髪切り

髪切り

かみきり

日本における怪異ないし妖怪の一種。「髪切」とも書く。「諸国里人談」や「耳嚢」、「半日閑話」などに紹介されるもの。「諸国里人談」に拠れば、夜中に道を歩いていると男女問わずに髪の毛を元結際(結んでいるところ)からいつの間にかバッサリ切られてしまうというもの。伊勢の松坂(現在の三重県松阪市)に多く現れたが江戸でも同様のことがあったという。諸国里人談ではこれを元禄(1688-1704)のはじめの頃の話として紹介しているが、「花柳界おまじないと怪談」という明治に書かれた本には安政(1855年-1860)の頃の話として伊勢古市(現在の伊勢市古市町周辺)にあった色里(=遊郭)で同様の「髪切魔(かみきりま)」と呼ばれた怪物の話が記されている。佐脇嵩之の「百怪図巻」や「化物づくし(湯本C本)」には手や口が鋏のような形状をしている化け物が、歌川芳藤 「髪切りの奇談」には真っ黒な毛で覆われたずんぐりとした化け物(文中では「猫のようで天鵞絨(ビロード)のような毛の化け物」と形容されている)が描かれている。「髪切り(という怪異)」はこういった妖怪によって行われたとされる一方、狐の仕業とされたり(「耳嚢」による)、髪切虫という怪虫の仕業とされたり(「嬉遊笑覧」による)、また人間による犯行とされることもあった。

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  • This Page Last Updated: 2021-01-15