フーア
Fuath, Vough
スコットランドの民間伝承における邪悪な精霊たちに対する総称。複数形では「フーアハン(Fuathan)」と呼ばれる。この単語は「嫌悪」を意味し、文字通り人に害意のある精霊達のことであり、全身に毛の生えた人間に似た姿で描かれることが多い。
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Fuath, Vough
スコットランドの民間伝承における邪悪な精霊たちに対する総称。複数形では「フーアハン(Fuathan)」と呼ばれる。この単語は「嫌悪」を意味し、文字通り人に害意のある精霊達のことであり、全身に毛の生えた人間に似た姿で描かれることが多い。
ベトナムにおいて戦争で殺された男の幽霊のこと。頭がない。人間が現われて間もない頃、一組の夫婦がいた。夫が海に出かけると物陰からブアウが現われ、妻を引っつかんで茂みに連れ込んだ。そして、家からかなり離れたところで背中に膠(にかわ)のようなネバネバしたものを塗って岩にはり付けてしまった。夫が家に帰ると妻の姿がない。方々探し回り、ようやく妻を発見して助けようとしたが、悪魔の膠はびくともしなかった。そこで夕方、夫はブアウの来る道に罠を仕掛け、ブアウの足を絡めて捕らえ、ブアウから命を助ける代わりに離れられる薬を取り上げると、ブアウを切り殺してしまった。
しばらくすると妻は子供を産んだが、それはブアウの子で生まれるとすぐに妻の乳房に吸い付いてはなれない。子供は恐ろしく醜かったが利口で、産まれた時から口を利き、物の名前を知っていた。男は子供にバアングの木の名前を聞き、口を開けた瞬間、剣で頭を真っ二つに切った。するとその肉片は蛭になったという。
Favonius
ローマにおける西風の神。ギリシア神話のゼフュロスに相当するとされる。
Fauna
Fúamnach, Fuamhnach
Faunus
Faumea
ポリネシア東部のツアモツ(トゥアモトゥ)諸島の神話に登場する、海の女神。ハウメアのバリエーションの一つ。ファウメアはその子宮の中に男を殺すウナギを持っていたが、そのウナギを体外に出す方法をタガロアに教え、タガロアと交わった。彼女はその結果「トゥ・ヌイ・カ・レレ(Tu-nui-ka-rere)」と「トゥリ・ア・ファウメア(Turi-a-faumea)」という二人の息子を産んだ。その後トゥリ・ア・ファウメアと結婚した「ヒナ・ア・ラウリキ(Hina-a-rauriki)」が悪魔蛸ロゴ・トゥム・ヘレにさらわれてしまったため、タガロアとトゥリ・ア・ファウメアは彼女を救い出すためにカヌーで出かける事になった。ファウメアは脇の下の汗に逆らう風を封じ込める事で、カヌーがロゴ・トゥム・ヘレの隠れ家に向かえるように助けた。
Huagas
ペルーでインカ時代における精霊などの超自然的存在の総称。現在では尋常ではないことや説明できないことを表す言葉として残っている。
Father Christmas
一年に一度のみ、12月24日の夜から25日の朝にかけて現れる(行動する)老人の姿をした妖精。主にアメリカとヨーロッパ全域において信じられていて、地域ごとに名称や性格、姿、行動が異なるが、基本的に一年まじめに過ごした子供にプレゼントを与える妖精として知られる。白く長い髪と顎鬚をたくわえ、赤と白の衣装を身に纏い、子供たちへのプレゼントを詰めた白く大きな袋を背中に担いでいる。複数のトナカイに引かせたソリで空を飛び、夜の子供たちが眠っている間に煙突から家の中に入って子供たちの枕元、あるいはぶら下げられた大きな靴下の中にプレゼントを置いていく。
世界的によく知られている、白い縁取りのある赤い衣装が、「コカコーラ社のCMが初出である」とされることがあるが、この衣装は当該のCMよりも前から見られるもので、妖精がよくかぶっている赤い帽子が発展したものだと考えられる。妖精の衣装の色はよく自然の色を反映しているが(花の妖精が花の色の衣装を着ているように)、この場合の赤はベニテングダケなどの赤いキノコを元とすると考えられている。
ファーザー・クリスマスの起原は三姉妹を売春から救った聖ニコラウスであるが、他にもドルイドの冬至祭や、ゲルマン民族の冬至祭(ユール祭)、或いは北欧の主神オーディンの神格(悪者に罰を与え善者に褒美を与える)などにも起原を求めることが出来る。これらの民話・神話が複雑に影響し合い、更に地域ごとの慣習などをも吸収したものが現在のファーザー・クリスマス、あるいはサンタ・クロースに受け継がれている。
イギリス |
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アメリカ |
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アイスランド |
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ブラジル |
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中国 |
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Fastitocalon
Buata
ニューギニア島の北東方にあるニューブリテン島に伝わる怪物。猪に似ているがそれより巨大で強力な生き物で、人間の言葉を解し、また人間を餌食にするという。しかし知恵が足りないため騙されて獲物に逃げられることもあるという。
Fadhas
スイスに伝わる小人の妖精。人間と友好的で物を貸した時は必ず御礼をして返してくれるし、壊してしまってもちゃんと修理して返してくれるという。ファダスが白いヤギの群れを連れて山から下りてくると次の年は良い年になるが、それが黒いヤギの場合は、凶作だったり疫病が流行ったりするとされている。
Pua Tangalu
ソロモン諸島からバヌアツ共和国のニューヘブリデス諸島にかけての広い地域で信じられている、鮫の姿をしているとされる海の霊。ある日、海岸の岩に頭を突っ込んで動けなくなっているカツオが見つかった。人々はそれをお椀の中に入れた。するとプア・タンガルが村長に憑依して「このカツオは私、プア・タンガルだ。私を海岸の祭壇に埋めなさい」と言った。村人がカツオを埋めるとそこから二本の植物が生えてきた。それは儀式に使うクロトンとタロイモであったという。本来タロイモは海岸では生育できない植物だが、神話の中では大きく成長しカツオとプア・タンガルに捧げられることになる。従ってプア・タンガルは海霊であるとおもに芋畑を守る神とされる。
Fadet
フランスのポアトゥー地方に伝わる意地悪い小人の妖精。全身を黒い毛に覆われた姿をしており、地下の坑道に住んでいるとされる。糸紡ぎをしている人の上に自分のズボンを落としたりして驚かす。
Fati
アルバニアの民間伝承において人間の運命を決めるという精霊。普通複数形で「ファティト(Fatit)」と呼ばれる。また「ミレン」と呼ばれることもある。ローマ神話のパルカやギリシア神話のモイラと同じように3人の女の精霊だとされる。妖精によく似た姿をしていると考えられており、蝶の羽根に乗って空を飛ぶという。生まれたばかりの赤ん坊の元にすぐあらわれ、その赤ん坊の運命を決めるとされる。
Fatua
沖縄県の石垣島の民間伝承に伝わる、凶兆を示す怪鳥。5月上旬に島に渡ってくる鳥で、一声鳴いた時は大凶が、二声鳴いた時は半凶がやってくるとされた。
Phanuel, Fanuel
Fachan
スコットランドのアーガイルにあるグレン・エティブに棲むという奇妙な妖精。目や耳や、手足といった本来二つあるものが一つずつしかなく、また足の指が一つしかない。すべてのパーツは身体の中心に縦に並んでおり、また体には剛毛のような羽毛が生えているという。トゲのついた棍棒を持っており、自分のテリトリーを犯す人間がいると容赦なく襲いかかる。またすべての生き物を憎んでおり、特に空を飛べる鳥には嫉妬をむき出しにするとされる。
Fama
ローマにおける噂や世論の女神。ギリシア神話のペメに相当する。無数の目と耳をもち、空を飛ぶとされる。
Fames
ローマにおける飢えの神。ギリシア神話のリモスに相当する。
Falange de Bôtos, Falange de Botos
アフロ・ブラジリアンカルトのバトゥーキ(Batuque)におけるエンカンタードのグループの一つ。名称は「イルカの群れ」を意味する。人間の姿で湖や川、あるいはアマゾン川の入り江に棲むとされ、総じて優しい守護霊とされる。「ジョアン・デ・リマ(João de Lima)」、「デュル・エンカント(Dur Encanto)」、「ドナ・イナ(Dona Ina)」、「ドナ・ダダ(Dona Dada)」、「パラジト(Parazito)」、「ベロ・エンカント(Belo Encanto="美しい魅力")」、「ボト・アラス(Bôto Araçu)」、「ボト・ヴェルメニョ(Bôto Vermelho="赤いイルカ")」、「ボト・カスターニョ(Bôto Castanho="茶色のイルカ")」、「ボト・トゥクヒ(Bôto Tucuxí)」、「ボト・ブランコ(Bôto Branco="白いイルカ")」、「ボト・プレト(Bôto Preto="黒いイルカ")」、といった固有名称を持つ面々が知られている。
Bualu
カバラやグリモア「モーセ第6、第7の書」において言及される天使で、儀式において唱えられる、偉大な力を発揮するという8人の万能の天使の一人。
Phalgus
Fear Dearc, Fear-Dearg
アイルランドの民間伝承に登場する妖精の一種。「ファル・ダリグ(Fear Darrig)」、「フィル・イアルガ(Fir Dhearga)」とも呼ばれる。名前は「赤い男」を意味し、その名前の通り真紅の上着を着て円錐形の帽子をかぶり、灰色の長い髪をもつ75cmほどの小人の姿をしている。人間の家を訪れて暖炉に当たらせてほしいと頼んでくるので、これを受け入れると幸運に恵まれるとされる。地方によって性格や外見には差があり、ドニゴール州においてはいたずら好きの大男で、恐ろしい幻影を見せて面白がる厄介な存在として伝わている。
Pharzuph
テュアナのアポロニウス(Apollonius of Tyana)が著したとされる「ヌクテメロン(Nuctemeron)」中の「魔術的黄道十二宮に類似する十二の象徴的な時間」を支配する守護霊(Genius)、いわゆる「時間の鬼神」の一人。名前は「二つの顔を持つ」ないし「偽善的」を意味する。4時の霊の一人で姦淫を司る。
Fear Darrig
Phaldor
テュアナのアポロニウス(Apollonius of Tyana)が著したとされる「ヌクテメロン(Nuctemeron)」中の「魔術的黄道十二宮に類似する十二の象徴的な時間」を支配する守護霊(Genius)、いわゆる「時間の鬼神」の一人。11時の霊の一人で託宣を司る。
Pharmaros, Pharumaros
Juan Cabrito
Fand
アイルランド神話において海神マナナン・マクリルの妻とされる女神。あることからファンズと口喧嘩をしたマナナン・マクリルはそれが元で彼女を元を去ってしまった。夫が留守の間にファンズの住む島はフォモール族の襲撃を受けたため、ファンズは英雄クー・フー・リンに助けを請う。クー・フー・リンは彼女を助け、愛人として一ヶ月ファンズの島に滞在した。この秘め事はクー・フー・リンの妻、そしてマナナン・マクリルの知る事となり、4人の間で話し合いがもたれた結果(勿論もめたが)、二人が会うことがないようマナナン・マクリルは魔法をかけ、なおかつクー・フー・リンとその妻は今回の不祥事を(魔法の飲み物によって)忘れることになった。
Fantine
スイスのヴァウド州の民間伝承に登場する小さな精霊達のこと。自然を司る存在であり、人間に好意的で特に家畜の安全に気をかける精霊とされる。またファンティンを丁重に宥めれば豊かな収穫が約束されると考えられている。
Fearsome Critter
アメリカにおいてほら話や噂話に登場する怪物の類いを総称してこう呼ぶ。「見るも恐ろしい生物」といった意味。フィアサム・クリッターはまだ開拓が進んでいなかった荒涼としたアメリカの環境下で、説明できない事象や恐ろしい体験を説明するために考え出されたり、あるいは昼休みのひと時にされた根も葉もないほら話を元にしてしたり、あるいは木こりなどが新参者をいじめたり、騙されやすい仲間や一般人をからかうために生み出されたと考えられる。フィアサム・クリッターには数え切れないほど多くの種類がある。
Fjalar
Fuwch gyfeiliorn
イギリスのウェールズに伝わる、妖精が飼っていたという妖精牛。リン・バルヴォグ(現在のビアーデッド湖)に住んでいた妖精が飼っていた妖精の牛だとされる。ある農夫がこの牛をとらえたところ、見たこともないようなバターやミルク、チーズを生み出したため、その農夫は大金持ちになった。ある日牛が年取ってきたと感じた農夫は牛を肥え太らせ食肉にしようと考えた。肉屋がフィウフ・ギヴェイリオルンに棍棒を振り上げ打ち殺そうとしたとき、大きな悲鳴が上がり、肉屋の棍棒は牛の頭をすり抜けそばにいた9人の男を倒したしまった。悲鳴の上げたのはフィウフ・ギヴェイリオルンの元の飼い主であった女の妖精で、彼女は牛とともに水の中へ消えて行ったという。
Figona
メラネシア、ソロモン諸島における「精霊」の総称。「ヴィゴナ(Vigona)」、「ヒオナ(Hi'ona)」、「ヒゴナ(Higona)」などとも呼ばれる。
Fideal
スコットランドの民間伝承でゲアロッホ(Gairloch)と呼ばれる入り江に棲むとされる邪悪な女性の精霊。一人で岸辺に近づく無用心な人間を海底に引きずり込んで食べてしまう。
Fides
古代ローマの女神で、制約、約束、条約など信義の守護神でロムルスによってローマが建設される以前からすでにパラディウムの丘上で祭祀されていたとされ、特に2代目の王ヌマ・ポンパリウスの厚い崇敬を受け、フラメン達により右手を白布で隠して執行される祭りが、この王によって創設されたと伝えられる。通常、白髪の老女の姿に表される。
Fifinella
沖縄本島の大宜味村におけるマジムン(魔物)の一種。「フイフイ」とは追うときの掛け言葉。墓場を行ったとき、行きと同じ道で帰ると後ろをついて来るという。龕を担いだ人たちは竹の棒で戸板や壁を叩き、小石をばら撒き、「フイフイ」と唱えてフイフイマジムンを村の外れまで追い出す。
Fiorgyn
Fir Dhearga
Fir Darrig
アイルランドに伝わる醜悪な妖精。「ファル・ダリグ(Far Darrig)」、「フェル・ダリグ(Fer Darrig)」、「フィル・イェルガ(Fir Dhearga)」などの名前でも呼ばれる。名前は「赤い男」を意味する。全身毛むくじゃらで黒く、長い鼻と尻尾を持った、まるでネズミのような姿で、ぼろぼろの赤い古着を纏い髑髏のついた杖を持っている。フィル・ダリグは海岸近くに沼地にいて、死肉を食べて生きているという。
Fir chrèig, Fir bhrèige
スコットランドのヘブリディーズ諸島の伝承に登場する巨人族。「フィル・フレイグ」はゲール語で「偽りの人々」を意味する。聖キーラン(Saint Kieran)が布教のためこの地に訪れた時、教会を建てたり洗礼を受けたりすることを拒んだ結果、彼らは皆石に変じてしまったのだとされる。ルイス島の「カラニッシュ列石」やノースウィスト島にある石群はこの時の石だとされる。
Whiro
Finz-weibl
ドイツのバイエルンに伝わる森に棲む妖精。「フィンツヴァイバール(Finzweiberl)」とも呼ばれる。つば広の帽子をかぶっている。
Finfolk
イギリスのスコットランド、とくにオークニー諸島に伝わる、海の妖精の種族。「フィンの民」という意味で、人間と変わらない姿をしているが水中で暮らしており、素晴らしい庭園を造るという。フィンフォークは冬の間は海の底にある都市「フィンフォーカヒーム(Finfolkaheem)」で暮らし、夏になると「エインハロウ(Eynhallow="聖なる島"の意)」という小島で過ごしていたとされる。フィンフォークは時に人をさらい配偶者とすることがあり、そうして妻を奪われた男の一人が復讐のためにエインハロウを訪れたが、フィンフォークは海に逃げてしまった。男はエインハロウを塩の輪で九重に囲み、フィンフォークがエインハロウに近づけないようにしたという。
Whowhie
オーストラリアのマリー側地方に住むアボリジニーに伝わる怪物。巨大なトカゲのような姿をしていて、人を襲い、一度に30人を飲み込めたという。その巨体ゆえにフーウィーは通ったあとは大きなトンネルや溝ができるほどだった。最初は時々村を襲う程度だったが、そのうち頻繁に村を襲撃するようになり、ついには一人の子供を除く村全員を食べてしまった。逃げ延びた子供は親戚に助けを求めた。彼らは相談すると、フーウィーが済んでいた洞穴の入り口で柴を燃やして洞穴の中に七日間煙と熱風を送りつづけた。彼らは溜まらなくなってついに出てきたフーウィーを全員で滅多切りにして退治することに成功した。
Pwca
イギリスのウェールズに伝わる家に付く妖精。「プッカ(Pwcca)」とも呼ばれる。気まぐれで親切なこともあれば悪戯を仕掛けることもあるとされる。また夜中にランタンや蝋燭の光で帰宅途中の農夫などを惑わし、絶壁に導いて逃げたりすることもある。イングランドに伝わるパックの元となったと思われる。プウカの多くは「クウム・プウカ(Cwm Pwca="プウカの谷"の意。現在のクラダハ・ベール付近)」に棲んでいるとされる。
Puuk
奄美群島の沖永良部島において牛の姿をしていて風を巻き起こして草木を揺るがしながら通り過ぎるという妖怪のこと。この風に当たった人は病気になるとされる。国頭字にはフゥシジがよく通ると伝えられている「フゥシジバテ」という地名が残っている。また、歌うとフゥシジが去るとされる島唄も残っている。
Hvcko Capko
アメリカのオクラホマに住むネイティブアメリカン、セミノール族における怪物。灰色の体に馬の尾、狼の頭、巨大な耳をもつので「長耳」と称される。人里離れた岩山に住み、人間を襲ったりはしないが悪臭を放ち近寄った人間は病気になってしまうので避けられる。
Vāyu
インド神話の風の神「ヴァーユ(Vāyu)」が仏教に取り込まれ、漢字に意訳されたもの。「風神(ふうじん)」、「風大神(ふうたいじん)」と呼ばれるほか、「婆瘦(ばしゅ)」、「嚩庾(ばゆ)」、「婆牖(ばゆ)」などの音写でも呼ばれる。仏教を守護する天の一人であり、八天、十二天の一尊として西北を守護する。自由な風のように全ての人々を自在に悟りに導く神であり、敵を追い払い、名声、子孫、家畜、財産を人々に授けるという。一般的に甲冑を着た赤い体の老人として表され、手に風で翻る幢幡(旗の仏具)や戟を持ち、鹿や虎、青牛に乗った姿で描かれる。胎蔵界曼荼羅では西北の守護神として外金剛部院(最外院)の西北(左下)隅に、金剛界曼荼羅では二十天の一人として外金剛部の西方(上部)に、また特に成身会では「風神」の名前で四大神の一人として西北隅(右上)に配する。
種字は「ह(ha)」、「नां(ni)」、「वा(vā)」、印相は風天印、地慧幢印、真言は「唵嚩野吠娑嚩賀(おんばやべいそわか)」、三昧耶形は風幢、幢。
国訳秘密儀軌編纂局 編
「新纂仏像図鑑 天之巻」より
国立国会図書館蔵
Copyright: public domain
「大正新脩大藏經図像部 第1巻」
「大悲胎藏大曼荼羅 仁和寺版」より
大蔵出版
©大蔵出版及びSAT大蔵経データベース研究会(Licensed under CC BY-SA 4.0)
胎蔵界曼荼羅の外金剛部院における図像。
「大正新脩大藏經図像部 第1巻」
「金剛界九會大曼荼羅 仁和寺版」より
大蔵出版
©大蔵出版及びSAT大蔵経データベース研究会(Licensed under CC BY-SA 4.0)
金剛界曼荼羅成身会の外金剛部における図像。
「大正新脩大藏經図像部 第1巻」
「金剛界九會大曼荼羅 仁和寺版」より
大蔵出版
©大蔵出版及びSAT大蔵経データベース研究会(Licensed under CC BY-SA 4.0)
金剛界曼荼羅成身会において四大神としての図像。
「諸尊図像鈔(写)(しょそんずぞうしょう)」(不明)より
ページ:v09p044
著者不明
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v03p021
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
十二天の一尊として
Bù-làng
中国の少数民族、独竜(トールン)族における自然界の恐ろしい精霊の総称。自然界のあらゆるものに宿っており、この世のものと出来事を支配しているとされる。
Fée, Fee
フランス及び、アルプス山脈域、ピレネー山脈域などにおける小さく愛らしい妖精の総称。フェのほとんどは女性であり、白いリネンを纏い、長い金髪で若く美しい姿をしているという。ただしそれぞれ何らかの───アヒルの足や尾を持っている、体が毛深い、歯が長い、背中に海草やカラス貝が生えているといった───欠点を持っている。フェの生息域や特徴は多種に及び、塚や巨石墓を住処にする者もいれば森に棲む者もいるし、風に乗って旅をする者もいれば雪崩を起こすものもいる。また木や苔や石などに変身したり、姿を消したりすることもできるという。
彼らは自分の纏う白いリネンを大切にしていて、天候によって洗濯の予定が狂うと大変不機嫌になる。夜に農夫から家庭用品や馬を借りることがあるが朝には無傷で返されているという。またフェが訪れた家はその後幸運に恵まれるとされる。
Phoenix
エジプト神話に登場する霊鳥。ヨーロッパで紀元前4世紀頃に紹介され現在でも広く知られている。太陽の鳥「ベンヌ」を起源とすると考えられている。世界に一羽しかいない美しい鳥で、鷲に似た姿をしており、首の周りが金色、身体は紫で、薔薇色の混じった青い尾を持っている。「フェニックス」という名称はラテン語で、ギリシア語では「ポイニクス(Phoinix)」と呼ばれ、この名は「紫」からきている。アラビアの砂漠にすみ、シナモンなど香料になる木の小枝などを集めて巣を作り、五百年あるいは六百年ごとに焼け死ぬが、その灰の中から再び若い姿をして生きかえってくるという。
フェニックスは不死と再生の象徴とされ、キリスト教の形成時キリストの復活と関連付けられ教会の祭服や備品、建物の装飾などにその図像が重用された。キリスト教の文献では様々な色に彩られた華やかな羽を持つ鳥とされ、再生のサイクルは4年(1461日)とされた。炎の中を自由に動ける動物として、時に混同されるサラマンダーとともにヨーロッパの貴族や火災保険に関わる建物の紋章などに広く用いられている。
「動物寓話集(ジェラルド・オブ・ウェールズのトポグラフィア・ヒベルニカからの追加を含む)(A bestiary with additions from Gerald of Wales's Topographia Hibernica)」(12世紀後半-13世紀前半)より
ページ:f045r
著者不明
大英図書館(British Library)蔵
Copyright : public domain
「自然の魅力(Der naturen bloeme/The Flower of Nature)」(1350)より
ページ:f083vb
ヤーコブ・ファン・マールラント(Jacob van Maerlant)著
オランダ国立図書館(Koninklijke Bibliotheek/Royal Library of the Netherlands)蔵
Copyright : public domain
「動物寓話集(Bestiary Bodleian Library MS. Bodl. 764)」(1226–1250)より
ページ:f070r
著者不明
ボドリアン図書館(Bodleian Library)蔵
Copyright : public domain
「動物寓話集(Bestiary Bodleian Library MS. Bodl. 764)」(1226–1250)より
ページ:f070v
著者不明
ボドリアン図書館(Bodleian Library)蔵
Copyright : public domain
Phoenix
17世紀の魔術書(グリモア)の「レメゲトン」の第一部「ゴエティア」に記されるソロモン王に封印された72柱の魔神の一人(→"ソロモンの霊")。「フェネクス(Phenex)」、「フェイニクス(Pheynix)」、「フェネクス(Phenex)」などの名でも呼ばれる。勿論アラビアのフェニックスが元となっている。魔神としてのフェニックスは美しい鳥ないし小鳥の姿で現れ、とても美しい声で鳴き、契約者に文芸や詩芸についての力と知識を与えるとされる。天使に戻ることを希望している悪魔の一人であり、「1200年後にソロネに戻りたい」とソロモン王に打ち明けたという。コラン・ド・プランシー著「地獄の辞典」では20の軍団を指揮する地獄の大公爵とされ、フェニックスが人間の姿をとっている時は召喚者は耳をふさいでないと死んでしまうとされている。
「The lesser key of Solomon, Goetia : the book of evil spirits」より
大英博物館(British Museum)蔵
Copyright : pubric domain
Fenodyree, Fenoderee, Finnoderee, Fynnoderee, Phynodderee
マン島の民間伝承に登場する怪物のような妖精。「イン・フォルディール・ガスティー(Yn Foldyr Gastey=器用に草を刈る者の意)」とも呼ばれる。毛むくじゃらで大きな体をもち力強いが醜い。夜中に羊飼いや農作業の手伝いをしてくれる妖精で、夕暮れから夜明けの間に全てを終わらしてくれる。大変に勤勉な妖精で手伝いの報酬も食べ物や飲み物をもらうだけである。ただ、フェノゼリーは新しい衣服を怖がるのでこれを贈り物にすると二度と手伝ってくれなくなる。
Febris
ローマにおける熱病の女神。ローマだけでも三つの神殿を持つ。マラリア性の熱病を司る。
Febrruus
イタリアのフェブルアリウス(浄罪の月)の神。後にギリシア神話の冥界神ディス・パテールと同一視された。
Buer
17世紀の魔術書(グリモア)の「レメゲトン」の第一部「ゴエティア」に記されるソロモン王に封印された72柱の魔神の一人(→"ソロモンの霊")。偽エノク文書の目録にもその名が見える。召喚者の前にヒトデの姿で現われるとされ、病気を癒し、哲学や論理に精通しているといわれる。コラン・ド・プランシー著「地獄の辞典」ではヒトデから連想したであろうライオンの頭から放射状に5本の足が生えた姿で描かれており、今ではこの姿の方が知られている。
Feronia
古代イタリアの女神。森や泉など、自然界の支配者で、タラキナにあったその神殿で、奴隷の開放が行われたところから、自由の女神リベルタスとも同一視された。ソラクテ山麓に祭祀の中心があったが、エトルリア(中部イタリア)の名所に祀られ、ローマに神殿を有した。
Fenrir
北欧神話における巨大な狼の魔物。「フェンリスウールヴ(Fenrisulfr,Fenriswulf)」、「フローズルスヴィトニル(Hrodvitnir)」、「フェンリス(Fenris)」とも呼ばれる。悪神ロキと巨人の女アングルボザの子で、世界蛇ミズガルズオルム、冥界の女王ヘルとは兄弟でもある。口を開くと上顎と下顎が天と地まで届き、目や鼻から炎が噴きだしているという。またフェンリルは驚異的な速さで日々成長しているとされる。フェンリルの怪力と悪行を恐れた神々は、小人族ドヴェルグに頼んで、猫の足音、女の頬ひげ、魚の息などで、魔法の紐グレイプニルを作ってもらい、それでフェンリルを縛り、岩につないだ。この際いぶかしんだフェンリルを信用させるためティルがフェンリルの口の中に腕を入れていたが、自分が縛られたことを悟り怒ったフェンリルはティルの腕を噛み切った。フェンリルはラグナロクまでつながれているが、世界が破滅する時に開放されてオーディンを飲み込む。しかしヴィーダルにあごを引き裂かれて最期を遂げるという。
Focalor
17世紀の魔術書(グリモア)の「レメゲトン」の第一部「ゴエティア」に記されるソロモン王に封印された72柱の魔神の一人(→"ソロモンの霊")。偽エノク文書の目録にもその名が見える。名前は「ロフォカレ(→ルキフゲ・ロフォカレ)」のアナグラムだと考えられる。「フォルカレル(Forcaler)」、「フォルカロル(Forcalor)」、「フルカロル(Furcalor)」とも呼ばれる。召喚者の前に有翼の人間、あるいはグリフォンの乗った人間の姿で現れ、海に関連した能力、つまり他者を溺死させる力や船を沈没させる力をもっているという。元々天上ではソロネの階級にいた天使で、天使に戻ることを希望している。コラン・ド・プランシー著「地獄の辞典」では30の軍団を指揮する地獄の将軍とされ、人々を殺して海に投げ込む残虐な性格で召喚者の命令には不満を見せながらも従うとされている。
「The lesser key of Solomon, Goetia : the book of evil spirits」より
大英博物館(British Museum)蔵
Copyright : pubric domain
Fossegrim
もしくは「フォスグリム」とも。ノルウェーの民間伝承に登場する善良な水の精霊達に対する名称。金髪でハンサムな小さな男の姿で灰色の服を着ている。滝に住んでおり、滝の下の水溜りにその姿が目撃される。音楽が大好きで歌を歌ったり楽器を演奏したりすることで知られる。人間にも好意的で姿を見られることを嫌がらないので、かつてはフォッセグリムの歌を聴きに人々が滝に出かけたこともあったという。
Fomor
ケルト神話における巨人族、神々の敵たる一族。神である「トゥアハ・デ・ダナーン(ダーナ神族)」の敵であり、ダーナ神族がアイルランドにやってくる遥か昔から棲んでいたとされる。「フォモール」とはそもそも地底或いは海底、あるいは下級の神という意味である。だが神話では彼らは神というよりむしろ悪魔として扱われており、邪眼のバロールを王に戴き、神々と戦っている。最終的にバロールが光の神ルーに倒されると、滅亡、或いはアイルランドから逃亡し散り散りになったとされている。
Foras, Forras
17世紀の魔術書(グリモア)の「レメゲトン」の第一部「ゴエティア」に記されるソロモン王に封印された72柱の魔神の一人(→"ソロモンの霊")。「フォルカス(Forcas)」、「フォウルカス(Fourcas)」、「フルカス(Furcas)」とも呼ばれる。召喚者の前に学者風の人間の姿で表れ論理学や医学に関する知識を授けてくれるという。また人間の姿を見えなくする能力をもっているともされる。コラン・ド・プランシー著「地獄の辞典」では29の軍団を指揮する地獄の騎士にして大総裁であり、医学的知識以外に占いや修辞学など多彩な能力を持っているとされている。
「The lesser key of Solomon, Goetia : the book of evil spirits」より
大英博物館(British Museum)蔵
Copyright : pubric domain
Forcas
Fors
ローマにおいて、偶然・チャンスを司る神。
Forseti
Fortuna
ローマにおける豊穣、多産の女神。また予言の女神だともされる。後にギリシア神話のテュケと同一視されるようになった。
Fornax
ローマにおいて、パンを焼く釜の神。フォルナクスのために「フォルナカリア」と呼ばれる祭礼が行われる。
Forneus
17世紀の魔術書(グリモア)の「レメゲトン」の第一部「ゴエティア」に記されるソロモン王に封印された72柱の魔神の一人(→"ソロモンの霊")。召喚者の前に海の怪物の姿で表れるが、命じれば人の姿にもなれるという。召喚者に芸術、科学、語学に関する知識を授けるとされる。また敵意を愛情に変える力も持っているとされる。72柱の魔神が多く登場するコラン・ド・プランシー著の「地獄の辞典」には掲載されていない。
「The lesser key of Solomon, Goetia : the book of evil spirits」より
大英博物館(British Museum)蔵
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Phorlakh
Folletti
Faun
Fontus
Pooka, Pouka, Phooka, Púcá
アイルランドの伝説(ケルト神話)に出て来る妖精で、インキュバスなどの夢魔の仲間とされる。「プーカー(Púcá)」とも呼ばれる。プーカの住む屋敷の軒下で眠ると、とんでもない悪夢にうなされるという。いつも馬やロバの姿をしていることが多く、特に鎖をたらした毛深い子馬の姿で現れることが多い。長い角があり、凄いスピードで走るので乗せられた人は必死でそれにつかまらないと振り落とされてしまう。プーカは人を乗せることが大好きなので、夜が明けるまでずっと走り、気が付くと見知らぬ遠い場所で放り出されていたりする。生前怠け者だった者がプーカになるとも言われており、夜中に家の中を掃除したり、皿を磨いたりするが、いたずらは滅多にしない。掃除のお礼にプーカの上着を新調してあげると、そのプーカは天罰が解けて昇天できると言われている。
Bucaphi
テュアナのアポロニウス(Apollonius of Tyana)が著したとされる「ヌクテメロン(Nuctemeron)」中の「魔術的黄道十二宮に類似する十二の象徴的な時間」を支配する守護霊(Genius)、いわゆる「時間の鬼神」の一人。10時の霊の一人で魔女を司る。
ふかぶちのみづやれはなのかみ
「古事記」において須佐之男命の子孫の系譜が語られる段に登場する神。布波能母遅久奴須奴神と日河比売との間にできた子神で、天之都度閇知泥神とともに淤美豆奴神の親神にあたる。関連する諸神や神名からして淵の水に関する神だと思われる。高知県香南市にはこの神を祀る「深渕神社(ふかぶちじんじゃ)」がある。
Pukis
Huginn
Amoghapūjāmaṇi
密教における菩薩の一尊。サンスクリット名を「アモーガプージャーマニ(Amoghapūjāmaṇi)」、あるいは「アーリヤーモーガプージャーマニ(Āryāmoghapūjāmaṇi)」といい、意味訳して「不空供養宝菩薩」、「不空供養菩薩(ふくうくようぼさつ)」、「供養宝菩薩(くようほうぼさつ)」、「不空供養珠菩薩(ふくうくようしゅぼさつ)」などと称する。また「阿利也阿目伽補惹摩尼(ありやあぼきゃほじゃまに)」などと音写する。供養が不空である(尽きることがない)ことによりこの名だという。胎蔵界曼荼羅の蘇悉地院の南端(左側)より第五位に配される。その像容は四臂で、左手第一手に蓮華、第二手に策を、右手第一手に剣、第二手に三股戟を持ち赤蓮華に座す姿で表される。
種字は「ओं(oṃ)」、密号は「如意金剛(にょいこんごう)」、三昧耶形は宝珠、三鈷杵、印相は金剛合掌し両人差し指を丸め宝形にし両親指を並べ立てるもの(広大不空摩尼供養印)、真言は「唵阿謨伽布惹摩抳跛納麼嚩日㘑怛他蘖多尾路枳帝三滿多鉢囉薩囉吽」(広大不空摩尼供養陀羅尼・T0923)
望月信亨 編
「仏教大辞典 第5」より
国立国会図書館蔵
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Amoghapāśa
仏教において、アヴァローキテーシュヴァラ(観音菩薩)の変化した姿、いわゆる「変化観音(へんげかんのん)」の一つ。「アモーガパーシャ(Amoghapāśa)」を意味より訳したもの。「羂索」は「けんじゃく」と読む場合もある。また「不空羂索王(ふくうけんさくおう)」、「不空王観音(ふくうおうかんのん)」とも呼ばれ、音写では「阿目佉播捨(あもきゃはしゃ)」、「阿牟伽皤賖(あむがばしゃ)」などと記す。「不空(アモーガ)」とは間違いが無いこと、「羂索(パーシャ)」とは、獣や魚を捕らえる網や綱のことを示し、アモーガパーシャはこの慈悲の羂索をもって一つの失敗もなく、漏らさず衆生を救済するという。鹿の皮でできた袈裟を身にまとうため、「鹿皮衣観音(ろくひえかんのん)」、「鹿皮観音(ろくひかんのん)」などとも称する。
「諸尊図像鈔(写)(しょそんずぞうしょう)」(不明)より
ページ:v02p034
著者不明
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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八臂三目の像。頂上に化仏、合掌し右手に錫杖、白払、左手に羂索、蓮華を持ち両手で与願印を結ぶ。
国訳秘密儀軌編纂局 編
「新纂仏像図鑑 地之巻」より
国立国会図書館蔵
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国訳秘密儀軌編纂局 編
「新纂仏像図鑑 地之巻」より
国立国会図書館蔵
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「諸尊図像鈔(写)(しょそんずぞうしょう)」(不明)より
ページ:v02p035
著者不明
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v02p014
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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七観音の一尊として。
望月信亨 編
「仏教大辞典 第5」より
国立国会図書館蔵
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望月信亨 編
「仏教大辞典 第5」より
国立国会図書館蔵
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Amoghadarśana
仏教において菩薩の一尊で賢劫十六大菩薩の一。サンスクリット名を「アモーガダルシャナ(Amoghadarśana)」といい、アモーガは「空でない」、「誤らない」、ダルシャナは「眺め」や「見ること」を意味するため、「不空見菩薩」のほか、「不空眼菩薩(ふくうげんぼさつ)」、「正流菩薩(しょうるぼさつ)」とも呼ばれる。また音写では「阿目伽捺羅舍(あもきゃだらしゃ)」と称する。見ること或いは眼を神格化した菩薩であり、五眼(肉眼、天眼、慧眼、法眼、仏眼)をもって衆生を観察し、悪趣を除き正道に転換させる菩薩であるという。金剛界曼荼羅では檀外の東方(下側)の4尊のうち北(右)から二番目に配される。その像容は右手に仏頂が載った蓮を持ち左を拳にして腰に置いた姿で表される。また胎蔵界曼荼羅の地蔵院では東方(上方)から第二位に配し、肉色の身色の菩薩形で右手に仏頂が載った蓮を持ち左手は施無畏印を結び赤蓮華に座す姿で描かれる。
種字は「अः(aḥ)」、「क(ka)」、密号は「普現金剛(ふげんこんごう)」(胎蔵界)、「普見金剛(ふけんこんごう)」、三昧耶形は蓮上光眼、一鈷眼(独鈷杵の両側に目があるもの)、印相は仏眼印、真言は「唵阿目佉那㗚捨曩野娑嚩賀誐」。
Amoghāṇkuśāvalokiteśvara
仏教において菩薩の一尊、また変化観音の一種(→観音菩薩)。「鉤」は「鈎」とも書く。「不空鉤菩薩(ふくうこうぼさつ)」、「不空鉤観世音菩薩(ふくうこうかんぜおんぼさつ)」、「不空鉤観音(ふくうこうかんのん)」とも呼ばれる。サンスクリット名を「アモーガーヌクシャーヴァローキテーシュヴァラ(Amoghāṇkuśāvalokiteśvara)」といい、「アモーガ」は「空でない」、「誤らない」、「アンクシャ」は「鉤」を意味する。胎蔵界曼荼羅の虚空蔵院の北方(左側)下段の左端に配される。大慈大悲の鉤によって衆生を引摂することを本誓とするとされる。不空羂索観音や「行慧菩薩(ぎょうえぼさつ)」、「安住慧菩薩(あんじゅうえぼさつ)」と同体とされることがある。尊容は「秘蔵記」によれば、四面四臂の肉色身で、左右の二面は青色で、左の第一手に鉤の乗った蓮華、第二手に羂索、右第一手で鉤を捧げ、第二手で三股跋折羅を持つというが、現図では三面で左第一手は独鈷を乗せた蓮華、右第一手は三股鉤。密号は「化現金剛(かげんこんごう)」(胎藏金剛教法名號)、種字は「धि(dhi)」(両部曼荼羅私抄)。三昧耶形は蓮華上鉤。
望月信亨 編
「仏教大辞典 第5」より
国立国会図書館蔵
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Amoghavajra
仏教において菩薩の一尊。サンスクリット名を「アモーガヴァジュラ(Amoghavajra)」といい、「阿目伽嚩日羅(あぼきゃばざら)」、「阿目怯跋折囉(あもくきゃばさら)」などと音訳され、これを意味訳したものが「不空金剛菩薩」となる。胎蔵界曼荼羅の蘇悉地院の南方(右側)の第四位(右端から4番目)に位置する。一切の衆生を彼岸に至らしむるを本誓とするとされる。密号を「弁事金剛/辨事金剛(べんじこんごう/べんずこんごう)」といい、蘇悉地院の辨事(首座に侍して雑務を行うこと)を司る仏尊であるという。尊容は肉色ないし白肉色で、胸の前で手のひらを上に向けながら両手の親指と薬指を相捻して赤蓮華座に坐す。金剛界曼荼羅の金剛王菩薩と同体とされることがある。
種子は「ज(ja)」、「जः(jaḥ)」、「हूं(hūṃ)」、三昧耶形は金剛鉤。
望月信亨 編
「仏教大辞典 第5」より
国立国会図書館蔵
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Amoghasiddhi
仏教において如来の一人。サンスクリットでは「アモーガシディ(Amoghasiddhi)」といい、これを意味訳して中国や日本では「不空成就如来(ふくうじょうじゅにょらい)」と称する。音写では「阿目伽悉地(あもきゃしっち)」などと記される。その名は「必ず成就させる」という意味があり、人々の煩悩を断ち切り、あらゆることを円満に成就させるという。日本ではあまり信仰されないが、ネパール仏教では重要視される。五智如来の一人として、大日如来の五智の一、「成所作智(じょうしょさち=人々を悟らせるための能力を持っていること)」を象徴する。
「諸尊図像鈔(写)(しょそんずぞうしょう)」(不明)より
ページ:v01p014
著者不明
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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金剛界五仏中の一として。
「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v02p006
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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望月信亨 編
「仏教大辞典 第5」より
国立国会図書館蔵
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Hkum yeng
ミャンマーの少数民族であるワ族が信じるナットの一種。「タク・ケン(Tak-keng)」とも呼ばれる。とくに攻撃的なナットとされ、村の守護霊として慰霊される。
Bukura e dheut
アルバニアの民間伝承に伝わる、非常に強大な力を持っているとされる女の妖精。名前は「大地の美女」を意味する。おとぎ話のような城に住んでいて、人間に好意的なときもあれば、悪意を持って破壊的行為を行うこともあるとされる。
ふぐるまようひ
日本における妖怪の一種。鳥山石燕の「画図百鬼徒然袋」に見え、文箱から手紙を引き出す鬼婆のような形相の着物を着た妖女として描かれている。文車とは本を運びやすいように厨子や書棚にキャスターのように小さい車を取り付けたもの。吉田兼好の「徒然草」にある、「多くて見苦しからぬは、文車の文、塵塚の塵」という一文から着想を得て描かれたものらしく、前の頁には「塵塚怪王」なる妖怪も描かれている。石燕の記した文章によれば、千束の玉章(たまずさ=手紙のこと)のように書いた人や読んだ人にとってこめた思いが強い文章や手紙は、それ自体が変化して妖怪となることもあるだろう、とのことである。
1805
鳥山石燕著
「百器徒然袋(ひゃっきつれづれぶくろ)」上より
国立国会図書館蔵
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歌に古しへの文見し人のたまなれやおもへハあか奴白魚となりけり/かしこき聖のふみに心をとめさへかくのごとし/ましてや執着のおもひをこめし千束の玉章にハかかるあやしくたちをもあらはしぬべしと夢の中におもひぬ
Bukwus
ネイティブアメリカンの一部族、クワキウトゥル族における怪物的精霊。太平洋沿岸の暗い森に住んでおり、おぞましい姿をしているが、人間と仲間になりたいとねがっているとされる。ブクワスは美しい歌声で溺死した人間達の霊を自分の家へと誘う。
Fú-xī
中国の最古の地理書とされる「山海経」の西山経に記されている凶兆となる怪鳥。鹿台(鹿臺)山(現在の山西省晋城市沁水県にある同名の鹿台山のことと思われる)という山に棲む鳥で、雄鶏に似ているが頭部が人面で、自分の名で(つまり「鳧徯」と)鳴くという。この鳥が現われると戦いが起こるとされる。
山海経では他にも顒、瞿如、竦斯、人面鴞、橐𩇯、𪄀𪃑といった人面鳥が紹介されている。
「山海經(せんがいきょう)」(不明)より
ページ:v01p039
郭璞(伝)著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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Vajrāmoghasamayasattva
密教における菩薩の一尊で、普賢菩薩の延命の徳を一つの仏尊として展開したもの。サンスクリット名を「ヴァジュラーモーガサマヤサットヴァ(Vajrāmoghasamayasattva)」、あるいは「マハーシュカーモーガヴァジュラタットヴァ(Mahāsukhāmoghavajratatva)」といい、音写で「縛日羅母伽三昧耶薩怛嚩(ばじらもかさんまいやさとば)」、また意味訳で「大安楽不空真実菩薩(だいあんらくふくうしんじつぼさつ)」、「大安楽真実菩薩(だいあんらくしんじつぼさつ)」、「大安楽不空菩薩(だいあんらくふくうぼさつ)」、「大安楽不空金剛三昧真実菩薩(だいあんらくふくうこんごうさんまいしんじつぼさつ)」などの名でも呼ばれる。増益延命を修する普賢延命法の本尊であり、また胎蔵界曼荼羅の遍知院の南端(右側)に配される。その尊容は金色の身色で五智宝冠を頂く二十臂像で、十六大菩薩と四攝菩薩の三昧耶形を持物と蓮華座に坐す。すなわち右手に五鈷杵(金剛薩埵)、五鈷鉤(金剛王菩薩)、箭(金剛愛菩薩)、弾指(金剛喜菩薩)、三弁宝珠(金剛宝菩薩)、日輪(金剛光菩薩)、如意幢(金剛幢菩薩)、二つの三鈷杵(金剛笑菩薩)、金剛鉤(金剛鉤菩薩)、金剛索(金剛索菩薩)、左手に蓮華(金剛法菩薩)、利剣(金剛利菩薩)、八輻輪(金剛因菩薩)、舌中三鈷杵(金剛語菩薩)、十字羯磨(金剛業菩薩)、鑿上三鈷杵(金剛護菩薩)、二つの利剣(金剛牙菩薩)、金剛拳(金剛拳菩薩)、金剛鏁(金剛鎖菩薩)、金剛鈴(金剛鈴菩薩)を持する。また延命法の本尊としては二臂の満月童子形で五仏冠を頂き、右手に金剛杵、左手に金剛鈴に持ち千葉蓮華座に坐す。また蓮華座を三首一身それぞれ六牙で独鈷杵を鼻で巻いた象(白象王)が支え、さらにこれを五千の象が支え四天王が侍る姿で表される。
密号は「真実金剛(しんじつこんごう)」、種字は「(yu)」、「(yuḥ)」、「अः(aḥ)」、「हूं(hūṃ)」、三昧耶形は甲冑、五鈷杵、印相は両手を金剛拳にし人差し指を鉤にして互いに組んだもの、真言は「唵縛曰羅喩勢娑縛訶(おんばさらゆせいそわか)」(延命真言・T2485)。
「諸尊図像鈔(写)(しょそんずぞうしょう)」(不明)より
ページ:v04p009
著者不明
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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「諸尊図像鈔(写)(しょそんずぞうしょう)」(不明)より
ページ:v04p010
著者不明
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v04p011
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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Samantabhadra
仏教において理性を象徴する菩薩。「サマンタバドラ(Samantabhadra)」の漢名。「普賢大士(ふげんだいし)」とも称する。また音訳で「三曼多跋陀羅(さんまんたばだら)」とも称する。大乗仏教の数ある菩薩の中で特に仏の理性を示し、諸菩薩の上位に位置するとされる。女人往生を解いたとされ、極楽往生を願う女性達の篤い信仰を受けた。また、「全てが尽きてもこの願は尽きない」という「十大願(礼敬諸仏・称讃如来・広修供養・懺悔業障・随喜功徳・請転法輪・請仏住世・常随仏学・恒順衆生・普皆廻向)」を発した菩薩であり、この十大願は一切の菩薩の行願に通じるとされる。
文殊菩薩とともに釈迦如来の脇侍であり、釈迦如来の右に配される。一般的に合掌または独鈷を持った姿で白象の背の蓮華座に結跏趺坐した姿で表される。また眷属である十羅刹女を伴った姿で表されることもある。菩提心を象徴する金剛薩埵と同体とされることがある。胎蔵界曼荼羅では中央の大日如来を取り巻く中台八葉院に、金剛界曼荼羅では理趣会(りしゅえ)に列する。
1804
藤原行秀 写
「十王寫(じゅうおううつし)」より
国立国会図書館蔵
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十王図の第四幅に五官王の本地として描かれたもの。
「諸尊図像鈔(写)(しょそんずぞうしょう)」(不明)より
ページ:v05p007
著者不明
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v02p007
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v02p007
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v02p011
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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二十五菩薩の一尊として。
「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v03p004
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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三十日秘仏の一尊(十四日)として
「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v04p009
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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十三佛の一尊(四)として
「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v04p014
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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六齋日本尊の一尊(十四日)として
Bhogavatī
密教における菩薩の一尊。サンスクリット名を「ボーガヴァティー(Bhogavatī)」といい、「福徳」を意味するため「豊財菩薩」、「資財主菩薩(しざいしゅぼさつ)」と称するほか「補伽縛底(ほかばち)」などと音写する。「福・智」の二華を施与する菩薩とされる。胎蔵界曼荼羅の観音院(蓮華部院)の第三列(向かって左列)東方(上方)より第三位に配する。その像容は左手に二蓮華を持ち右手は薬指と小指を曲げ他の指を立てた刀のような形で肩まで上げ、天衣を着け赤蓮華に座す姿で表される。種字は「स(sa)」、密号は「如意金剛(にょいこんごう)」、三昧耶形は二蓮華。
国訳秘密儀軌編纂局 編
「新纂仏像図鑑 地之巻」より
国立国会図書館蔵
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Busasejal
Pusiel
「マセケト・ガン・エデン&ゲノヒム(Maseket Gan Eden and Gehinnom)」に言及される7人の懲罰の天使の一人。名前は「神の火」を意味する。「プルエル(Puruel)」ないし「プリエル(Puriel)」の名でも呼ばれる。
Acintyamati
Acintyamatidatta
密教における菩薩の一尊。サンスクリット名を「アチンティヤマティダッタ(Acintyamatidatta)」といい、「不可思議な知恵を与える」といった意味を持ち、意味訳では「不思議恵菩薩」と称し、また「阿惹底也麼底娜多(あじゃちやまちだた)」などと音写する。胎蔵界曼荼羅の除蓋障院の西端(下端)、あるいは東方(上方)から第五位に配され、その像容は身色肉色で左手に珠の載った蓮を持ち右手は臂を上げ掌を内に向ける形で赤蓮華に座す姿で表される。場所の混同は除蓋障院に配される不思議恵菩薩、除蓋障菩薩、日光菩薩の三尊の像容が類似しており、尚且つ地蔵院との総数のバランスを図ったためだと思われる。
種字は「उ(u)」、密号は「難測金剛(なんじきこんごう)」、三昧耶形は宝珠、印相は左手を胸に当て親指と人差し指を捻し、念珠を擦る時のように残りの指を広げるもの、真言は「南麼三曼多勃馱喃(なうまくさまんだぼだなん)薩磨舍鉢𭌆布囉(さらばしゃはりほら)莎訶(そわか)」(T0848)、「南麼三曼多勃馱喃汚(なうまくさまんだぼだなんう)」(不思議慧真言・T0848)。
望月信亨 編
「仏教大辞典 第5」より
国立国会図書館蔵
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Puṣya
Pūṣan
インド神話における神で、「リグ・ヴェーダ」に表われる太陽神。太陽の養育作用を神格化したもの。主として牧畜神、道祖の神として信仰された。髻髪(けいはつ)を戴き、かゆを主食とし、やぎが引く車に乗る。
Puṣpadantī
Būšyąstā, Bushyasta
「ブシャスタ」とも。イラン、ゾロアスター教における悪魔の一人。とても長い腕をもつ全身が黄色の人間の姿をした女悪魔で、人に眠気に誘い怠け者にしてしまう役目を負っている。日の出とともに人々の枕元に音も無く近寄り、「起きる時間にはまだ早いですよ」とささやくという。これはゾロアスター教では早起きの者は天国に行くことになっているからである。
Fū-zhū
中国最古の地理書とされる「山海経」に記されている、凶兆とされる生物。敖岸山という山に棲んでおり、頭に4つの角が生えた白い鹿のような姿の獣だという。この獣が現われた国は洪水に見舞われるとされる。
「山海經(せんがいきょう)」(不明)より
ページ:v02p045
郭璞(伝)著
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Fsti Capcaki
アメリカのオクラホマに住むネイティブアメリカン、セミノール族における巨人。毛むくじゃらで灰色の人間の姿をしていて木の幹を武器代わりに乱暴を働く。枯れ木の周辺にはフスティ・カプカキが潜んでいる危険性があるのでセミノール族の人々はこれを避ける。
Huspalim
中世後期ヨーロッパにおける想像上の生物。医師兼旅行家であったアンブロワーズ・パレによって言及されているもの。その姿は馬ぐらいの巨大なマーモット(リスの一種)のようで大きな丸い頭に小さな耳、サルのような顔を持ち、無毛で赤い斑点に体を覆われているという。エチオピアに生息しており、ザコテラ(Zocotere)島の人々はフスパリムを檻に入れて飼っていたという。
「普遍宇宙誌( La cosmographie universelle)」(1575)より
ページ:v01p0281_0116r
アンドレ・テヴェ(André Thevet)著
フランス国立図書館(Bibliothèque nationale de France/National Library of France)蔵
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ふすま
日本の佐渡島に出現するという妖怪。ムササビに似た姿をしているといわれ、縦横無尽に空を飛ぶ。夜中に出歩いている人の後からやってきて、頭に風呂敷のようなものをかぶせて歩くのを邪魔する。この風呂敷のようなものは妙に頑丈で、どんな刀を使っても切れない。ただ、一度でもお歯黒にしたことのある歯であれば噛み切れると言う。このためか、佐渡島では江戸時代になっても男のお歯黒の習慣が残っていた。
Pseudothei
Buso
フィリピン諸島のバゴボ族における怪物ないし悪魔のような存在。長身で痩せぎす、縮れ毛に平たい鼻をもち二本の牙が生えた人間に似た姿をしているが、目は顔の真ん中に一つしかなく、赤か黄色の目だとされる。死者の腐肉を好むため、自分達の縄張りに人間を誘い込み罠にかけようとする残忍な習性を持っているが、非常に愚かなので人間にあっさりと騙される。猫にさえ手玉に取られ獲物を逃がしてしまうという説話も残っている。
Budha
インド神話において水星・水曜を司る神で、「ナヴァグラハ(Navagraha=九曜)」の一人。木星の神ブリハスパティの妻であるターラーと、月の神であるチャンドラとの間に生まれた。チャンドラがターラーをブリハスパティから奪っていた間に身ごもった子であったが、あまりにもかわいいのでチャンドラもブリハスパティも自分の子だと主張した。ターラーはどちらの子か口をつぐんでいたが、赤ん坊であったブダが、母親であるターラーに「自分の父を言うように」といきなりしゃべり始めたのでターラーは父親がチャンドラであることを認めたという。
仏教においては「部陀(ぶだ)」(宿曜経)と音写され、胎蔵界曼荼羅の外金剛部院(最外院)西方に配置される。
Ptah
エジプトの、メンフィスの神話における世界創造の神。「プタハ」とも。彼の信仰が盛んだったメンフィスでは獅子の女神セクメトを妻とし、ネフェルテムを息子としていた。メンフィスの神話では、彼は原初の時ヌンとして存在していた。そして言葉によって(或いはこねた泥によって)、世界を創造したことになっている。
またその際に創造した神がプターの体内にとどまり、ホルスが心臓に、トトが舌となり、そのに中の神が合体してアトゥムとなったとも伝えられている。他のエジプトの神々と異なり多分に観念的な神であり、そのためか他の神への信仰が盛んになるにつれて急激に影響力を失った。ただし元々は技巧と芸術を司る神であり、世界を創造する神話もそういった神格から生まれたと考えられる。剃髪しているか職人の帽子を被っており生命力、産出力の象徴であるアンク(護符)を持つ男性、あるいはミイラ姿の男性の姿で描かれる。ギリシア人は同様に産出力を持った鍛冶の神ヘパイトスと関連付けている。
ふたくちおんな
日本の妖怪で、竹原春泉画、桃山人文の「絵本百物語」に紹介されている。人面疽の一種とも考えられる。自分の子供だけ愛して先妻の子に食事をやらなかったため餓死させてしまった女房が化けたものだという。一見普通に人間の姿をしているが、後頭部に不気味に大きく開いた口を髪で隠している。夜中などに起きて自分で飯を炊き、長い髪を触手のように操って握り飯を貪り食うという。
Butatar
テュアナのアポロニウス(Apollonius of Tyana)が著したとされる「ヌクテメロン(Nuctemeron)」中の「魔術的黄道十二宮に類似する十二の象徴的な時間」を支配する守護霊(Genius)、いわゆる「時間の鬼神」の一人。「ブタトル(Butator)」とも呼ばれる。3時の霊の一人で計算を司る。
Ptah
Padanakṣipa
仏教における明王の一尊で八大明王の一。名前はサンスクリット名「パダナクシパ(Padanakṣipa="投げて歩くもの"といった意味)」を意訳したもので、「步擲金剛(ぶちゃくこんごう)」、「步擲金剛明王(ぶちゃくこんごうみょうおう)」と呼ばれるほか、音写で「播般曩結使波明王(ははんなけしはみょうおう)」とも記される。本地を普賢菩薩とし、罪人に菩提心(悟りを求める心)を起こさせ魔を退散させる力があるとされる。一般的に二臂で旋蓋と金剛杵を手に持った姿で表される。
「諸尊図像鈔(写)(しょそんずぞうしょう)」(不明)より
ページ:v08p034
著者不明
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Butzenbercht
Pwcca
Fú-xī
中国神話において、三皇五帝の一人。中国最古の君主とみなされている神。「庖犠(ほうぎ)」、「大昊伏羲(たいこうふっき)」、「太皓(たいこう)」などともよばれる。女媧とともに非常に古くから信仰されている神で、人間の祖であり、文明のシンボルともいえる。五行思想では東方の神とされている。
猫(ミャオ)族系神話では、伏羲は女媧と兄弟であって、この二人だけが大洪水の時代を生き延び、その後夫婦になって人類の祖になったとされる。有名な山東省の石刻画には人頭蛇身の伏羲と女媧が描かれており、蛇の尾を絡ませ、伏羲は曲尺(かねじゃく)を、女媧はコンパスを持っている。文化神として伏羲は陰と陽の組み合わせで未来を推測する「八卦」を発明し、婚姻の制度を整えたことで知られる。また漁網を発明して人々に漁猟を教えたり、縄の結びによる記録法を考え出したのも伏羲だという。
「唐土訓蒙圖彙(もろこしきんもうずい)」(1802)より
ページ:v02p015
平住専庵著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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Pukkumeria
ジャマイカの民間信仰に登場する森に住む精霊。
Buddhalocanā, Buddhalocanī
仏教における一尊。如来の眼自体を神格化したものであり、眼に備わる、智を無限に生む功徳を三世諸仏の母としてとらえたもの。サンスクリット名を「 ブッダローチャナー(Buddhalocanā)」ないし「ブッダローチャニー(Buddhalocanī)」といい、仏眼仏母のほか、「一切仏眼大金剛吉祥一切仏母(いっさいぶつげんだいこんごうきちじょういっさいぶつも)」、「仏眼尊(ぶつげんそん)」、「仏眼(ぶつげん)」、「遍知眼(へんちげん)」、「仏眼母(ぶつげんも)」、「仏眼部母菩薩(ぶつげんぶもぼさつ)」などの意味訳、「勃陀嚕沙那(ほだろしゃな)」などの音写が見られる。大日如来、釈迦如来、金剛薩埵のそれぞれに由来する3種の仏眼仏母が存在する。
大日如来の所変とされる仏眼仏母は、「虚空眼菩薩(こくうげんぼさつ)」、「虚空眼仏母菩薩(こくうげんぶつも)」とも呼ばれ、胎蔵界曼荼羅遍知院に配される。密号は「殊勝金剛(しゅしょうこんごう)」、種字は「ग(ga)」、「गं(gaṃ)」、三昧耶形は仏頂眼。釈迦如来の所変とされる仏眼仏母は、「能寂母(のうじゃくも)」、「一切如来宝(いっさいにょらいほう)」とも呼ばれ、胎蔵界曼荼羅釈迦院に配される。密号は「実相金剛(じっそうこんごう)」、種字は「क(ka)」、「त(ta)」、三昧耶形は仏頂眼ないし蓮華上如意。金剛薩埵の所変とされる仏眼仏母は、瑜祇經に説かれるもので一字金輪仏頂と同体とされる。
「諸尊図像鈔(写)(しょそんずぞうしょう)」(不明)より
ページ:v11p016
著者不明
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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仏眼仏母曼荼羅。仏眼仏母を中心に、第一列の八葉に一切仏頂輪王と七曜の天女相(日曜、月曜、火曜、水曜、木曜、金曜、土曜)を下部から時計回りに、第二列の八葉に金剛薩埵(金剛手)、観自在菩薩(→観音菩薩)、虚空蔵菩薩、金剛拳菩薩、文殊師利菩薩(→文殊菩薩)、纔発心転法輪菩薩、虚空庫菩薩、摧一切魔菩薩を下部左から時計回りに、第三列に歩擲明王、降三世明王、大威徳明王、大咲明王(→軍荼利明王)、大輪明王、馬頭明王(→馬頭観音)、無能勝明王、不動明王を下部から左回りに、また四隅に内四供養菩薩(金剛嬉菩薩、金剛鬘菩薩、金剛歌菩薩、金剛舞菩薩)を左下から時計回りに、外院には四隅に外四供養菩薩(金剛香菩薩、金剛華菩薩、金剛燈菩薩、金剛塗香菩薩)を左下から時計回りに、四方に四攝菩薩(金剛鉤菩薩、金剛索菩薩、金剛鎖菩薩、金剛鈴菩薩)を下部から時計回りに配する。
「大正新脩大藏經図像部 第1巻」
「大悲胎藏大曼荼羅 仁和寺版」より
大蔵出版
©大蔵出版及びSAT大蔵経データベース研究会(Licensed under CC BY-SA 4.0)
胎蔵界曼荼羅の遍知院における図像。
「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v02p007
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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Buschfrauen
ドイツの民間伝承における森に守っている女の妖精。名前は「茂みの女」を意味する。小さくて毛深く髪は金髪で、乳房は垂れ下がり背中は丸まっている。木のうろの中に住んでいて、人間が樹皮をはがしたりすると怒る。またパンにキャラウェイの実を入れて焼いたり、見た夢を語って聞かせたりしても怒るという。ブッシュフラウエンの長は「ブッシュグロースムッター(Buschgrossmutter="茂みのお婆さん"の意)」と呼ばれる。
ふったち
日本の青森県や岩手県に伝わる妖怪。動物が年を経て妖しい力を使えるようになったものを指す。従って猿の経立や犬の経立、雄鶏の経立など様々な経立がいる。猿の経立は女を好み、ときに人間の女性をさらうこともあるという。青森県上北郡野辺地地方では経立のことを「へぇさん」という。
Buddhalocanā
Buddhoṣṇīṣa
仏教において仏陀の頭頂の功徳、つまり仏智そのものを神格化し仏尊としたもの。サンスクリットでは「ブッドースニーシャ(Buddhoṣṇīṣa)」といい、「菩陀烏瑟膩沙(ぼだうしつにしゃ)」などと音写する。これは如来に現れるという肉体の特徴である三十二相の一つ「頂髻相(ちょうけいそう。サンスクリットでは「ウシュニーシャ(uṣṇīṣa)」)」と元とする。仏頂尊には多くの種類があるが大日経疏に説かれる、三仏頂と五仏頂を合わせた「八仏頂(はちぶっちょう)」が代表的でこの八仏頂は胎蔵界曼荼羅の釈迦院に配される。
「諸尊図像鈔(写)(しょそんずぞうしょう)」(不明)より
ページ:v11p011
著者不明
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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尊勝法の本尊として用いられる尊勝曼荼羅の図像。
中央主尊を大日如来とし、その周りは八仏頂で最勝仏頂転輪(左・東方)、無量声仏頂(左上・東南方)、光聚仏頂(上・南方)、発生仏頂(→高仏頂)(右上・西南方)、白傘蓋仏頂(右・西方)、勝仏頂転輪(右下・西北方)、除障仏頂(下・北方)、広生仏頂(→大転輪仏頂)(左下・東北方)。
上中央には宝蓋があり、その左右に飛天(ないし首陀会天)が六尊。
また右下半月輪中に降三世明王、左下三角光中に不動明王、下中央には香爐。
Buddhoṣṇīṣa
ふつぬしのかみ
日本神話に登場する神、「日本書紀」のみに登場し、「古事記」では語られない。「斎主神(いわいぬしのかみ)」、「伊波比主神(いわいぬしのかみ)」ともよばれる。その出自には諸説あり、岩石を司る神である石筒之男神と磐筒女命との間に生まれた子とも、伊邪那岐命が火之迦具土神を惨殺した時の血が天安河(高天原にある川)の川原にあった五百筒磐石(いおついわむら)に滴り落ち、その血から生じた神だとも、五百筒磐石から生まれた神だともいわれる。経津主神の「経津(フツ)」とは刀が物を分断する音を表すものであり、刀剣とその威力を司る神とされる。「古事記」においては建御雷之男神は別名として「建布都神(たけふつのかみ)」、「豊布都神(とよふつのかみ)」という名を持っており、「日本書紀」においては建御雷之男神と経津主神は地上に降り大国主神に国を譲るよう交渉する役目を命じられるため、このニ神は同一神ではないかという説もある。
Fú-fēi
ぶっぽうそう
日本の妖怪の一種。熊本県八代市の松井家に伝わる「百鬼夜行絵巻」に描かれた妖怪の一種で、蛇のような体に長い舌を出した大きな頭のついた姿をしている。
Fulla
北欧神話において、フリッグの侍女であり、アサ神族。神話においてはゲフィヨンとともに処女であることが強調されている。父と母は不明。フリッグは夫である主神オーディンを牽制する策略かとしての一面を持っているが、フッラは侍女であると共にその計略を補佐する密使としてフリッグの秘密に深く関与しているといわれる。アサ神族の世界であるアスガルズを離れる事が少ないフリッグの代行者として、人間界であるミズガルズなどの他の世界をひそかに訪問することもあった。フッラの遣わした策略によって、フリッグはオーディンの養子であるゴート族の王ゲイルロドの信用を失墜させ、忙殺している。
髪をほどいて垂らし、頭もしくは首に黄金の輪をはめているとされる。侍女としてフリッグの長櫃を携え、履物の世話をする。フッラの神話的起源は古く、ドイツの伝承にもフッラに相当する神「フォッラ」の名前が見える。フォッラは北欧神話におけるフリッグの前身である、女神フリーアの姉妹とされている。
ふてみみのかみ
Acalanātha
インド神話のシヴァの別名「アチャラナータ(Acalanātha)」が単身仏教に取り入れられたもの。「アチャラナータ」は「動かざる者」ないし「動かざる者の守護者」という意味を持つため、中国や日本では「不動明王」という名前に訳された。他に「不動尊(ふどうそん)」、「無動尊(むどうそん)」、「不動使者(ふどうししゃ)」などの名前でも呼ばれる。また音による訳から「阿遮羅嚢他(しゃらのうた)」とも称する。大日如来の教令輪身(教化のために姿を変えること)であり、全ての魔や煩悩を降伏させる大日如来の化身とされる。一般的に忿怒相で青黒く、羂索と降魔の剣を持った姿で表される。眷属である八大童子を従えるとされるが、このうちの二童子矜羯羅童子と制吒迦童子が特に脇侍として不動明王の左右に配されることが多い。胎蔵界曼荼羅の持明院に列し、五大明王や八大明王の一尊であり、明王の中でも最高の力を持つ者とされる。
真言は「南麼三曼多伐折囉?悍(なうまくさまんだばざらだんかん)」(不動尊真言・T0848)、「曩莫薩嚩怛他蘖帝毘藥薩嚩目契毘藥薩嚩他怛囉吒賛拏摩賀路灑拏欠佉呬佉呬薩嚩尾覲喃吽怛囉吒憾?」(不動尊真言・T0852)
1804
藤原行秀 写
「十王寫(じゅうおううつし)」より
国立国会図書館蔵
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十王図の第一幅に秦広王の本地として描かれたもの。
「大正新脩大藏經図像部 第1巻」
「大悲胎藏大曼荼羅 仁和寺版」より
大蔵出版
©大蔵出版及びSAT大蔵経データベース研究会(Licensed under CC BY-SA 4.0)
胎蔵界曼荼羅の持明院における図像。
「諸尊図像鈔(写)(しょそんずぞうしょう)」(不明)より
ページ:v08p005
著者不明
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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「諸尊図像鈔(写)(しょそんずぞうしょう)」(不明)より
ページ:v08p007
著者不明
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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「諸尊図像鈔(写)(しょそんずぞうしょう)」(不明)より
ページ:v08p007
著者不明
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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「諸尊図像鈔(写)(しょそんずぞうしょう)」(不明)より
ページ:v08p008
著者不明
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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「諸尊図像鈔(写)(しょそんずぞうしょう)」(不明)より
ページ:v08p008
著者不明
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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「諸尊図像鈔(写)(しょそんずぞうしょう)」(不明)より
ページ:v11p020
著者不明
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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仁海の指導と伝わる仁王経曼荼羅の図。
中央に不動明王を置き、四方に四大菩薩(東(上)に金剛薩埵、南(右)に金剛宝菩薩、西(下)に金剛法菩薩、北(左)に金剛業菩薩)、四隅に内四供養菩薩を三昧耶形で配し、第二重四方に四大菩薩の忿怒形として四大明王(東に降三世明王、南に軍荼利明王、西に大威徳明王、北に金剛夜叉明王)、四隅すべてに賢瓶を配し、また外院の四方各中央の四門中に四攝菩薩、四隅に外四供養菩薩、その間に四天王及び帝釈天(東)、火天(南)、水天(西)、風天(北)を配する。
「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v02p022
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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五大尊明王の一尊・中央として
「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v02p022
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v04p009
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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十三佛の一尊(一)として
ふとだまのみこと
日本記紀神話における祭祀を司る神で五伴緒神の一人。「ふとたまのみこと」とも読む。「布刀玉命」は古事記での表記で、日本書紀では同訓で「太玉命」、或いは「太玉(ふとだま)」と記されている。また「天太玉命(あめのふとたまのみこと/あめのふとだまのみこと)」(先代旧事本紀、新撰姓氏録)、「太玉神(ふとたまのかみ/ふとだまのかみ)」などの名でも呼ばれる。天照大御神が天石屋戸(あめのいわやど)にこもったとき、祭祀用の玉や鏡、幣(ぬき)などを造った神。布刀玉命がこれらをつけた榊をいただき奉り、天之児屋命が祝詞を奏上した。また五伴緒神の一人として天孫邇邇藝命の天降りに随伴したとされる。曲玉、管玉などの神聖な玉をつけて祭祀に携わる神であり、玉そのものを司る神は玉祖命とされる。
「先代旧事本紀」や「新撰姓氏録」に拠れば親は高御産巣日神であり、また「豊石窓神(とよいわまどのかみ)」、「櫛石窓神(くしいわまどのかみ)」、「大宮売神(おおみやのめのかみ)」などの親神、「天富命(あめのとみのみこと)」の祖親とされる。祭祀に関わっていた忌部氏(いんべうじ)の祖神とされており、島根県松江市東忌部町にある「忌部神社(いんべじんじゃ)」や千葉県館山市大神宮にある「安房神社(あわじんじゃ)」、香川県観音寺市にある「粟井神社(あわいじんじゃ)」、奈良県橿原市忌部町にある「天太玉命神社(あめのふとたまのみことじんじゃ)」などの主祭神として祀られるほか、数々の神社に祀られる。またこのうちの神社の幾つかでは后神とされる「天比理乃咩命(あめのひりのめのみこと)」とともに祀られる。
Hutriel
「マセケト・ガン・エデン&ゲノヒム(Maseket Gan Eden and Gehinnom)」に言及される7人の懲罰の天使の一人。名前は「神の杖」を意味する。
ふなだま
日本の民俗信仰において、船と船乗り、漁師を守護するとされる船に憑く神。普通女神だとされる。「船玉」、「船魂」とも書く。また「御船様(おふなさま)」、「おざだま様」、「おがたま様」、「じんぱち様」などとも呼ばれる。その本体ははじめ住吉三神とされたが、神仏習合の影響により大日如来、釈迦如来、聖観音(観音菩薩)などが本体とされた。また船を十二箇所の部分に分けて「十二船霊」と称し、十二神将を当てたり、馬頭観音や白衣観音、如意輪観音といった十二尊の観音を当てたりする場合もある。御神体として帆柱を差し込む穴などの「船霊座」と呼ばれる場所に男女対の人形や銭十二文、サイコロ2個、女性の髪などが納められる。船霊は「チンチン」と鳴いて大漁や嵐を前もって知らせてくれるとされている。悪いことが起こったり、不漁が続いたりすると御神体を取り替えることもある。
Hunab Ku
ふなゆうれい
日本において海に出現する人間の姿をした妖怪。海で遭難した者達が成仏できずに船幽霊になるという。大時化の日などに漁に出ると現れ、船の縁に手をかけ、口々に柄杓(ひしゃく)を貸せという。この時本当の柄杓を貸すと、船に水を入れられて遭難させられてしまうので、船乗りたちはいつも底の抜けた柄杓を用意している。柄杓を一本しか貸さなくても、何故か船幽霊たちはその途端一人ずつ柄杓を持って船の中に水を入れようとする。底の抜けた柄杓を貸したならば、水はどうやっても入らないので、船幽霊たちは恨めしい声をあげながらまた海の中へ消えていくという。柄杓を要求し船を沈めようとする、船幽霊と同種の妖怪として「いなだ貸せ(いなだかせ)」(福島県沿岸)、「杓子くれ(しゃくしくれ)」(京都府竹野郡丹後町)、「灘幽霊(なだゆうれい)」(長崎県五島地方)、「桶呉れれ(たんごくれれ)」(鹿児島県奄美大島)、「おうばこ」(山形県飽海郡飛島)、「亡霊やっさ(もうれんやっさ)」(千葉県銚子市)、「柄長くれ(えながくれ)」(愛媛県北宇和郡)、「ショウカラビー(香川県小豆島)」、「波幽霊(なもうれい)」(岩手県九戸郡久慈市)などがいる。
一寿斎芳員画「百種怪談妖物雙六」より
国立国会図書館蔵
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Punarvasu
ふにかんのん
仏教において変化観音(→観音菩薩)の一種であり三十三観音の一尊。観音菩薩が姿を変えて人々を救済するという「三十三応現身」のうちの「執金剛身(しゅうこんごうしん)」(→執金剛神)にあたるもの。執金剛神が仏の守護神であると同時に迹身であるという本迹不二の意を以っての尊名とされる。水上に浮かぶ蓮葉の上に立ち、両手を前で重ねた姿で描かれる。
「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v02p018
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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三十三観音の一尊として。
Hnmw
Bune
ユダヤにおける魔神の一人。17世紀の魔術書(グリモア)の「レメゲトン」の第一部「ゴエティア」に記されるソロモン王に封印された72柱の魔神の一人(→"ソロモンの霊")。偽エノク文書の目録にもその名が記されている。人間と犬とグリフォンの三つの頭を持つドラゴンの姿をしているとされる。召還者に人間を死に至らしめる呪文や様々な知恵、会話術を授けるという。死体の場所を移動させたり、墓地に悪魔を集まるのはブネの仕業だとされる。コラン・ド・プランシー著「地獄の辞典」では30の軍団を指揮する地獄の大公爵であり、言葉を使わず身振りで返事を返すと書かれている。
「The lesser key of Solomon, Goetia : the book of evil spirits」より
大英博物館(British Museum)蔵
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ふはのもぢくぬすぬのかみ
Hubal
イスラム教が浸透する以前のアラビア半島で信じられていた神。予言の神として有名。いまでも紅玉髄で作られたはフバルの像がメッカのカーバ神殿にある。カーバの黒石はフバルと関係があるかもしれないという説もある。
Baoban Sith
スコットランドに伝わる美しいが邪悪な女の妖精。名前はスコットランド・ゲール語で「妖精の女」の意。緑色の服を着た、美しい女性の人間の姿であらわれるが、足が鹿の蹄になっているのでそれでブーバン・シーだと分かる。また、時に冠毛のあるカラスの姿であらわれることもある。人間の血を吸って殺してしまうとされる。
ふひかんのん
Hoop Snake
アメリカの噂話やほら話を起源とする怪物、フィアサム・クリッターの一種。「スネーク・オブ・ホイール(Snake of wheel)」とも呼ばれる。まるで子供たちの遊ぶフープのように色鮮やかな体色の蛇で、まるでフープのように尾を口にくわえて円形になって転がりながら移動する。色鮮やかな体色は警告色であり、非常に強い毒をもっている。また素早く獰猛であり、ぐるぐると目にもとまらない速さで転がりながら獲物を襲う。フープスネークに追いかけられて生き延びる方法はただひとつ、フープスネークに向かっていってその輪を潜り抜けることである。なぜならフープスネークは逆方向に即座に移動することが出来ず、潜り抜けられると混乱してしまうからである。
Fuhedi Mergane
モンゴル神話の英雄神。ブリヤート族の雷神。北天の守護者。その名に含まれるメルゲンは、「弓術に秀でた者」を意味し、雷の矢を放つ存在である事を示すと同時に、狩猟の神でもある。神をだましたマンガドを滅ぼすよう父神に命じられた彼は、それを9人の自分の息子たちに伝えて攻撃させた後、自ら雷の矢を放って退治した。
Fù-băo
Boomasoh
ミャンマーの民間伝承に登場する木の精霊で樹木に住むナットの一種。木の根に宿るとされる。
Hmin
ミャンマーの民間伝承に登場するナットの一種。木に住んでいるという。旅人達を餌食とし、犠牲者をマラリアに感染させるという。
Fú-yóu
ふゆとしのかみ
Wǔ-luó
中国最古の地理書とされる「山海経」の中山経の中次三経に言及される䰠(=神)。萯山(敖岸之山、青要之山、騩山、宜蘇之山、和山のご五山)の山神の一人であり(他に熏池と泰逢)、これらの神を祀るには一匹の牡羊を副(骨を割いて磔にして祭る)し、嬰(儀式の種類)には吉玉を用いるべきだという。青要山という山にある、帝(→黄帝)の密都を司っている神だという。人面で豹の模様、小さな腰、白い歯を持ち、耳を「鐻(きょ)」と呼ばれる耳輪で飾っている。「春秋左氏伝」の杜預の注解では羿の臣下だと説明されている。
「山海經(せんがいきょう)」(不明)より
ページ:v02p045
郭璞(伝)著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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Bulaing
オーストラリアのアボリジニの一部族、カラジェリ人の信じる女神。天に住む創造神であり、全ての事物と生物を作ったという。蛇の姿をしている。
Flying Fish
16世紀にイタリア北東部の海岸沖で捕獲された巨大な怪物魚。縦、横ともに150メートルほどもあり、大きな頭に目が四つ、魚なのに耳がありなおかつとんがった鼻の下に口が二つ、胸びれ(にあたるであろう)の部分から大きな翼が生え、極端に長い尾の根元にも小さな翼があった。全体的に緑色をしていて、のどの部分に呼吸をするための穴(えら?)があった。文にするととても奇怪に思えるこの怪物は、おそらくはウシバナトビエイの一種だったのではないかと考えられている。
Fravashi, Fravaši
Brownie
スコットランドの高地やコーンウォールに住む、民謡などにも歌われる大人しい性格の妖精。小さな全身茶色の巻き毛におおわれた老人の姿をしている。顔は平らでピンでつついたような鼻の穴をしており、普通茶色のボロ着を着ているので、「茶色さん(ブラウニー)」と呼ばれる。ブラウニーの姿を見れるのは子供か正直で明るい人間だけで、ブラウニーの存在を否定する大人が来るとどこかへ逃げてしまう。子供の遊び相手になってくれるほか、ゴブリンを追い払ったり、蜂の群れをどこかに追いやったりもしてくれるという。また根城にしている家の家族が引越すと、家族と一緒についてくるとされる。また、ブラウニーはお気に入りの人間が死んでしまうとボガートになってしまう。
Brownie Clod
Frau berta
Frau berchta
Flauros
ソロモン王に封印された72柱の魔神の一人(→"ソロモンの霊")。「ハウラス(Hauras)」、「ハヴレス(Havres)」、「ハウレス(Haures)」とも呼ばれる。ヒョウの姿をとる。特に魔術師が他の悪魔に対抗するために呼び出す魔神とされるが、他にも未来の知識や敵対者を炎で焼き殺す力などを持っており、召喚者に授けてくれる。ただしフラウロスは召喚した三角形の魔方陣の外から出ると嘘しか語らないとされている。コラン・ド・プランシー著「地獄の辞典」では20の軍団を指揮する地獄の大将軍として紹介されており、蛇を尾としヒョウの頭をもった人間の姿で描かれている。
Praestigiatores
Bragi
Prajapti
Prajnaparamita, Prajñāpāramitā
Black Annis
スコットランド高地地方の妖精で人食いハッグ。真っ青な顔と鉄の爪、長く白い牙を持っている。また片目であるともいわれる。これまでに食べた人間や羊の骨が転がった洞窟の中に棲んでいる。ブラック・アニスの爪を研ぐ音は遥か彼方まで響き、これを聞いた昔の人々は子供を家に入れて扉を閉ざし窓に近づけないようにしたという。窓からすっと手を伸ばして子供をさらったり、或いは自分の住処の近くに生えている木の上で待ち伏せして通りすがりの人に襲いかかるという。非常に足が早く、外でその姿を見てしまった人はもう逃れようがない。しかし、その力は自分の血に依存しているとされ、ケガを負わすことが出来れば、傷の手当てをしに棲みかに帰ってしまうという。この地方では薬草の汁につけた猫の死骸(アニスと呼ばれる)をブラック・アニスに与える餌として町じゅう引き回すという恒例の行事がある。ブラック・アニスやジェントル・アニーといったハッグは全てケルトの女神ダヌからうまれたものだともされている。
Black Eric
イギリス領のオークニー諸島やシェットランド諸島に伝わる妖精。海の怪物「タンギー」に乗って羊泥棒を繰り返していたが、サンディという小作人によって岸壁から落とされ死んでしまった。しかしブラック・エリックの死後もタンギーはしばしば出現し、人々を恐怖に陥れたという。
Black Shuck
イングランド東部のイーストアングリアに伝わるブラック・ドッグ。「ブラック・シャグ(Black Shag)」、「オールド・シャック(Old Shuck)」、「シャック(Shuck)」、「シャック・ドッグ(Shuck Dog)」などの名前でも呼ばれる。名前の「シャック」とは恐らく悪魔や悪霊を意味するアングロサクソン語「スクッカ(Scucca)」に由来すると考えられている。ロバほどの大きさの黒い犬で、もじゃもじゃの毛と大きく燃えるような赤い目を持っている。緑や赤の火花を散らす片目、あるいは顔の真ん中に目が一つしかないとされるときもある。また頭がないにもかかわらず目だけ体の前方に浮いているとするものもある。
ブラック・シャックはイーストアングリアの各地で様々な性格で伝わっている。例えばノーフォークでは見るだけでも危険で、見た人は病気になったり死んだりするとされる。ケンブリッジシャーでは身内の死を警告するために現れるとされる。サフォークでは見るだけなら無害だが挑発的な態度をとると攻撃してくるとされる。一番温和なのがエセックスのブラック・シャックで、旅人の道案内をしたり害から人をまもってくれたりするという。
Black Dog
イギリスを中心として知られる犬の怪物に対する総称。「ブラック・ハウンド(Black Hound)」ともいう。また日本では俗に「黒妖犬(こくようけん)」の名で紹介されることが多い。十字路や古い道、教会の墓地、塚といった人気のない場所に現れる巨大な黒い犬で、多く普通の犬にはない赤や緑、或いは燃えるように輝く目を持っている。人に害をなしたり、死の前兆とされたりする悪性のものから、家まで見送ったり、道案内をしてくれる良性のものまで様々いるが、多くは恐怖の対象として知られる。ブラック・ドッグの伝説はイギリス国内にとどまらないが、イギリス国内だけでも様々な名称とその地域ごとの特徴や伝説がある。
イギリス国内 | イーストアングリア |
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リンカンシャー |
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ウェールズ |
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サフォーク |
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サマセット |
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マン島 |
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ランカシャー |
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ヨークシャー |
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イギリス北部 |
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イギリス |
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イギリス国外 | ドイツ |
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フランス北部 |
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フランス |
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ギリシア |
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Brash
Pratibhānakūṭa
Praṇidhānapāramitā
Brahma, Brahmā
インドにおいて宇宙を創造し、指導するとされる神。神々と人間の父であり、古代インド思想で宇宙の根源とされるブラフマンを神格化したもの。シヴァ、ヴィシュヌとともに三体一座を成す。ブラフマーが世界を創造し、ブラフマーが維持し、シヴァが破壊する、という循環でこの世は成り立っているという。ブラフマーの瞑想によって宇宙の全ての物質的要素と人間がそれを理解する概念が生み出された。これはブラフマーにとっての一日のうち昼になされ、夜にはそれが再び吸収される。この一日は「マハーユガ」とよばれる大周期であり、「ユガ」と呼ばれる4つの期間、クリタ・ユガ、トレーター・ユガ、ドヴァーパラ・ユガ、カリ・ユガに分けられ、現世は争いと絶望の続く末世カリ・ユガであるとされる。
また別の創造神話によればブラフマーは宇宙卵から生まれた、あるいは宇宙卵から生まれたプルシャとして生まれたともされる。多分に観念的な神ではあるが神話の中では人間らしい役でも登場する。ある神話では自分で作り出したサタルーパーという女神があまりにも美しかったので目が離せなくなり、サタルーパーから目を離さないように幾つも頭を生やして何とか視線から逃れようとするサタルーパーを見つづけた。二人は結婚し、100年もの間秘密の場所に引きこもり、その末誕生したのが最初の人間マヌだという。またブラフマーやシヴァの不祥事の後始末をしたり、生物の姿になって地上の様子を見に行こうとしたら何回もひどい目に会うといったような、そんな役回りでも神話や民話に登場している。現在ブラフマーを最高神として信仰する宗派は存在しない。これはブラフマーが閑職神であり、もう仕事が終わった人間とは関わりのない神だからである。仏教においては漢訳され「梵天」と称される。
Phra phum
タイの民間信仰における家の守護霊ないし土地を守護する精霊(ピー)。名前は「名誉ある地」を意味する。ピーの中でも特に重要視されており、各家庭の玄関脇などには「サンプラプーム("プラプームの家"の意)」と呼ばれる小さな家のような祠が建てられ、毎日お供え物が捧げられ、家族の繁栄が祈願される。ホテルなどでも屋上や施設内にサンプラプームを設けることがある。サンプラプームはどこにでも建てていいわけではなく、たいてい家の前の、日が当たる場所がよいとされる。この土地霊への信仰はタイに仏教が浸透する前からの信仰だが、仏教と習合し、現在新しい家などが造られるとき、サンプラプームを祝福するのは仏教の僧の役目となっている。
Prahlāda, Prahrāda
Fravashi, Fravaši
Pulang Gana
ボルネオ島のイバン族に信じられている、米の生育をもたらす地の精霊。イバン族の人々が田を作ろうとジャングルを切り開いていた。ところが朝起きると、切り開いたはずの場所には元通りに木々が生えていた。こんなことが何回も続いたので人々は夜中に見張りを立てることにした。その夜見張りの者達が見たのは、プラン・ガナが木々を生き返らせて、再び地面に根をはらせている姿だった。人々はプラン・ガナを捕まえようとしたが、プラン・ガナは、大地と大地に生える一切のものは自分のものであり、植物を繁殖させるのは自分にしか出来ないのだと人々に説いた。そして米を栽培するのなら自分に貢物を捧げるように人々に言った。
Houri
イスラム教において、忠実な信者を天国おいて迎え、性的な喜びを与えるとされる黒い瞳を持つ天使のような女性たちの存在。複数形では「フラン(Huran)」。また「ハウラ(Haura)」、「フリ(Huri)」、「フル(Hur)」とも呼ばれる。一人の男に72人のフーリが割り与えられるという。フーリは永遠に処女性を取り戻しつづける存在であるとされる。
Buri
Furiae
Puriel
Brigantia
ローマの侵略を受ける前のイングランド北部において、もっとも有力な部族であったブリガンティース族における最高女神。名前は「至高の者」ないし「女王」を意味する。水や戦い、癒し、繁栄などを司る女神と考えられていた。ブリガンティア信仰は広く伝播しケルト世界のいたるところで崇拝された。アイルランドにおけるブリギット。
Brigit
アイルランドの春の女神とされているが、同じ名前を持つ女神が多数存在し、いわば「アイルランドの女神はみな、ブリギットという一つの名前で呼ばれていた」のである。そのために属性も、詩や学問、治療、工芸芸術と幅広い。それでもなお、彼女が春の女神である理由は彼女がキリスト教の聖者として、「聖ブリギット」と呼ばれ、これを記念する祭日が、異教の春の祭典と同じであるというところにある。
神々の父であるダグザの娘として、家の外でも内でもない所で生まれた。そしてアイルランドで魔術的な存在とされる、赤い耳を持つ白い牝牛の乳で育てられ、燃えるように輝く家に住んでいた。そのために彼女には炎ないし光の女神としての属性も与えられ、19人の尼僧が絶えず男子禁制の聖堂で彼女を表す永遠の美を守っているともいわれる。半神半巨人のブレシュの妻とされる。
Prigirstitis
スラヴの民間伝承に登場する男の家事の精。ドモヴォーイのように家事を手伝ってくれる。プリギルスチチスは耳が極めてよく家の中の音ならどんなに小さくても聞き取ることができるという。このため騒音、とくに叫び声などに敏感で、騒音と立てるとプリギルスチチスは怒りその者に罰を与えるとされる。
Bhṛkuṭī
Hraesvelg
北欧神話に登場する怪鳥。鷲に姿の似た巨大な鳥で北の果て、山の頂を流れる冷たい川に住んでいるという。フリースヴェルグが羽ばたいただけで氷のように冷たい突風が生まれるという。
Brizo
エーゲ海のキクラデス諸島にあるデロス島の女神。航海の保護者であり、正夢を送るともいわれる。
Frigg
Pṛthivī
Bṛhaspati, Brihaspati
Hrimthursar
Hrimthurs
北欧神話に登場する巨人の一人。名前は「霜の巨人」といった意味。極めて大きな一人の巨人を指すこともあれば、複数形(フリームスルサル Hrimthursar)で巨人の一団を指すこともある。固有名としてのフリームスルスはひどい悪事を働く力の強い巨人として描かれ、終末の戦い「ラグナロク」においては破壊の限りを尽くすという。スヴァジルファリと呼ばれる魔法の馬の持ち主でもある。
Hrimfaxi
北欧神話において、スキンファクシと対になり夜を体現する聖なる馬。名前は「霜のたてがみ」を意味する。夜の馬車を引くフリームファクシがはみに噛み付くごとに露が零れ落ち、それが地面を濡らすという。
Hrym
北欧神話における巨人ヨツン族の一人。船大工であり、ラグナロクにおいて巨人達はフリュムの作った巨船ナグルファルに乗って決戦におもむいた。ナグルファルは人間の死体から奪い取った足や手の爪で作られたという。
Hlín
Principality
Pūrvāṣāḍhā
Pūrvabhadrapadā
Pūrvaphalgunī
Puruel
Furcas
Huru-kareao
ニュージーランドのマオリ族における怪物でタニワの一種。トンガリロ湖に住み地元の村人を守るタニワで、地元の村が他の村から迫害を受けたとき、川を氾濫させてその村を洪水で襲ったという。またトンガリロ湖に浮く流木は神聖視されていて、これを使って教会を作ろうとしたヨーロッパ人は謎の死を遂げたと伝えられている。
Buluc Chabtan
Purson
17世紀の魔術書(グリモア)の「レメゲトン」の第一部「ゴエティア」に記されるソロモン王に封印された72柱の魔神の一人(→"ソロモンの霊")。「プルサン(Pursan)」、「クルソン(Curson)」とも呼ばれる。召喚者の前に熊に乗ったライオンの頭の男の姿で現われるという。手に蛇をつかんでいるとされる。召還者に宝の隠し場所と過去の未来についての秘密を授けるとされる。コラン・ド・プランシー著「地獄の辞典」には更に作曲と楽器の演奏技術を授けると記されている。
1863
コラン・ド・プランシー(Collin de Plancy)著
「地獄の辞典(Dictionnaire infernal)」より
フランス国立図書館(Bibliothèque nationale de France)蔵
Copyright : public domain
「The lesser key of Solomon, Goetia : the book of evil spirits」より
大英博物館(British Museum)蔵
Copyright : pubric domain
Bulchin
Furfur
17世紀の魔術書(グリモア)の「レメゲトン」の第一部「ゴエティア」に記されるソロモン王に封印された72柱の魔神の一人(→"ソロモンの霊")。召喚者の前に燃える蛇の尾と翼をもった鹿の姿で現われる。召還者に隠された秘密を教え、夫婦間に愛情をもたらす力、稲妻と雷を起こす力を持っているという。コラン・ド・プランシー著「地獄の辞典」では26の軍団を率いる地獄の公爵で、しばしば天使の姿をとり嘘をつくと記されている。
Blue Men
スコットランド沖アウター・ヘブリディーズ諸島のミンチ海峡に出没するという幽霊海賊船に乗る男達。「青い男たち」の意で灰色のあごひげを生やし、真っ青な体の色をしているという。古代ゲール語では「スルー・ナ(Sruth Nam)」とも呼ばれ、また出没する場所から「ブルーメン・オブ・ザ・ミンチ」とも言われる。死霊だとも海の精霊だともされる。ミンチ海峡を渡ろうとする船の前に立ちはだかり、船を沈めようとする。ブルーメンの船長は幽霊船を目標の船に寄せると猛るような声で「お前達の船を沈めるぞ」ということを歌いだす。この歌は押韻を使った見事なもので、船を沈ませたくなければ船長はこれに対しすぐに「そんなことはさせない」といった勇猛な歌で応えなければならない。この歌合戦に勝てばブルーメンは船を見逃してくれるが、負けた場合は次々とブルーメンが船に乗り移ってきて乗員達を皆殺しにし、船を沈めてしまう。
この伝承はスカンジナビア人によってアウター・ヘブリディーズ諸島にムーア人の奴隷が置き去りにされたという史実が起源になっていると思われる。何故ならばムーア人の奴隷達は青色の長いローブと青灰色のヴェールを身につけていたからだ(この衣装は彼らの子孫であるトゥアレグ族に受け継がれている)。
Purūravas
Furlac
Hrungnir
北欧神話において巨人(ヨツン)族でもっとも強いとされた者。石の頭と心臓を持つとされる。ある日偶然会ったオーディンに馬での競争を持ちかけられたフルングニルは自慢の馬「グルファクシ」に乗り、スレイプニルに乗ったオーディンと競争した。競争はオーディンがかろうじて勝ったのだが、フルングニルは競争に夢中になる余り、自分がアサ神族の世界「アスガルズ」にいつの間にか誘い出されていたことに気付かなかった。こうしてアスガルズに招かれたフルングニルは酒でもてなされたのだが、酔う内に次第に傲慢になり神々を罵倒し始めた。そこに丁度アサ神族で最も強いとされるトールが帰ってきた。酔っている上に武器も持ってきていないフルングニルはこの場でトールと戦っては自分が負けるだろうと考え、トールに一対一の決戦を申し込んでその場を無難に治めて帰っていった。後日二人はアスガルズとヨツンヘイム(ヨツン族の世界)の国境近くで対決したが、結局フルングニルはトールに負けることとなった。この時ヨツン族はフルングニルの手助けにと人工の巨人モックルアルヴィを作っている。
Freyr
北欧神話においてヴァナ神族に属する豊穣の神。名前は「主人」を意味する。父はニョルズ、母はニョルドの実の姉妹、あるいはスカジとされている。女神フレイヤとは双子の兄弟であり、二人は密通していたとされる。ヴァン神族でありながらアサ神族の筆頭として上げられる高貴で見目麗しく聡明な青年神であったという。
空かける黄金の猪「グリンブルスティ」やたためば手の中に入る魔法の船「スキーズブラズニル」など多くの宝物を持っている。フレイはひとりでに切りかかる無敵の宝剣を持っていたが、ゲルズに求婚する時にそれを従者スキールニルに持たせた。宝剣を失ったフレイは最後の戦い「ラグナロク」においてスルトと対等に戦えず敗れるとされている。
Freybug
イギリスにおいて中世の伝説や伝承に登場する犬の怪物。ブラック・ドッグの一種といえる。奇怪な黒い犬の姿をしていて、夜になる田舎道にと出現し通行人をおびえさせたという。
Freyja
Bres
ケルト神話に登場する神。神々たるトゥアハ・デ・ダナーン(ダヌの一族)とその敵フォモール(巨人族)の間に生まれた。ダヌの妹エリーとフォモールの王(の一人)エラハとの間に生まれた子であったブレシュは、神々の側につきフィル・ボルグ族と戦った。彼は功績を認められ戦いで片腕を失ったヌァザに代わって神々の王の座についたが、圧政によって神々を苦しめた。その後銀の義手を得たヌァザによって神々の王位を奪われ追放されたブレシュは神々を裏切りフォモールの王となり神々に戦いを挑んだがルーに敗北した。
Preta
ヒンズー教における悪霊の一種。元々は単に「死人」を意味する言葉だったが、前世において何らかの罪を犯した者が、霊となった時に尽きることない飢えに苦しむようになった存在とされるようになった。この概念は仏教にも取り入れられ、日本や中国では「餓鬼」と訳され、六道のうちの一つとされるようになった。
Brechta
Precht
Phlogabitus
テュアナのアポロニウス(Apollonius of Tyana)が著したとされる「ヌクテメロン(Nuctemeron)」中の「魔術的黄道十二宮に類似する十二の象徴的な時間」を支配する守護霊(Genius)、いわゆる「時間の鬼神」の一人。3時の霊の一人で装飾を司る。
Procel
Proserphina
ローマにおける農業の女神。早くからギリシアのペルセポネと同一視された。
Proserpine
ローマにおける農業と冥府の神(→プロセルピナ)であるが、グリモア上においては悪魔とされ、8人のアーク・シーデーモン(大女悪魔)の一人に数えられる。
Blodeuedd, Blodeuwedd
ウェールズ神話に登場する神秘的な美しい女性。名前は「花から生まれた者」ないし「花の顔」を意味する。彼女は神でも人間でもなく、グウィネス王国の王で魔術師でもあるマスと、アリアンロッドの兄弟でやはり魔術に長けていたグィディオンによって、魔術で花から呼び出された存在である。彼女はアリアンロッドの息子(グィディオンから見れば甥)であるレイの配偶者となるために呼び出された。というもののレイはアリアンロッドによって呪いがかけられており人間を妻にすることが出来なかったため、これをマスとグィディオンが哀れんで、ブロデイウェズを生み出したのである。ブロデイウェズとレイは幸せな日々を送っていたが、ある日レイが家を留守にしていたとき通りかかったペンリンの城主ゴロンウィとブロデイウェズは恋に落ちてしまう。ゴロンウィとブロデイウェズは周到な策を練りレイを殺そうとしたが、レイは辛くも逃れ鷲となって飛び去った。グィディオンとマスはレイの復讐としてブロデイウェズをフクロウに変えてしまった。
Flora
Pwaronga
Punga
ニュージーランドのマオリ神話に登場する神。海の神タンガロア・ファイ・アリキの息子であり、爬虫類の先祖神であるトゥ=テ=ウェイウェイと魚の先祖神であるイカ・テレを生んだ。
Wén-jīng dì-jūn
中国の道教における学問、受験の神。「梓潼帝君」ともよばれる。中国には隋の時代から1905年まで、科挙(かきょ)と呼ばれる国家公務員試験があったが、この試験を受けるものはみな文昌帝君を奉じたという。中国では現在でも文筆業者や受験生はこの神を信仰する。「史記」によれば北斗七星の第一星から第四星の近くにある6つの星を神格化したものだという。また中国神話の最高神黄帝の子である揮(き)が文昌帝君になったという説もある。揮は周から元(前1100~後1368)の間に97回も生まれ変わり学問を志す人に尽くしたとされているのでこれが道教の神にされたのだと考えられている。優れた文章家だった唐代(618~907)の張亜という人物が死後に神として祀られ、やがて文昌帝君になったのだという説もある。
Bunjil
オーストラリアのクリン人の信じる、鷹の姿をした創造神。最初に人間を作り、その口に息を吹き込んだという。通常は名前ではなく「我らが父」と呼ばれる。ある時蛇に襲われた二人の女が木の棒を振り回したとき、偶然石にぶつかった棒が折れ、火花が散って火がついた。それを烏がとっていった。これを見つけた二人の男は烏を追いかけたが、必死で逃げ回った烏は地上に火を落としてしまい、世界は大火事になった。これをみたブンジルは、二人を天に移して星に変えて救い、そして火事を消した後に人間に火を渡し、大切になくさないように気をつけるように言った。しかし結局人間は火をなくしてしまい、お陰でまた女が蛇に襲われるようになった。天に住んでいたパリアングはこれに見かねて、妹であるカラカルークに女たちを護るように命じた。地上に降りたカラカルークは棒で蛇を殴り殺していたが、偶然にその棒が石にあたり、火がついた。しかしこの火はまたもや烏に奪い去られてしまう。これを見つけ出したのはブンジルによって星に変えられていた二人の男で、人間は再び火を手に入れることが出来た。これ以降人間が火をなくすことは無かった。
Krodhacandratilaka
密教における菩薩ないし明王の一尊。サンスクリット名を「クローダチャンドラティラカ(Krodhacandratilaka)」といい、クローダは「怒り」、チャンドラは「月」、ティラカは「そばかす(や発疹)」といった意味があるため「忿怒月黶菩薩」、あるいは「月黶忿怒菩薩(がってんふんぬぼさつ)」と称される("黶"はあざやほくろといった皮膚の変色した部分を指す)。また「金剛月黶(こんごうがってん)」、「月黶尊(がってんそん)」、「忿怒月黶尊(ふんぬがってんそん)」、「忿怒降三世菩薩(ふんぬごうざんぜぼさつ)」などの名前でも呼ばれ、音写では「句路駄賛捺羅底羅迦(くろださんだらていらか)」と記される。降三世明王の異名別体の一つであり、胎蔵界曼荼羅金剛手院中の第一列(むかって左側)東方(上方)より第七位に配される。金剛手院全体の教令輪身にあたり、あらゆる障害を鎮め悪事を行う者らを降伏させる仏尊だとされる。種字は「ह्रीः(hrīḥ)」、「ह्रीं(hrīṃ)」、密号は「底羅金剛(ていらこんごう)」、「底利金剛(ていりこんごう)」、三昧耶形は三鈷戟、独鈷戟。
望月信亨 編
「仏教大辞典 第5」より
国立国会図書館蔵
Copyright: public domain
胎蔵界曼荼羅金剛手院における図像。黒肉色の身色で三目四牙四臂の極大忿怒相を表し、左右の第二手で契印を結び、左第一手で一鈷金剛杵、右第一手で鉾鑞を持つ。
Amoghakrodhāṇkuśarājāvalokiteśvara
仏教において菩薩の一尊、また変化観音の一種(→観音菩薩)。「鉤」は「鈎」とも書く。「忿怒鉤菩薩(ふんぬこうぼさつ)」、「忿怒鉤観世音菩薩(ふんぬこうかんぜおんぼさつ)」、「忿怒鉤観音(ふんぬこうかんのん)」とも呼ばれる。サンスクリットで「アモーガクローダーヌクシャラージャーヴァローキテーシュヴァラ(Amoghakrodhāṇkuśarājāvalokiteśvara)」といい、「アモーガ」は「空でない」、「誤らない」、「クローダ」は「怒り」、「ラージャ」は「王」、「アンクシャ」は「鉤」を意味する。胎蔵界曼荼羅の虚空蔵院の北方(左側)下段の第二位(左より数えて2番目)に配される。尊容は「秘蔵記」によれば、四面四臂の忿怒形で肉色身、左右の面は青黒色で、左の第一手は蓮華、第二手は羂索、右の第一手は鐡鉤、第二手は与願印を結ぶとされるが、現図では菩薩形で三面全てに化仏(阿弥陀仏)を頂き、更に正面頭頂には両手に大剣を持った菩薩を擁する姿で描かれる。密号は「持鉤金剛(じこうこんごう)」(胎藏金剛教法名號)、種字は「धि(a)」(両部曼荼羅私抄)。三昧耶形は鉞鉤。
望月信亨 編
「仏教大辞典 第5」より
国立国会図書館蔵
Copyright: public domain
Vajrāgravajradhara
密教における菩薩の一尊。サンスクリット名を「ヴァジュラーグラヴァジュラダラ(Vajrāgravajradhara)」という。ヴァジュラは「金剛」、アグラは「先端」や「最上部」、「ヴァジュラダラ」は「金剛を擁する」といった意味がある。「忿怒持金剛菩薩」、「忿怒金剛持菩薩(ふんぬこんごうじぼさつ)」と意味訳されるほか、「嚩日羅仡羅嚩日羅駄洛(ばじらきらばじらだら)」と音写する。名前の通り金剛の先端のような猛利な金剛智を象徴する仏尊とされる。胎蔵界曼荼羅の金剛手院の第二列(中列)東方(上方)より第三位に配される。像容は赤肉色の身色で左手に三鈷杵を持ち、右手は手のひらを上に向けた与願印を結び、右ひざを立て白蓮華座に坐す。また左下に金剛使者が侍る。種字は「हूं(hūṃ)」、密号は「威猛金剛(いもうこんごう)」、三昧耶形は三鈷杵。印相は内縛三股印。
望月信亨 編
「仏教大辞典 第5」より
国立国会図書館蔵
Copyright: public domain
Humbaba
Wényáo-yú
中国の最古の地理書とされる「山海経」の西山経の西次三経に言及される、吉兆とされる魚。泰器山に流れ流沙に注ぐ観水という川に多く生息している魚で、全体的には鯉に似た姿で青い模様があり、首が白く口先が赤く、鳥の翼が持っていると言う。西海や東海に出かけ、夜になると飛ぶのだという。鸞雞(鸞鳥の雛)のような声で鳴くとされる。また食べることもでき、味は甘酸っぱく、狂心を癒すという。これが現われると天下は大いに実るという。「山海経」には他にも鰼鰼、蠃魚、鯥といった翼を持った魚が紹介されている。
「山海經(せんがいきょう)」(不明)より
ページ:v01p043
郭璞(伝)著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
Wén-lín
中国の最古の地理書とされる「山海経」の中山経の中次十一経に言及される、凶兆とされる獣。几山という山にいる、白い頭と白い尾を持ち、体が黄色い猪の子のような獣だという。この獣が出現すると天下が暴風に見舞われるとされる。