過ごしたのち龍になるという。この話は中国で龍の幼体とされる蛟龍に起原を発すると思われる。出世螺は十分成長すると土中から現れ移動するが、この時の穴が残ることを「螺抜け(ほらぬけ)」という。「東京近郊名所図会」はこの螺抜けによって道灌山北側の崖が一部崩壊したと記録している。

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酒呑童子

しゅてんどうじ

日本において平安時代に京都の北西にある大江山(本当は今で言う老坂峠のことだったともされる)や、近江国(滋賀県)の伊吹山を根城にとしていたとされるの首領。「酒顛童子」、「酒天童子」とも書く。元々は鬼をよそおって財物、婦女子を掠奪した盗賊が伝説化されたもの。たびたび人里に下りてきては金品や食料を奪い、若い女性を自分の根城へと連れ去ったという。勅命により源頼光と、その四天王である坂田金時、卜部季武らが大江山で山伏の変装をして潜入し、酒呑童子とその手下が酔いつぶれるまで酒宴でもてなした。酔いつぶれたところで頼光が酒呑童子の頭をはねたところ、首が頼光の兜に噛み付いてきたが、渡辺綱と坂田金時が首の両目をついて、やっとのことでとどめをさしたという。

酒呑童子は大江山の捨て子だったとする説がある。つまり「捨て童子」が訛って「酒呑童子」になったのではないか、という説である。また酒呑童子を寺小僧とする説もある。「童子」とは出家しない幼童を指す言葉だが、出家せずに寺から逃げ出したためいつまでも「童子」なのだ、とする説である。また、伝説としては八岐大蛇の息子とされるときもある。これは時の権力に逆らった横暴な姿、酒によって殺された最後の姿において両者とも共通しているからであろう。

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