塩の長司
しおのちょうじ
日本における怪異の一種。竹原春泉画、桃山人文の「絵本百物語」に見られる。この怪異は「塩の長司」と呼ばれるものの、怪異の原因は馬の祟りないし馬憑きであって長司はその被害者である。「塩の長次郎(しおのちょうじろう)」ともいう。むかし加賀国(現在の石川県)の小塩(おしお)の浦に「塩の長司」と呼ばれる者がいた。彼は馬をたくさん飼っていたが悪食で、死んだ馬を食べたりする人間だった。彼はついには馬肉食いたさに年老いた馬を殺して食べてしまったが、その晩に老馬が自分の喉元に食いつく夢を見た。それからというもの、馬を殺した時刻になると長司の口から馬の霊が入り込んで、腹の中で暴れ長司を苦しませるようになった。一日六時間ばかりこの状態が続き、100日たった頃には馬が重荷を背負うような姿で死んでしまったという。絵本百物語には仏説を含んだ教訓じみた話が多く収録されているが、この話も殺生を戒めるためのものだと考えられる。