え行

エア

Ea

ギルガメッシュ叙事詩に出てくるシュメール・バビロニア神話の神。アンシャルキシャルの間に生まれた神であり妻ニンフルサグとの間にマルドゥークを生んだ。シュメール地方ではエンキと呼ばれる。「エンキ」というのは「大地の主」という意味で、またエアという名は「水の家」を意味する。アヌエンリルとともにバビロニア・パンテオンの三体一座をなす水神。魚の尾を持つ山羊で象徴される男や、肩から水を噴出す男、或いは手に瓶を持つ男の姿で表現される。地底の大洋アプスの支配者で知恵、豊穣、医術、芸術、彫刻を司る。そのため、大工、石工、貴金属細工師の保護神とされる。人類の友であり、神々が洪水を起こした時は、ウトナピシュチムに箱舟を作らせて人間を救った。

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エアレー

Yale, Yali, Eale

ヨーロッパの伝説に見える想像上の生物の一つ。「センティコア(Centicore)」、「ジャル(Jall)」とも呼ばれる。大プリニウス(A.D.23~79)の「博物誌」(77)、3世紀にアレクサンドリアで書かれたとされる博物誌「フィジオロゴス(Physiologus)」にその存在が記され、その後の動物寓話集にも数多く描かれた。「エアレー」という名前はヘブライ語で「山の山羊」を意味する「ヤ・エル(ya-el)」から来ていると考えられている。

黒、あるいは茶色の山羊の姿で馬ぐらいの大きさをしており、色々な鮮やかな斑点で体を覆われており、猪の口と尻尾、大きな角が生えているとされる。他にもユニコーンのような脚をもっているとか、象の尻尾を持っているなどの記述があるが、いずれにしてもエアレーを特徴付けるのはその特異な角である。この角は非常に長いだけでなく、戦うときに自在に前から後ろまで方向を変えられるとされた。昔、インドの水牛は怯えると左右の角を代わる代わる前に動かすことができると考えられていたので、エアレーはここから発想された生物であると推測される。

エアレーは鉄壁の護りを象徴する生物としてイングランドの女王をはじめとする貴族の紋章の一つとして採用された。

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鱝神

えいがみ

熊本県宇城市不知火町の永尾神社(えいのおじんじゃ)に伝わる鱝(えい)の神。西の海から海童神(わだつみのかみ)(玉依毘売命のことと伝わる)が大きな鱝(えい)の背中に乗り宇土半島を越えようとしたとき、越えきれずこの地に至り、そのまま鎮座したとされている。この大きなエイは鎌田山となり、その剣(エイの尾)の部分に永尾神社が建立されたのだという。このため永尾神社は一名「剣神社」とも呼ばれる。こういった伝説のため永尾神社の氏子はエイを神の眷属として大事に扱い、食用にしないという。

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エイシェト・ゼヌニム

Eisheth Zenunim

カバラや悪魔学における天使ないし堕天使、または淫魔。単に「エイシェト(Eisheth)」と呼ばれるほか、「イシェト・ゼノニム(Isheth Zenunim)」とも呼ばれる。娼婦ないし売春の四天使の一人であり、サマエルの妻の一人ともされる。グリモアにおいてエイシェト・ゼヌニムは8人のアーク・シーデーモン(大女悪魔)の一人とされる。

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英招えいしょう

Yīng-zhāo

中国の最古の地理書とされる「山海経」に記されている神。天帝が住まうという平圃を司る神であり、人面で翼を持ち、虎の模様が体にある馬の姿をしている。その翼で四海を巡るという。また山海経には「榴のような声を発す」と記されているが、「榴」が何を意味するのかは分かっていない。山海経には他に有翼で人面馬身の姿をした生物として孰湖が記載されている。

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エイスティブス

Eistibus

テュアナのアポロニウス(Apollonius of Tyana)が著したとされる「ヌクテメロン(Nuctemeron)」中の「魔術的黄道十二宮に類似する十二の象徴的な時間」を支配する守護霊(Genius)、いわゆる「時間の鬼神」の一人。4時の霊の一人で占いを司る。

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エイル

Eir

北欧神話における、医療の神でアサ神族の女神。父母はともに不明。優れた医者であるということを除いては神話でも多くを語られておらず、棲んでいる場所も不明である。

ヨツン(巨人)族の国「ヨツンヘイム(Jotunheim)」に棲むメングラッドの侍女とされる。メングラッドの館「ガストロープニル(Gastropnir)」の近くにある山「リュフヤベルグ(Lyfjaberg=「治癒の丘」の意)」において、メングラッドは彼女の侍女達9人と共に、救いを求める病人や貧しい者たちを救済しているが、エイルはその侍女のうちの一人であり、特に「親切な者」と呼ばれている。残りの8人の侍女達の名前は明らかにされておらず、エイルのみが医療を司るアサ神族の女神として、神々の名を連ねた目録の中にその名前を記載されている。

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エイルニルス

Eirnilus

テュアナのアポロニウス(Apollonius of Tyana)が著したとされる「ヌクテメロン(Nuctemeron)」中の「魔術的黄道十二宮に類似する十二の象徴的な時間」を支配する守護霊(Genius)、いわゆる「時間の鬼神」の一人。6時の霊の一人で果実を司る。

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エイルネウス

Eirneus

テュアナのアポロニウス(Apollonius of Tyana)が著したとされる「ヌクテメロン(Nuctemeron)」中の「魔術的黄道十二宮に類似する十二の象徴的な時間」を支配する守護霊(Genius)、いわゆる「時間の鬼神」の一人。「エイレヌス(Eirenus)」とも呼ばれる。3時の霊の一人で偶像の破壊を司る。

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エインガナ

Eingana

オーストラリアの先住民アボリジニのポンガポンガ族の神話に登場する"虹蛇"ですべてを創造したとされる女神。エインガナはこの世の始め、たった一人で無限の砂漠に横たわっていたとされる。それに飽きた時、エインガナは自分自身で地上に存在するもの全てを生み出し、最後に人間を産んだ。しかし人間たちはエインガナのことを考えず逃げ出そうとしたので、エインガナは人間たちのかかとの部分を紐で縛った。この紐は今もエインガナが握っていて、これを放すと人間は死ぬとされている。

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エインサウング

Einsaung

ミャンマーに住むミャンマー族やモン族における家の守護霊。家の南側の柱は木の葉で飾られ、エインサウングはその柱の中に住むという。エインサウングにはココナッツが捧げられる。

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エインセル

Ainsel

イングランド最北部のノーサンバーランド州に伝わる、とがった耳を持つという少女の妖精。その名前には「自分自身」という意味がある。ある夜更け、農家の少年が暖炉のそばで遊んでいると彼女が出現して「エインセル(自分自身)」と名乗ったので、少年も「ぼくもエインセル(自分自身)だよ」と名乗って仲良くなった。しばらくして少年の失敗で妖精が火傷をして泣き出すと、恐ろしい顔をした母親の妖精が出現し、少年に誰がやったのかと聞いた。それに対して少年は「エインセルだよ」と答えた(或いはエインセルが「エインセルよ」と答えた)ので、エインセルの母親はエインセルが自分のせいで火傷をしたのだと思い込んで少年は復讐されずに済んだという。

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エーカークシャラ・ウシュニーシャチャクラ

Ekākṣara-uṣṇīṣacakra

慧喜童子

えきどうじ

仏教において不動明王の眷属である八大童子の一尊。「廻喜(えき)」とも称する。「八大童子秘要法品」に拠れば、宝部より発生し福徳と智恵の二資糧を以て喜とする使者なので慧喜童子という。右手に三鈷杵、左手に如意宝珠を持ち天衣を着た姿で表される。

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エーギル

Aegir, Ægir

北欧神話において、ヴァナ神族の長、或いはヴァナ神族やアサ神族より古い世代に属しているされる神。名前は「海」を意味する。「エーゴル(Eagor)」とも呼ばれる。海の精である妻ラーンや渦巻く波を象徴する9人の娘とともに海を支配する神。海底にある宮殿に住んでおり、この宮殿は海に沈んだ黄金などの財宝が集まる場所でもあるので、其の輝きだけで照明を必要としなかったといわれる。全体が爪かのように細い指を持つ老人として描かれる。彼とその一族はよく海上の船を襲い船の乗組員達を海の中へと引きずり込んだが、彼らは(丁度オーディンが戦死者をヴァルハラでもてなすように)煌くエーギルの宮殿でもてなされた。

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エク

Ec

シベリアのエニセイ川流域に住むいくつかの民族において共通して信じられている最高神。生きとし生ける者の幸福の為に時期を定めて天から降りてくるとされる。月と不貞をはたらいた妻ホサダムを天から追放した。

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エク・チュア

Ek Chuah

マヤ神話における戦争と商業の神。その名は「黒い戦王」ないし「黒い指揮官」を意味し、名前の通り戦争を象徴する荒ぶる神とされる。エク・チュアと「エク・アハウ(Ek Ahau)」は元々は別個の神格だったが、次第に習合されたと考えられている。本来、エク・チュアは旅人を守護する役目を持つ下位の神であり、エク・アハウこそが高位の戦神であったとする説もある。

肌の色は黒く、身体は大きくて鈍重であるとされ、目の周りを黒く縁取った姿で描かれる。マヤの神殿における重要度は高く、偉大な軍神として崇められていたが、商業の守護者としての信仰もあり、どちらかというとこちらの面で人々に親しまれていたと思われる。当時交易の場で貨幣として使われていたカカオの守護神でもある。商業神として描かれる場合は、杖をつき背中に荷物を背負った姿であらわされる。

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エク・パウアフトゥン

Ek Pauahtun

マヤにおいて、四方位から吹く風を象徴するパウアフトゥンの一人。エク・パウアフトゥンは、黒(エク)と西(チキン)を司っている。

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エケネイス

Echeneis

ヨーロッパの旅行者や水夫の間で知られた想像上の生物。「モーラ(Mora)」、「レモラ(Remora)」とも呼ばれる。大プリニウス(A.D.23~79)の「博物誌」(77)によれば15cm程の極寒の海に生息する蛇だという。しかしこの生物は通りかかった船に張り付きながら周囲を凍気で覆うという能力を持っており、氷海で周りを氷に囲まれ船が動けなくなるのはエケネイスの仕業だと考えられた。またエケネイスはその能力に関連してサラマンダーの天敵だと考えられた。エケネイスは病気の治療、特に妊婦の病気に効果があると信じられていた。

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エゲリア

Egeria

ローマのネミの森の泉の神。ヌマ王の良き相談役であったとされる。ヴェスタの女祭祀はこの泉から祭儀の水を汲む。

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慧光童子

えこうどうじ

仏教において不動明王の眷属である八大童子の一尊。「廻光(えこう)」とも称する。「八大童子秘要法品」に拠れば、金剛部より日光のように発生した使者なので慧光童子という。袈裟姿の黄白身で天冠を戴き忿怒相にして右手に金剛杵、左手に蓮華を持つ姿で表される。

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エサースロン

Ellyllon

イングランドのウェールズ地方に棲む小人の妖精の一種。エルフの一種であり、陽気で明るく面倒見がよい。「フェアリーバター(Fairy Butter)」という黄色い毒キノコの汁が大好物で、その毒キノコの生えている近くにエサースロンの棲家があるという。困っている人がいると無視できず、夜の間に沢山の仲間を連れてやってきて、わいわいと楽しそうに騒ぎながら家の仕事を片付けるので、その家はどんどん豊かになるという。覗き見されると二度とやってこないが、復讐はしないといわれる。

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エシュ

Eshu

ナイジェリア、ヨルバ族の膨大な神群の中でもひときわ重要なトリックスター。西アフリカのベナン(ダオメー)のレグパに相当する。特定の祭祀集団によって祀られているヨルバ族の他の神々とは異なり、全ての人々に祀られている。人の生活と密着した家の守護神であり、市場や交易の神であり、天界の主オロルンに次ぐ力を持つ強大な神。神話上ではしばしば道化のような役割で登場するが、他の神々ですらエシュの力からは逃れられず、不和や混乱をもたらす神として恐れられている。ヨルバ族にはエシュが登場する様々な逸話が伝わっているが、それぞれのエシュに対する描写は食い違い、小人のような姿をしている時もあれば、立派な逞しい男の姿のときもある。神々の使者という役割でありながらその力はほとんど万能に近く他の神々を圧倒し、不和や混乱、争いをまきちらす秩序の破壊者であると同時に、家や文化の守護神でもあるという。秩序の破壊することで変化をもたらす典型的な放浪神であり、ヨルバ族の人々はエシュを崇めながらも同時に恐れている。

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エス

Es

シベリアのケト族で信じられている天空神。目には見えないとされているが、長い黒ひげを蓄えた老人として描かれる。世界と人間を創造した神で、左手で泥を掴んで右に投げて女を、右手で泥を掴んで左に投げて男を創った。

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エスキエル

Eschiel

「エシエル(Eshiel)」とも。マグレガー・メイザース(Samuel Liddell MacGregor Mathers)の「ソロモンの大きな鍵(The Key of Solomon The King)」で「イトゥリエル(Ithuriel)」、「[madhimieru](Madimiel)」、「バルツァキア(Bartzachiah)」とともに火星の第1のペンタクルにヘブライ文字で記される天使。

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エスス

Esus

ローマ人がガリアと呼んだ、大陸のケルト人に崇拝されていた戦の神。「ヘスス(Hesus)」とも呼ばれる。元々は木を切り倒す斧の神であり、それゆえに植物の神でもあった。ケルト民族ではエススに生贄として人間を捧げたが、その犠牲者は樹木に逆さ釣りにされた。「祭壇を染める生贄の血を見て心を休める」と言われる残忍な神で、戦の神というよりも人殺しの神とでも呼べるような存在であり、戦いに赴くケルト人を鼓舞し、熱狂を吹き込んだといわれる。そしてケルト人は勝利したあと、敗北した敵をエススへの生贄として捧げることで、この残忍な神を慰めた。

一説にはアイルランドの伝説の英雄クーフーリンはエススと同一の神格で、戦いの神であるエススが大陸からアイルランドへと渡るうちに、勇敢な英雄として描かれるようになったのだとも言われている。ローマにおいてエススはマルス、或いはマーキュリーになぞらえられた。

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エスタンティグア

Estantigua

スペインの北部に出現する女の邪霊。「ラ・グエスティア(La Güestia)」とも呼ばれる。名前は中世の言葉「ウェステ・アンティグァ("古代の住人"の意)」に由来する。白い服を着て火を灯したロウソクを持ち、ベルを鳴らし歌いながら現われる。遭遇した生物を見境なく攻撃するとされている。

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エスツァナットレーヒ

Estsanatlehi

北アメリカ大陸の南西地方に住むネイティブアメリカン、ナヴァホ族に伝わる女性(神)。地上における四季の変化に応じて年老いたり若くなったりすることから「変わる女(チェンジングウーマン)」とも呼ばれる。世界(もしくは闇)から生まれた"最初の男"「アルツェ・ヘイスティン(Altsé Hastiin)」と"最初の女"「アルツェ・アズザア(Altsé Asdzáá)」が雨雲がかかった山頂で見つけた。二人が花粉と露を与えるとエスツァナットレーヒはみるみる成長した。思春期を過ぎたころ、彼女は太陽と水に裸身を晒し、双子の戦いの神、ナイェネズガニトバディシュティニを宿した。二人が祖母であるナ・アシュ・ジェイ・アスダァアと父親である太陽の助力で怪物たちを退治し世界を救ったあと、彼女は西に浮かぶ島に移り住んだという。また、東西南北のそれぞれで踊ることで、東に雨雲、西に植物とトウモロコシ、南に織物と宝石、北に動物を創造したとされる。

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エゼクェエル

Ezeqeel, Ezequeel

キリスト教や神秘学における堕天使ないし天使の一人。名前は「神の力」の意。「アズケエル(Azkeel)」、「エゼキエル(Ezekiel)」、「エゼクィエル(Ezequiel)」、「エゼケエル(Ezekeel)」などの名でも呼ばれる。また「ネクァエル(Neqael)」、「ヌクァエル(Nuqael)」といった名もエノク文献にみられるが、これはエゼクェエルの転訛ないし変形したものである。旧約聖書外典「第1エノク書」に言及される神に反逆した200人の堕天使の一人であり、背教の軍勢の20人いる、「数十の首長(Chief of Tens)」の一人とされる。

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エッケコ

Ekkeko

中央アンデスにおいて、後期ホライゾン時代(AD.1400~1532)に信仰された伝統的な神。「エッケッコ(Ekkekko)」、「エケコ(Ekeko, Eq'eq'o)」、「エカコ(Ekako)」とも呼ばれる。家と家事の守護神であり、適切に祀れば幸運をもたらすという。沢山の家庭用品をまとった丸い腹の小人として表現され、ミニチュアの町を支配していると考えられた。このエッケコの像は護符のような役割を果たしており、いまでも幸運のお守りとして売られている。

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エディン

Etain, Étaín

一般的なケルト神話(島のケルト)に登場する光を司る女神。美しい女神で光、或いは月を司る女神とされている。エディンは初め愛の神アオングスの誘惑を受け、続いて大地の神ミジルの妻となったが、これに嫉妬したミジルの先妻であったファヴナックの怒りを買い、羽虫に姿を変えられてしまう。それでもミジルは彼女を愛しつづけたのでファヴナックは魔法の風で彼女を吹き飛ばして七年間荒野に吹きさらしにし、それでも飽き足らなくなってさらに遠くにエディンを吹き飛ばした。こうして放浪を続けたエディンは最後にアルスターの王エダールの妻の杯に落ちて彼に飲み込まれ、最初に生まれてから1012年後に、王の娘に生まれ変わることで再び女神としての姿を取り戻した。その時までずっとエディンを愛しつづけたミジルが冥界から彼女を迎えに来て、二人は再び夫婦となった。冥界に住むミジルが彼女を妻にしたことによって、世界に冬が来るようになったという。

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エディンム

Edimmu

古代シュメール、バビロニアにおいて信じられていた害悪をもたらす死霊の総称。「エキンム(Ekimmu)」とも呼ばれる。その名は「持ち上げられた者」という意味があり、幽体離脱した者の魂だとも、浮かばれない死者の魂で自分をちゃんと埋葬してくれなかったことを恨んで生者に災いをもたらすものだとも言われている。不和をばらまき、疫病を流行らせ、人間を破滅させることを望んでいて、人間に取り憑き、病気や災いをもたらしたりする。どんな小さなものにも潜り込み、どんな大きなものにも同化することが出来る。また様々な姿に変身することができるが、サソリ、蛇などの不吉なもの(毒をもつもの)に化けることが多い。ガルラナムタルの他、アル(ウトゥック)、アッハーズラビス、「アシャック(Asakku)」、クアート・エチムミ、クビュ、ペル・ウウリ、マシュキムなどの固有名称と特徴を持った多くのエディンムが存在する。エディンムに憑かれた者は医学的な治療法では効果が無く、力のある神(エアなど)の呪文でのみ退散させられるという。

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胞衣神

えながみ

日本の民俗信仰における後産の神。「胞衣(えな)」とは分娩後に排出される膜や胎盤などのことで昔はこの胞衣を壷や桶に収めて縁の下や墓、床下などに埋める習慣があった。この時に僧を呼び新生児の無病息災を祈念して貰うことを「胞衣灌頂(えなかんじょう)」と言う。胞衣神を祀る神社でも産婦が胞衣を持ちより社の下に埋めて母子の健康を願う風習があった。現在でも神奈川県の川崎市身替不動内にある胞衣神社や、岐阜県中津川市の恵那神社、和歌山県日高郡の衣奈神社などがある。

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エヌムクラウ

Enumclaw

アメリカの太平洋岸北西部にすむネイティブアメリカンに伝わる雷鳴の精霊。名前はそのまま「雷鳴」を意味する。カプーニスとは兄弟で元々は人間だった。彼等は立派な呪医(メディシンマン)になるために火の精霊に力を借りた。その結果、エヌムクラウは投石に熟練し、カプーニスは稲妻を起こす力を得た。しかし、彼等の巨大な力を恐れた天空神は、エヌムクラウを雷鳴のみを起こす精霊として、またカプーニスを稲妻のみを起こす精霊として生まれ変わらせたという。

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恵比寿

えびす

日本の民俗信仰で七福神の一柱に数えられる神。漁業と市場の守護する神として知られ、一般的に風折烏帽子に狩衣、指貫を着け、鯛を釣り上げる(或いは鯛を抱え釣竿を肩に背負った)姿で知られる。「えびす」には「恵比須」、「ヱ比須」、「夷」、「戎」などの漢字も当てられる。また敬称を伴い「恵比須様(えびすさま)」、「恵比須神(えびすがみ/えびすしん)」と呼ばれる他、「戎三郎大明神(えびすさぶろうだいみょうじん)」、「戎大神(えびすおおかみ)」、「えべっさん」と呼ばれることもある。もともと「えびす」という言葉は異郷の地、ないし異郷から訪れた人などを指す言葉であり、古くは海岸に漂着した鯨や水死体、あるいは海中から拾い上げた奇岩のことを指した。これらは豊漁のしるしとして尊ばれたりご神体にされたりしたという。こうしたものが今の恵比寿神の母体になったと考えられる。「えびす」の一番古い記録である、平安時代後期に書かれた辞書である「伊呂波字類抄」には毘沙門天を本地とする神であると記されている。

恵比寿神は伊邪那岐命伊邪那美命との間に生まれた第一子である水蛭子(ひるこ)と同体とされる。この考え方は恵比寿信仰が盛んであった鎌倉時代末期から既に見受けられるが、これは海に流された水蛭子を海から来た神である恵比寿と同一視したものだと考えられる。また水蛭児の他にも漁業と関係した神である日子穂穂手見命(山幸彦)や事代主神と同一視されることもある。

元々は海から来た神として漁業や航海を守護する神であったが、商業が発達するにすれ市場と商業を守護する神として、更には七福神の一柱に数えられ色々な福を与える福神として信仰されるようになっていった。

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愛比売

えひめ

記紀神話における地霊。伊邪那岐命伊邪那美命による国産みの際生まれた14島の2番目で、大八島に属する伊予之二名島(いよのふたなのしま=現在の四国)のうち、伊予国つまり現在の愛媛を神格化した存在。麗しい女性といった意味。

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エフネ

Ephne

ケルト神話に登場する片目の巨人「バロール」の一人娘。「エスリン(Ethlinn)」、或いは「エスネア(Ethnea)」とも呼ばれる。バロールは「自分の孫に殺される」という予言を恐れており、そのためにエフネを水晶の塔に幽閉した。しかしバロールの治める地下帝国に訪れていたキアンという神がその塔を見付け、キアンはエフネと恋に落ち、子供を宿した。生まれた赤子=ルーはバロールに殺されること無くキアンの兄弟神であるゴヴァノンに助けられ(助けたのはマナナン・マクリルだとする説話もある)、トゥアハ・デ・ダナーン(ダーナ神族)として育てられた。ルーはモイ・トゥラの第二の戦いにおいて宿命を完遂し、バロールを打ち倒した。

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エブフエル

Ebuhuel

カバラやグリモア「モーセ第6、第7の書」において言及される天使で、儀式において唱えられる、偉大な力を発揮するという8人の万能な天使の一人。

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エベフ

Ebeh

シュメール神話における山の神。

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エポナ

Epona

ローマにおける馬とラバの神。その出自はケルト神話のエポナであり、ケルトの神で唯一ローマ神話に加えられた存在である。特にローマ人の騎士によって信仰され、12月18日にはエポナの為に祝祭が催された。現在英語で仔馬を表す「ポニー(pony)」はエポナを語源としている。

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エポナ

Epona

ケルト神話における雌馬の女神。愛馬に横向きにまたがっている姿で描かれるが、元々は雌馬の姿をした神であった。豊穣と多産の女神であったと考えられている。名前は「馬の泉」を意味し、水の女神でもあった。

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エメムクト

Eme'mqut

シベリア北東部に住むコリャク族における精霊。テナントムワンミチの間に生まれた。自分の妻を冥界から連れ戻す説話が残っている。

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エモゴアレック

Emogoalekc

アメリカ北西部に住むネイティブアメリカンで、チヌーク族に属する一部族、カスラメット族の伝説に伝わる怪物。元々は酋長の息子だったエモゴアレックは、奴隷の少女に恋したが身分違いだとして受け入れられなかった為に湖に身を投げた。彼は死なずに変容して怪物となってしまい、これを恐れた村人達によって殺されそうになった。しかし人間の時の友人の助けで生き延び、今も湖に住む怪物として生きているという。エモゴアレックを見た者は将来酋長になると伝えられている。

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エラテムー

西太平洋パラオのガラツマオというところに伝わる翼をもつ悪神。ガラツマオのはげ山には悪神が棲んでおり、空から舞い降りてきては人を食ったという。人々は恐れて山から遠いホルレイという村まで逃げたが、一人老婆が逃げ遅れた。老婆は洞窟に潜んで芋を食って生き延び、やがて二人の兄弟を生んだ。二人は立派に育ち、自ら家を建て、その家の屋根にトベヘルというマングローブの木の枝で罠を仕掛け、家の中で火を焚いた。するとエラテムーがやってきて屋根の上に止まり、案の定罠にかかった。兄弟はエラテムーが動けなくなったところを二人がかりでようやく殺し、そのヅルブクル(気嚢)をとって事の次第をホルレイで告げてくるように命じた。ホルレイの者がヅブルクルを拾って「お前は魚のヅブルクルか」と、また「獣のヅブルクルか」と聞いても答えない。最後に「悪心のヅブルクルか」と聞くとヅブルクルは沈んで石になった。

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エリゴル

Eligor

ユダヤの魔神でソロモン王に封印された72柱の魔神の一人(→"ソロモンの霊")。「エリゴス(Eligos)」とも呼ばれる。またアビゴルはエリゴルの別名とされることもある。「騎士心公」と称され、黒い鎧に身を包み、右手には、どんな印かこの世の者には分からない印が書いてある軍旗のついたランス(馬上で使う突撃用の槍)を持ち、左手には王笏、或いは毒蛇を持ち黒い戦馬に乗ってあらわれる。愛と闘争をもたらす力があるという。

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エリナ・イチャ・アーバマナカラ

Erina Itja Arbamanakala

エリム

Elim

キリスト教や神秘学における天使の階級(→天上の階級)の一つ。語義は「樹々」。旧約聖書偽典「第3エノク書(ヘブライ語エノク書)」に言及され、エレリムタフサリムなどの階級と並びメルカバを構成する高位の階級だという。

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エル

El

カナアン神話における最高神。名前は「第一の者」ないし「強き者」といった意味とされる。アシラあるいはアナトを妻とし、シャカル及びシャリムと呼ばれる息子を設けた。「神々の父」、「大地の創造主」と称され、多くの神々を生んだとされる。王座に座った雄牛の角を生やした老人の姿で描かれる。

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エルク

Elk

アルメニア(小アジア-カスピ海の間の地域)の伝承における小人。人間の肝臓を盗み取り自分たちの食糧にするという習性がある。これをされた人間は死んでしまう。また出産時の女性を襲いチェンジリング(取替え子)を行うこともある。不妊や流産を引き起こす力があるとされるが、エルクの服にピンを刺すことが出来ればこれらの行いを避けることができるという。

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エル・クエレブレ

El Cuelebre

スペインにおいて森や洞窟、滝などに住んでいるとされる巨大な蛇。翼があり飛ぶことが出来る。エル・クエレブレは巨富の守り主とされているが、この生物を見つけたものは誰も戻らないとされている。

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エル・クエーロ

El Cuero

チリの伝承に登場する奇妙な怪物。名前はスペイン語で「皮」を意味するが、その名の通り皮の化け物で、川に落ちたロバから剥がれた皮が皮だけで動くようになったものだとされる。牛皮のような大きな皮の姿をしていて、かつて頭のあった部分と皮の周縁部全てに目玉がついているとされる。また目玉は皮の周縁部から伸びる無数の触手の先についているとされることもある。さらに触手の先についているのは鉤爪である、とされることもある。不用意に水辺に近づいた人間を渦で水中に引きずり込み、その皮のような体で包み込んで襲う。基本的に水の中に住んでいるエル・クエーロだが、時に陸に上がって日光浴をすることもあるという。

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エルズリー

Erzulie

ハイチのヴードゥー教における愛の女神。現在はもっぱら「エジリ・フリーダ(Ezili Fre'da)」と呼ばれる。地母神や人間の母などではなく純粋に愛を象徴する精霊(ロア)であり、時に嫉妬深く、時に理想的な愛の力をあらわす。彼女は指に三つの結婚指輪をしているが、これは蛇神ダムバラ、海神アグウェ、戦神オグンの三人の夫を持つからだとされている。エルズリーは途方もなく贅沢に暮らしているとされるが、同時に愛や贈り物を惜しまないともされる。「エルズリー・ジェ・ルージュ(Erzulie gé rouge=赤目のエルズリー)」の名で呼ばれる場合、膝を抱え泣いている姿をとり愛と生のはかなさを表現する。

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エルドラヴェルシッソク

Erdlaversissok

グリーンランドに住むイヌイットの伝説や伝承に登場する女の怪物。英語名では「ディスエンバウエラー(The disemboweller="腹を裂く者"の意)」と呼ばれる。月のいとこに当たり、人間に馬鹿々々しいジョークを囁き、腹が裂けるまで笑わせて死に至らせるという。またほかの伝説では彼女は飼葉桶と血まみれのナイフを持っており、「私のお尻~」などと歌って柔軟な体で奇妙な踊りを踊って人を笑わせようとするが、この時うっかり笑ってしまうと飼葉桶に投げ込まれナイフで内臓を裂かれ、食べられてしまう。

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エル・トラスグ

El Trasgu

スペイン北部の民間伝承に登場する、家に住み着くとされる妖精。赤い服を着た小人の姿をしていて、夜に現われ残っている家事を片付けてくれる。ただ、全てが完璧に片付いていて自分のやることが残っていないと怒って置いてあるものを散らかしたり家具を壊したりする。家族が引っ越すとエル・トラスグもついてくる。家族が元の家に忘れたホウキなどを持って現われることがよくあるという。

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エル・ヌベロ

El Nubero

スペイン北西部に伝わる悪天候の精霊。「フアン・カブリト(Juan Cabrito)」とも呼ばれる。妻や子供とエジプトの山に住んでいて、そこから度々巨大な雲に乗ってやってきて激しい嵐を引き起こし人間に災いをもたらすとされている。

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エルバテル

Elubatel

カバラやグリモア「モーセ第6、第7の書」において言及される天使で、儀式において唱えられる、偉大な力を発揮するという8人の万能な天使の一人。

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エルフ

Elf, Ælf

ヨーロッパにおいて、丘や地下に住むといわれる北欧起源の妖精の一種。複数形で「エルヴス(Elves)」。時代が下るにつれて小人の妖精だと考えられるようになった。元は見た目も大きさも人間くらいで、男女ともに若く美しく、人間が見ると一目惚れしてしまうといわれた。ただ、人間と違って背中がへこんでいるので区別することは可能だという。音楽好きでしばしば丘の上などで皆で踊りを踊っているというが、人間の家に棲み付いていたずらをする者もいるといわれる。

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エルヘ

Erge

フランス南西部やスペイン北部に出現する小悪魔。出会った人間を殺そうと襲ってくるという。

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エル・ラル

El-lal, El'lal

アルゼンチンからチリにかけての一帯に住むテウェルチェ族における文化的英雄。エル・ラルが生まれようとしていた時、父であるノスジュテジュは彼を食べるために母親の子宮からエル・ラルをつかみ出そうとしたが、ねずみがそれを邪魔してくれたおかげで助かった。その後エル・ラルはねずみの巣穴の中でねずみを親として育ち、聖なる知恵を学んだという。無事大人になったエル・ラルは弓と矢を発明して世界の支配者となり、ノスジュテジュをはじめとする害悪と戦いこれをことごとく打ち滅ぼした。全てが終わったあと、人間に自分に頼らず自立するように説いて地上を去ったとされる。

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エルリク

Erlik

南シベリアのアルタイ語族の神話に登場する悪魔の王。「カラ・ネメ(Kara-neme=黒いもの)」とも言われる。創造神ユルゲンと対立する魔であり、最初の人間達を罪へと導き、ユルゲンの怒りをかったとされている。ユルゲンはマイデレを下界に派遣して人々が自分を恐れ敬うようにしようとしたがマイデレはエルリクに殺されてしまった。しかしこの時マイデレの血から吹き出した矢は天界に達し、エルリクの手下達はみんなこれに焼き殺された。こうしてエルリクは冥界へと追放された。

しかしエルリクは一方で最初の人間とも、ユルゲンの兄ともされる。普通エルリクは恐ろしい形相をした人物として描かれるが、時にはクマや黒ひげを蓄えた老人として描かれることもある。こういったエルリクの神格は仏教の閻魔の特徴がみえる。

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エレシュキガル

Ereshkigal

シュメール神話において、大地の甘い水に下に位置する、乾燥したちりだらけの土地「クル・ブ・ギ・ア(帰還することのない大地)」を支配する「死の女主人」。「天の女主人」イナンナとは姉妹であるが、イナンナが光であるのに対し、正反対の闇の性質を持っている。バビロニア神話ではネルガルの妻であり、地下の悪魔であるガルラは彼女の配下である。イナンナは姉であり敵であるエレシュキガルの支配する土地に訪れて、自分の権威を主張しようとしたが、逆に素っ裸にされ、屍体として杭につるされた。イナンナはエンキエア)に「生命の食物」と「生命の水」を与えられて復活することが出来たが、ガルラたちはイナンナに付きまとって、その身代わりが見つかるまで離れなかったという。

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エレメンタル

Elemental

神秘主義を信奉する哲学者であり錬金術師であったアウレオルス=フィリップス=パラケルスス(1493~1541)の提唱した四大元素(風、地、火、水)をそれぞれ司る精霊のグループの総称。「風」はシルフ、「地」はノーム、「火」はサラマンダー、「水」はウンディーネが司る。また「動物」を象徴するフォーン、「植物」を象徴するドリュアドの二つグループも自然を二分して象徴する精霊達としてエレメンタルに含まれる。これらの精霊達は元となった民間伝承や神話に登場する精霊たちと必ずしも性格が一致しないが、四大元素の考え方と共に広く受け入れられた。

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エレリム

Erelim

キリスト教や神秘学における天使の階級名(→天上の階級)の一つ。「勇敢なるもの」を意味する。「エレイム(Ereim)」、「アレリム(Arelim, Arellim)」とも呼ばれる。エレリムの階級の位置は文献により異なり判然としないが、ソロネイシムと同等、あるいは同一視される。この階級に属する天使は7万を数え、草木や果物、穀物の管理をしているという。

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エレル

Elel

アルゼンチンに住むプエルケインディアン族が信じている邪悪な悪魔。嵐や疫病、死をもたらす恐るべき存在だとされている。

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エレンスゲ

Herensugue

北部スペインや南西フランスに出現する怪物。蛇の姿か、七つの頭を持つ怪物の姿になり空を飛び悪事を働くとされる。

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エン

En

アルバニアの民間伝承に登場する悪魔。元々は古代イリュリアの神だったものが時代を経て変化したものと考えられている。またアルバニア語でエンは木曜日の名称としても使われる。

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煙煙羅

えんえんら

煙に宿るといわれる日本の妖怪の一種。「煙羅煙羅(えんらえんら)」とも呼ばれる。鳥山石燕の「今昔百鬼拾遺」に紹介されているもので、煙はその時々に色々な形になるが、それが不気味で怪しい形になると煙煙羅になるのだという。羅は「うすもの」とも読み、羅(目の粗い布の織物)が風にたなびくのに似ているのでこのような名前になったと説明されている。今昔百鬼拾遺以前に記録がなく、石燕による創作妖怪である可能性が高い。

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厭火人えんかじん

Yànhuǒ-rén

中国において最古の地理書とされる「山海経」の海外南経に言及されている人々。讙頭人たちの住む「讙頭国」の南にある、「厭火国」に棲む人々で、色黒い獣の姿をしており、口から火を吐くという。

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エンカンタード

Encantado

ブラジルに住むアフリカ系ブラジル人の信仰する習合宗教(いわゆるアフロ・ブラジリアンカルト)である、カンドンブレ(Candomblé)やウンバンダ(Umbanda)、バトゥーキ(Batuque)などにおいて、天使と人間(いわゆる聖人)との仲介者となる妖精や祖霊のような存在に対する総称。重要なエンカンタードはそれに相応しいレイ(Rei、"王")、レーニャ(Rainha、"女王")、シニョール/シニョーラ(Senhor,Senhora)、ドン/ドナ(Dom,Dona)といった称号を付けて呼ばれる。また高位のエンカンタードは「ブランコス(Brancos="白い人々"の意)」、「オリザス(Orixás)」、「ジェンチ・フィナ(Gente Fina="善良な人々"の意)」などと呼ばれ、またそれ以外の低位のエンカンタードは「カバクロス(Cabaclos)」、「プレトス・ヴェリョス(Pretos Velhos="古い黒"の意)」などと呼ばれる。

エンカンタードは病気を治癒したり、人間を超自然的な力で守護したりといった特別な力もつ。儀式によって召喚され参列者に憑依して力を発揮するほか、悪魔的なふるまいで、病気や災難、狂気や死をもたらすエンカンタードもいる。

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エンキ

Enki

シュメール神話における水の神であり、創造神。シュメールのエリドゥ市の水神で、バビロニア神話のエアの原型となった。エンキは浄化の力に長けているとされ、その祭儀を行う際、祭司たちは魚を模した衣装を身につけたとされている。またヘブライ神話においてはこんな神話が残されている。エンキはニンフルサグとともに、「ディルムン(Dilmun)」と呼ばれる争いも病気も死もない場所で平和に暮らしていた。しかし甘い水だけがなかったため、エンキがこれを提供し、その水によってニンフルサグが八本の植物を育てた。この植物をエンキが口にしたときより、争いが起こるようになったのだという。他にもエンキは下位の神々の不満を聞いて、労働者として粘土より人間を創りだしている。エンキの行いの多くは形を変えて旧約聖書に残されている。

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エンキドゥ

Enkidu

古代バビロニアの「ギルガメシュ叙事詩」に登場する山男。怪力の王ギルガメシュと同等の力を持つ者として、女神ニンフルサグが粘土から作り上げて地上に送ったとされる。獣と同じように草原で草を食べ、水を飲んで暮らしていたが、ギルガメシュに出会い、力試しで対等に渡り合って親友になった。ギルガメシュとともに怪物フンババを打ち倒したあと、神の作った巨大な牛を倒したが、このために神の怒りに触れ殺されたという。

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円光観音えんこうかんのん

Yuán-guāng guān-yīn

仏教において変化観音(→観音菩薩)の一種であり三十三観音の一尊。妙法蓮華経の一節「或遭王難苦/臨刑欲寿終/念彼観音力/刀尋段段壞(=或いは王難に遭い苦しみ、刑に臨み寿命が尽きそうな時であっても、彼の観音の力を念ずれば、刀は段々に壊れてしまう」に対応しているとされる。岩の上に坐し光中で合掌した姿で描かれる。

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弇茲えんじ

Yǎn-zī

中国最古の地理書とされる「山海経」の大荒西経の項に記される神。西海の陼(=島)に住んでおり、禺彊と同じように人面鳥身で両耳それぞれに青蛇で飾り、赤蛇二匹を両足で踏みつけた姿をしているという。

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エンジェル

Angel, Ængel, Ængle, Engel, Enngell, Angil, Eangel, Angle, Aungel, Aungele, Aungelle, Aungil, Angell, Angelle, Angele

キリスト教やユダヤ教における神の使い達(天使)の総称。また天使の9階級(→天上の階級)のうち最下級の第9階級をさす。複数形で「エンジェルス(Angels)」、日本では「天使」と訳される。ギリシャ語の「Ángelos(使者)」が教会ラテン語で「Angelus」と訳されたのが名前の起源となっている。元々硬音のG(エン"ゲ"ル)で発音されたが、古期フランス語の影響を受けて軟音化(エン"ジェ"ル)した。人間の生活を監視、守護し、鼓舞する役目を担っていて、時に神と人間の間をとりなし、時に名のある大天使達の命令を忠実に実行する部隊として動いている。イスラム教で天使は単数形で「マラーク(Malāk)」、複数形で「マラーイカ(Malāʾikah)」と呼ばれる。

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エンセラドス

Encerrados

チリのアンデス地方に伝わる怪物。名前はスペイン語で「捕虜」ないし「隠匿者」などの意味を持つ。魔女などによって捕らえられた子供たちが変容し人食い怪物になったもの。すなわち、捕らえた子供達の肛門などの開口部を縫い付けて塞ぎ、山羊の肉や他の捕らえられた子供を食べさせていると、毛深い灰色の怪物に変わるという。これがエンセラドスで、インブンチェチヴァトといった怪物に養われたり、あるいはそのままインブンチェやチヴァトになってしまうとされた。また魔女などによる悪魔的儀式に使われていたともされる。

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エンドロップ

Endrop

ルーマニアの伝説や民間伝承に登場する水棲の馬の怪物。3世紀にアレクサンドリアで書かれたとされる博物誌「フィジオロゴス(Physiologus)」にもその名前が見られる。スコットランドのケルピーアハ・イシュケ、イギリスのシューピルティーのような、ヨーロッパに見られる水棲馬のバリエーションの一つ。他の水棲馬と同じく、近づいた人間を背に乗るように誘うが、乗った途端そのまま水中に引きずり込もうとする。被害者を溺れさせて食べてしまうとされるが、被害者がイエスに助けを求めると見逃すとされる。

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エンプン・ルミヌウト

Empung Luminuut

インドネシアのスラウェシ島北部に住むミナハサ族の女神。世界ははじめ岩が一つあるだけだったが、この岩が鶴を生み、この時流した汗からエンプン・ルミヌウトが誕生したとされる。鶴のアドバイスによってエンプン・ルミヌウトが二握りの砂をまくとそれが大地になった。そうして出来た大地の山に登ってエンプン・ルミヌウトが西風に身を晒すと、太陽神トアルを生まれた。トアルが生まれてすぐに大きくなったので、エンプン・ルミヌウトは結婚を勧めたが、世界中を捜しても女などいない。そこでエンプン・ルミヌウトは自分と同じ高さの棒を与えて、この棒より低い女を探せといい、二人は別れ世界を巡った。巡り巡って二人は再会したが、あまりにも長い期間離れていたので互いを見忘れていた。そして棒は成長していたのでエンプン・ルミヌウトより高くなっていた。こうして二人は結婚して数々の子供を産んだという。

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閻魔えんま

Yama

仏教において地獄を支配する王。同訓で「焔魔」、「炎摩」などとも書く。これはヒンズー教の「ヤマ(Yama)」の音訳で他に「夜摩(やま)」、「夜魔(やま)」とも音写する。また意味よりの訳で「遮止(しゃし)」、「静息(せいそく)」とも称する。さらにヤマは「ヤマラージャ(Yamarāja)」とも称することから「閻魔王(えんまおう)」、「閻魔大王(えんまだいおう)」、「閻魔羅社(えんまらしゃ)」略して「閻羅(えんら)」とも呼ばれる。他に「死王(しおう)」と呼ばれたり、双生児であることから「双(そう)」と呼ばれたり、天部(→)の一員として「閻魔天(えんまてん)」、「焔摩天(えんまてん)」、「夜魔天(やまてん)」と呼ばれることもある。人類最初の死者であり、元々は天上にある楽園の支配者とされていたが、時代が下るにつれ恐ろしい容貌と性格を持つ冥界の君主とされるようになった。

赤い着物を纏い手に方杖と縄を持ち、「王」の字が書かれた冠を戴いた姿で表されることが多い。十王と呼ばれる死者を裁く十人の判官の一人とされる(単に閻魔王のみを十王と呼ぶ場合もある)。生前の人間の行動は全て彼のもつ「閻魔帳」と呼ばれる帳面に書き綴られており、閻魔はこれにより死者の行く先を決めるとされる。また閻魔天としての閻魔は八方天、あるいは十二天の一尊として南方を守護する欲界六欲天の第三天(おなじく「夜魔天」と呼ばれる)の支配者であり、温和な顔で表現される。

胎蔵界曼荼羅では外金剛部院の南方(右側)に后の一人である黒闇天を伴った姿で描かれ、またその下部には泰山府君や死鬼衆、鬼衆(→毘舍闍)、鬼衆女など多くの配下が描かれる。閻魔と黒闇天、泰山府君はそれぞれ人頭杖を持った姿で描かれるが、これは「檀拏幢(ないし檀荼幢)」とも呼ばれ双頭でも描かれる。双頭の場合、片方が女性の頭で黒闇天を、もう片方が男性の頭で泰山府君を象徴するものでそれぞれ死者の生前の善行と悪行を閻魔に報告するという。

種字は「क(ka)」、「वै(vai)」、「यं(yaṃ)」、印相は檀荼印、真言は「唵焔摩耶娑嚩訶(おんえんまやそわか)」、「唵閻摩羅闍烏掲羅鼻利耶阿掲車娑縛賀(おんえんまらしゃうからびりやあかしゃそわか)」、「唵吠嚩娑嚩哆也娑嚩賀(おんべいばしゃばたやそわか)」、三昧耶形は檀拏幢、人頭棒。

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閻魔天えんまてん

Yama Deva

延命観音えんめいかんのん

Yán-mìng guān-yīn

仏教において変化観音(→観音菩薩)の一種であり三十三観音の一尊。妙法蓮華経にある一節「呪詛諸毒薬/所欲害身者/念彼観音力/還着於本人(=呪詛や諸々の毒薬によって身を害されそうになっても、彼の観音の力を念じれば、その害は害そうとした本人へと還る)」に対応するものとされる。岩の上に肘をつき。頬杖をつき水上を見る姿で描かれる。

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閻羅王えんらおう

Yán-luó wáng

仏教や道教において地獄で審判を行うとされる十王としての閻魔。五七日の審判を司るとされ、「閻羅大王最勝耀霊真君(えんらだいとうさいしょうようれいしんくん)」、「閻魔王(えんまおう)」の名でも呼ばれる。叫喚地獄の主とされ、地蔵菩薩を本地とし、法衣と法冠を身に着けた姿で表される。

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エンリル

Enlil

バビロニアの神。古都ニップールの守護神で風の神。「エンリル」とは「風の主」という意味。荒れ狂う暴風雨の神で、同時にまた雨をもたらし、砂漠と高地に緑を蘇らせる春の新生の湿った風の神でもある。アヌの息子で、アヌとともにニップールのウプシュキンナ宮に会する神々の集団の首長を務め、「全土の王」として、王権と首長権とを授与する。エンリルの言葉、つまり「風」は神々の集会の執行機関であって、その決定を実行する。もし神々がある都市の滅亡を決定すると、その破壊の嵐を送るのはエンリルの「言葉」であったという。

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