ショチケツァル
Xochiquetzal
ショチピリの姉妹ないし女性配偶神で、アステカの開花期と実り多い大地の神。字義は「羽毛に覆われた花」、「羽が豊かに生えた花」、詩的には「尊い花」といった意味。愛と美、従順さと花々を擬人化した女神で、女性の性的な力を象徴する。アステカ人はこの女神を肉体的愛の女神とし、子供を授けてくれる者とみなした。さらにアステカの未婚戦士や銀細工師、彫刻家、絵描き、職工などの愛人ないし売春婦(アニアニメ(anianime)やマキ(maqui)と呼ばれていた)の守護神であった。ある面ではトシやトラソルテオトルとも関連していたが、これらの女神との相違点は、ショチケツァルが永遠に若く美しい女神だったことにある。コデックス(絵文書)では、ショチケツァルは2つの大きなケツァル(カザリキヌバネトリという緑の美しい羽を持つ鳥)の羽飾りをつけて描かれている。アステカの暦日(センポワリ)では20番目の「ショチトル(花)」を司っていた。
神話においてはトラロックの最初の妻であったが、テスカトリポカによって誘拐されたとされている。ショチケツァルはまた地下世界ともかかわり、死者の祭りではキンセンカを捧げられて祀られた。伝承によればケツァルコアトルによる平和的な支配の時代と第2の太陽の時代に、美しさと花の贈り物と青々した緑とで大地を飾り立てたという。アトラトナンやウィシュトシワトル、シローネンとともに4女神の一翼をになっていた。これらの女神を演じる処女たちは、テスカトリポカ役に選ばれた若い戦士と一年間夫婦となり、この戦士はトシュカトル(テスカトリポカをたたえる特別な祭儀がある日)には生贄にされた。ショチケツァル役の女性もまた生贄にされ、生皮をはがれた。そしてその皮をかぶった神官は、職人たちが猿やジャガー、ピューマ、犬、コヨーテなどの格好をして周囲を踊る間、機を織るまねをした。一方、信者たちは舌から血を滴らせながらショチケツァル像に罪を告白し、これによっておぞましい儀式を終え、最後に儀礼的な入浴をして罪の償いをした。
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ショチピリとショチケツァル(Xochipilli and Xochiquetzal)
1898
「ボルギア絵文書(Codex Borgia)」より
ロストック大学図書館(Universitätsbibliothek Rostock)蔵
Copyright: public domain花を司る神である男神ショチピリ(左)と女神ショチケツァル(右)
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ショチケツァル(Xochiquetzal)
1898
「ボルギア絵文書(Codex Borgia)」より
ロストック大学図書館(Universitätsbibliothek Rostock)蔵
Copyright: public domain