𪕰か
Jiǎ
中国において旱魃を兆しとされた怪物の一つ。「格(かく)」ともよばれる。背丈は人間の腰より低く、頭のてっぺんに目が一つだけあり、とんでもない速さではしるという。しばしば街中で目撃されるという。𪕰の起こす旱魃の被害は、他のものが起こす旱魃の被害に比べて大きいとされるが、見つけてすぐに便所に閉じ込めれば、そこで𪕰は死んでしまい旱魃は起こらないという。
- 地域・カテゴリ
-
- キーワード
-
- 文献
Jiǎ
中国において旱魃を兆しとされた怪物の一つ。「格(かく)」ともよばれる。背丈は人間の腰より低く、頭のてっぺんに目が一つだけあり、とんでもない速さではしるという。しばしば街中で目撃されるという。𪕰の起こす旱魃の被害は、他のものが起こす旱魃の被害に比べて大きいとされるが、見つけてすぐに便所に閉じ込めれば、そこで𪕰は死んでしまい旱魃は起こらないという。
Ka
Ka
Gaasyendietha
北アメリカのネイティブアメリカンの一部族、イロコイ族に属するセネカ族に伝わるドラゴン型の巨大な怪物。口から火を吐き、炎の尾を残しながら飛ぶ。普段は川や湖の底に棲んでいるとされる。
Gaap
Kaang
南アフリカのサン人に信じられている創造神。無数の神々の頂点に立つ天空神。
Kaia
ニューギニア島の北東方にあるニューブリテン島にあるガゼル半島に住む種族に信じられている蛇の神。時にウナギや豚の姿でも現われる。またこれらを混成した人型の怪物の姿の時もある。火山の神でもあり、特に火口の下に好んで住むと言う。その住処の周囲は荒れ果てる。火山の噴火はカイアの霊力の発現であり、また地震や雷鳴を起こすのもカイアだとされるので、大変恐れられている。冥界では人間の姿だが現世では白い顎、黒い口、黄色い唇を持った巨大な蛇として現れるという。世界の始まりには創造者だったが、現在では邪悪になり、全てを悪い方向へ変えようとする。異伝では赤い顔をしたウナギだともされる。
Kaiamunu
パプアニューギニアのプラリ・デルタに住む人々の民話に登場する悪魔。「カイエムヌ(Kaiemunu)」とも呼ばれる。目に見えないとされるが儀式においては枝で編んだ抽象的な像において象徴される。少年の通過儀礼のとき、少年を一人一人呑み込んで、新しい生命として吐き出し、少年は成人として認められることになる。
Kaiemunu
Caioth
Karkaṭaka
密教の宿曜道における十二宮の一つ。サンスクリット名を「カルカタカ(Karkaṭaka)」といい、蟹を意味するため蟹宮というほか、「蟹神主(かいじんしゅ)」、「巨蟹宮(きょかいぐう)」、「螃蟹宮(ぼうかいぐう)」とも訳す。また音から「羯迦吒迦(かつかたか)」とも呼ばれる。西洋占星術における蟹座にあたり、期間としては小暑から大暑に至るまで(6月から7月にかけて)を指す。また二十七宿の井宿、鬼宿、柳宿に当たる。官公庁と弁舌を司るとされ、胎蔵界曼荼羅では北方(左側)に描かれる。
種字は「क(ka)」、真言は「唵羯囉迦吒迦波多曳莎呵(おんかつらかたかはたえいそわか)」。
「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v03p017
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
十二宮(十二宮)の一尊(三)として
Xiè-zhái
中国における瑞獣(縁起の良い獣)の一つ。身体は羊に似ていて、一本の角があり、また麒麟のように鱗に覆われているとされる。正、不正を見抜く不思議な力を持っており、不正な者を懲らしめる事から裁判と関係づけられ、後世にはその姿が裁判官の服に描かれた。このため、他の瑞獣は優れた王者の時代に出現するとされているが、獬豸は王者の裁判が公正に行われる時代に出現するとされる。このため司法官のかぶる冠は獬豸冠と呼ばれる。獬豸は人が争うを見ると悪い側を角で突き、議論するのを聞くと不正な側を噛むという。
寺島良安「倭漢三才図会」より
国立国会図書館蔵
Copyright: public domain
「訓蒙圖彙(きんもうずい)」(1666)より
ページ:v10p004
中村惕斎著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
獬廌同
Gytrash, Guytrash
イギリス北部のヨークシャーやランカシャーにおける犬の姿をした怪物。体だけ馬や牛やラバである場合もある。光る目を持つ巨大で毛むくじゃらの犬の姿をしていて、死と不吉の前兆とされる。またパッドフットのように寂しい夜道を一人で歩いている旅人を襲うという。
かいなんほうし
日本の伊豆諸島に伝わる海の妖怪。「海難坊(かいなんぼう)」とも呼ばれる。旧暦の1月24日に海からやってくるとされる悪霊で、海難法師を見た者はかならず凶事に見舞われるとされている。このため伊豆諸島の人々は24日は家の戸を固く閉ざし外出せず、また一切口を利かずにすごしたという。
Śīlapāramitā
密教における菩薩の一尊。サンスクリット名を「シーラパーラミター(Śīlapāramitā)」と称する。彼岸(悟り)に至る行法を「波羅蜜(はらみつ)」といい、波羅蜜を分類したうちの「六波羅蜜」および「十波羅蜜」のうちの一つである「戒波羅蜜(かいはらみつ)=道徳的規範を維持すること」を仏格化したもの。「持戒波羅蜜菩薩(じかいはらみつぼさつ)」、「淨戒波羅蜜菩薩(じょうかいはらみつぼさつ)」とも呼ばれる。また「シーラ」を音写して「尸羅波羅蜜菩薩(しらはらみつぼさつ)」、略して「尸波羅蜜菩薩(しはらみつぼさつ)」とも呼ばれる。 胎蔵界曼荼羅の虚空蔵院の北側(左側)中央より第二位に配される。その像容は肉色羯磨衣を身に着け左手に三弁宝を持ち右手は伏せて膝に置き、赤蓮華に座す姿で表される。
種字は「शी(śī)」、密号は「尸羅金剛(しらこんごう)」、三昧耶形は宝珠。印相は両手を内縛し両親指を立てるもの、真言は「唵試攞馱哩抳婆誐嚩底吽郝」(戒波羅蜜菩薩真言・T0852)。
国訳秘密儀軌編纂局 編
「新纂仏像図鑑 地之巻」より
国立国会図書館蔵
Copyright: public domain
Saṃkusumitarāja
仏教における如来の一尊。「開敷華王仏(かいふけおうぶつ)」とも。漢名はサンスクリット名である「サンクスミタラージャ(Saṃkusumitarāja=満開の花の王)」を意味訳したもの。「三句蘇弭多羅惹(さんくそみたらじゃ)」などと音写する。胎蔵界五仏のうち南方に配され、金剛界五仏の宝生如来と同体とされる(→五智如来)。草木がいつか花開くように、修行によって菩提心を開かれることを具現化した仏とされる。像形は赤黒色の袈裟を通肩(つうけ=両肩を通すこと)に着て左手は衣の端を握り臍前に置き、右手は施無畏印を示す。偏袒右肩(へんたんうけん=右肩だけ袖を通すこと)で描かれる場合もある。
「諸尊図像鈔(写)(しょそんずぞうしょう)」(不明)より
ページ:v01p019
著者不明
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
胎蔵界五仏中の一として。
Caim, Caym
ユダヤの魔神でソロモン王に封印された72柱の魔神の一人(→"ソロモンの霊")。「カミオ(Camio)」、「タプ(Tap)」とも呼ばれる。偽エノク文書の目録にもその名前が記載されている。ツグミ、サーベルを持ち炎に包まれた人間、羽根飾りと孔雀の尾を身につけた異形の人間という、三種の姿を持ち、召還した者の前にはツグミの姿であらわれる。事象の秘密を暗示する鳥の言葉を象徴する悪魔であり、言語と強く関連し、あらゆる動物と人間の言葉を教えてくれるという。地獄の大総裁であり、30の軍団の指揮官。また召喚者と意思を交わす際、喋るのではなく炎で文字を描いて伝達するとされる。
1863
コラン・ド・プランシー(Collin de Plancy)著
「地獄の辞典(Dictionnaire infernal)」より
フランス国立図書館(Bibliothèque nationale de France)蔵
Copyright : public domain
1863
コラン・ド・プランシー(Collin de Plancy)著
「地獄の辞典(Dictionnaire infernal)」より
フランス国立図書館(Bibliothèque nationale de France)蔵
Copyright : public domain
「The lesser key of Solomon, Goetia : the book of evil spirits」より
大英博物館(British Museum)蔵
Copyright : pubric domain
Kāi míng shòu
中国最古の地理書とされる「山海経」の海内西経の項に記される聖獣。西北にあり帝(天帝)の下都(下界に立てた都)であるという昆侖虚(崑崙の丘)の九つある門を守る役目を負っているという。その姿は巨大で、全体的には虎に似ているが、顔は九つの人面で、東に向いて昆侖の上に立っているという。
「山海經(せんがいきょう)」(不明)より
ページ:v03p034
郭璞(伝)著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
開明獸身大類虎而九首 皆人面 東嚮立昆侖上
Chayyoth
Chayyliel
旧約聖書偽典「第3エノク書(ヘブライ語エノク書)」に言及される天使。名前は「軍隊」を意味する。「カイイエル(Chayyiel)」、「カイリエル・H(Chayyliel H')」、「ハイイエル(Hayyiel)」、「ハイイェル(Hayyel)」、「ハイイリエル(Hayyliel)」、「ハイヤル(Hayyal)」、「ハイレアル(Haileal)」などの名でも呼ばれる。ハイヨトの支配者であり、テグリ、ムトニエル、イェヒエルなどとともに野獣を支配する天使だとされる。そう思うだけで「大地のすべてをたちまち一口に飲み込める」、恐ろしい天使であり、奉仕天使たちが決まられた時間に三聖謡を唱えなかったときなどはカイリエルに火のムチで打たれるという。
Caelus
ローマの天空の神。ギリシア神話のウラノスに相当する。
Cabyll-ushtey
マン島における恐ろしい水の精。「カーヴァル・ウースカ(Cabyll-uisge)」とも呼ばれる。ケルピーにとてもよく似ており、人間や家畜を魅了して水中に引きずりこみずたずたに引き裂く。「水の馬」を意味する名前のとおり馬の姿であらわれるがハンサムな若者の姿に変身することもある。
Cabyll-uisge
Gaviel
アバノのピエトロ(Peter de Abano)が著したとされる(しかし明らかに後世の作である)グリモア「ヘプタメロン(Heptameron)」において言及される天使。四季のうち夏を司る長の天使である、トゥビエルの配下の天使の一人。
Kawil
Kaukas
Kawkabel
Causub
テュアナのアポロニウス(Apollonius of Tyana)が著したとされる「ヌクテメロン(Nuctemeron)」中の「魔術的黄道十二宮に類似する十二の象徴的な時間」を支配する守護霊(Genius)、いわゆる「時間の鬼神」の一人。7時の霊の一人で蛇の魔法を司る。
Kautūhala
Gaunab
南アフリカのコイコイ人が信じる悪霊。虹を作る精霊だが他の地方の虹に関わる精霊とは対称的に善い精霊とはされない。至高神ツイゴアブに征服され、石の山に追い払われたとされている。
Gaurīmahāvidyā
Ga-Oh
中国の少数民族、景頗(チンポー)族の天地創造神話に登場する悪神。創造神ノンクェンアの天地創造を邪魔し、ノンクェンアに怪我をさせた上、天の河をひっくり返して大洪水を起こして人類を破滅させたという。
Cao-Dai
Ga-gaah
アメリカのネイティブアメリカン、イロコイ族に伝わるカラス。賢く老いた巨大なカラスだとされる。創造神ハーグウェーディユが蒔いていたトウモロコシの種を手に入れ、耳の中に入れて太陽の国から地球へ持ち帰ったという。このトウモロコシの種はイロコイ族の主食となった。
Gaganānantavikrama
Gaganāmala-vajradhara
Kakabel
旧約聖書外典「第1エノク書」や「天使ラジエルの書」などに見える天使ないし堕天使。「カウカベル(Kawkabel)」、「カバイエル(Kabaiel)」、「カビエル(Kabiel)」、「コカビエル(Kokabiel)」、「コカブ(Kochab)」、「コカブリエル(Kokhabriel)」、「コクビエル(Kochbiel,Kokbiel)」などはカカベルの別称とされる。名前は「神の星」を意味する。星と星位を司る天使であり、仲間たちに占星術を享受する職務に就いている。また彼には365,000の奉仕天使が配下にあり、カカベルはこれらの配下に第2天「ラクィア(Raqia)」から命を出すことによって星を運行していたという。堕天した後もこの365,000の奉仕天使は(堕天使として)配下にあるとされる。
Gargam
フランスの北西、ブルターニュ地方のケルト伝説に登場する巨人。名前はブルトン語で「そびえたつ曲線」を意味する。ガーガムは足が不自由であり、それを悟られないように夜出没することが多く、そのために「ボワトー(足を引きずる)」とも呼ばれる。
Kakamora
ソロモン諸島の南東端にあるサンクリストバル島に住む人々の信仰における小さな精霊達の総称。「カカンゴラ」とも呼ばれる。近隣の島では「カカンゴラ(Kakangora)」ないし「プワロンガ(Pwaronga)」と呼ばれることもある。カカモラの大きさは非常に小さなものから人間の膝の丈ほどのものまで様々だが、一様に長い髪、長く鋭い爪と歯を持っていると考えられている。森の中の洞窟や聖樹バンヤンに彼らの王や女王と共に住んでいて、金銭を蓄えるのが大好きだとされている。
カカモラは昔は人間狩りをしてその肉を食べていた。人間の住む家を覗き込んでは殺す機会を見計らっていたという。しかし、髪の毛をつかみカカモラを壁の隙間から引っ張り出してお尻を突っつく────という撃退方法を人間が見つけてからは、カカモラは人間、特に子供たちにいたずらを仕掛けるのを控えるようになったと言う。カカモラはまた、白いものが苦手だとされる。
かがやまとおみのかみ
かがよひめ
Kakangora
Preta
仏教で衆生が「六道(りくどう=煩悩に囚われた者が輪廻転生する6つの世界)」の一つである「餓鬼道(がきどう)」に堕ちた姿。元々はインドの「プレータ(Preta)」を意味訳したもので、「闍黎哆(じゃらいた)」、「閉多(へいた)」、「閉黎多(へいらいた)」、「彌荔多(へいれいた)」、「畢利多(ひりた)」など様々に音写されるほか、手にしたものが火に代わってしまうため常に飢えている、ということから「燄口(えんく)」とも呼ばれる。八部鬼衆には「薛茘多(へいれいた)」の名で増長天の眷属の一つとして列される。
「餓鬼草紙」より
国立国会図書館蔵
Copyright : pubric domain
Gé
Kakua kanbuzi
アフリカのウガンダに住むバソガ族の信仰における精霊。樹木の指導霊とされる。
Jué-yuán
Citrā
密教の宿曜道において二十八宿及び二十七宿の一つ。インドでは「チトラー(Citrā)="斑"、"雑色"の意」と呼ぶ。角宿、「彩画宿(さいがしゅく)」と訳されるほか、「質多羅(しったら)」、「質怛羅天(しったらてん)」と音写する。また日本では「角(すぼし)」の和名を当てる。胎蔵界曼荼羅では南方(右側)に配され、像容は両手で赤珠の乗った蓮を持つ。
種字は「चि(ci)」、「रो(ro)」、真言は「唵質多羅娑嚩訶(おんしったらそわか)」、三昧耶形は蓮上星。
国訳秘密儀軌編纂局 編
「新纂仏像図鑑 天之巻」より
国立国会図書館蔵
Copyright: public domain
「七曜星辰別行法」における図像で、角宿を司る病鬼王である「夜居山(やきょせん)」。
「大正新脩大藏經図像部 第7巻」
京都東寺観地院蔵「護摩爐壇様」より
大蔵出版
©大蔵出版及びSAT大蔵経データベース研究会(Licensed under CC BY-SA 4.0)
※「चित्र(citra)」と書かれている。
「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v03p015
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
廾八宿(二十八宿)の一尊(一)として
Juérú
中国の最古の地理書とされる「山海経」の西山経に記されている生物。塗途山(ないし皋涂山)という山にいる、鹿のような姿の獣で、尾は白く四つの角を持ち、前脚は人の手のようで、後脚は馬の脚のようだという。
「山海經(せんがいきょう)」(不明)より
ページ:v01p036
郭璞(伝)著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
Cacus
Cactus Cat
アメリカの噂話やほら話を起源とする怪物、フィアサム・クリッターの一種。ウィリアム・トーマス・コックス(William Thomas Cox)著「Fearsome Creatures of the Lumberwoods, With a Few Desert and Mountain Beasts」(1910)などに紹介されたもの。名前は「サボテン猫」の意。ハリネズミやヤマアラシのように全身を刺で覆われていて、特に耳には(まるでウチワサボテンのように)長く固い棘が生えていて、尻尾は枝分かれしている。サボテン酒が好物で、前脚にあるナイフ状の突起でサボテンを傷つけてまわり、発酵させて自らサボテン酒を造るという。これを舐めて酔っ払って踊りながら叫ぶとされる。またこの時前脚の突起を互いにぶつけて撃ち鳴らすのだという。カクタス・キャットには、「カクティフェリナス・イネブリウス(Cactifelinus inebrius)」ないし「フェリス・スピノビブルロスス(Felis spinobiblulosus)」という「学名」が与えられている。
ヘンリー・H・トライオン(Henry H. Tryon)著
マーガレット・ラムゼイ・トライオン(Margaret Ramsay Tryon)画
「フィアサムクリッター(Fearsome critters)」(1939)より
ミシガン大学(University of Michigan)蔵
Copyright: public domain
ウィリアム・トーマス・コックス(William Thomas Cox)著
「木こりの森の恐ろしい動物たち(砂漠と山の獣たちをわずかに含む)(Fearsome creatures of the lumberwoods :
with a few desert and mountain beasts)」(1910)より
ミシガン大学(University of Michigan)蔵
Copyright: public domain
かぐつちのかみ
Xiàyuán sānpǐn wŭqì shuǐguān dòngyīn dàdì
Xiàyuán sānpǐn shuǐguān jiĕè dàdì
Gargoile
フランス北東部の伝説や伝承に登場するドラゴンに似た姿の怪物。「ガルグイユ(Gargoyle)」とも呼ばれる。ルーアン周辺の田園地帯、セーヌ川の沼地に棲息しており、嵐や竜巻を起こして川を通るボートを転覆させ釣り人を飲み込んでしまうという。時には近くを通った人間や牛を沼地に引きずりこみ食べてしまうこともあった。7世紀に聖ロマンによって退治されたとされている。それから教会などの吐水口を装飾する怪物がガーゴイルと呼ばれるようになった。
Jiā-guó
中国四川省の高山に住んでいたとされる猿に似た怪物の一種。干宝著の「捜神記」に詳しく書かれている。「攫猿(かくえん)」、「馬化(ばか)」とも呼ばれる。全身毛むくじゃらで身長は170cmほどあり直立歩行するとされる。メスの猳国は存在せず、オスのみなので、人間の女の匂いを嗅ぎ分けて特に美人だけをさらって女房にするという。さらわれた女は子供を産むと、子供と一緒に家に返された。しかし子供が生まれない女は返してもらえず、いつしか猳国と同じ姿となり、自分が人間であったことさえ忘れてしまう。子を産んだ場合は母親と子供ともに家に送り返される。この子供を死なすと母親も死んでしまうとされるので周りは猳国の子であろうとも一生懸命育てる。この子供は猳国に似ず、人間と変わらないが「楊」の姓を名乗るという。
がごぜ
日本における妖怪の一種。「がごうじ」、「がごじ」とも読む。「日本霊異記」などによれば、飛鳥の元興寺というお寺の鐘楼に住んでいた人食い鬼で、寺で悪事を働いた者が化生したものだという。この話は日本霊異記の他にも「本朝文粋」、「扶桑略記」、「水鏡」といった書物にも記されており、江戸時代にはこの話に出てくる人食い鬼を「元興寺」と書いて「かごぜ」とか「がごじ」なとと呼び、子供をなだめすかしたり、脅したりする時に使われるようになった。江戸時代にはポピュラーな妖怪だったようで絵巻物にも頭から白布をかぶった僧のような格好をした鬼の姿で描かれた。鳥山石燕も「画図百鬼夜行」に寺の中から身を乗り出している元興寺(がごぜ)の姿を描いている。
関東から西日本にかけての広範囲の地域で妖怪を表す児童語として「がごじん」、「がごじ」、「がんごじ」といった言葉が残っているが柳田国男はこれらと元興寺(がごぜ)の関連性を否定し、これらの児童語は化け物が「咬もうぞ」といいながら出現することに起因したものではないかと記している。
Qasavara
太平洋南西部のニューヘブリデス島における怪物。クァットの兄弟達を食べてしまったが、カサヴァラはクァットに殺され、クァットは腹の中から出てきた兄弟達の骨を見つけて、元の姿に戻してやったという。
かざもつわけおしおのかみ
Chasan
Cir Sith
Kashehotapolo
アメリカ南部に住むネイティブアメリカン、チョクトー族における怪物。「カシェホ」は「女」を、「タポロ」は「呼ぶ」を意味する。人頭獣身で体に比べて頭が小さいとされる。沼地や湿地に潜んでおり、狩猟者の姿に気づくと甲高い叫び声を上げて逃げてしまうという。
Cassiel, Casiel
「カッシエル」とも。中世のグリモアやフランシス・バレット(Francis Barrett)の「魔術師(The Magus)」、アラン・カルデック(Allan Kardec)の「霊の書(Le Livre des Esprits)」などに言及される天使。「カスジエル(Casziel)」とも呼ばれる。またカフジエルと同一視される。7つの天のうちの第7天である「アラボト(Araboth)」を(あるいは第6天より上を総じて)支配する天使とされる。アークエンジェルないしパワーに列され、サリム(大公)の一人とされる。バレットによれば、マカタン(Machatan)、ウリエル(Uriel)などとともに土曜、及び土星の支配者の一人だという。
かしこねのみこと
Cassimolar
かしゃ
日本における死者をさらっていく妖怪。「肝取り(きもとり)」(鹿児島県出水市)、「キャシャ」(岩手県遠野、長野県南佐久郡)、「クワシャ」(福島県南会津、静岡県、愛媛県大三島、徳島県)、「テンマル」(群馬県甘楽郡)、「マドウクシャ」(愛知県知多郡日間賀島)など色々な名前でほぼ全国で知られる。平安時代には火に包まれた牛車の姿をしており、死人が出た家にものすごい勢いで押しかけ死者を冥土へ連れて行ったという。江戸時代には二本足で立つ巨大な猫の姿をしており、出現する時は嵐を巻き起こし、黒雲に包まれていたといわれる。
李冠光賢画
「怪物画本(かいぶつえほん)」より
国際日本文化研究センター蔵
Copyright: public domain
がしゃどくろ
日本における巨大な骸骨の姿をした妖怪。佐藤有文の「日本妖怪図鑑」に見える。多くの人々の恨みが連なって髑髏の姿の妖怪となったものとされる。奈良時代や平安時代には、賦役(人身課税による労役)などのために苦しんで死んだ人々の骸骨が都の周囲にごろごろしていた。これらの髑髏には霊が宿っており、こうした霊の恨みが集まって巨大化したものががしゃ髑髏であるという。その丈は大きい時は30m以上になり、しばしば夜の野辺を歩き回ったり、或いは建物を破壊したりしたという。
ただし、このような話は古文献には見られず、歌川国芳の描いた「相馬の古内裏」をモチーフに佐藤有文が創作した可能性が高い。また、この「相馬の古内裏」自体も山本京伝著「善知安方忠義伝」の一場面を国芳が浮世絵に起こしたものであり、もとは大勢の髑髏の絵であったものを国芳が一つの大きな髑髏として描いたものである。
Kasdeja
Kaspi
パタゴニア(アルゼンチン)のフエゴ(ティエラ・デル・フエゴ)島のオナ族における霊魂をさす名称。オナ族の人々は死ぬとカスピになり創造神テマウケルの元へ行くと信じている。
Chasmal
かぜのさぶろうさま
日本の新潟県、福島県、長野県などにつたわる民俗信仰における風の神。「風の神の三郎様(かぜのかみのさぶろうさま)」とも呼ばれる。黒牛に乗っているとされる。昔獅子に追われたことがあるので獅子が嫌いで、風の三郎様を祀るお宮では獅子舞はしないことになっている。また新潟県の東蒲原郡太田村では、村の入り口に小屋を作ってわざと壊すことにより風の三郎様に除けて通ってもらう、という神事が営まれている。
Kasogonaga
アルゼンチンの北部やパラグアイ、ボリビア南東部に住む人々(総じて「チャコ」と呼ばれる)における神。カソゴナガはチャコの多様性を示す指標となっており、ある地域では空にぶら下がり雨をもたらす天空を司る女神であり、またある地域では最初の人間の男女を創造した赤アリクイと巨大なカブトムシの名前である。
Huà-shé
中国最古の地理書とされる「山海経」の中山経に言及されている、凶兆となる生物の一つ。陽山という山を流れる、伊水(伊河)の支流である陽水という川に棲息している。頭は人、体は豺(サイ、山犬)で全体としては蛇の姿をしており翼を持っている。喚くように鳴くという。この獣が現われた国は洪水に見舞われるとされる。
「山海經(せんがいきょう)」(不明)より
ページ:v02p041
郭璞(伝)著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
Katavi
アフリカ、タンザニアのニャムウェジ族の信仰において、水の悪霊達を支配する悪霊。荒地に住むという。
かたきらうわ
「片身豚」とも書く。鹿児島県奄美大島に出現する妖怪の一種。影の無い子豚の姿をしていて、しきりに人の股をくぐろうとする。これにくぐられると死んでしまうか、性器を駄目にされて腑抜けになってしまうといわれる。とっさに両足を交差して立てば防ぐことが出来る(この状態でくぐられてもダメージは受けない)。片耳豚は耳が片一方しかなく、耳が両方無いものは「耳無豚(みんきらうわ)」と呼ばれるが、性質は大して変わらない。
Kadaklan
フィリピンのルソン島の山岳地帯に住むティンギアン人が信仰する雷神。キマットという忠犬とともに空の上に住んでいるとされる。カダクランが特別な儀式が必要だと感じれば、キマットは家でも樹木でも人間にでも噛み付く。これが落雷である。
カダクランは「もっとも偉大なる神」と呼ばれているにも関わらず、ティンギアン人の尊敬を受けておらず、祖先霊の方がはるかに大きな崇拝を受けている。これはティンギアン人にとって最も重要なものが葬儀であり、死者がマグラワと呼ばれる地下世界に無事行き着けることが重要だからだという。また一説にはカダクランの出自がティンギアン人自身のものではなく、フィリピンを武力支配したスペイン人(雷は銃を意味すると考えられる)が転じたものだからともいわれる。
Kataris
テュアナのアポロニウス(Apollonius of Tyana)が著したとされる「ヌクテメロン(Nuctemeron)」中の「魔術的黄道十二宮に類似する十二の象徴的な時間」を支配する守護霊(Genius)、いわゆる「時間の鬼神」の一人。10時の霊の一人で犬、ないし冒涜を司る。
かたわぐるま
日本の妖怪の一つ。片車輪の小車に一人の美女が乗った姿をしている。見たり、噂をするだけでたたりがあるとされ、これを見た母親が片輪車に子供をとられたという話が「諸国里人談」に載っている。それによれば好奇心に負けて愚かなことをしたと悔いた女は「罪科(つみとが)は 我にこそあれ小車の やるかたわかぬ子をばかくしそ」と書いた紙を戸口に張っておいてところ、また片輪車が現われて子供を返してくれたという。また「諸国百物語」にも同じような話が載っているが、こちらの片輪車に乗っていたのは恐ろしい形相の男であり、口には人の足を咥えていた。片輪車は覗き見した女の家の前に止まると「我の姿を見るより子供の姿をみろ」と叫んだ。女が子供のところに戻ってみると子供は股の辺りから引き裂かれて死んでいて、片足がなくなっていたという。後記の片輪車は石燕の書いた輪入道のモデルとなっている。
1806 山東京傳著、一陽斎豊国画「うとう(善知)安方忠義傳」全編六冊巻之五より
フランス国立図書館(Bibliothèque nationale de France)蔵
Copyright : public domain
暗夜街を巡り小兒をとりて鮮血をすふ/吐息ほのほを走らす/来去の所をしらず
Kachina, Katcina
プエブロ族を始めとして北アメリカ南西部に住むネイティブアメリカン諸部族に伝わる農耕を司る精霊。「カチナス(Katcinas)」あるいは「カツィナス(Katsinas)」とも呼ばれる。自然を体現する善良な霊であり、重要な儀式においては羽などで飾られた特徴的なカチナのマスクを踊子がかぶり儀式に臨む。カチナは文化英雄でもあり、彼らの先祖の前に現れメロンやトウモロコシの栽培の仕方を教えたとされる。
Katyutayuuq
カナダのハドソン湾東部に住むイヌイットに伝わる女の怪物。人間の姿をしているが、頭は小さく、その頭の口の上に胸が、下側に性器のついた姿をしている。男の怪物のトゥニテュアクルクとはつがいで、ともに人間を追いかけ回したり、捨てられたばかりのイグルー(雪の家)の中をあさったりする。廃墟になったイグルーの寝床に隠れる習性があり、たまたまその上に乗った人を怖がらせたりする。
Huá-huái
中国の伝承上の生物。最古の地理書とされる「山海経」の南山経にその名がみられる。堯光山という山に棲んでいる人のような姿の獣で、彘のようなたてがみがあり、木を切るような声で鳴くという。猾褢は穴に住み冬眠する習性があろ、この獣が現われると県は大きな労役が起こるとされる。
「山海經(せんがいきょう)」(不明)より
ページ:v01p021
郭璞(伝)著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
Huá-yú
中国最古の地理書とされる「山海経」の東山経に言及されている、凶兆となる魚の一つ。子桐山を流れる子桐水という川の沢である余如澤に多く棲息するという。この魚は鳥の翼を持っており、水から出入りする時に光を放ち鴛鴦(おしどり)のように鳴くという。この魚が現われると天下が旱魃に見舞われるとされる。
「山海經(せんがいきょう)」(不明)より
ページ:v02p039
郭璞(伝)著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
Vṛścika
密教の宿曜道における十二宮の一つ。サンスクリット名を「ヴリシュチカ(Vṛścika)」といい、サソリを意味することから蝎宮、「蝎神(かつじん)」、「蠍宮(かつぐう)」、「天蠍宮(てんかつぐう)」、「蝎虫宮(かっちゅうぐう)」と訳すほか、音から「毘梨支迦(びりしか)」とも呼ばれる。西洋占星術における蠍座にあたり、期間としては立冬から小雪に至るまで(10月から11月にかけて)を指す。また二十七宿の氐宿、房宿、心宿にあたる。病気や禁忌を司るとされ、胎蔵界曼荼羅では西方(下側)にサソリの形で描かれる。
種字は「वृ(vṛ)」、真言は「唵毘利支迦波多曳莎呵(おんびりしかはたえいそわか)」。
「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v03p018
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
十二宮(十二宮)の一尊(十一)として
Candra-prabhā
仏教において、日光菩薩とともに薬師如来の右脇に侍する脇侍として知られる菩薩。サンスクリット名を「チャンドラプラバ(Candraprabha)="月の輝き"の意」、あるいは「アーリヤチャンドラプラバ(Ārya-candra-prabha)="聖なる月の輝き"の意」といい、「月光王(がっこうおう)」、「月光遍照(がっこうへんじょう)」、「聖月光(しょうがっこう)」などの名でも呼ばれる。また音写では「戦達羅鉢剌婆(せんだらはらば)」、「賛捺羅鉢羅婆(さんだらはらば)」と呼ばれる。
単身で配されることは殆ど無く、薬師如来を中心に挟んで日光菩薩と対照的なポーズをとっていることが多い。薬師如来の治癒力の手助けをする菩薩で、その光明で病苦を除くとされる。金剛界曼荼羅では賢劫十六大菩薩の一尊として檀外の西方(上側)の4尊のうち北(右)から一番目に配される。その像容は白色の身色で右手、或いは両手で半月の載った蓮華を持つ姿で表される。胎蔵界曼荼羅では文殊院の北側(左側)の中央から第四位に配し、三髻の童子形で左手に未敷蓮華を持ち、右手に半弦月の載った細葉の青蓮華を持ち赤蓮華に座す姿で表される。
種字は「च(ca)」、「चं(caṃ)」、密号は「威徳金剛(いとくこんごう)」(胎蔵界)、「清涼金剛(しょうりょうこんごう)」、「適悦金剛(てきえつこんごう)」(金剛界)、三昧耶形は青蓮華上半月(胎蔵界)、半月、半月幢、印相は右手に人差し指と親指を捻るもの(持花印)、真言は「曩莫三曼多沒馱南戰拏羅鉢羅婆野縛莎呵(なうまくさまんだぼだなんせんだらはらばやそわか)」(T2476)。
「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v02p012
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
二十五菩薩の一尊として。
「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v03p005
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
三十日秘仏の一尊(廾日)として
国訳秘密儀軌編纂局 編
「新纂仏像図鑑 地之巻」より
国立国会図書館蔵
Copyright: public domain
国訳秘密儀軌編纂局 編
「新纂仏像図鑑 地之巻」より
国立国会図書館蔵
Copyright: public domain
国訳秘密儀軌編纂局 編
「新纂仏像図鑑 地之巻」より
国立国会図書館蔵
Copyright: public domain
Hé-zhǎng guān-yīn
仏教において変化観音(→観音菩薩)の一種であり三十三観音の一尊。観音菩薩が姿を変えて人々を救済するという「三十三応現身」のうちの「婆羅門身(ばらもんしん)」にあたる仏尊とされる。蓮華上に立ち合掌した姿で描かれる。
「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v02p018
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
三十三観音の一尊として。
Hè jū
中国最古の地理書とされる「山海経」の東山経の東次四経に言及される獣。北號山という山に棲んでいて、全体的には狼のような姿だが首(頭部)は赤く目は鼠のようで豚のような声をしているという。北號山にはほかに鬿雀という鳥がいるが、どちらも人を食べるという。郝懿行は「玉篇」「廣韻」を引いて猲狙は間違いで「獦狚(かつたん/Hé dàn)」が正しいのではないかと注している。
「山海經(せんがいきょう)」(不明)より
ページ:v02p037
郭璞(伝)著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
Katzenveit
ドイツのフィヒテルゲビルゲ地方の民間伝承に登場する怪物。森の中に住んでいて、うかつに森に入った人間(特に子供)はカッツェンヴァイトに襲われてしまうとされている。
Candra
インド神話の月の神チャンドラ(Candra)が仏教に取り込まれたもの。「月天子(がってんし)」、「月宮天子(がっぐうてんし)」、「月光天子(がっこうてんし)」とも呼ばれる。また音訳では「戦捺羅(せんだら)」、「旃陀羅(せんだら)」、「戦達羅(せんだら)」と呼ばれる。ほかにもチャンドラの別称である「ニシャーカラ(Niśākara)="夜の作り手"の意」から「創夜神(そうやじん)」、「クムダパティ(Kumudapati)="蓮の主"」から「蓮華王(れんげおう)」、「シュヴェータ・ヴァージン(Śveta-vājin)="白馬"の意」から「白馬主(はくばしゅ)」、「シータ・マリーチ(Śīta-marīci)="冷たい光線"の意」から「冷光神(りょうこうじん)」、「ムリガーンカ(Mṛgāṅka)="鹿の印"の意」から「鹿形神(ろくぎょうじん)」、「シャシ(Śaśi)="野兎のような"の意」から「野兔形神(やとぎょうじん)」、月や夜を意味する「インドゥ(Indu)」の音写で「印度(いんど)」、星宿(→二十八宿)を統べる者としての名である「ナクシャトラ・ナータ(Nakṣatra-nātha)="星の支配者"の意」ないし「ナクシャトラ・ラージャ(Nakṣatra-rāja)」の意味訳から「星宿王(しょうしゅくおう)」など、数多くの別名をもつ。ただし「月天子」などの名称は「ソーマ(Soma)」=「蘇摩(そま)」の意味訳で別体であり、月曜を指すとも言われる。
十二天の一尊として本地を勢至菩薩とし月を象徴する。夜を司る神として世間を照らし、法楽(仏法を享受する喜び)を与える仏尊とされる。「長阿含経」などに拠れば、身体から千筋の光を発しており、そのうち500の光は下方へ、もう500の光は横方向へと延びているという。このことから「千光明(せんこうみょう)」、「涼冷光明(りょうりょうこうみょう)」などの異名も持つ。胎蔵界曼荼羅では外金剛部院(最外院)の西方(下部)に「月天妃」とともに、金剛界曼荼羅では南方(左側)に描かれる。
種字は「चं(caṃ)」(胎蔵界)、「प्र(pra)」(金剛界)、印相は蓮華印や梵天印、真言は「唵戰捺羅野莎呵(おんせんだらやそわか)」、「南莫三曼多沒馱南戦捺羅也娑嚩訶(なもさんまんたぼだなんせんだらやそわか)」、三昧耶形は白瓶(胎蔵界)、半月(金剛界)。
国訳秘密儀軌編纂局 編
「新纂仏像図鑑 天之巻」より
国立国会図書館蔵
Copyright: public domain
国訳秘密儀軌編纂局 編
「新纂仏像図鑑 天之巻」より
国立国会図書館蔵
Copyright: public domain
「諸尊図像鈔(写)(しょそんずぞうしょう)」(不明)より
ページ:v09p059
著者不明
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v03p021
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
十二天の一尊として
Gadd
イスラム教が広まる以前のアラビア半島北部における神の総称。様々な善なる神がガッドと呼ばれていた。また「幸運」を擬人化してガッドと呼ぶこともあった。
かっぱ
日本各地の川、湖沼、海などに住む妖怪。「猿猴」、「めどち」、「がわっぱ」等はその異称とも、或いは河童の一種族とも言われる。一般的におかっぱ頭の童子の姿で頭に皿があり、背中には甲羅を背負い体中に黒っぽい斑点のついた全体的に緑色の体で、三本指の手と足には水掻きがついている。皿の中には水がたまっており、これが乾いたりしてなくなると死んでしまうという。両腕は一本に繋がっており、片腕を引くともう一方の腕は短くなるといわれる。食べるわけでもないのに馬や人間(特に子供)を川に引きずり込んで生き血を吸ったり、人の尻子玉(肛門の所にあると想像された玉)を抜いたという。またキュウリが好物だといわれる。尻子玉の話は溺死体の腸が膨れ肛門がぽっかり開く様からの連想だと考えられる。
Karmapāramitā
Candra, Soma
仏教における九曜及び七曜の一尊。月のことで、サンスクリットでは「チャンドラ(Candra)」ないし「ソーマ(Soma)」と称する。漢訳では月曜のほか「月曜星(がつようしょう)」、「太陰(たいいん)」、「月星(がっしょう)」、「月精(がっしょう)」、「月天曜(がってんよう)」などの名で呼ばれるほか、「蘇摩(そま)」と音写される。北西を司り、胎蔵界曼荼羅での像容は羯磨衣を着け右手に兎の乗った半月を乗せ、左手は胸に当て5羽の鳩に足を交えて坐す。
種子は「च(ca)」、「सु(su)」、真言は「唵戦 怛羅 曩乞灑 怛羅 邏惹野 設底 娑婆賀(おんせん たら なうきっしゃ たら あらんじゃや せんち そわか)」、三昧耶形は兎の乗った半月。
「大正新脩大藏經図像部 第7巻」
京都東寺観地院蔵「護摩爐壇様」より
大蔵出版
©大蔵出版及びSAT大蔵経データベース研究会(Licensed under CC BY-SA 4.0)
「莫(も)」、「महा (mahā)」はペルシア語で月の神である「マーフ(Māh)」の音写。
「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v03p015
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
九曜星(九曜)の一尊(第八)として
Kadishim
Katyn Tayuuq
カナダハドソン湾東部に住むイヌイットに伝わる怪物。女性器のついた巨大な頭に胸と足が垂れ下がった、ほぼ頭だけの姿をしている。人間の住居に意のままに入ることが出来たとされる。
Agni
インド神話の火の神アグニが仏教に取り込まれ漢字に意訳されたもの。「火光尊(かこうそん)」、「火仙(かせん)」、「火神(かしん)」とも称する。また「アグニ(Agni)」を音訳して「阿耆尼(あぎに/あぐに)」、「阿哦那(あがな)」、「悪祁尼(あくきに)」とも呼ばれる。仏教を擁護する天の一人であり、八天、十二天の一人として東南を守護する。従って胎蔵界曼荼羅でも東南の守護神として外金剛部院(最外院)の東南(右上)隅に配置されている。一般的に赤い体に白い長髪と髭を有した一面四臂の半裸の老仙の姿で表される。智の炎で煩悩を焼き尽くすという。地水火風の四大天にも数えられる。
密号は「護法金剛(ごほうこんごう)」、種字は「अ(a)」、「र(ra)」、印相は三角印、真言は「唵阿哦那曳喃娑縛訶(おんあがなえいそわか)」。
国訳秘密儀軌編纂局 編
「新纂仏像図鑑 天之巻」より
国立国会図書館蔵
Copyright: public domain
国訳秘密儀軌編纂局 編
「新纂仏像図鑑 天之巻」より
国立国会図書館蔵
Copyright: public domain
「諸尊図像鈔(写)(しょそんずぞうしょう)」(不明)より
ページ:v09p035
著者不明
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v03p022
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
十二天の一尊として
Qat
Katukilal
インド南部のドラビダ族の一部族、タミル人における森の女神。コットラウィの化身ともされる。
Catoblepas
古代ローマの将軍で博物学者、ガイウス=プリニウス=セクンドゥスによって書かれた百科全書「博物誌」にみえる獣。カトブレパスとは「うつむくもの」という意味のギリシア語。「博物誌」よればこの怪物はエチオピアやエジプト南部の荒野に生息し、極端に重い頭を持っていて、その重さの為に首は細くのび、頭が地面についてしまっているという。またカトブレパスの目を見たものは死んでしまうともされている。中世ヨーロッパの動物寓話集にはカトブレパスの恐ろしい目はピンク色で(見たら死ぬのに何故確認できたのか?)、痩せた黒い体の上に豚の頭がのっていたと書かれている。カトブレパスはおそらく頭を重そうに持ち上げるヌーなどを起源とするのではないかと考えられている。
Gadreel
mKha' 'gro ma, Khandroma
チベット仏教におけるダーキニーの呼び名。「カンドゥマ」とも。天界を自由に動き回る女性的存在であり、その裸身は完全なる真理を身につけていることを象徴しているとされる。ヴァジュラヴァーラーヒーはカドローマーの一人である。
Kanassa
ブラジル中部のシング川流域に住んでいるクイクル族の信じる、世界に光をもたらした神。原初、世界は全くの闇であった。世界に光を灯そうと考えたカナッサは、最初ホタルに光を提供してくれるように頼むがこれは断られた。そこでカナッサはハゲワシの王ウグウブ=クエンゴの元に行き、足を掴んで、空から燃えさしを持ってこなければ足を離さないと脅した。こうして燃えさしを手にしたカナッサはそれから火を起こそうとしたが、カエルが水をかけてそれを邪魔しようとした。そこでカナッサは蛇の力を借りて火を水辺から安全なところに移し、ようやく天空に火がもたらされた。アヒルに泳ぎを教えたり、ホウカンチョウに羽の頭飾りを与えたのもカナッサだとされる。
Khananel
Kanarohan Tambing Kabanteran Bulan
かなやこがみ
日本の民俗信仰に伝わる製鉄を司る神。神名の「金屋」とは鍛冶や鋳物をする作業場のことを言う。また「子神(こがみ)」とされる理由としては、「古事記」に登場する金山毘古神、金山毘売神両神と御子神だからという説があるが、金屋子神自体は古事記にも日本書記にも言及されていない。島根県能義郡にある金屋子神社に伝わる伝承によると、金屋子神は白鷺に乗って飛んできてこの地方に製鉄技術を広めた神だとされる。金屋子神はある時犬に吠えられ追いかけられたので急いで蹈鞴(製鉄所)に逃げ込もうとしたが、転んでそのまま死んでしまった。蹈鞴師らがその亡骸を柱に立てておいたところ蹈鞴から沢山の鉄が湧いたいう。この伝承から今でも製鉄所では死人を中に入れても犬は絶対入れないという。
かなやまびこのかみ
かなやまびめのかみ
Ganiagwaihegowa
北アメリカの北東部に住むネイティブアメリカンの一部族、イロコイ族に属するセネカ族の伝承に伝わる怪物。毛のない熊のような姿をしており、村を襲い略奪をしたり、人間を捕まえて食い殺したりすることで恐れられていた。そこでハデンテニ(Hadentheni=演説者の意)とハニゴンゲンダタ(Hanigongendatha=通訳者の意)はこの厄介な怪物を退治するため、精霊ガジクサ(Gadjiqsa)に助言を求めた。ガジクサは二人に、ガニアグワイヘゴワは一見不死身だが足の裏だけはそうではないこと、頭が悪いので作り物の人形でも人間と間違えて襲うことを教えた。二人は人形をおとりにして怪物が人形をおとりにしているうちに足の裏を矢で射抜いて身動きが出来ないように両足を切り落としたあと、ガニアグワイヘゴワを火で焼き尽くして退治を成功させた。
Kanniamma
南インド、マドラス近郊で信仰される女神。人々に魚を与えてくれる女神とされる。魚が獲れないときはカニアンマが怒っているしるしとされる。
Kaṇikrodha
Kanyā
Kaneakeluh
ネイティブアメリカンの一部族、クワキウトゥル族における想像上の巨鳥。人間に火をもたらしたとされている。
Ganeśa
インド神話における学問の神。「眷属の支配者」の意。「ガナパティ(Ganapati)」ともいう。シヴァとパールヴァティーの子とも眷属の一人ともされるが、本来はインドの先住民の災厄・厄病の神であった。学問上の書物の冒頭にこの神に対する帰敬偈(経・論などの中に、韻文の形で、仏徳を讃嘆し教理を述べたもの)がおかれることが多い。また事業や新しい事を援護するとされ、事業に携わる者によく祀られる。姿は象面で長鼻、1牙、4臂、長腹をもつ。パールヴァティーが水浴をする時に、彼女はガネーシャに見張りを頼んだ。そこに父親のシヴァがやってきた時、ガネーシャは杓子定規に彼もさえぎったので、シヴァは逆上してガネーシャの首を切った。これにパールヴァティーが怒ったのでシヴァは近くにいた象の頭をガネーシャの首に据えた。またほかの伝承ではとても危険だとされる土星の神シャニをシヴァが招待したとき、シャニがガネーシャに視線を移した途端ガネーシャの頭が炎に包まれてしまったので、ブラフマーの手によりシヴァの乗り物とされる白象アイラーヴァタの頭をガネーシャに据えられたのだという。ガネーシャの牙が一本しかないのは、ラーマと戦った時に、彼の持つ斧を見てシヴァの与えたものだと知ったガネーシャが、わざと牙を折られて敗北して見せたからである。他の伝承では彼は叙事詩「マハーバーラタ」の最初の記述者であり、自分の牙を一本折ってペンとしたので牙が一本しかないのだとされる。仏教では、歓喜天となる。
かねだま
日本における黄金の精霊の一種。鳥山石燕の「今昔画図続百鬼」の説明では、金霊は黄金の気であり、善人の元に出現して大金持ちにするものだとしている。どうやら空を飛んでくるものらしく、大量の大判小判が光とともに蔵の中に降り注ぐ絵が描かれている。もっともこれは「天より福を授かる」という言葉を象徴的に表した絵で、金霊本体を描いた絵ではないかもしれない。「古今百物語評判」には、夕暮れ時に薄雲の姿になって出現した銭神(ぜにがみ)という金霊の話がある。その薄雲は人家の軒の辺りで声をあげて騒ぎ立て、見つけた人が刀で切りつけるとそこから沢山の銭がこぼれ落ちてきたという。
かねんぬし
濱田隆一著「天草島民俗誌」に紹介される妖怪。熊本県天草市の倉岳町浦(旧浦村)に出たという怪異。名切(なぎり)の橋の本というところにあった石の眼鏡橋に、大晦日の晩に行くと金ん主が立っており、力比べをして勝てば大金持ちになれたという。金ん主は武士のような姿をしているという。
Kabaiel
Kahausibware
南太平洋にあるソロモン諸島で崇拝される、蛇の姿をした女の精霊。「大地に果実がたわわに実っていた」頃、人間や豚、その他の動物、木々を作ったとされる。しかし、人間に死をもたらすのもカハウシブワレだといわれる。最初の女が最初の赤ん坊を産んだとき、女はカハウシブワレに赤ん坊をあずけて庭仕事に出かけた。しかしカハウシブワレはあまりにもうるさく泣く赤ん坊に耐えかねて思わず赤ん坊をとぐろに巻いて絞め殺してしまった。怒った女はカハウシブワレの体を斧で切り刻んだ。カハウシブワレは身体を切り刻まれても元に戻る能力を持っていたがこの女の仕打ちに怒り、「これから一体誰があなたを助けるのだ?」と言い捨てて遠くの島へ泳ぎ去った。その後人間は労働によって食物を得なければならなくなったという。
Hé-bà
中国神話・道教における黄河を支配する河の神。また、河の神を総称して河伯と呼ぶこともある。河伯は黄河に似合って数ある河の神の中でも最も重要、強力な神とされ、豊作や降雨を授ける力があるとされた。すでに殷(~紀元前10世紀頃)の時代から河伯に対する祭祀は行われていて、おもに牛などが生贄として捧げられた。また、時代によっては巫女などが住民の娘を全員花嫁として飾り立て、ベッドに寝かせて沈めて生贄にした時期もあったという。広く信じられている説では冰夷(あるいは憑夷=ひょうい)という男が渡河中に溺死し、天帝から河伯に命じられたのだとされる。また道教では冰夷が薬を飲んで水の仙人となり、河伯になったとされる。洛水の女神である雒嬪がその配偶神であるとされる。
かつて河伯が暴風雨の中に出現したは水の車に乗り、二頭の龍に車を引かせ、螭を添え馬にしていたという伝説が残っている。また、河伯自体は人頭魚体ともいわれ、明朝の頃からは龍の一種と考えられるようになったといわれている。
Huā-pò
中国における木の精の一種。3人以上の人が首をくくって自殺した木に、自殺した人の恨みによって誕生するという。手に乗るほどの大きさの裸の美女で、体には全く毛が無く(髪の毛など以外)、声はインコの鳴き声に似ていて人間には通じない。木の精なので水がないと生きられず、水を与えないと干からびて死んでしまう。しかし、干からびた花魄の体の上に水をかけてやると再び生き返るといわれている。
アイヌにおいてコウモリを顕現体とする男性のカムイ。名前は文字通り「コウモリのカムイ」の意。神謡においては、カパプカムイは他のカムイと異なり、「カムイモシリ(カムイの世界)」から降臨したカムイではなく、天空を領有するカムイ、もしくはコタンカラカムイによって「アイヌモシリ(人間の世界)」で創造されたカムイであるとされている。カパプカムイは非常に賢明な(もしくは悪知恵の回る)カムイとされ、アイヌを苦しめる悪魔をその知恵で出し抜いたという伝説がある。アイヌ人たちはコウモリが死んだフリをする動物と考えていたらしく、悪魔との争いにおいてもこれによって悪魔を油断させて射殺したとされている。この巧みな擬死によってカパプカムイは強く賢いカムイとされたらしい。また、コウモリの死骸は悪魔を退ける呪物とされた。
Carbuncle
ヨーロッパで16世紀頃、南米国探検に基づいて想像された額に宝石のついた生物。マルチン・デル・バルコ・センテネラ司祭が著作の中で実際に見たと記している。それによれば彼はパラグアイに行った時この生物を見たとしている。その後他の旅行者達が何年間もこの宝石を持つ生物を探しつづけたが、結局誰も見つけることができなかった。
Kabanda
Kafziel
Kabunian
フィリピンのルソン島に住むイフガオ族における創造神。初めに世界を創ったが、欠点を見つけたのでこれを滅ぼした。その後モンタログとモンティニグが新しく世界を創り、また最初の人間を生んだ。カブニアンは彼ら最初の人間達に供物を神に捧げる大切さを教えた。カブニアンには側近であるリチュムという神がいる。
Kapoonis
アメリカの太平洋岸北西部にすむネイティブアメリカンに伝わる稲妻の精霊。エヌムクラウとは兄弟で元々人間だったが、火の精霊を力を借りて稲妻を起こす力を得た。彼等の力を恐れた天空神によって稲妻のみを起こせる精霊として生まれ変わったとされている。
Cabracàn
Gabriel
ユダヤ教、キリスト教における天使で、天使の九階級のうち第二位であるケルブ(智天使)に属する。語義は「神の英雄」ないし「神は我が力」。イスラム教におけるジブリール。旧約聖書に名前の見える二人の天使のうちの一人(もう一人はミカエル)で、受胎告知、復活、慈悲、復讐、死、啓示、審判などを司るとされる。特に聖地の死の天使の役割を担っており、モーセを埋葬した天使の一人とされている。天の財宝を守る役割を持っており、そこから天国の財政を任されているともされる。エデンの園の統括者であり、七層ある天界の第一天(「シャマイン(Shamain)」ないし「シャマイイム(Shamayim)」)の支配者であり、神(ヤーウェ)の左側に座る者とされる(しかし神の住まいは一般的に第一天ではない)。
イスラエルの守護天使の一人としても数えられ、火と雷の支配者ともされた。またその流れで「神の処罰者」としての役割も与えられている。右手に正義と真理をあらわす剣を、左手には公正さを表す天秤を持っている。甲冑を身にまとい、バケツ型の兜をかぶっているとも伝えられる。
またキリスト教では聖母マリアにイエス・キリストの受胎を告知した天使であるとされる。「神の伝令役」の天使であると考えられ、「ヨハネの黙示録」では最後の審判の日を告げるラッパを吹き鳴らす天使(御前の七天使)とされる。
Gabriel Hound
イギリス北部のダラム、ランカシャー、ヨークシャーなどの地域に伝わるワイルド・ハント。「ガブリエル・ラチェット(Gabriel ratchet)」、「ガブル・ラチェット(Gabble ratchet)」、「ガブルラケット(Gabbleracket)」などの名前でも呼ばれる。嵐の夜に人間の頭をもった犬の集団が空を飛ぶもので、洗礼を受けていない者や罪人の魂、あるいは悪霊の群れとされ、生き物に災難をもたらすために悪魔によって遣わされたと考えられた。ガブリエル・ハウンドの姿を見たり、その音を聞いたりしたすると、その者の家に死者が出るという。
Cafre, Kafre
フィリピン諸島の伝承に登場する超自然的な怪物。「プゴット(Pugot, Pugut)」とも呼ばれる。恐ろしい牙を持つ牡牛ほどの大きさの黒い生物で、猪に似ているが後ろ足で立って二足歩行することができ、そのうえ人間の言葉を解し自らも話すという。またその足跡は人間の足跡に似ているとされる。その能力を使い密林で人間を追い詰めて食べてしまうという。ただ、知能的には未熟で人間にだまされて獲物を取り逃がすこともあった。
Caprotina
ローマにおいて三大主神格であるユノの数ある別称の一つ。ガリア人が攻めてきたのを奴隷たちが知らせた記念に行う、7月7日の祭礼で祀られる主神。
Gahe
ネイティブアメリカンの一部族、チリカワ・アパッチ族に伝わる超自然的存在。部族の守護神であり、また山々の精霊であるとされるため「マウンテン・ピープル(山の人々)」と呼ばれることもある。治癒儀礼や成女式には頭飾りなどを付けガヘに扮したダンサーが踊りを捧げ悪霊除けや治癒を祈る。アパッチの戦士団がメキシコの騎兵隊に襲われたとき、大勢のガヘたちによって助けられたという話が伝わっている。
ホワイト・マウンテン・アパッチ族においては「ガン(G'an)」、リパン・アパッチ族においては「ハクツィ(Hactci)」、ヒカリヤ・アパッチ族においては「ハクツィン(Hactcin)」ないし「ハストシン(Hastshin)」と呼ばれている存在と関係がある。またプエブロ族のカチナに相当する。
Kabeiroi
Kabeiros
エーゲ海北部の島々と、プリュギア(小アジア地方)における古い豊穣を司る神々。テーバイ(テーベ)でも信仰されていた。複数人存在するので、複数形で、「カベイロイ(Kabeiroi)」と呼ばれることも多い。ギリシア神話に取り入れられ、航海の守護者、鍛冶の神などとして信仰された。
Cahor
テュアナのアポロニウス(Apollonius of Tyana)が著したとされる「ヌクテメロン(Nuctemeron)」中の「魔術的黄道十二宮に類似する十二の象徴的な時間」を支配する守護霊(Genius)、いわゆる「時間の鬼神」の一人。3時の霊の一人で詐欺(ないし欺瞞)を司る。
Gahongas
Kāma
インド神話における愛の神。「カーマデーヴァ(Kāma-dēva)」とも呼ばれる。元々インド思想で「カーマ」とは(正しい)性欲や愛欲、善への衝動を指す言葉で、これが神格化されたもの。原初から存在した観念神であるため普通の神より高位に置かれる。真理の神「ダルマ(Dharma)」と信仰の神「シュラッダー」の子とされるが、ラクシュミの子とされたり、ブラフマーの神像から生まれたとされるときもある。官能の女神「ラティー(Ratī)」を配偶神とし、妖精アプサラスを支配する。オウムに乗り、5本の花の矢を持ち、花を飾ったサトウキビの弓につがえて人の心を射る。彼はパールヴァティーに頼まれシヴァの苦行を妨げようとしてシヴァの第3の目によって焼き殺されてしまう。それ以来「アナンガ( Anaṅga="体なき者")」と呼ばれるようになった。また、「マンマサ(Manmatha="心をかき乱すもの")」「マノーブー(Manobhū="心に生じるもの")」、「カンダルパ(Kandarpa="愛欲")」などとも呼ばれる。仏教に取り入られ、愛染明王に帰化する。
Camaysar
テュアナのアポロニウス(Apollonius of Tyana)が著したとされる「ヌクテメロン(Nuctemeron)」中の「魔術的黄道十二宮に類似する十二の象徴的な時間」を支配する守護霊(Genius)、いわゆる「時間の鬼神」の一人。5時の霊の一人で対立者の結婚を司る。
かまいたち
日本の越後などに現れる妖怪。「構太刀」とも書く。また「窮奇」の字を当てることもある。鎌鼬現象(突然皮膚が裂けて、鋭利な鎌で切ったような切り傷ができる現象。気候の変動で空中に真空部分が生じた時、これに触れた人体気の空気が、一時に平均を保とうとするために起こるといわれる)を起こす原因と考えられた。決して姿を見せずに一瞬のうちに人間の太ももなどを切り裂くが、肉を大きく裂かれても痛みはなく血も出ない。このため一説には鎌鼬は必ず三人組で行動し、一人目が人を倒し、二人目が切り裂き、三人目が薬をつけるので傷が痛まないともされた。愛知県では逃げた飯綱が悪さをするものだと考えられた。
1805
鳥山石燕著
「畫圖 百鬼夜行(前篇陰)」より
国立国会図書館蔵
Copyright: public domain
Camahueto
チリのチロエ島において伝承される海の怪物。その姿は巨人だったり、あるいは額の中央に一本の角が生えた雄牛、あるいは子牛だったりと様々に伝えられている。川の上流で生まれたタツノオトシゴが成長するに従って大きくなり川を下って巨大になったもの、とされることもある。また「海のチヴァト」とされる事もある。しかし姿がどうであれ水棲の怪物であり、牙や鉤爪を使って崖をくりぬき隠れ住んでおり、近づいた船を襲い人を食べる危険な怪物であることには変わりない。
Camael, Khamael
Camaxtli
Cama Zotz
マヤにおける殺戮神でありコウモリの神。地下世界「シバルバ(Xibalba)」の第一階層「ソツィハ(Zotziha)」の主。双子の英雄であるフンアフプーとイシュバランケの行く手を妨害し、フンアフプーの頭を切り落とした。しかしフンアフプーは策略を用いてこれを取り戻した。
Chammaday
がまび
日本の岩手県紫波郡煙山村(現在の矢巾町の一部)に伝わる怪火。山田野理夫著「怪談の世界」に紹介されたもの。大字矢沢にある供養石から毎夜火柱が立つので、ある者が馬の爪切りで切りかかったところ火は消えた。翌朝現場を見てみると大きな古蝦蟇が頭を切られて死んでいたという。
Kamapua'a
ポリネシアのハワイ諸島の神話に登場する原初の巨大豚。名前は「豚の子」を意味し、その鼻を使って海の底からハワイの島々を持ち上げたとされる。ハワイ諸島の島々の間の海峡や島にある湖はカマプアアの歩いた跡だとされる。カマプアアは性欲が旺盛で、よく女神や人間の女を追い掛け回し、その間に多くの怪物を誕生させた。しかし火山の女神ペレに拒絶され、ペレに与した神々によって低地地方へ追いやられた。それ以来ペレは高地、カマプアアは低地に住んで顔をあわせないようにしているが、二人が会ってしまった場合は闘争が始まるので地震が起こるとされている。
Kamallo
アフリカのナイジェリア、イスアマ地方に住む人々に信じられている悪霊。みんなの身に悪いことがおきないよう人々はカマロをなだめる。
沖縄の渡名喜島における河童のような妖怪。八重山では「カマローマ」と呼ばれる。「カマロ」とは禿のこと。裸で真っ赤な体をした子供のような風貌で、虎のような顔に甲と鱗があるという。カマローグワの通り道は決まっており、カマローグワに出会うことは避けられる。梯梧などの木の辺りに住んでいるといわれる。
Camio
かみきり
日本における怪異ないし妖怪の一種。「髪切」とも書く。「諸国里人談」や「耳嚢」、「半日閑話」などに紹介されるもの。「諸国里人談」に拠れば、夜中に道を歩いていると男女問わずに髪の毛を元結際(結んでいるところ)からいつの間にかバッサリ切られてしまうというもの。伊勢の松坂(現在の三重県松阪市)に多く現れたが江戸でも同様のことがあったという。諸国里人談ではこれを元禄(1688-1704)のはじめの頃の話として紹介しているが、「花柳界おまじないと怪談」という明治に書かれた本には安政(1855年-1860)の頃の話として伊勢古市(現在の伊勢市古市町周辺)にあった色里(=遊郭)で同様の「髪切魔(かみきりま)」と呼ばれた怪物の話が記されている。佐脇嵩之の「百怪図巻」や「化物づくし(湯本C本)」には手や口が鋏のような形状をしている化け物が、歌川芳藤 「髪切りの奇談」には真っ黒な毛で覆われたずんぐりとした化け物(文中では「猫のようで天鵞絨(ビロード)のような毛の化け物」と形容されている)が描かれている。「髪切り(という怪異)」はこういった妖怪によって行われたとされる一方、狐の仕業とされたり(「耳嚢」による)、髪切虫という怪虫の仕業とされたり(「嬉遊笑覧」による)、また人間による犯行とされることもあった。
かみきりむし
日本における怪虫。男女問わず、髪が元結際(結んでいるところ)からいつの間にかばっさり切られている、という怪異「髪切り」の元凶として想像された怪虫。髪切りは「諸国里人談」に拠れば伊勢の松坂(現在の三重県松阪市)や江戸(現東京)などで起こったようで、髪切虫の他に狐もその犯人として疑われていた。カミキリムシは実在する鞘翅目の昆虫で髪どころか小枝さえも切断できる大顎を持っているが、人を襲うようなことは無い。
Gamigin
ユダヤの魔神の一人。「ガミュギュン(Gamygyn)」、「サミギナ(Samigina)」とも呼ばれる。地獄の大侯爵の地位にあり、30の軍団を率いる。小さな馬ないし驢馬の姿で出現する。死者の魂を呼び出して喋らせる、いわゆる降霊術に長けている。人間の姿で現れる場合もあり、その場合は召還者にに学問に関する事柄を教えてくれる。ソロモン王に封印された72柱の魔神の一人(→"ソロモンの霊")。
「The lesser key of Solomon, Goetia : the book of evil spirits」より
大英博物館(British Museum)蔵
Copyright : pubric domain
かみむすひのかみ
日本記紀神話において、天之御中主神、高御産巣日神に次ぎ、三番目に高天原(たかまがはら)に顕れた神。造化の三神の一。「かみむすびのかみ」とも発音する。「神産巣日神」とするのは「古事記」で、「日本書紀」には「神皇産霊尊(かみむすびのみこと)」、「神魂神(かみむすびのかみ)」、「神産巣日御祖命(かみむすひのおやのみこと)」などと記載されている。また「出雲国風土記」では「御祖命(みおやのみこと)」と記載されている。「ムスヒ」とは天地と万物を生み出し成長させる霊妙な力を意味する。神産巣日神は母性的な神格、高御産巣日神は男性的な神格であり、男女対の産霊の神として解釈されるが、天之御中主神と同様に獨神(ひとりがみ=単独の神)であり、夫婦神というわけではない。この二対の神は元々同一の神格だったと考えられている。
「出雲国風土記」では出雲の神々の母なる神々として登場し、自らの住む高天原の宮殿を模した宮殿を地上に作らせている。また古くから皇室の守護神である宮中八神(神産巣日神、高御産巣日神、留魂神(たまるむすひのかみ)、生魂神(いくむすひのかみ)、足魂神(たるむすひのかみ)、大宮之売神(おおみやのめのかみ)、御饌都神(みけつのかみ)、事代主神(ことしろぬしのかみ)の八柱)の筆頭で、重要な神格とされた。もともと出雲の土着神であり、皇室と深い関係のあった神だと考えられている。
かみよななよ
アイヌ民族において、動植物や自然現象などの人間以外のあらゆる自然現象を擬人化した超自然的存在。言い換えればアイヌ(人間)を除いた世界の構成要素。鹿を狩るための毒(トリカブト)が自然界に存在すること、弓をこしらえられるよくしなる木が自然界に存在すること、大きく強いクマが自然界に存在すること、といった人間が持たない自然界の不思議や脅威にカムイは想定される。アイヌにとってカムイは人間と同じように文化をもつ対等の隣人であり、アイヌとカムイは互いに神秘的な存在である。
カムイは山奥や天上にあるカムイモシリというカムイの世界に住んでいて、そこではカムイ達は「カムイネ」と呼ばれる人間と変わらない姿で暮らしている。カムイ達はアイヌモシリ(人間界)に降りてくるときだけ、クマのカムイであればクマの衣装を、タヌキ(ムジナ)のカムイであればタヌキの衣装を着る。カムイモシリに戻るときはこれらの衣装を脱がなければならない。そしてその衣装や仮面を自分で脱ぐのは難しいため、これをアイヌが脱がせるのを手伝う。つまり、皮や肉(衣装)をはいでカムイ達を身軽にする。カムイたちは不死だと考えられており、狩りは人間界に降りてきたカムイ達を彼らの世界に帰りやすくする、ギブアンドテイクの行為だと考えられた。ただし、彼らが人間界に置いていく衣装(皮や肉)はカムイからアイヌへの贈り物であり、これに対してアイヌは礼儀を尽くさねばならない。正しい儀礼とともに行われる屠殺だけが許されると考えられた。
Chamuel, Kamuel
かむおおいちひめ
かむなおびのかみ
かむやたてひめのみこと
かむやまといわれびこのみこと
Kamrusepas
Camena
ローマにおける水のニンフで、ギリシアのムサに相当する。ローマのカペナ門外にその聖なる森と泉がある。
かもたけつのみのみこと
日本記紀神話に登場する男神。「古事記」や「日本書紀」には言及されないが、「新撰姓氏録」や「山城国風土記逸文」において賀茂氏の祖神とされている神。「タケツノミ」の神名は「猛き神」を意味する。「賀茂建角身命」は山城国風土記においての表記であり、ほかに同訓で「鴨建津之身命」、「鴨建津身命」、「賀茂建津之身命」、「賀茂武角之身命」などと表記するほか、「建角身命(たけつのみのみこと)」、「武津之身命(たけつのみのみこと)」、「建角見命(たけつのみのみこと)」、「健角身命(たけつのみのみこと)」などの名前でも呼ばれる。またほかにも山城国風土記逸文において「賀茂大神(かものおおかみ)」といった呼称が見られる。「先代旧事本紀」において素戔烏尊(すさのおのみこと→須佐之男命)の十一世の孫として登場する「大鴨積命(おおかもつみのみこと)」も賀茂氏の祖とされているため同神と考えられる。
「新撰姓氏録」において「神魂命(かみむすひのみこと)→神産巣日神」の孫とされ、神武天皇(→神倭伊波礼毘古命)が山中で迷ったとき、大烏と化し天皇を導いたとある。この「大烏(おおがらす)」とはいわゆる「八咫烏(やたがらす)」のことであり、このため賀茂建角身命は「天八咫烏(あめのやたがらす)」、「八咫烏命(やたがらすのみこと)」などの名でも呼ばれることがある。「山城国風土記逸文」に拠れば「伊賀古夜日売(いかこやひめ)」という女神を娶り「玉依日子(たまよりひこ)→建玉依比古命」、「玉依日売(たまよりひめ)→建玉依比売命」という子神をもうけた。
賀茂氏の祖として子神の建玉依比売命とともに「賀茂御祖神(かもみおやのかみ)」と称され、京都市左京区にある式内社「賀茂御祖神社(かもみおやじんじゃ)」、通称「下鴨神社(しもがもじんじゃ)」の主祭神とされるほか、全国の「賀茂神社」、「加茂神社」、「鴨神社」といった賀茂氏系の神社で祀られている。
かものおおかみ
かもわけいかづちのみこと
「山城国風土記逸文」などに言及される賀茂氏神系の神。「賀茂別雷神(かもわけいかづちのかみ)」、「別分雷之命(わけいかづちのみこと)」、「加茂別雷大神(かもわけいかづちのおおかみ)」、「鴨若雷命(かもわけいかづちのみこと)」などの名でも呼ばれる。山城国風土記逸文に拠れば建玉依比売命が川で拾い上げた、「火雷神」が変じた丹塗り矢によって身籠り生まれた子神とされる。神名にある「別雷(わけいかづち)」とは「若い雷」の意味を持ち、雷神の御子神であることを示すとされるが、氏族の祖として家を分けたことを示すという説もある。
京都市北区にある式内社「賀茂別雷神社(かもわけいかづちじんじゃ)」の主祭神として祀られるほか、「賀茂」、「鴨」、「加茂」などの名が付く全国の賀茂氏神系の神社で祀られる。
かやのひめのかみ
Chayoh
Maṅgala, Aṅgāraka
仏教における九曜及び七曜の一尊。火星のことで、サンスクリットでは「マンガラ(Maṅgala)」ないし「アンガーラカ(Aṅgāraka)」と称する。漢訳では火曜のほか「火曜星(かようしょう)」、「火星(かしょう)」、「火精(かしょう)」、「火星曜(かしょうよう)」、「火大曜(かたいよう)」、「熒惑星(けいわくしょう)」、「火熒星(かけいしょう)」、「罰星(ばつしょう)」などの名で呼ばれるほか、「盎哦囉迦(おうがらか)」と音写される。南方を司り、胎蔵界曼荼羅での像容は右手は腰に当て、左手は矛を持ち足を交差して坐す。また北斗曼荼羅では赤色の身色で天衣、天冠を着けた忿怒形で四臂、左手に弓と剣、右手に箭と三股戟を持つ。
種子は「अ(a)」、真言は「唵阿誐羅嚕儗野 莎訶(おんあぎゃらろぎや そわか)」、三昧耶形は戟。
「大正新脩大藏經図像部 第7巻」
京都東寺観地院蔵「護摩爐壇様」より
大蔵出版
©大蔵出版及びSAT大蔵経データベース研究会(Licensed under CC BY-SA 4.0)
「雲漠(うんばく)」、「वनहन(vanahana)」はペルシアで火星の神である「ヴァフラーン(Vahrām)」(→ウルス・ラグナ)の音写。
「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v03p014
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
九曜星(九曜)の一尊(第六)として
Chajoth
Khara
ゾロアスター教における宇宙ロバ。巨大なロバの姿をしているが足は三本で、目は通常の位置と頭の上、後頭部の三対合計六個、額には角が生えていて口は六つある。全てを見通し悪を妨げるという。
Kala
Hé-luó
中国の最古の地理書とされる「山海経」に記されている怪魚。「何羅魚(からぎょ)」ともいう。北山の譙明山を流れる譙水に多く生息し、1つの頭に10もの胴がついた姿をしている。犬のように吠えるとされる。この何羅を食べると腫物が治るという。
「山海經(せんがいきょう)」(不明)より
ページ:v02p003
郭璞(伝)著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
Kalau
シベリア北東部のコリャク族に伝わる悪鬼達。「カラ(Kala)」とも呼ばれる。創造神テナントムワンが材木を取りに森に行くと、地下に一軒の家があった。そこはカラウの家で、カラウ達はテナントムワンを捕まえ、食べるために太らせ始めた。あるとき、テナントムワンは年老いたカラウの見張りで外に出た。テナントムワンは、研いでやろうといってそのカラウの斧を借り、また「鴨の群れだ」と嘘を言ってカラウがそっちを向いている間に斧で首を切り落として逃げ出した。
自分の家まで逃げたテナントムワンは、「至高神の宇宙」ニャイニネンに「彼らの矢は両目があって、絶対に的に命中する」と訴えた。そこで、ニャイニネンはテナントムワンに鉄の口を与えた。まもなく、カラウの息子達がテナントムワンに追いつき、矢を放ちだしたが、テナントムワンはそれを全部鉄の口で受け止め、全部飲み込んでしまった。矢を全部失ってしまったカラウ達は逃げ出した。その後、テナントムワンは矢を吐き出して息子達に与えたという。
Kalaviṅka
Caracasa
アバノのピエトロ(Peter de Abano)が著したとされる(しかし明らかに後世の作である)グリモア「ヘプタメロン(Heptameron)」において言及される天使。四季のうち春を司る長の天使である、スプグリグエルの配下の天使の一人。
からかさ
日本における妖怪の一種。「唐傘」、「傘」と書いても「からかさ」と読む。また「から傘小僧」、「傘お化け」とも言われる。年を経て古びたから傘が魂をもって妖怪となったもの。全体的に傘をすぼめた形で、傘の部分には一つ目(二つ目の場合もある)と口、腕がついており、また本来は柄がある部分からは脚が一本生えていて、一本歯の高下駄を履いている。雨の日に出現し、一本足でピョンピョンと跳ねながら長い舌を出して道行く人々を驚かす。よく知られる妖怪だが、実際に現われたといった記述はないようである。
一寿斎芳員画「百種怪談妖物雙六」より
国立国会図書館蔵
Copyright : public domain
Karakarook
からすてんぐ
Charadrios
中世ヨーロッパで信じられた不思議な鳥。人間の病気を診断し、病気を吸い取って治してくれるという。白い色をしており、チドリの一種だとかセキレイの一種などとされる。病人の部屋にやってくると一目でその人の病気を看破し、くちばしを開いて病気を吸い取ってくれる。ただし手遅れの場合は背を向けて飛び去ってしまう。カラドリオスの吸い込んだ病気は空高く舞い上がって大気中に吐き出される。
「自然の魅力(Der naturen bloeme/The Flower of Nature)」(1350)より
ページ:f079va
ヤーコブ・ファン・マールラント(Jacob van Maerlant)著
オランダ国立図書館(Koninklijke Bibliotheek/Royal Library of the Netherlands)蔵
Copyright : public domain
「動物寓話集(ジェラルド・オブ・ウェールズのトポグラフィア・ヒベルニカからの追加を含む)(A bestiary with additions from Gerald of Wales's Topographia Hibernica)」(12世紀後半-13世紀前半)より
ページ:f040r
著者不明
大英図書館(British Library)蔵
Copyright : public domain
「動物寓話集(Bestiary Bodleian Library MS. Bodl. 764)」(1226–1250)より
ページ:f063v
著者不明
ボドリアン図書館(Bodleian Library)蔵
Copyright : public domain
Kara-neme
からのかみ
Kalab
テュアナのアポロニウス(Apollonius of Tyana)が著したとされる「ヌクテメロン(Nuctemeron)」中の「魔術的黄道十二宮に類似する十二の象徴的な時間」を支配する守護霊(Genius)、いわゆる「時間の鬼神」の一人。12時の霊の一人で聖なる器を司る。
Gara Yaka
Kālarātri
Karariwari
北米のネイティブアメリカンであるポーニー族の言葉で「動かない星」(=北極星)の意。創造神ティラウ・アティウスがすべての星の軌道と位置を決めようとしたときに北に立つように言われたのがカラリワリであり、他の全ての星がカラリワリを中心として回ることから、ポーニー族では「族長の星」と見なされる。カラリワリは族長と交信して、族長に必要な安定性と支配力を与えるという。カラリワリの近くを回る小円を描く星々は、「族長協議会」と称されている。
Galar
Karawatoniga
メラネシア、トゥベトゥベ族の信仰における慈悲深い精霊。海辺の岩や植物などに住んでいる。どことなく人間に似ており、髪は長く、目鼻立ちははっきりしないとされる。
Kari
Kali, Kālī
インド神話において、シヴァの妻であるパールヴァティーがとる様々な姿の一つで、その中でも最も恐ろしい神格。元々はベンガル地方の一女神であった。名前は「時・期間」あるいは「黒」を意味し、牙のある口、長い舌、真っ黒な体、獲り縄、頭蓋骨のついた杖、剣、生首をそれぞれ持った四本の腕で表される。またシヴァのように額に第三の目を持っている。ドゥルガーが怒った時にその額から発現したとされる。身体には蛇を巻きつけ、自分の子供達の無数の首を繋げて首飾りにしているという。元々はパールヴァティーと別の神格だったものが、シヴァ信仰に伴ってパールヴァティーに吸収されたと考えられている。カーリーは恐ろしい神格ではあるが、この恐ろしさは悪魔や死を滅ぼすために必要だと考えられている。
Karia
Cailleach Bara, Cailleach Beara, Cailleac Bhéarra, Cailleach Bhéirre, Cailleach Béirre, Cailleach Béarra Cailleach Bheare, Cailleach Bhéara, Cailleach Beare, Cailleach Bhérri, Cailleach Birra, Cailleach Bheur
イギリス、スコットランドの高地地方やアイルランドにおける冬の妖精。ハッグの一種だとされる。その名はゲール語(ケルト語に属する古代アイルランドの言語)で「青い妖婆」と言う意味で、その名のとおり青く醜い顔をしていて、晩秋になると一本の杖を持ち林や森や公園の中を歩き回る。その時、その杖が木々に触れると木の葉がすっかり舞い落ちてしまうという。冬の間日差しを暗くしたり雪を運んだりするのもカリアッハ・ヴェーラで、春が来て五月祭の前夜になると石になる。しかし、再び秋が来てハロウィンの日になると、息を吹き返して美しい夏の乙女に転生し、草花の芽を育て、新しい息吹を吹き込むという。
また動物達の守護精霊でもあり、鹿、猪、野山羊、狼などを使い魔とする代わりに、育て、養い、猟師たちから守る。水をつかさどる能力も持つ。またアイルランドでは沢山の巨石遺構を残したのがカリアッハ・ヴェーラだとされている。彼女が巨人のような大きな姿になってエプロンに石をいれて運んで道路を作ったときに、エプロンからこぼれた石が巨石遺構になったのだという。
Gallizul, Galizur, Gallizur
Hārītī
Ngariman
Kalaviṅka
ヒマラヤに棲息するとされた想像上の鳥でサンスクリット名を「カラヴィンカ(Kalaviṅka)」という。音写では「迦陵頻伽」のほか、「加蘭伽(からんか)」、「迦陵伽(かりょうか)」、「歌羅頻迦(からびんか)」、「羯羅頻迦(からひんか)」、「迦陸頻伽鳥(かりくひんがちょう)」などと呼ばれる。また意味訳では「妙声鳥(みょうしょうちょう)」、「妙音鳥(みょうおんちょう)」、「美音言鳥(びおんごんちょう)」、「好音声鳥(こうおんしょうちょう)」など多くの呼び名がある。
人頭鳥身の生物であり、どの鳥よりも美しい声で鳴くとされ、その声は仏陀の音声に比するという。また卵の状態の時から鳴き声を発するという。天衣を纏い鼓を抱え叩く姿で描かれる。極楽浄土に住むともされ、中国や日本で文様として使われた。
「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v04p016
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
Karkaṭaka
Gargatel
アバノのピエトロ(Peter de Abano)が著したとされる(しかし明らかに後世の作である)グリモア「ヘプタメロン(Heptameron)」において言及される天使。四季のうち夏を司る長の天使である、トゥビエルの配下の天使の一人。
Galgaliel, Galgalliel
Galgalim, Galgallim
Kalki
インド神話において、ヴィシュヌが世界を救うために変身する十種の化身(アヴァターラ)のうち、最後の化身。滅びと悪徳の末世「カリ・ユガ」において、人間が堕落の極地に達し、世界の終わりが来たときにあらわれ、悪人を皆殺しにするのがカルキとされる。名前は「カリの者」といった意味。「カルキン(Kalkin)」とも呼ばれる。悪と不道徳と不法を滅ぼし尽くし、世界にダルマ(法・秩序)を取り戻すのがカルキの役目であるが、いずれにしても世界はシヴァにより破壊され、ブラフマーに吸収される。そしてまた新しい世界がブラフマーによって作り出されるのである。
いまだに来たらざる者であるカルキの姿は明確には予言されていない。ただ、白馬にまたがった騎士、あるいは馬頭人身の姿で描かれることが多い。
1620. フランス国立図書館蔵
Copyright: public domain
Source: Bibliothèque nationale de France
Chalkydri, Kalkydri
Gargoyle
Kaluks
ミャンマーやタイの民俗信仰おいて木に棲む精霊(ピー)の一種。眼には見えないが、風も無いのに木の葉が揺れるのはカルクスがそこにいる証拠とされる。木を切る前にはまずカルクスにお伺いをたてなければならない。エン族(ミャンマーの少数民族)に拠れば、これを怠った者は死ぬといわれている。
Kalu kumāra yaka
スリランカのシンハラ人が信仰する仏教において、愛の誘惑に負けて死んだ修験者が悪魔になったもの。肉体的に弱いという理由で妊婦を狙っては産褥熱や合併症を起こさせて苦しめるという。
Caalcrinolaas
Garuḍa
Cardea
ローマ神話における扉の蝶番(ちょうつがい)の女神。家族生活を司る存在でもある。ローマ帝政初期の抒情詩人であるオウィディウスによって、彼女の神話がカルナの神話として混同して伝えられたという経緯を持っている。それによれば、カルデアは後にローマ市となるティベル河沿岸にある森に住み、山野で狩りをして暮らしていた。彼女は処女を守る誓いを立てており、男性が近づくと一緒に森に入り、あっという間に姿をくらましてしまうのだという。しかしヤヌスがカルデアに恋をして、一緒に森に入った時、双面であるヤヌスはカルデアが岩の背に隠れようとしたところを発見することが出来た。そしてヤヌスは彼女を捕らえて犯した。ヤヌスはその代償としてカルデアに蝶番の支配権と、その支配権のしるしとして、家の戸を守る魔力のあるサンザシの枝を与えた。
Carna
ローマ神話における健康の女神。祭礼は6月1日に行われる。夜現れて赤ん坊の血を吸うという魔鳥を追い払う力を持っており、アルバ・ロンガ王プロカスの子が魔鳥に血を吸われていたのを救ったという。ローマ帝政初期の抒情詩人であるオウィディウスによって叙事詩に唄われているが、これはオウィディウスがカルナとカルデアを混同して伝えたものである。
Kalfu
ハイチのヴードゥー教において、戸口や入り口を守護するとされる精霊。西アフリカの神に起源があると考えられている。他の精霊たちを儀式に導く役目をになっているとされる。
Karmavajrī
Karmapāramitā
Garm, Garmr
ゲルマン神話における冥府ニブルヘイムの番犬。「怒れるもの(gramr)」が語源だと思われる。冥府の女王ヘルの国「ニブルヘイム」の入り口となっている切り立った洞窟「グニパヘリル(Gnipahellir)」に鎖で繋がれており、無闇にニブルヘイムに近づく生者などを追い払ったという(ただし、オーディンが通った時は例外として襲わなかった)。巨大で血を滴らせた四つ目を持った犬の姿をしている。ラグナロクの時には、鎖から解き放たれ、ミズガルズで魔軍の有力な一員として戦う。ガルムはラグナロクの始まりと終わりを声高く吠えて宣言する。つまりラグナロクにおいて最後まで生き残るがティルと壮絶な死闘を演じともに死ぬとされる。
Garuḍa
インド神話のガルダが仏教に取り入れられ、音訳された名称。「迦楼羅天(かるらてん)」とも呼ばれる。また「迦留羅(かるら)」、「迦婁羅(かるら)」、「掲路荼(かろだ)」、「蘖嚕拏(がろな)」などの音写も見られる。ガルダの神格から「食吐悲苦声(じきとひくしょう)」とも訳される。またその姿から「金翅鳥(こんじちょう)」、「妙翅鳥(みょうじちょう)」、「頂癭(ちょうえい)」とも称される。インド神話においてはヴィシュヌの乗り物とされるが、仏教においては天竜八部の一尊であり、梵天、大自在天、文殊菩薩などの化身とされる。両翼をのばすと三三六万里もあり、金色の体で、口から火を吐き竜を取って食うとされる。雨乞いや治病、怨敵降伏などを司り、「ナーガを喰らうが如く人々の煩悩を撲滅する」とされる。
迦楼羅を一種族としてとらえる場合、これを「迦楼羅衆(かるらしゅう)」、「金翅鳥衆(こんじちょうしゅう)」などと呼び、その主領を「迦楼羅王(かるらおう)」、「金翅鳥王(こんじちょうおう)」などと呼ぶ。妙法蓮華経には「大威徳迦樓羅王(だいいとくかるらおう)」、「大身迦樓羅王(だいしんかるらおう)」、「大満迦樓羅王(だいまんかるらおう)」、「如意迦樓羅王(にょいかるらおう)」の四人、あるいはの「大身王(だいしんのう)」、「大具足王(だいぐそくおう)」、「得神足王(とくしんそくおう)」、「不可動王(ふかどうおう)」の四人の迦樓羅王が見える。また大方等無想経には「堅固金翅鳥王(けんごこんじちょうおう)」、「鼓声金翅鳥王(こしょうこんじちょうおう)」、「壊一切龍王力金翅鳥王(えいっさいりゅうおうりきこんじちょうおう)」などの名が見える。
胎蔵界曼荼羅外金剛部院には鳥頭人身の「迦楼羅王(かるらおう)」と「迦楼羅女(かるらにょ)」の二尊が南方(右側)に配される。また口が嘴で有翼の人の姿などでも描かれるほか、単に鳥そのものの姿でも描かれる。たとえば那羅延天の乗る鳥も迦楼羅である。
種字は「ग(ga)」、「हूं(hūṃ)」、「रो(ro)」、印相は両手を親指で組んで残りの指を伸ばして広げる、広げた羽を模したもの、真言は「唵誐樓拏野娑婆呵(おんがろなやそわか)」、三昧耶形は宝螺、篳篥。
「大正新脩大藏經図像部 第1巻」
「大悲胎藏大曼荼羅 仁和寺版」より
大蔵出版
©大蔵出版及びSAT大蔵経データベース研究会(Licensed under CC BY-SA 4.0)
胎蔵界曼荼羅外金剛部院における図像。鳥頭人身で翼があり坐し、螺貝や横笛、篳篥を奏する。
「諸尊図像鈔(写)(しょそんずぞうしょう)」(不明)より
ページ:v11p033
著者不明
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
「大正新脩大藏經図像部 第3巻」
高野山真別院処円通寺蔵「図像抄」より
大蔵出版
©大蔵出版及びSAT大蔵経データベース研究会(Licensed under CC BY-SA 4.0)
迦楼羅密言経などを元にした図像。四臂で上半身は天王形だが鼻は鷹の嘴に似て、顔は緑色、下半身は鷹のようで羽と尾を延ばし海中の岩上に立つ。
「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v04p006
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
觀音廾八部衆(→二十八部衆)の一尊として
Gallas
古代シュメールやアッカド神話の中で、冥界に棲むとされる精霊ないし悪魔の一種。冥界の女王エレシュキガルの為に働き、女王の命令で地上に行って生きている人間を捕まえることもあった。目的の人間を手に入れる為には、集団になっていたる所を探し回り、邪魔する者がいるとかなりひどい事もした。ガルラには善い霊と悪い霊、あるいは大小の二種類があるとされ、一方は槍のように細く、もう一方は葦の筆のように細いといわれるが、正確な姿はわからない。
Karei
マレーシアのセマン族における偉大な存在。名前は「雷」をあらわし、雷の鳴る音はカレイの怒った声だとされる。怒りをなだめるためには数滴の血が必要だという。
Galeru
Galokwudzuwis
カナダ北部に住むクワキウトゥル族における人食い怪鳥。バクバクワラノオクシワイの妻。「天空をかける曲がったくちばし」と称され、その名の通りそのくちばしは大きく隆起しているとされる。
Karoṭapāṇi
かわあかご
鳥山石燕が画集「今昔画図続百鬼」の中で、河童の一種ではないかと説明している赤ん坊の姿をした妖怪。石燕は獅子のような顔をした赤ん坊がまるで捨てられているように川岸の茂みにいる姿を書いている。石燕によれば山の川の藻などにまぎれている赤子のような姿をした妖怪だという。多田克巳の「絵解き画図百鬼夜行の妖怪」によれば、これは糸ミミズを「赤子」とも呼んだことに因む絵遊びであり、そのために背景にいかだと釣り竿が描かれているのだとしている。
かわおとこ
日本の岐阜県の川原にあらわれるという妖怪。江戸時代の国語辞典「和訓栞」にその記述が見える。大きな川に網漁に出かけると出合うことが多いという。黒い色をしていて極端に背が高いが、出会うのは夜ばかりなので細かい特徴は分からない。よく川原や川の近くの草むらなどで必ず二人で並んで座り、互いに物語などを話している。何もしないでおとなしく聞いていれば人にも物語を聞かしてくれるようだが、その内容を記述した文献はない。
かわぼたる
千葉県の印旛沼で見られるという蓑火に似た怪火。「亡者の陰火(もうじゃのいんか)」とも呼ばれる。蛍の光のような蹴鞠ほどの大きさの火の玉が水上の一、二尺(約30~60cm)ほどの高さをふらふらと飛ぶという。夏か)ら秋にかけての雨の降る晩によく見られ、集まってくっついたり離れたりを繰り返す。時に船上まで入ってくることがあり、棹でたたきつけると砕けるが一面に火が広がり、船には強烈な生臭さが残り、船には油に似たヌルヌルしたものが付着するという。この川蛍の火は物を燃やしたり熱くなったりしない陰火であるという。
かわやのかみ
日本の民俗信仰において厠(トイレ)を守護するといわれる神。「厠神(かわやじん/かわやがみ)」、「便所神(べんじょがみ)」、「雪隠神(せっちんがみ/せんちがみ)」、「おへや神」、「閑所神(かんじょがみ)」などの呼び方もある。便所の壺の中にいて、片手で大便を、もう一方の手で小便を受け取るが、唾を吐いた場合は口で受け止めなければならないのでひどく怒るという。また恥ずかしがりやで、便所に入る前は咳払いして合図をしなければならないとされる。お産とも関係が深く、妊婦が美しいこの誕生を祈願して厠を清めたり、臨月に便所にお参りをしてお産が軽く済むように祈願したりする。これは排便の様子がお産の様子に酷似していることから起こった、いわゆる類感呪術の一種と見られる。白い紙で男女の人形を作り、これを厠の神として祀ることが多い。加牟波理入道も厠の神とされる場合もある。また、「厠(かわや)→川原(かわら)」と結びついて、水の神であり伊邪那美命の糞や尿から生まれたとされる波邇夜須毘売神と弥都波能売神の別名ともされる。仏教においては不浄を司るところから烏芻沙摩明王のこととされる。
Huān
中国において最古の地理書とされる「山海経」の西山経に言及される生物。西山の翼望山に生息する獣で、一つ目で三つの尾を持つ狸のような姿の獣で、声で色々真似ることができるという。この獣は凶を防ぐのに良く、また黄疸を癒す薬になるという。山海経中にはほかにも孟槐、鵸鵌、冉遺魚といった「凶を防ぐ」存在について言及されている。
「山海經(せんがいきょう)」(不明)より
ページ:v01p054
郭璞(伝)著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
Huàn
中国の地理書「山海経」の南山経に言及される生物。洵山という山にいる獣で、羊のような見た目だが口が存在せず、また殺そうとしても殺せない獣だという。
「山海經(せんがいきょう)」(不明)より
ページ:v01p023
郭璞(伝)著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
G'an
ネイティブアメリカンの一部族、ホワイト・マウンテン・アパッチ族における超自然的存在。チリカワ・アパッチ族のガヘに相当する。かつては人間とともに住んでいたが、人間に嫌気が差し今は山岳地帯の奥地に潜んでいるとされる。
Gaṅgā
Guàn-guàn
中国の伝承に登場する怪鳥。古代の地理書「山海経」の南山経によれば、青丘山に棲んでいる鳥で、鳩のような姿で、人間が呼び交わすような声で鳴く鳥だという。この鳥を身に帯びると惑いがなくなるとされる。
「山海經(せんがいきょう)」(不明)より
ページ:v01p019
郭璞(伝)著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
がんぎこぞう
日本の妖怪の一種。鳥山石燕の画集「今昔百鬼拾遺」にその名が見える。川辺などに出現し、鋭いギザギザの歯でバリバリと音を立てて魚を喰う妖怪であり、歯の形が雁木(木こりなどが用いる大形ののこぎり)に似ていることから岸涯小僧と呼ばれるという。腹と胸をのぞいて体中に毛が生え、尻尾があり、手足に水掻きがある猿のような姿が描かれており、歯がやすりのようだと説明されている。その姿は河童に似ているが頭に皿はない。山口県近辺に住むエンコという河童の一種ではないかという説もあるが、「雁木=のこぎり」と「岸涯=川岸」を掛けた石燕の創作妖怪の可能性が高い。
「百鬼夜行拾遺(ひゃっきやぎょうしゅうい)」(1805)より
ページ:v02p004
鳥山石燕著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
岸涯小僧は川邊に居て魚をとりくらふ/その歯の利き事やすりの如し
Gaņapati
仏教における天部(→天)の一尊。サンスクリット名を「ガナパティ(Gaņapati)」、あるいは「ナンディケーシュバラ(Nandikeśvara)」という。「ガナパティ」は「集団の王」という意味があり、同じく名前に「群集の主」という意味を持つインド神話の象頭の神ガネーシャの異名。「ナンディケーシュヴァラ」は「喜びを自在にする」といった意味でガネーシャあるいはガネーシャの父神シヴァの異名とされる。またガネーシャの異名である「ヴィナーヤカ(Vināyaka)」も仏教に取り入れられたが、古くから同体とされた。歓喜天という名称は、ナンディケーシュヴァラの意味訳「大聖歓喜自在天(たいしょうかんぎじざいてん)」が略されたもの。またサンスクリット名それぞれの音写より、「誐那鉢底(がなはち)」、「難提自在天(なんだいじざいてん)」、「毘那夜迦(びなやか/びなやきゃ)」、「聖天(しょうてん/しょうでん)」、「天尊(てんそん)」、「歓喜自在天(かんぎじざいてん)」などの名前でも呼ばれる。両界曼荼羅では毘那夜迦の名称が用いられ、誐那鉢底は毘那夜迦の主領の名前だとされることがある。
元となったガネーシャと同じく象頭人身の神であるが、双身で作られることが多い(これを特に「大聖歓喜双身毘那夜迦天王(だいしょうかんぎそうじんびなやかてんおう)」と呼ぶ)。この双身像は男である歓喜天=毘那夜迦と、毘那夜迦の女形に変化した十一面観音を表したものである。悪神であった毘那夜迦は十一面観音の変化身に見惚れその身を抱こうとしたが、十一面観音の勧めにより全ての悪行を止め仏教に帰依したとされる。したがってこの男女和合の姿は欲心を満たすものではなく善悪調和の象徴であるとされるが、一般的にはその姿から夫婦和合や子宝・安産の功徳があると考えられた。
歓喜天は元々は障碍神(しょうげしん=悟りの邪魔をする神)であったため作障や悪行を善行とする、という功徳を持っている。ここから衆生のあらゆる願いを起点として仏法へと導く神とされるようになった。反対に言えばどんなに欲深い願いでも叶えてくれる神だといえるが、それだけに反作用も大きいと考えられ、「霊験が強すぎて子孫七代までの福を一代で使い果たしてしまう」とか、「歓喜天の供物を貰って食べるとそれを備えた人に福徳を取られてしまう」などといった俗信を生むことになった。また歓喜天を信仰を途中でやめると障りがあるとも言われる。治病や除難、安産や商売繁盛などの現世利益を叶える神として現在でも信仰されている。胎蔵界曼荼羅の外金剛部院(最外院)には「毘那夜迦」の名で単身の歓喜天が配されている。
種字は「गः(gaḥ)」、「ह्रीः(hrīḥ)」、三昧耶形は蘿蔔根(らふこん=ダイコンのこと)、歓喜団、鉞斧、戟、箕、印相は箕印にして内縛し中指を立てて合わせ、人差し指を中指の背に添え、さらに親指を人差し指につけるもの、真言は「曩謨尾那翼迦瀉賀悉底母佉瀉怛儞野他引唵娜翼迦尾娜翼迦怛羅翼迦簸哩怛羅翼迦餉佉賀悉底餉佉迦只多娑婆賀」(誐那鉢底王真言・T1273)、「唵儗哩虐娑縛賀」(毘那夜迦生歡喜心雙身真言・T1273)など。
「大正新脩大藏經図像部 第1巻」
「大悲胎藏大曼荼羅 仁和寺版」より
大蔵出版
©大蔵出版及びSAT大蔵経データベース研究会(Licensed under CC BY-SA 4.0)
胎蔵界曼荼羅外金剛部院における図像。
「諸尊図像鈔(写)(しょそんずぞうしょう)」(不明)より
ページ:v09p005
著者不明
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
「諸尊図像鈔(写)(しょそんずぞうしょう)」(不明)より
ページ:v09p006
著者不明
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain