朱の盤

朱の盤

しゅのばん

福島県、新潟県などに伝わる妖怪。同訓で「朱盤」、「首番」とも記す。会津の諏訪の宮(福島県会津若松市にある諏方神社のこと)の辺りに出たという妖怪。「老媼茶話」には「朱の盤坊」と「朱の盤」の二つの話が見られ、朱の盤坊は六尺もある赤い顔をした坊主のような姿で、朱の盤は朱を流したような真っ赤な顔で額に一本角を持ち、髪は針のよう、目は皿のようで口は耳まで裂けた鬼のような姿をしているという。また歯噛みをする音は雷のようであったとされる。朱の盤に纏わる話は以下のようなものである。

ある日の夕方、朱の盤の噂を聞き知っていた若い侍がここを通りかかった時、自分と同じ年頃の侍が来たので、これ幸いと共に行こうかと話しかけ、朱の盤のことを知っているかと尋ねたところ、「その化け物と申すはかようなものか」というなりその侍の顔が見る間に赤くなって化け物に変じた。半刻ばかり気を失っていた若侍は、目が覚めると諏訪の宮の前にいた。少しばかり歩いてある家に入り水を所望したところ、心配されたそこの女房にわけを尋ねられたので、先程あったことを話すと、「その朱の盤とはかようなものでございますか」というなりまたまたさっきの化け物に変じた。若侍は再度気を失い、ややあって息を吹き返したが、その後百日目には死んでしまったという。

また「越後三條南郷談」には新潟県見附市近くの元町にいたという朱盤の話が載っている。これは大坊主で顔が朱盤のような化け物だという。この朱盤が出るあたりは原山藤次郎という富豪が金を埋めた青石塔(緑泥岩を用いた石塔)があったが、盗もうとしても朱盤に会うので盗み出せなかったという。また「土佐の民話(日本の民話 53)」に話の中には「赤ぼうれ」という朱の盤に似た真っ赤な大入道の話と、「朱盆」という真っ赤で目も口もない大きな盆(のような顔)の化け物の話が収録されている。

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  • This Page Last Updated: 2021-01-08