文車妖妃
ふぐるまようひ
日本における妖怪の一種。鳥山石燕の「画図百鬼徒然袋」に見え、文箱から手紙を引き出す鬼婆のような形相の着物を着た妖女として描かれている。文車とは本を運びやすいように厨子や書棚にキャスターのように小さい車を取り付けたもの。吉田兼好の「徒然草」にある、「多くて見苦しからぬは、文車の文、塵塚の塵」という一文から着想を得て描かれたものらしく、前の頁には「塵塚怪王」なる妖怪も描かれている。石燕の記した文章によれば、千束の玉章(たまずさ=手紙のこと)のように書いた人や読んだ人にとってこめた思いが強い文章や手紙は、それ自体が変化して妖怪となることもあるだろう、とのことである。
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文車妖妃(ふぐるまようび)
1805
鳥山石燕著
「百器徒然袋(ひゃっきつれづれぶくろ)」上より
国立国会図書館蔵
Copyright: public domain歌に古しへの文見し人のたまなれやおもへハあか奴白魚となりけり/かしこき聖のふみに心をとめさへかくのごとし/ましてや執着のおもひをこめし千束の玉章にハかかるあやしくたちをもあらはしぬべしと夢の中におもひぬ