御井神
みいのかみ
みいのかみ
Myesyats
スラヴ神話における月の神。男女ははっきりしない。太陽神ダジボーグのおじとして、冷たい禿げ頭の老人とされるが、別の伝承ではダジボーグの妻で美しい女神ともされる。この場合のミエシャツは星々の母であり、二人は春になるたびに結婚し秋になると別れるとされている。
Michael
ユダヤ教・キリスト教における四大天使の一人。終末において七つのラッパを吹き鳴らす天使の一人(→御前の七天使)。名前は「神に似た者」、「神の如き者」を意味する。鞘から抜かれた剣と天秤によって象徴され、四大元素の「火」、四方位の「東」と知性、「慎重」という美徳を司る。イスラエルの守護天使ともされる。時代を通じて常に天使のトップに君臨する天使として認識されている。もともとはカルデア人の間で信じられていた神の一人だったと考えられている。神に付き従う第一の従者のような存在であり、ヴァーチャーやアークエンジェルの指揮官だと考えられている。また「神の御前のプリンス」、「慈悲の天使」、「正義の天使」、「聖別の天使」など多くの称号を持っている。「ヨハネの黙示録」において、サタンを倒し、底なしの淵に封印したのはミカエルとされている。
ミカエルは「最後の審判の天使」であり、終末において人間の魂を秤にかけ、罪と善行を裁くという役目を担っている。キリスト教では死の天使としても知られ、「永遠の光」で人の魂を読み取り、善きキリスト教徒の霊を救うとされる。イスラム教ではミーカールとして知られている。
みかぬしひこのかみ
「古事記」において、大国主神の子孫の系譜が語られる段に記されている神。速甕之多気佐波夜遅奴美神と前玉比売との間に生まれた子神であり、比那良志毘売とともに多比理岐志麻流美神の親神とされる。名前は「甕(みか=かめ)を主宰する男の神」を意味するため、甕自体か、天の甕、つまり雨に関連した神と思われる。
みかはやひのかみ
Migamamesus
ネイティブアメリカンの一部族であるミクマク族の信仰や伝説に登場する山の精霊。「ミカムウェス(Mikamwes)」と呼ばれていた可能性もある。ガスペー山に住んでいて、山に立ち入った人間たちにいたずらを仕掛けるとされる。
Mikal
フェニキアの神で、元々はキプロス起源の神だとされる。疫病とペストを司る神。
Mictecacihuatl
アステカの神で、死者の国ミクトランを治める神ミクトランテクートリの妻。「ミクトランシワトル(Mictlancihuatl)」とも呼ばれる。
1898
「ボルギア絵文書(Codex Borgia)」より
ロストック大学図書館(Universitätsbibliothek Rostock)蔵
Copyright: public domain
死と地下世界を司る神である男神ミクトランテクートリ(右)と女神ミクテカシワトル(左)
Mictlantecuhtli
メキシコ中央部、アステカの神。死者の国ミクトラン(地底世界)を配偶者であるミクテカシワトルと共に支配した神。「ツォンテモック(Tzontemoc)」とも呼ばれ、真っ白に晒した骸骨に赤い血が点々とついた姿で描かれる。アステカの世界観では、今の世界は今まで何回か始まりと終わりを告げた世界の続きであり、現在ある世界を創造する際、ケツァルコアトルはあらたな人間を生み出すためにミクトランを出かけ、ミクトランテクートリにかつての人々の骨を譲ってくれるように交渉した。ミクトランテクートリは自分の所有物である骨を譲ることに難色を示したが、ケツァルコアトルは無理やり骨を地上に持って帰った。逃げるときにいくつかの骨をケツァルコアトルが落としてしまい。このため人間は不完全で、永遠には生きれない存在となったという。
1898
「ボルギア絵文書(Codex Borgia)」より
ロストック大学図書館(Universitätsbibliothek Rostock)蔵
Copyright: public domain
生(右=ケツァルコアトル)と死(左=ミクトランテクートリ)の対比図。左右両側の絵文字はトレセーナ(週)を担ぐセンポワリ(週の初日)で右下から上にジグザグに進む。トレセーナは13日あるため、上下の12の丸を使って残りの12日を示している。この絵図の目的は生と死が等しく世界を収めていることを表すことだと思われる。
1898
「ボルギア絵文書(Codex Borgia)」より
ロストック大学図書館(Universitätsbibliothek Rostock)蔵
Copyright: public domain
1898
「ボルギア絵文書(Codex Borgia)」より
ロストック大学図書館(Universitätsbibliothek Rostock)蔵
Copyright: public domain
死と地下世界を司る神である男神ミクトランテクートリ(右)と女神ミクテカシワトル(左)
Mig mi bzang, Mikmizang
チベット仏教において四方を守護するギェルポチェンポ・シ(=四天王)のうちの一尊で、日本でいう広目天にあたるチョキョン(護法尊)。「チェンミサン(sPyan mi bzang, Chenmizang)」とも呼ばれる。サンスクリットの「ヴィルーパークシャ(Virūpākṣa)」であり、南方を守護する。
Mieg moulach
スコットランドの民間伝承にあらわれる女の家付き妖精でブラウニーの一種。「マグ・ヴルッフ(Maug vuluchd)」、「マグ・モラッハ(Maug moulach)」、「メイ・モラッハ(May Moulach)」、「メグ・モロッホ(Meg molloch)」、「ヘアリイ(=毛むくじゃらの)・メグ(Hairy Meg)」、「ヘアリイ・マグ(Hairy Mag)」などの名前でも呼ばれる。彼女の息子は「ブラウニー・クロッド」だとされる。グラント氏族の有するタロッホゴルム(Tullochgorm)城に棲んでいて、氏族の長がチェスで勝てるように手助けをしたり、家の者の死を告げ涙を流したりした。また別の伝承ではバンフシャー(Banffshire)のアークナロー(Achnarrow)にある農家に住み着き、農場主が召使いを全員解雇するほどに働いたが、ミグ・モラッハがストライキを起こしたため結局全員呼び戻したという。
みくらたなのかみ
みけぬのみこと
日本記紀神話において鵜葺草葺不合命と玉依毘売命の間に生まれた第三子で、神武天皇(=神倭伊波礼毘古命)の兄の一人。「御毛沼命」は古事記での表記で日本書紀では「三毛入野命(みけいりののみこと)」或いは「三毛野命(みけののみこと)」の名で登場する。神名の「御毛(みけ)」は「御食(みけ)」のことで食物(特に穀物)を指し、「沼(ぬ)」は「主(ぬし)」の省略、つまり穀霊神の一種と考えられる。
神武天皇の東征の折、兄弟は神武天皇に同行したが先に長男五瀬命を矢傷を元で失い、また紀伊を航海していた時には暴風雨をしずめるために次男稲氷命も自ら海に飛び込んだ。そして御毛沼命も稲氷命に続いて、「我々の母(玉依毘売命)も姨(豊玉毘売命)も海の神だというのに何故波を立てて我々を溺れさせようとするのか」と嘆いて、波の上を歩いて常世国へと去ってしまったとされる。
Miguelzinho Boá da Trindade, Miguelzinho Boa da Trinidade
アフロ・ブラジリアンカルトのバトゥーキ(Batuque)におけるエンカンタードの一人。レグア・ボギ・ダ・トリニダーデの息子で、ドン・ペドロ・アンガソの孫息子に当たるとされる。聖ミカエルと、その祝日である9月28日に関連付けられる。セウ・トゥルキアの一族に属するとされる。
みこしにゅうどう
日本の妖怪の一種。単に「みこし」とも呼ぶ。通説として狸が化けた姿だともいわれる。首が長く、非常に背の高い入道姿で、金棒などを持っている妖怪。人が見上げれば見上げるほど背が高くなり、また首が長くなるという。しかし、わざと見下げるように見れば、見越し入道はどんどん背丈が小さくなるという。
一寿斎芳員画「百種怪談妖物雙六」より
国立国会図書館蔵
Copyright : public domain
みこしにゅうどう
「天草島民俗誌」に紹介される、熊本県天草市の河浦町(旧一町田村)に出たという見越入道に似た妖怪。「下田の釜」という場所の一本道をある男が歩いていたところ、五丈(約15m)もあろうかという大入道が立ちふさがり男の顔をひと舐めした。恐ろしくなった男が神に一心に祈ったところ、剣を持った神の姿が現れ、大入道をひと睨みした。その入道は睨まれると御輿のようなものに乗り、布を長く引いて丸山の方へ飛んで行ってしまったという。
みさかどののかみ
misikinipik
Mishipizheu
スペリオル湖周辺に住むネイティブアメリカン、オジブワ族に信じられている非常に重要な精霊(マニトゥ)。「ミシッピジウ(Mishipizhiw)」、「ミチピシー(Mitchipissy)」とも呼ばれる。語意は「偉大なオオヤマネコ」。強力なマニトゥであり、オジブワ族の土地に広がる広大な湖や川の全体にその影響力を及ぼす、神に近い存在だと考えられた。川や湖の底に棲んでおり、角のある巨大な蛇の姿、あるいは背骨から尾まで鋸歯状の突起がついた巨大なオオヤマネコの姿をしているとされる。ある伝承によれば、原初の大洪水を張本人であるとされている。湖の下に洞窟やトンネルを幾つも持ち、あたり一帯を簡単に移動し、湖の水を巨体でかき乱して急流に変え、人々を溺れさせることもある。したがって、ミシッピゼウを信じる者は、ミシッピゼウのいる湖に入る場合は煙草などのささやかな供物を用意する。地上を移動する際は身体を巨大なヒルのようにくねらせて地面を濡らし、その通り道に水溜りと流砂をのこすという。
テマガミ湖周辺のオジブワ族のバンドは、ミシッピゼウがすべての蛇の祖だとしている。いわく、ミシッピゼウが湖を渡っていた最中にひと筋の稲妻がミシッピゼウを打ち砕き、その破片がことごとく小さな蛇となり、この蛇たちが現在の蛇の祖になったという。またミシッピゼウは銅鉱の守護神であり、人間に薬を与えてくれる存在でもあるという。ただしこの薬は人の手にはおえないような危険なもの(富や健康と引き換えに妻や子供に先立たれるような)だという。
みしまみぞくい
「古事記」や「日本書紀」などに言及される神。古事記では三嶋湟咋、日本書紀では「三嶋溝橛耳神(みしまみぞくいみみのかみ)」、「先代旧事本紀」では「三嶋溝杭(みしまみぞくい)」、「三嶋溝橛神(みしまみぞくいのかみ)」、「新撰姓氏録」では「三嶋溝杭耳(みしまみぞくいみみ)」と表記される。勢夜陀多良比売=三嶋溝樴姫の親神であり、姫蹈鞴五十鈴姫命の祖父にあたる。神名の「三嶋」とは、摂津国(今の大阪府と兵庫県との間)にあった地名で、またこの地にいた賀茂氏に類するとされる三嶋氏を指すと考えられる。また「ミゾクイ」は水田への引水のための杭のこと、あるいはそういった引水に関わる者のことと思われる。大阪府茨木市五十鈴町にある式内社「溝咋神社(みぞくいじんじゃ)」に祀られる。
みしまみぞくいひめ
みしゃぐじがみ
Mixcóatl
アステカの7部族の一つ、トラスカラ族における狩猟神。語義は「雲の蛇」。ミシュコアトルという呼称は天の河を意味する言葉としても使われていた。トルテカ=チチメカの伝説的指導者「セ・テクパトル・ミシュコアトル」が死後に神格化されたもので、神としてのミシュコアトルの出自は人間としてのミシュコアトルとは全く無関係に綴られる。それによれば、母神は大地の神イツパパロトル、配偶神は蛇の女神コアトリクエだとされる(他にも神の妻がいたとされることもある)。ミシュコアトルとコアトリクエの間にはコヨルシャウキ、センツォンウィツナワック、センツォンミミスコアが生まれたが、末子のウィツィロポチトリだけはコアトリクエの元に落ちてきた「羽根のボールの魔力」によって妊娠したものなのでミシュコアトルの子ではない。
人間としてのミシュコアトル自身にも神話的伝説が伝わっており、彼の妻チマルマンは彼の放った弓によって、後にトルテカの首都トーリャ(トリャン)を創始する伝説的統治者となるセ・アカトル・トピルツィンケツァルコアトルを身ごもったという。アステカの18ある暦月の15番目「ケチョリ」にはミシュコアトルとカマシュトリ、それに彼等の配偶神が祀られていた。
Midir
ケルト神話における大地の神。ダグザの息子でブリギットやアオングスとは兄弟にあたる。地下世界の王であり、マン島にある宮殿に住んでいたとされる。彼に着飾った若者として描かれる。ミジルの最初の妻はファヴナックという娘だったが、その後エディンという娘と再婚する。嫉妬に怒り狂ったファヴナックはドルイド僧の助けを借りエディンを池や虫、ハエに変えてしまった。このハエを偶然アルスターの戦士であったエダールの妻が飲み込み、エディンはエダールの妻の娘として転生した。記憶を失い人間として過ごしていたエディンはアイルランドの王エオヒズに見初められ求婚されるが、ミジルはエディンの記憶を呼び起こすことに成功し、エディンは自分がすでにミジルと結婚していたことを思い出した。ミジルはエオヒズとのエディンを賭けたチェス勝負に勝ち彼女を取り戻したが、結局エディンはエオヒズの王妃としての人間の生を全うすることを選んだ。
Midgardsorm, Midgardsormr
北欧、ゲルマン神話において世界をぐるりを囲んでいるとされる巨大な蛇の怪物。「ヨルムンガンド」とも呼ばれる。策略と姦計の神ロキと女巨人アングルボザの間に生まれた。冥界の女神ヘル、巨狼フェンリルとは兄弟。最初生まれたとき、ミズガルズオルムはそれほど大きくなかったが、神々が気持ち悪がって海に捨てたところ、海の中でどんどん成長して巨大になり、ミズガルズ(世界の名前)を取り囲んだという。ミズガルズオルムが空を上るとそのアーチは虹になるという。
雷神トールが巨人ヒュミルと一緒に釣りにいき、釣りの腕を競い合った時があった。二人はそれぞれ牡牛を二頭ボートにのせ、その頭を餌代わりに使った。ヒュミルは巨大な鯨を二頭釣り上げたが、トールの餌にはミズガルズオルムが食いついた。神話によってはこのあとヒュミルは恐怖のあまり海に飛び込み溺れ死んだことになっている。また別の伝承によれば、トールが巨人の一人に力比べを挑まれたとき、トールは与えられた猫を床から持ち上げることができなかった時があった。ウートガルザ(ロキ)はこの猫は本当はミズガルズオルムだったのだと説明している。終末の戦い「ラグナロク」において、ミズガルズオルムは海から出て地上を破壊し毒で汚して暴れまわるが、トールと相打ちで死ぬ。
Mizgitari
テュアナのアポロニウス(Apollonius of Tyana)が著したとされる「ヌクテメロン(Nuctemeron)」中の「魔術的黄道十二宮に類似する十二の象徴的な時間」を支配する守護霊(Genius)、いわゆる「時間の鬼神」の一人。7時の霊の一人で鷲を司る。
Mizkun
テュアナのアポロニウス(Apollonius of Tyana)が著したとされる「ヌクテメロン(Nuctemeron)」中の「魔術的黄道十二宮に類似する十二の象徴的な時間」を支配する守護霊(Genius)、いわゆる「時間の鬼神」の一人。1時の霊の一人で魔除けを司る。
みずささらひこのみこと
みずささらひめのみこと
「水佐佐良比賣命」とも。また「売」は「賣」とも記す。伊勢神宮内宮の皇大神宮の摂社で、三重県伊勢市楠部町にある「大土御祖神社(おおつちみおやじんじゃ)」において祀られる神の一柱。大土御祖神社に祀られる「大国玉命(おおくにたまのみこと)」、「水佐々良比古命(みずささらひこのみこと)」は、水佐々良比売命とともに国生神の子神とされる。また伊勢神宮外宮の豊受大神宮の摂社で、三重県伊勢市豊川町にある「度会大国玉比賣神社(わたらいおおくにたまひめじんじゃ)」では大国玉命とともに祀られる「弥豆佐佐良比賣命(みずささらひめのみこと)」は同神と考えられる。「伊勢国風土」逸文では神武天皇(→神倭伊波礼毘古命)の東征の際、「天日別命(あめのひわけのみこと)」が勅命を受け南伊勢を平定するために度会に赴いた時、この地の神であった「大国玉神(おおくにたまのかみ)」が(天日別命に差し上げようと)「弥豆佐佐良比売命(みずささらひめのみこと)」を伴い迎え奉ったとあり、これも同神であると考えられる。
Mr. Dobb
Mithuna
みずまきのかみ
Misran
テュアナのアポロニウス(Apollonius of Tyana)が著したとされる「ヌクテメロン(Nuctemeron)」中の「魔術的黄道十二宮に類似する十二の象徴的な時間」を支配する守護霊(Genius)、いわゆる「時間の鬼神」の一人。12時の霊の一人で迫害を司る。
みずわかすのみこと
島根県隠岐諸島の島後にある「水若酢神社(みずわかすじんじゃ)」の主祭神。「水若酢明神(みずわかすみょうじん)」、「水若酢神(みずわかすのかみ)」とも呼ばれる。隠岐独自の神で名義や神裔などは明らかでないが、同じく隠岐諸島にしか見られない神である玉若酢命と関連がある者と思われる。名前の音をそのまま解して「水湧かす神」、つまり湧水を司る神ではないかとする説もある。当社は水若酢命の他に「中言命(なかごとのみこと)」、「鈴御前(すずのごぜん)」を配祀するが、この両神とも由来は不明である。
Misericordia
ローマにおける憐れみの女神。
みぞいだし
日本における妖怪の一種、あるいは死霊。竹原春泉画、桃山人文の「絵本百物語」で紹介されているもの。他の文献には見られないが、百鬼夜行絵巻によく見られる壊れた唐櫃から化物が這い出してくる描写が元になっているとも考えられる。ただし溝出の場合描かれているのは破れた葛籠とそこから這い出そうとする骸骨である。絵の讃によれば、貧乏だった男が死んだ時に葬儀を出すお金がなかったので葛籠に遺体を入れて捨て置いたところ、遺体が勝手に動き出し皮がはがれて白骨となり踊りだしたという。死者を敬い、遺体は粗忽に扱うものではない、と諭した話と考えられる。
みそぢまりいつはしら
日本記紀神話において、「古事記」に言及される35柱の神。「參拾五神」。伊邪那岐命と伊邪那美命が「国産み」の後に行った「神産み」において産まれた40神の御子神のことで、男女一対の神を一柱にまとめて三十五柱と考える。中には伊邪那岐命と伊邪那美命との間に直接生まれたのではない神を含む。
みちぬしのむち
みちのながちはのかみ
日本記紀神話に登場する神の一柱で道中の安全を司るとされる神。古事記には「道之長乳歯神」、日本書紀には「長道磐神(ながちはのかみ)」の名で見える。また「道之長乳磐命(みちのながちはのみこと)」、「道之長乳磐神(みちのながちはのかみ)」とも呼ばれる。黄泉の国から逃げ帰った伊邪那岐命が、身を清めようと禊をした時に化生した神の一柱で、伊邪那岐命が投げ捨てた帯から生まれ出でたという。神名の「ナガチ」とは「長道」のことで、帯を道に例えたものであると考えられる。続く「ハ」は語義は明らかでないが、「母」の意ととれば女神であることを表すものかもしれない。
Pāñcala
Guhyapāda-vajra
仏教における一尊。名前はサンスクリットの「グヒヤパーダ・ヴァジュラ(Guhyapāda-vajra)」を漢字に訳したもの。他に「密迹金剛力士(みっしゃくこんごうりきし)」、「金剛密迹(こんごうみっしゃく)」、「密迹金剛士(みっしゃくこんごうし)」などの名前でも呼ばれる。「グヒヤパーダ」とは「隠されるべき足跡・事跡」といった意味があり、これを直訳して「密迹」或いは「密跡」という。「増一阿含経」によれば密迹金剛は「如来の後ろに在り手に金剛杵を執る」とされ、同じく金剛杵を手にする執金剛神と同体とされる。金剛杵をもって仏教にそむく者を懲らしめる護法神であり、日本では仁王の一人として知られる。また千手観音の眷属である二十八部衆にも数えられる。
「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v04p005
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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觀音廾八部衆(→二十八部衆)の一尊として
みつはしらのめのこ
みつはのめのかみ
日本記紀神話に登場する、水と井戸を司る女神。「みずはのめのかみ」とも発音する。伊邪那美命が火之迦具土神を産み落とす際、苦しんで出た尿(ゆばり,ゆまり=小便)から生まれた神で三十五神の34番目に数えられる。古事記には「弥都波能売神(みつはのめのかみ,みずはのめのかみ)」、日本書紀には「罔象女神(同訓)」の字で記される。また「水波廼女神(みずはのめのかみ)」、「美津波売能命(みつはめのみこと)」、「水波能売大神(みずはのめのおおかみ)」など、数多くの表記が存在する。名前の「みつは(みずは)」とは「水走る」、「水這う」、「水生う」といった意味と考えられ、灌漑用水(引き水)を指した言葉と考えられる。したがって川の水、また川から生活用、灌漑用に引いた水を神格化した神であるといえる。また「罔象」の字は水の精霊、あるいは水蛇とも関係があるともされる。小便から生まれた神ということから肥料の神とも考えられる他、民間信仰の井戸神と習合し同一神と考えられ、女性と家庭を守る神と考えられるに至った。この弥都波能売神は地方によっては子授けや安産の神として信仰され、子供を伴った母神と考えられている。福井県にある大滝神社の摂社、岡田神社に祀られている弥都波能売神は紙漉きの守護神として信仰されており、人々に紙鋤きを教え、「岡本川上流に住む弥都波能売神なり」と名乗ったことから「川上御前(かわかみごぜん)」と呼ばれている。奈良県吉野郡東吉野村にある式内社「丹生川上神社(にうかわかみじんじゃ)」などに祀られる。
みとしのかみ
Mitra
Mithra
ミトラ教における主神。「ミトラス」と呼ばれることもある。もともとは古代ペルシアで信仰されていた太陽神だと思われるが、その後ゾロアスターの宗教改革によって、ヤザタの一柱とみなされ、真実を司り、アフラ・マズダを助ける者と考えられた。その後小アジア近隣に伝導され、これらの土地でミトラ神を創造・救済の神としたミトラ教が成立。ミトラ教は男性のみの宗教で、一世紀後半にはローマ帝国でも多くの兵士達に信仰された。オリエント地方だけでなく、ローマ帝国の拡張に伴いアフリカ、スペイン、ガリア、ブリタニアなどにも神殿が建てられた。しかし、四世紀以降キリスト教の圧迫によってその勢力は衰えるに至った。
ミトラ教の信徒はミトラの英雄的行為によって現世の苦難から救済されると信じた。神殿には牛を屠るミトラの図像が描かれている。インドのミトラと同じく、契約、友誼、信義などを守護し、正義を司る司法者的性格を持っている。
ゾロアスター教聖典「アヴェスター」においては棍棒を武器にしてウルス・ラグナを率い悪魔を退治する勇猛な戦神として登場する。ヤザタの一員であり太陽として人々に光明と恵みを与えるほか、スラオシャやラシュヌを従え死んだ人間の魂を裁く死後の裁判官ともされた。
19世紀フランスの歴史・言語・文献学者であるエルンスト・ルナンは「もし何らかの致命的な病によってキリスト教 の成長が止まっていたら、世界はミトラ教化していただろう」という言葉によって有名になったが、一方キリスト教がなくてもミトラ教はそれほど広まらなかっただろう、と見る学者も多い。
Mithras
Mittron
Mīna
Minaksi, Minakshi, Mīnākṣī
みなしのかみ
Minata-Karaia
ブラジルのシング川流域に住む諸部族間ではるか昔に存在していたと信じられている伝説の部族。ミナタ=カライアの男は頭のてっぺんに穴があいていてそこから口笛を吹く。また脇の下にはココナッツがなっていて必要なときはこれを食べていたという。
Minerva
みのび
滋賀県の琵琶湖で見られるという怪火。五月頃、見通しの悪い霧雨の降る夜などに船に乗っている人の蓑に点々を火が纏わりつくという。静かに蓑を脱ぎ捨てれば火は消えるが、慌てて手で払ったりすると纏わり憑く火が増えてしまう。琵琶湖で溺死した者たち怨霊の火と伝えられている。こういった怪火は他の地方でも見られ、秋田県、新潟県、福井県などでは「蓑虫(みのむし)」、「蓑ぼし」、千葉県の印旛沼では「川蛍(かわぼたる)」などと呼ばれている。
「百鬼夜行拾遺(ひゃっきやぎょうしゅうい)」(1805)より
ページ:v02p004
鳥山石燕著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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田舎道などによなよな火のみゆるは多くは狐火なり/この雨にきるたみのゝ嶋とよみし蓑より火の出しは隂中の陽氣か/又は耕作に苦める百姓の臑の火なるべし
みのむし
秋田県、新潟県、福井県などに伝わる蓑火に似た怪火。信濃川流域に多く出現するとされる。雨の降る晩に夜道や船の上で着ている蓑に蛍のような火が纏わりつくもので、蓑に限らず傘や衣服にもつくとされるが、蓑火と同じく慌てて払い落とそうとしたりするとかえって勢いを増すという。複数人でいる時でも一人にしか見えてない場合があり、これを「蓑虫に憑かれた」という。また逆にその場にいる全員に蓑虫が憑く場合もある。いずれにしても蓑虫の火は物を燃やさないし熱くもならない。マッチなどで普通の火をつけるか、慌てずじっとしていれば蓑虫の火は消えるとされる。
みほすすみのみこと
「出雲国風土記」に見える神。「大国主神=所造天下大神(あめのしたつくらししおほかみ)」と「沼河比売=奴奈宜波比売命(ぬながわひめのみこと)」との間に生まれた御子神であり、島根郡の美保郷(現在の島根県松江市美保関町あたり)はこの神が坐す地であることから「美保」と呼ぶようになったという。この神社は現在の「美保神社(みほじんじゃ)」のことと考えられるが、現在でこの神社の主祭神は「三穂津姫(みほつひめのみこと)」とされており、御穂須須美命は境外社である地主社に祀られるのみである。これは祖先に土地の神と思われる意支都久辰為命を持つ御穂須須美命より、天津神である高御産巣日神を祖先とする三穂津姫を重要視する動きがあったと考えられる。神名の解釈には諸説あり、「日本書紀」に言及される「火進命(ほすすみのみこと→火須勢理命の別名)」との類似が指摘される。
みほつひめ
「日本書紀」や「先代旧事本紀」に言及される女神。「三穂津姫命(みほつひめのみこと)」、「三保津姫命(みほつひめのみこと)」、「美保津姫命(みほつひめのみこと)」、「弥富都比売神(みふつひめのかみ/みほつひめのかみ)」とも呼ばれる。数多くいる大国主神が娶った女神の一柱。高御産巣日神の子神であり、国津神である大国主神の国譲りにおいて、「天孫邇邇藝命への恭順の証として、我が娘の(天津神である)三穂津姫を妃とせよ」との高御産巣日神の要請を大国主神が受けたもの。神名は「ミホの女」といった意味になり、三保、美保といった「ミホ」と読む地名に関連付けられた神と考えられる。
京都府亀岡市千歳町にある式内社「出雲大神宮(いずもだいじんぐう)」や静岡県静岡市清水区三保にある「御穂神社(みほじんじゃ)」は大国主神と三穂津姫を主祭神として祀る。奈良県磯城郡田原本町にある「村屋坐弥冨都比売神社(むらやにますみほつひめじんじゃ)」は三穂津姫を主祭神とし大国主神を配祀する。島根県松江市美保関町にある「美保神社(みほじんじゃ)」は事代主神と三穂津姫を主祭神とする。
みまえのかみ
日本の神で、伊勢皇大神宮内宮の摂社である久具都比賣神社(くぐつひめじんじゃ)や、棒原神社(すぎはらじんじゃ)、園相神社(そないじんじゃ)、鴨神社(かもじんじゃ)などに祀られる神。これらの神社の主祭神を祀る本社の御前社に祀られていた神のことで、社が廃絶したのちに再興され、主祭神と御前神を合祀するようになった社の場合、固有名称を付けない場合が多く、逆に今でも本社と御前社が分かれている場合には固有名称を付けて呼ぶことが多い(「朝熊御前神(あさくまみまえのかみ)」、「佐美長御前神(さみながみまえのかみ)」)。これはおそらく文献記述で略されたものが慣例化してしまったためと思われる。また御前社であっても祭神が御前神と呼ばれない場合もある(田上大水御前神社(たのえおおみずみまえじんじゃ)の「宮子(みやこ)」)。
Mimi
オーストラリアのアボリジニに信じられている精霊の一種。アーネムランド西部の岩場に住んでいるという。夜中に一人で歩いていると光が見えることがあるが、これを追うと、その光が近づきもせず、遠すぎもしない距離でその人を森の中に誘導する。これはミンミン・ライト(ミミの光)といわれるもので、これについていって戻ってこなくなった人も多いという。ミミの食糧は人間とヤム芋であるが、骨が非常にもろいので、風で骨が折れるのを恐れて強風の日は外出しないといわれる。
Mimir, Mímir
宮古本島の大浦における妖怪。ミムガラとは石灰岩に生じるすり鉢状の小さな凹みのことで、そういった凹みは水を際限なく吸い込む。雨の日妖怪のミムガラがそこから出てくるという。ミムガラは子供くらいの背丈で、長い耳が足まで垂れ下がり、体全体が黒いとされている。ミムガラの凹みを塞ぐことは避けられる。
みやのめぐりのかみ
伊勢神宮の内宮(皇大神宮)及び外宮(豊受大神宮)において祀られる神でありまたこの神を祭る社名でもある。宮の廻り、つまり神域の周囲四方を守護する神であり、内宮では五丈殿東方に、外宮では九丈殿南方に設けられた石段において石神として祀られる。このため「社」とはいうものの、四至神のための本殿があるわけではない。かつて四至神は200余座で祀られ、後にこれらの神々を四十四所に合祀して祀るようになったことが分かっている。
Mulla
バビロニア神話に登場する牡牛の姿をした悪魔。
Vidyārāja
仏教で仏尊を四つに分けた時の一つ(後の三つは如来、菩薩、天)。サンスクリットの「ヴィドヤーラージャ(Vidyārāja)」を漢訳したもの。如来の教令を受け救いがたい衆生を威嚇し、屈服させ、魔性を調伏し、力ずくで悟りへと導こうとする、「明(真言)」を奉ずる者達を指す。それぞれの明王はそれぞれの如来あるいは菩薩の教令を受けて顕現する。
漢名 | 梵名 | 備考 |
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| 五大・八大明王の一。本地は大日如来、除蓋障菩薩。 |
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| 五大・八大明王の一。本地は阿閦如来、金剛手菩薩。 |
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| 五大・八大明王の一。本地は阿弥陀如来、妙吉祥菩薩。 |
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| 五大・八大明王の一。本地は宝生如来。 |
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| 五大明王の一。本地は不空成就如来。 |
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| 明王であるが忿怒相をとらない。 |
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Mañjughoṣa
仏教における菩薩の一尊。サンスクリット名を「マンジュゴーシャ(Mañjughoṣa)」といい、「マンジュ」は「愛すべき」、「美しい」、「ゴーシャ」は「鳴声」や「響」といった意味があるため「妙音菩薩」、「妙音声菩薩(みょうおんしょうぼさつ)」と称する。「法華経」の妙音菩薩品によれば、過去に十万種の伎楽と八万四千の宝鉢で雲雷音王仏に供養したことにより今は浄華宿王智仏の国に生まれ、世界に三十八種の身で現れ衆生に説法するという。十方世界に妙音をもって妙方を説きひろめる菩薩とされる。胎蔵界曼荼羅の文殊院において北側(左側)の中央より第五位に配する。その像容は黄色の身色の三髻、童子形で、右手に細葉の青蓮華を持ち、左手は梵篋を持ち赤蓮華に座す姿で表される。「五髻文殊(ごけいもんじゅ)」(→文殊菩薩)と同体ともされる。
「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v02p013
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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Miào-xiàn pú-sà
仏教における中国由来の菩薩で北極星を菩薩として信仰するもの。「尊星王(そんじょうおう)」、「妙見尊菩薩(みょうけんそんぼさつ)」、「妙見尊星王(みょうけんそんじょうおう)」、「北辰菩薩(ほくしんぼさつ)」、「北辰尊星妙見大菩薩(ほくしんそうじょうみょうけんだいぼさつ)」、「妙見大士(みょうけんだいし)」などの名で呼ばれる。また菩薩と名は付くが天部(→天)に属することから「妙見天(みょうけんてん)」とも呼ばれる。
数々の星の仏格の中で最頂であり諸星の王とされる。一切の善悪を記録する仏尊であり、国土を擁護し災禍を消し敵を退けるという。天台寺門派においては吉祥天と同体とされ、護国、除災を祈る尊星王法の主尊とされる。
種子は「अ(a)」、「हुं(huṃ)」、「रो(ro)」、「रु(ru)」、「सु(su)」、印相は右手を施無畏にして親指を曲げ三度招くもの、あるいは大三股印、真言は「唵蘇涅哩瑟吒莎呵(おんそにりしつたそわか)」、「目仡帝屠蘇吒阿若密吒烏都吒具耆吒婆頼帝吒耶彌惹吒烏都吒拘羅帝吒耆摩吒莎呵」、三昧耶形は星ないし如意宝珠。
「諸尊図像鈔(写)(しょそんずぞうしょう)」(不明)より
ページ:v11p030
著者不明
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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「諸尊図像鈔(写)(しょそんずぞうしょう)」(不明)より
ページ:v10p016
著者不明
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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「諸尊図像鈔(写)(しょそんずぞうしょう)」(不明)より
ページ:v10p017
著者不明
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v02p020
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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Miru kura
ポリネシアのクック諸島にあるマンガイア島において、地下世界に住んでいるとされる醜い悪魔の女王。単に「ミル(Miru)」とも呼ばれる。名前は「赤い」という意味があり、地獄の業火を象徴する。死んで旅立った魂をアカアンガに命じて捕らえさせ、地獄の炎にくべて焼いて食べてしまうとされる。元々はタパイルと呼ばれる4人の妖精たちの母親だったとされる。ミル・クラは最終的にトゥ=テ=ウェイウェイの息子である英雄「ンガル(Ngaru)」によって滅ぼされ、地獄の業火は彼の起こした洪水によって消されたとされている。
Miren
Maitreya
サンスクリット語では「マイトレーヤ(Maitreya)」と呼ばれる。インド神話には登場しない、仏教独自の神格。その名は「慈(いつくしみ)から生じた者」と訳されるが、その語源はインドの神ミトラを元にしているとも考えられている。「弥勒慈尊(みろくじそん)」、「慈尊(じそん)」、「慈氏菩薩(じしぼさつ)」、「梅呾利(まいたり)」、「梅呾利耶(まいたりや)」、「梅呾利曳那(まいたりえいな)」などの名称でも呼ばれる。実在の釈迦の弟子であったともされる。
悟りを求め修行し、他のものも悟りに到達させようと勤める者、つまり菩薩であるが、未来においては必ず如来(悟りに至ったもの)になり、釈迦の入滅後56億7000万年に釈迦の後継者になるという。それまでは欲界の六欲天の第四天であるツシタ(兜率天)の内院を住処とし、天人のために説法している。このため「未来仏(みらいぶつ)」と称されることもある。中国や日本では未来の姿である如来形で表されることもあるが、たいてい菩薩形で表される。
金剛界曼荼羅では賢劫十六大菩薩の一尊として檀外の東方(下側)の4尊のうち北(右)から一番目に配される。また胎蔵界曼荼羅では中台八葉院の東北方(左上)に配される。
真言は「南麼三曼多勃馱喃(なうまくさまんだぼだなん)阿爾單若耶(あにたんじゃや)薩婆薩埵捨耶弩蘗多(さらばさとばしゃやとぎゃた)莎訶(そわか)」(T0848)
1804
藤原行秀 写
「十王寫(じゅうおううつし)」より
国立国会図書館蔵
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十王図の第六幅に變成王の本地として描かれたもの。
「諸尊図像鈔(写)(しょそんずぞうしょう)」(不明)より
ページ:v05p004_01
著者不明
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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「諸尊図像鈔(写)(しょそんずぞうしょう)」(不明)より
ページ:v05p005
著者不明
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v04p009
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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十三佛の一尊(六)として
みろなみのかみ
Min
古代エジプトで信仰されていた街道と旅人を守護する神。非常に人気があったらしく、直立した男根、まっすぐ伸びた二つの羽を飾った冠、右手に殻竿を掲げた姿で表される。"ミンの庭"と称されるレタスの植え込みとともに描かれることが多い。元々は創造神として信仰されていたと思われるが、ギリシア・ローマ時代になると道祖神とされ、砂漠を旅する者達を守護すると考えられた。崇拝の中心地だった上エジプト第9ノモスのパノポリスやコプトスといった都市では、商人のための崇拝所があり、旅に出る前にはここでミンに祈りが捧げられた。また金山や紅海に向かい道沿いにも小さなミンの神殿が数多く存在した。ミンは街道の神であるとともに豊穣と成長の神でもあり、「階段の祭り」と呼ばれるミンを祀る祭祀では、階段の上に座ったミンが王の刈り取った収穫の最初の一束を受け取るという儀式があった。
みんきらうわ
アイヌに伝わる河童に似た妖怪。「ミンツチカムイ」とも呼ばれる。また「ペポソコシンプク("水中を通る魔"の意)」とも呼ばれる。アイヌ神話において海から大勢の疱瘡(天然痘)の神が訪れた時、英雄神オキクルミはヨモギの草を十字に組んで作った六十一体の人形を疱瘡神と戦わせた。この動く人形は「チシナプカムイ」と呼ばれるが、疱瘡神と戦って水死したチシナプカムイがミンツチになったとされる。ミンツチは魚を支配するカムイだが、人間や牛馬を水中に引き込んで死なせたり、人に憑いたりといった本州の河童に似た行動も見せるという。東北地方では河童のことを「ミヅチ(水の精といった意味)」と呼ぶことがあるが、「ミンツチ」という呼称はこれが伝わったものだと思われる。従って元々の呼称は異なっており、「シリシャマイヌ("山側の人"の意)」と呼ばれていたという。
Myndie