弥都波能売神
みつはのめのかみ
日本記紀神話に登場する、水と井戸を司る女神。「みずはのめのかみ」とも発音する。伊邪那美命が火之迦具土神を産み落とす際、苦しんで出た尿(ゆばり,ゆまり=小便)から生まれた神で三十五神の34番目に数えられる。古事記には「弥都波能売神(みつはのめのかみ,みずはのめのかみ)」、日本書紀には「罔象女神(同訓)」の字で記される。また「水波廼女神(みずはのめのかみ)」、「美津波売能命(みつはめのみこと)」、「水波能売大神(みずはのめのおおかみ)」など、数多くの表記が存在する。名前の「みつは(みずは)」とは「水走る」、「水這う」、「水生う」といった意味と考えられ、灌漑用水(引き水)を指した言葉と考えられる。したがって川の水、また川から生活用、灌漑用に引いた水を神格化した神であるといえる。また「罔象」の字は水の精霊、あるいは水蛇とも関係があるともされる。小便から生まれた神ということから肥料の神とも考えられる他、民間信仰の井戸神と習合し同一神と考えられ、女性と家庭を守る神と考えられるに至った。この弥都波能売神は地方によっては子授けや安産の神として信仰され、子供を伴った母神と考えられている。福井県にある大滝神社の摂社、岡田神社に祀られている弥都波能売神は紙漉きの守護神として信仰されており、人々に紙鋤きを教え、「岡本川上流に住む弥都波能売神なり」と名乗ったことから「川上御前(かわかみごぜん)」と呼ばれている。奈良県吉野郡東吉野村にある式内社「丹生川上神社(にうかわかみじんじゃ)」などに祀られる。