トアル
Toar
インドネシアのスラウェシ島北部に住むミナハサ族における太陽神。生まれた時に母であるエンプン・ルミヌウトと別れ、世界中を巡り、それと知らずに再開した母と結婚した。二人の結婚によって全ての神と人間が生まれたという。
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Toar
インドネシアのスラウェシ島北部に住むミナハサ族における太陽神。生まれた時に母であるエンプン・ルミヌウトと別れ、世界中を巡り、それと知らずに再開した母と結婚した。二人の結婚によって全ての神と人間が生まれたという。
樺太のアイヌに伝わる妖怪。名前は「地下のお化け」を意味する。体の一部、特に性器だけ地表に出して人間を驚かす。例えば女性が林を歩いているときは行く手の地面から突然キノコのようなものが現われピョコピョコと動く。これは男のトイポクンオヤシである。女のトイポクンオヤシもいてこちらは男性の前に現われる(やはり性器しか出さない)。いずれのトイポクンオヤシも相手のものを誉めて「やりたいならやろう」と性交の真似をすると満足して退散するという。
Du
チベットの土着宗教であるボン教にける天界の精霊のこと。しかしチベット仏教となって悪魔とされるようになる。黒い姿をしており城に住むという。
Tuatha De Danann
Douamoutef
もしくは「ドゥアムテフ」とも。エジプトでは故人をミイラにする際、内蔵を四つに分けてそれぞれ壷に保管、収納するという習慣があったが、四つのカノプス壷はそれぞれホルスの息子たる男神四柱と死に関連する女神四柱によって守護されるとされた。ドゥアムウトエフはこの四つの壷(カノプス壷)のうち、女神ネイトと共に胃の入った壷を守護する神である。ドゥアムウトエフは犬の頭部を持つ神なので、胃を入れるカノプス壷の蓋部分も犬の頭部を模したものであった。
Canopic Jar with Head of Duamutef
メトロポリタン美術館(The Metropolitan Museum of Art)蔵
新王国時代の第19王朝頃(1295-1185 BC)
Copyright: public domain
Dvergr
Duende
スペインの民間伝承に登場するドヴェルグのような家事の精霊。村の家にある白壁に住んでいるとされる。住んでいる家の人間の眠りを妨げる。
Dong-wang-fu
中国における神仙で、東王公、木公などとも称される。西王母に対比して、男の仙人を統べる陽の気の精とされる。背丈は一丈あり、髪は白く、人の体に鳥の顔、虎の尾を持っていて、黒い熊に乗っているという。
Tòuōubórúkǎn
中国の少数民族、鄂倫春(オロチョン)族における火の神。
Tuoni
フィンランドの叙事詩「カレワラ」に登場する冥府の王。死んだ人間は彼と彼の妻トゥオネタルの支配する国「トゥオネラ(Tuonela)」に行く。国境には黒い黒い河が流れ、河の水面には白い白い白鳥がいる。トゥオネラのビールには蛙と蛇と得体の知れない気味の悪いものが入っていて、一名を「忘却のビール」と称し、これを飲むと生きていた時のことを忘れてしまい現世に戻れなくなるという。またトゥオネラの敷布団は焼けた石で、掛け布団は蛆虫の群れである。トゥオニとトゥオネタルの間には一人の息子と無数の娘達がおり、息子は鉤型に曲がった指を持ち、千尋のヤナ(魚を取る道具)を河に掛け渡して、どんな勇士も二度と地上に戻れないようにする(ただし英雄ワイナモイネンは川獺に変身することでこの罠をかいくぐった)。娘たちは病気と苦痛の女神達だが、一人だけ優しい娘もいて、トゥオネラの川辺でまだ生きている人に「こちらへくるな」と警告する。
Dvorovoi
スラヴ地方における庭の精霊。ドモヴォーイが野生化したような精霊で、放って置くとあまり害は無いものの、ときどき人間に恋に落ちたり、怒って八つ当たりする事があるという。白い動物が嫌いでいじめるが、白い雌鳥だけはいじめない。子馬や子牛はドヴォロヴォーイにいじめられないように農家の中につながれた。パンをあげて優しく話し掛ければドヴォロヴォーイをなだめられるという。暴れてしょうがない時は、殴ったり、嫌いなもの(白い動物の毛皮、カササギなど)をぶつけたりすると反省する。また干草を運ぶ熊手で突き刺したり、埋葬布から抜いた糸を音を立てて振り回したりすることでも懲らしめることが出来るとされる。通常姿は見えないとされているが、ドモヴォーイと似た姿をしているといわれている。
Dongyue-Dadi
Tukiphat
テュアナのアポロニウス(Apollonius of Tyana)が著したとされる「ヌクテメロン(Nuctemeron)」中の「魔術的黄道十二宮に類似する十二の象徴的な時間」を支配する守護霊(Genius)、いわゆる「時間の鬼神」の一人。8時の霊の一人で計画ないしシャミール(Schamir=魔法の石、ないし石の虫、ないし石の葉)を司る。
Dúc-Thánh Bà
Dúc-Bà
Dāng-hù
中国において最古の地理書とされる「山海経」に言及されている、奇妙な姿の鳥。西山の上申山という山に棲んでおり、全体的には雉に似ているが、髯(ぜん=喉ないし口あたりの毛のこと)を使って飛ぶのだという。この鳥を食べるとめまいを覚えなくなるとされる。
「山海經(せんがいきょう)」(不明)より
ページ:v01p056
郭璞(伝)著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
「唐土訓蒙圖彙(もろこしきんもうずい)」(1802)より
ページ:v05p022_02
平住専庵著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
Dāng-kāng
「當康」とも記述する。中国最古の地理書とされる「山海経」の東山経に言及されている、吉兆となる生物。欽山という山に棲んでおり、牙を持つ豚のような姿の獣で、自分の名で(つまり「当康」と)鳴くという。この獣が現われると天下は豊作になるとされる。
「山海經(せんがいきょう)」(不明)より
ページ:v02p039
郭璞(伝)著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
「唐土訓蒙圖彙(もろこしきんもうずい)」(1802)より
ページ:v05p030
平住専庵著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
Tao-wu
中国神話において、尭帝の時代に遥か西方の地に棲んでいたとされる怪物。四凶の一人に数えられる。人の顔を持ち、身体は虎に似ているが虎よりも遥かに大きい。全身に長さ40cmの毛が生え、口には猪の牙が生え、5mの尾を持っていたという。梼杌は古代の王族の血を引いていたが、ただ凶暴で悪いことばかりし、引く事を知らずに死ぬまで戦うという性格だった。また人の意見を全く聞き入れないので「難訓(教育できない)」という別名があったという。
寺島良安「倭漢三才図会」より
国立国会図書館蔵
Copyright: public domain
「唐土訓蒙圖彙(もろこしきんもうずい)」(1802)より
ページ:v05p025
平住専庵著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
Ndo'yet
メソアメリカ中央部の南部高地、およびその周辺に住んでいたサポテカ人に信じられていた神。9つある暦日名の一つで、神聖なものや自然の力をあらわすとされる。
Tǔ-zhǔ
中国の少数民族、阿昌(アチャン)族が廟に祀って信仰する神。六本の手を持ち上の二本で太陽と月を持ち、全村落の幸福と災害を司っているという。村の安全や家畜の繁殖、作物の保護を祈って年三回の祭りが土主のために捧げられる。
Dào-shóu
中国において怪物の一種。南北朝時代に書かれた「神異経」という書物によれば、中国西方の辺境に棲んでおり、梼杌に似た人頭虎身の姿をしており、全身は長い毛に覆われ、口には3cmほどの牙が生えているという。性格も梼杌に似ており、戦うときは絶対後に引かず、死ぬまで戦うとされるが、梼杌よりも知能は高く、人間の作った罠を見破るので捕まえにくかったという。
Ndozin
メソアメリカ中央部の南部高地、およびその周辺に住んでいたサポテカ人に信じられていた神。死と正義の神で、夜の神々のひとり。ダンの使者とされる。
Doú-zhěn niáng-niáng
中国道教で、子供を産む際にあらゆる災厄から護ってくれる娘娘神のうちの一人。そのうち痘疹娘娘は、幼児を天然痘(疱瘡)にかからないように護る役目を司っている。(参考:乳母娘娘)
Tooth Fairy
欧州文化圏において汎的に民間伝承にみられる子供部屋の妖精。「トゥーシィ・フェアリー(Toothy Fairy)」とも呼ばれる。子供の乳歯が抜けた時にちゃんと永久歯が生えてくるように面倒を見る妖精とされる。抜けた乳歯をその夜に枕の下、あるいは「トゥース・フェアリー・ボックス」と呼ばれる小さな箱に入れておけば、トゥース・フェアリーによって引き取られ代わりに銀貨一枚(というかその時の相場に応じた貨幣)が置かれるとされる。これを巧妙に行うのはもちろん保護者の役目となる。こうした好感された貨幣は「フェアリー・コイン」と呼ばれる。
どうそじん
日本の民俗信仰における道に関係する神。「道陸神(どうろくじん)」、「道禄神(どうろくじん)」とも呼ばれる。村はずれや路傍に置かれる石の神だが、その形は一定しない。ほぼ自然なまま石一個、奇石を積み上げたもの、(道祖神や道陸神といった)名前を刻んだ石標、石を祠型に彫ったもの、一身の人型の石像(普通の男の姿をした者から僧形や天狗の姿のものまである)、抱き合ったり寄り添ったりした男女二身の人型の石像、さらにそれに鳥居を掘ったもの、男性器の形状のものなど数多くの道祖神が作られた。名前の通り道を司る神で、旅行の無事を祈ったり、道から村の中に害意が侵入することを防いだりする神だが、安産や妊娠、良縁、性病予防などを願う神ともされた。子供と親しい神とされることもある。塞の神と同一視される。
Tungting-shenchun
中国湖南省北東部にある、中国第二の大きさを持つ淡水湖、洞庭湖に住まう水神。元の名は「柳毅(りゅうき)」といい、気弱な学生であったが、たまたま洞庭竜王の娘が難に遭っているのを見て、苦境を救ってやった。その縁で彼女を娶って昇仙し、後に洞庭竜王の後を次いで洞庭湖の神になったのである。ところが元々文弱の徒であった洞庭神君は容貌が優しかった為に水怪たちを威服させることが出来なかった。そこで昼は奇怪な面をつけ、夜になるとこれをはずして眠るようにした。だが面をつけるのになれた洞庭神君は日ごとに面をはずすことを忘れるようになり、面はついに顔と同化してはずせなくなってしまった。その為、洞庭湖を船で行き来する時に無駄口を聞いたり、何かを指差したり、手をかざして遠くを見たりすると、洞庭神君が自分の顔のことで陰口を叩いたり、自分を指して笑ったり、自分の顔をうかがっていると勘違いして、船を覆されてしまうという。
Tu=Te=Wheiwhei
ポリネシアのクック諸島にあるマンガイア島における怪物。「モコ(Moko)」とも呼ばれる。トカゲの体に人間の頭を持った巨大な怪物で、人間と自分との間に出来た子孫を守っているという。
Tao-tie
中国神話において四凶と呼ばれ恐れられていた四匹の怪物の一。名前は「大食漢」といった意味をもつ。人の頭に羊の身体を持ち、二本の角をもち、全身は毛で覆われていて虎のような牙を持っていた。一説には巨大な胃袋をもつ二つに分かれた下半身をもっていたとされる。この饕餮は中国の西南方の荒野で育ったとされる野蛮な怪物で、ものすごい食欲で何でも喰い、自分は働かずに他人のものを奪い取り、強いものには媚びを売り、弱いものはいじめるという。古代の帝王であった縉雲氏の子孫で、舜帝によって西方に追放されたという。饕餮は貪欲と性欲の象徴であり、贅沢に溺れることを警告する意味でその姿を鐘や鼎、酒器に描かれた。
Dòng-dòng
中国の最古の地理書とされる「山海経」の北山経に記されている生物。泰戲山という山にいる羊のような獣で、角が頭に一つあり、目は通常の位置になく後頭部に一つだけあるのだという。自分の名で(つまり「䍶䍶」と)鳴くとされる。
「山海經(せんがいきょう)」(不明)より
ページ:v02p018
郭璞(伝)著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
Tutujanawin
汎アンデス的に信じられていた幾分謎めいた神。「あらゆるものの始まりと終わり」という総括的概念を具現する観念神であり、森羅万象に生命と活力を与える至上の存在だとされる。
Tutresiel
Dooinney-oie
マン島における天気の精霊。名前は「夜の人」を意味する。風にのって彼らの声や角笛の音が聞こえることがある。輪郭のぼけた人間の形でドゥナ・エーの姿がみえることもある。ハウラーと同じく漁師や農夫に嵐が近づいていることを知らせてくれる精霊とされる。
Dinny Mara, Dooinney Marrey
マン島の民間伝承に登場する海男(マーマン)。マン島の言葉で「海の男」をあらわす「ディーナ・マラ(Doinney Marrey)」が変化した語。独身の若者に親切でニシンをもらう代わりに魚のいっぱいとれる場所を教えてくれたり、嵐が来ることを教えてくれる。ただ船上で口笛を吹く行為はドゥナ・マラと嵐とを悪戯に呼び寄せることになるとされ、マン島の漁師はこれを禁忌としている。
Doone
スコットランドの民間伝承に登場する妖精。年老いた老人やポニーの姿で現われる。いたずらな妖精だが悪意は全くなく、道に迷った旅人の道案内をしてくれる。
Tunnituaqruk
カナダのハドソン湾沿岸東部域に住むイヌイットに伝わる雄の怪物。人間に似ているがその頭は巨大で刺青に覆われている(「tunnit」は刺青の意)。雌はカチュタユークと呼ばれ外見が異なる。ともに人間を後ろからつけたり、使われなくなって間もないイグルー(雪の家)の寝床に隠れてたまたま来た人を驚かしたりする習性があるという。
Thunupa Viracocha
インカの創造神ヴィラコチャの数多くある名称の一つだが、「トゥヌーパ」という神は元々古くから存在していた別の神だと考えられる。ティアワナコで信仰されていた、空と天候を司る神であり、頭から太陽光線を模したものだと思われる線が刻まれた像が存在している。
Doonongaes
アメリカのネイティブアメリカン、イロコイ族に属するセネカ族の伝承に登場する怪物。頭に二本の角を持った蛇に似た姿をしている。深い川や湖に住んでいて、怪物亀スカフノフと協力して人間や大きな動物を襲い食べてしまうことで知らる。ドゥーノンガエスの住む場所の水に触れることでさえ危ないとされている。またドゥーノンガエスの名前を口にすることも危険で、人々はドゥーノンガエスが島民に入るまで彼の話題を話さない。
Tubatlu
カバラやグリモア「モーセ第6、第7の書」において言及される天使で、儀式において唱えられる、偉大な力を発揮するという8人の万能な天使の一人。
Tubiel
Dubbiel, Dubiel
日本の中国・四国地方にいるとされる、蛇の霊の憑き物。「当廟」の字を当てる。また「とんべ」(徳島)、「とんぼ」(香川)、「とぼ」(香川)、「とうばい」(島根)とも呼ばれる。10~20cmほどの長さの鉛筆ぐらいの太さの蛇の姿で、腹は薄黄色、それ以外は淡黒色で首の周りに黄色い筋の輪があるという。とうびょうが家に憑くとその家は栄える。とうびょうが憑いた家は「とうびょう憑き」と呼ばれるが、とうびょうは家の主人の気分を敏感に感じ取り、主人の気に入らない人間に憑いて害をなすことがある。憑かれた人間は身体中が腫れ、針で刺されたような腹痛に苦しむという。
Tupilak, Tupilaq
グリーンランドに住むイヌイットにおいて、アンガコック(Angakoq=シャーマンないし治療者のこと)の中でも特に不幸をもたらす能力に長けるイリシツォク(Ilisitsoq)によって使役される生物。トゥピラクはイリシツォクによって呪術的に作り出されたアザラシに似た奇怪な生物で、イリシツォクの命令で人を襲って殺すとされる。
とうふこぞう
日本の妖怪の一種。草双紙などに見られる妖怪だが、実際に遭遇したというような話は残っていない。頭でっかちで(時に一つ目の)坊主頭の童子が大きな編み笠をかぶり、手に持ったお盆に豆腐をのせた姿で描かれる。雨がしとしと降る日に竹やぶの中から姿を現し、近くを通った者にお盆を差し出してしきりに豆腐をすすめるという。
豆腐小僧の差し出す豆腐を食べてしまうと、身体中にカビが生える病気になって苦しむことになるという話もあるが、これは昭和以降の創作だとみられている。黄表紙に描かれた豆腐小僧の持つ豆腐は、ほとんどの場合紅葉の印が入っているが、これは堺の名物であった「紅葉豆腐」を模したものだと思われる。
Dubdo
メソアメリカのサポテカにおける「トウモロコシの神」の別称。9つに分けられた夜の時間のうち5番目を守護する。
Dumuzi
Tumu-ra'i-fuena
ポリネシアのソシエテ諸島に属するタヒチ島において海に住んでいるとされる怪物の一つ。まだらな皮膚の巨大なタコの姿で、その触腕で天と地を掴んでいるとされる。過去にルアがその手を引き離そうとしたが失敗したことがある。
どうめき
日本の栃木県宇都宮地方に伝わる鬼の一種。身の丈は3mはあり、毛は刃の如く尖っており、体中には百の目がついていたという。馬捨て場に現われ死んだ馬を貪り食う。藤原秀郷によって倒されたが、死んでなお体からは火炎と毒気が吹き上がっていたので近づけなかった。通りかかった本願寺の智徳上人の呪文により火炎と百の目は消え、百目鬼はその場に葬られたという。
日本の妖怪の一種。熊本県八代市の松井家に伝わる「百鬼夜行絵巻」などに見られる妖怪で、河童のような緑色の体から頭が二つ生えた姿をしている。片方は真面目な顔をしているが、もう片方は舌を出しておどけた顔をしている。名前と姿から考えるに、二つの頭が口喧嘩ばかりしていて物事がどうもこうも進まない、といったことを暗示する妖怪だろうか。
北斎季親画
「化物尽絵巻(ばけものづくしえまき)」より
国際日本文化研究センター蔵
Copyright: public domain
Tulā
Tulatu
カバラやグリモア「モーセ第6、第7の書」において言及される天使で、儀式において唱えられる、偉大な力を発揮するという8人の万能な天使の一人。
Turabug
イタリア中部のトスカナ地方におけるヘンルーダの妖精あるいは精霊。ヘンルーダとはミカン科の木で元々は魔術の材料や薬草として使われていた。同じような存在としてツタの妖精であるアルデガンノがいる。
Daramulun
オーストラリア東部、ニューサウス・ウェールズにおける天空神。名前は「一本足の」といった意味。「スレムリン(Thuremlin)」とも呼ばれる。ドゥラムランは天空神であるとともに雷神であり、地域によってはその叫びは雷鳴となり振り下ろす斧は稲妻になるとも言われる。通過儀礼を行う際に「万物の父」として表れる存在であり、その像は粘土から作ることになっているが、通過儀礼のときにだけしか見ることが出来ない。ドゥラムランの伝承はバイアメと混ざっており、「万物の父」がバイアメの場合もあるし、ドゥラムランがバイアメの息子とされ、父であるバイアメが人間との仲立ちをする場合もある。このような通過儀礼における存在は、ビクトリア州ではブンジル、マレー川下降では「ヌルンデレ」、「ングルンテリ」と取って代わる。
Turanna
イタリア中部のトスカナ地方において妖精の女王として知られる。「アルバ(Alba)」とも呼ばれる。
Tulihänd
Durga, Durgā
インド神話において、シヴァの妻であるパールヴァティーが取る様々な姿のうちの一つ。「マヒシャースラマルディニー(Mahiṣāsuramardinī="マヒシャ(水牛の怪物)を殺した者")」、「ニシュムバスーダニー(Niśumbhasūdanī="ニシュムバを殺す女神")」、「カートヤーヤニー(Kātyāyanī)」などの別称を持つ。山神ヴィンドゥヤの娘であり、名前は「近づき難き者」といった意味と考えられる。パールヴァティーの、或いはシヴァの猛々しい一面が表われた神格の一つで、虎ないし獅子にまたがり、10の腕に10の武器を持ち、悪魔を調伏する女神とされる。10の武器の中でもシヴァから借り受けた三叉矛は最も強力で、水牛の悪魔マヒシャや人間の姿の悪魔ニシュムパをこの三叉矛で突き刺している姿が好んで絵に描かれる。ドゥルガーは他の「シヴァの妻」に比べるとかなり後期までその中に入っていなかったことが分かっている。中世にはドゥルガーに対して人間が生贄にされたことがあったが、今でもベンガル地方で行われる「ドゥルガー・プージャー」と呼ばれるドゥルガーを祭る秋祭りには動物の生贄が捧げられる。
Turukawa
メラネシアのフィジー諸島における鷹、ないし鷲の姿をした女神。蛇の創造神デンゲイの妻とも友人とも伝えられている。トゥルカワの産んだ卵より最初の男女一組が生まれた。
Tursus
フィンランドの伝承に登場する想像上の生物。海に棲んでおり、人間のような胴体と腕、巨大なセイウチの頭部、鯨あるいはセイウチの下半身(尾)を持つ混成生物。アザラシの皮を身にまとっている。ノルウェーの伝承にも同じようなロスメルと呼ばれる怪物の話が残っている。
Trwtyn-tratyn
イギリスのウェールズにおける女の妖精。自分の名前を決して他人に漏らさないという約束の代わりに糸紡ぎをする女性を助けてくれる。
sGrol ma dkar po, Drölma karpo
チベット仏教における21種存在するドゥルマ(ターラー=多羅菩薩)のうち、緑色のターラーであるドゥルマ・ジャンクと並んで重要視された「白色のターラー」。略して「ドゥルカル(sGrol dkar, Drölkar)」とも呼ばれる。サンスクリットでは「シタターラー(Sitatārā)」と称する。「ドゥルマ」はターラーのチベット名で「開放する母」、つまり「救度仏母(くどぶつも)」を意味し、「カルポ」は「白色」を指し、チベットにおける4つの原色の一つで純粋さや輝きを象徴する。
延命や長寿、無病息災などに効験があるとされる。緑色ターラー、白色ターラーの両尊でチェンレーシク(=観音菩薩)の左右に侍する姿で描かれることがあり、吐蕃王国のソンツェンガムポ王がチェンレーシクの化身とされたことにより、その妃である文成公主はドゥルマ・ジャンクの、ティツゥン公主はドゥルマ・カルポの化身と考えられるようになった。
White Tara and Green Tara
メトロポリタン美術館(The Metropolitan Museum of Art)蔵
15世紀後半
Copyright: public domain
sGrol ma ljang khu, Drölma jangkhu
チベット仏教における21種存在するドゥルマ(ターラー=多羅菩薩)のうち、白色のターラーであるドゥルマ・カルポとともに重要視された「緑色のターラー」。略して「ドゥルジャン(sGrol ljang, Drönjang)」とも呼ばれる。サンスクリットでは「シャーマターラー(Śyāmatārā)」と称し、「緑色のドゥルマ(ターラー)」を意味する。またまた「アカシアの森」を意味する「センデン・ナクキ・ドゥルマ(Seng ldeng nags kyi sgrol ma, Sengdeng nakkyi drölma)」(サンスクリットでは「カディラヴァニターラー(Khadiravanitārā)」)とも呼ばれる。
商売繁盛や利殖、蓄財などに効験があるとされる。緑色ターラー、白色ターラーの両尊でチェンレーシク(=観音菩薩)の左右に侍する姿で描かれることがあり、吐蕃王国のソンツェンガムポ王がチェンレーシクの化身とされたことにより、その妃である文成公主はドゥルマ・カルポの、ティツゥン公主はドゥルマ・ジャンクの化身と考えられるようになった。
White Tara and Green Tara
メトロポリタン美術館(The Metropolitan Museum of Art)蔵
15世紀後半
Copyright: public domain
アイヌにおける植物のカムイ。「トゥレプ」とはアイヌ語でウバユリのこと。アイヌ人にとって北海道に生える大姥百合(おおうばゆり)の根茎は重要な食物の一つであり、トゥレプカムイはアイヌ人が何故植物を食べるようになったかを説明する神謡に登場する。トゥレプカムイはかさぶただらけで毛髪が一本も無い不気味な女性の姿でアイヌ人たちの家を訪れ、頭のかさぶたを爪で掻き落として鍋に入れて茹で、その恐ろしい白い粥状の汁をアイヌ人たちに食べさせようとする。死ぬ気で粥を口にしたアイヌ人は、それが素晴らしくおいしい食べ物であることを知った。驚くアイヌ人達の前で、トゥレプカムイは本来の美しい姿をあらわし、自分(ウバユリ)がおいしい食べ物であることを知らないアイヌ人達に、自分の利用法を教えに来たということを明かす。
Turel
キリスト教や神秘学における堕天使ないし天使の一人。名前は「神の岩」の意。「トゥラエル(Turael)」、「トウリエル(Touriel)」、「トゥリエル(Turi'el)」とも呼ばれる。旧約聖書外典「第1エノク書」によれば神に反逆した200人の堕天使の一人であり、背教の軍勢の20人いる、「数十の首長(Chief of Tens)」の一人とされる。
アイヌにおける守護神の総称。「トゥレンパ」、「ドジカムイ」、「ドレンペ」とも呼ばれる。トゥレンペは個人、あるいは集団に憑くカムイのことで、動物や植物、火の神や雷の神など人によって憑くトゥレンペは異なる。アイヌの人は生まれたとき最大で三つのトゥレンペを持っているとされる。それ以外でも協力したお礼にカムイがトゥレンペになったり、病気のときなどにトゥレンペを降ろすこともあるという。
Tuntabah
Tumburu
とおつまちねのかみ
とおつやまさきたらしのかみ
Tokakami
メソアメリカのウイチョル族に信じられている死の神。
To Kas
アメリカのネイティブアメリカン、クラマス族に伝わる怪物。カリフォルニア州にあるクレーター湖に棲んでいる。頭に白い角を生やした巨大な蛇の姿をしていて、住処に近づく動物、特に人間を襲って食べてしまう。
Tcabuinji
オーストラリア北部、ディリー川流域にあるデラメアという土地に住むアボリジニ、ワルダマン族における雷神。弟のワグドジャドブラと合わせて「稲妻の兄弟」と呼ばれる。ワルダマン族にとって重要な聖地「雨を夢見る中心地」において、その儀式の多くはこの兄弟に捧げられる。特にイニシエーションの儀式として重要な擬似割礼は、この兄弟がもたらしたものだとされる。この二人は兄の妻カナンダをめぐって争い、弟ワグドジャドブラは兄トカブインジによってブーメラン、或いは石斧で殺されたとされる。斧はオーストラリアだけでなく東南アジアからヨーロッパまで、稲妻の象徴となっている。
アイヌにおけるカムイの一人。太陽のカムイであるが、日常生活のおいて身近ではないものを顕現体とするカムイの常としてあまり重要視はされなかった。名前は「日中に輝くカムイ」といった意味で、女性のカムイと考えられた。
Tocapo Viracocha
アンデスの創世神話において、いわゆる「アンデスの三人」と称される神の一人。イマイマナ・ヴィラコチャとともにコン・ティクシ・ヴィラコチャの二つに分かれた化身、あるいは下の息子とされる。コン・ティクシ・ヴィラコチャの協力者であり、ティティカカ湖からマンタへ旅する道程を3人それぞれ違う道で歩み、道すがら木や植物に名前をつけ、食用のもの、薬用のものの見分け方を人間に教え、マンタで他の二人と合流すると海の上を歩いて水平線のかなたへ消えていったという。
ときおかしのかみ
日本記紀神話に見える神。「古事記」のみにあらわれ、「日本書紀」においては言及されない。多く「時量師神(ときはかしのかみ)」と記載されることが多いが、これは「時」の字から来る誤解で「置」を「量」と取り間違えたものだと考えられる。古事記によれば黄泉の国から帰ってきた伊邪那岐命が穢れを祓うために服や身につけていたものを投げ捨てた時に、生じた十二柱の神の一柱で、時置師神はそのうちの御裳(みも=腰から下にまきつける衣服)が化生した神である。「ときおかし」とは「紐を解き、置き給う」の意と解釈できる。
ときはかしのかみ
とくおうかんのん
仏教において変化観音(→観音菩薩)の一種であり三十三観音の一尊。観音菩薩が姿を変えて人々を救済するという「三十三応現身」のうちの「梵王身(ぼんのうしん)」にあたるもの。岩に趺坐し右手に緑葉枝を持ち左手は膝に置く。
「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v02p016
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
三十三観音の一尊として。
Takṣaka
どくじん
陰陽道において暦上の土を司るとされる神。この神が本宮土中にいる期間は土を犯すことは忌むこととされた。家中において土公神は春の三ヶ月は竃、夏の三ヶ月は門、秋の三ヶ月は井戸、冬の三ヶ月は庭にいるといい、この期間各々の場所の改築や改修は避けるべきとされる。陰陽五行説における土を司る神であり、(土で作られる)竃を守護する神とされ、台所の土間の入り口に祀られた。仏教においては本地を普賢菩薩とする。
Śrīgarbha
仏教において二十五菩薩に数えられる菩薩の一尊。サンスクリット名を「シュリーガルバ(Śrīgarbha)」といい、「シュリー」は「吉祥」、「ガルバ」は「収納」や「倉庫」を意味するため「徳蔵菩薩」と称する。また「功徳蔵菩薩(くどくぞうぼさつ)」、「吉祥蔵菩薩(きちじょうぞうぼさつ)」などの名でも呼ばれる。物を幾ら入れても満杯になることがない倉庫のように無尽の慈悲によって人々を導くという。二十五菩薩中の尊容は、天衣瓔珞を身につけ笙を持ち蓮の上に立つ、あるいは座った姿で表される。
「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v02p011
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
二十五菩薩の一尊として。
Toglas
テュアナのアポロニウス(Apollonius of Tyana)が著したとされる「ヌクテメロン(Nuctemeron)」中の「魔術的黄道十二宮に類似する十二の象徴的な時間」を支配する守護霊(Genius)、いわゆる「時間の鬼神」の一人。8時の霊の一人で財宝を司る。
とこよおもいかねのかみ
とこよのかみ
日本において常世(不老不死の理想郷、あるいは死後の魂が向かう国)から来たと考えられた神。(芋虫の姿をした神などではなく)芋虫=常世神である。皇極天皇の時代(642~645)に「人大生部多」なる者が興した信仰で、富士川の周辺で採取できる特定の芋虫を祀れば、貧しいものは金持ちとなり、病は快癒し、老人は若返り、不老不死になれるとしたもの。中国神仙道のいわゆる「蠱術」や陰陽道、呪禁道などの影響から発生した信仰だと思われる。結局は邪教として滅ぼされた。
Tçaridyi
Toci
呼称は我々の祖母を意味する。古い地母神で、元来はワステカ(メソアメリカ北東部のメキシコ湾岸北部沿いに住んでいた民族)起源の女神だったとされている。主要なアステカの神の一人で、神々の母テテオインナンと関係があり、ときには「トラリルヨロ(Tlallilyollo「大地の心臓」)」とも呼ばれた。収穫祭であるオチュパニストリで祀られた神である。地母神としてのとしは、一方で助産婦と治療者の守護女神でもあり、メソアメリカのテメスカル(サウナの意)とも関わりがあった。トラソルテオトル=トラエルクアニとも明白な関係があり、この女神のいでたち同様、しばしば黒い反転のある顔と綿の糸巻きを頭飾りにした姿で描かれた。トシはシワコアトルの母とされることもある。
Dū-shì wáng
仏教や道教において地獄で審判を行うとされる十王の一人。一周忌の審判を司るとされ、「都市大王飛魔演慶真君(としだいおうひまえんけいしんくん)」とも呼ばれる。大熱悩地獄の主とされ、阿閦如来ないし勢至菩薩を本地とし、法衣と法冠を身に着け筆を持った書く姿で表される。
国訳秘密儀軌編纂局 編
「新纂仏像図鑑 天之巻」より
国立国会図書館蔵
Copyright: public domain
1804
藤原行秀 写
「十王寫(じゅうおううつし)」より
国立国会図書館蔵
Copyright: public domain
「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v03p026
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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十王(十王經之說)の一尊(第九)として
日本の鹿児島県に出現するとされる妖怪。漢字では「年殿」と書く。長い鼻をもった白髪の老人の姿で、毎年大晦日の晩になるとどこからか首のない馬に乗って現れ、家々を回っていくという。としどんの「とし」とは「歳」を意味するらしく、としどんがやってくることで人々は皆一つだけ年をとるのだという。また、聞き分けのない子供は必ず探し出して懲らしめ、去っていくときには歳餅と呼ばれる餅を置いていくとされる。
Uttarāṣāḍhā
密教の宿曜道において二十八宿及び二十七宿の一つ。インドでは「ウッタラーシャーダー(Uttarāṣāḍhā)」と呼び、ウッタラは「次の」、アシャーダーは「無敵」を意味し、斗宿のほか「北魚宿(ほくぎょしゅく)」、「大光天(だいこうてん)」、と呼ばれるほか、「後阿沙荼(ごあしゃだ)」、「烏陀羅阿沙怒(うだらあしゃぬ)」と音写する。また日本では「斗(ひきつぼし)」の和名を当てる。胎蔵界曼荼羅では西方(下側)に配され、像容は左手に赤珠の乗った蓮を持つ。
種字は「म(ma)」、「न(na)」、「रो(ro)」、真言は「唵烏多羅阿娑努莎呵(おんうたらあしゃぬそわか)」、三昧耶形は蓮上星。
国訳秘密儀軌編纂局 編
「新纂仏像図鑑 天之巻」より
国立国会図書館蔵
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「七曜星辰別行法」における図像で、斗宿を司る病鬼王である「多居耶(たきょや)」。
「大正新脩大藏經図像部 第7巻」
京都東寺観地院蔵「護摩爐壇様」より
大蔵出版
©大蔵出版及びSAT大蔵経データベース研究会(Licensed under CC BY-SA 4.0)
※「उत्तर आषाढा(uttara āṣāḍhā)」ではなく「उतर आषड(utara āṣaḍa)」と書かれている。
「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v03p015
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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廾八宿(二十八宿)の一尊(八)として
Tçulo
Tod Lowely
イングランド東部のイースト・アングリア地方やリンカンシャーの民間伝承にみられるゴブリン、あるいは妖精の固有名称。「トム・ローリー(Tom Lowely)」とも呼ばれる。沼地や湿地に棲んでおり、不用心な人間をそこに引き込むという。また、なだめることを怠ると植物を枯らしてしまうともされる。子供が沼沢地に入らないように戒めるための、いわゆる「子供部屋のボーギー」の一種と考えられる。
Totho
エジプト神話における月と魔術、知識の神。「ジェフゥティ(Djehuty)」とも呼ばれる。文字と測量を司る女神セシャトは妻とも娘ともされる。またネヘメトアウイやヘケト、マートも妻とされる。「大いなる尊きヒヒ」などと呼ばれ、ヒヒの頭を持った獣頭人身の姿をしている。またトキの頭を持った男として描かれることもあった。知恵の神で文字を書くことができ、神々の世界で書記の役を務めた。古代エジプトの都市ヘルモポリスでは最高神とされたこともあった。彼は常にオシリス、イシス、ホルスなどの、セトと敵対する善神につき従い協力する。例えばオシリスを蘇らせる為の呪文をその妹で妻のイシスに教えたり、セトに負わされた目の傷を呪文の力で癒したりしている。こうしたことからトトは知恵と魔術を司る神として崇められ、42巻からなる「トトの書」を記したとされるようになった(そのため書物の神とも言われる)。また、知恵や魔術を象徴する月と関連付けられるようになり、月の出ている時間の支配者であるとも言われる。この関係から暦法と数を司る神ともされた。冥界の神オシリスの死者を裁く法廷には「レーの天秤」と呼ばれる秤があって、死者の心臓と「真実の羽」と乗せてその人間が悪人か善人かを見定めたとされているが、トトは秤のそばにいて測定の結果を葦ペンでパピルスに記す役目を担っていた。
どどめき
日本における女の妖怪。鳥山石燕の「今昔画図続百鬼」に見える。あるところに腕が長いのをいいことにスリ稼業に手を染めた女がいた。荒稼ぎをしているうちに、ある時期を境に女の手には鳥の目が出来始めた。江戸時代までの銭貨は円形方孔で鳥の目に似ていることからよく銭のことを「鳥目(ちょうもく)」などといったが、この鳥の目が女の腕についてしまったのである。スリを働くたび鳥目は増えていったが女はスリをやめなかったため、ついに腕に百の目をもつ妖怪、百々目鬼になってしまったのである。百々目鬼は夜道で人を呼び止めては自分の身の上話を話して聞かせ、最後に鳥の目だらけの自分の腕をまくって見せて人々を驚かすようになったのだという。
Tonacacihuatl
Tonacatecuhtli
Tonatiuh
メソアメリカ中央部における太陽神。クアウートレウアニトル(Cuauhtlehánitl=「天に昇る鷲」)とクアウテモック(Cuauhtémoc=「降りる鷲」)の姿で顕現する。配偶神はヨワルテクートリ。とくにメシーカ・アステカ人(一般にアステカ人といわれるメキシコ盆地に移った最後の部族)にとって、若い戦士としての戦神ウィツィロポチトリと結びついていた。さらにヨワルテウクティン(夜の神々)の3番目として、若々しいトナティウの姿をとるピルツィンテクートリでもあった。サポテカ神話の「コピーチャ(Copijza)」に相当する。
トナティウは生命の供給者であり、神話の中で5回変わった太陽のうち現在天上にある第5の太陽そのものであり、アステカの20ある暦日(センポワリ)の19日目である「キアウィトル(Quiáhuitl=「雨」)」の守護神であり、さらにトナルテウクティン(夜の神々)の4番目でもある。トラルテクートリやウィツィロポチトリと同様に人間の生贄を頻繁に要求する神であり、多くの心臓と血がこの神に捧げられた。
またトナティウ自身もテクシステカトルとナナウアツィンの犠牲によって生まれた神である。生まれたトナティウ=第5の太陽はそのままでは動かず、生贄の血を要求した。これをなだめるために神々はケツァルコアトルを呼び、彼の黒曜石のナイフで自分達の心臓を取り出させた。
1901
「テリェリアーノ・レメンシス絵文書(Codex Telleriano-Remensis)」より
ロストック大学図書館(Universitätsbibliothek Rostock)蔵
Copyright: public domain
1898
「ボルギア絵文書(Codex Borgia)」より
ロストック大学図書館(Universitätsbibliothek Rostock)蔵
Copyright: public domain
1898
「ボルギア絵文書(Codex Borgia)」より
ロストック大学図書館(Universitätsbibliothek Rostock)蔵
Copyright: public domain
Tonapa
インカにおいて、汎アンデス的創造神ヴィラコチャの創造を手伝ったとされる神。ある伝承ではトナパはヴィラコチャにそむいたせいでティティカカ湖を漂流することになってしまったとされている。トナパは十字によって象徴されるため、これを見たスペイン修道士は、スペイン人による征服以前にインカにキリスト教の影響があった証拠だとみなした。
Tonalteuctin
「昼の神々」。アステカにおいて、昼の13ある時刻にそれぞれ関連した神々。またそれぞれの時刻は「鳥」(有翼ないし飛翔動物)にも対応している。創世神話にみえる13層に分かれた天空と結びついていると考えられる。これに対応する「夜の神々」をヨワルテウクティンといい、一部の神はどちらにも登場している。
No. | 名前 | 対応する鳥 |
---|---|---|
01 | 青い蜂鳥 | |
02 | 緑の蜂鳥 | |
03 | 鷹 | |
04 | ウズラ | |
05 | 鷲 | |
06 | メンフクロウ | |
07 | 蝶 | |
08 | 鷲 | |
09 | 七面鳥 | |
10 | ミミズク | |
11 | ミクトランテクートリ/チャルメカテクートリ | コウンゴウインコ |
12 | ケツァル | |
13 | ケツァル |
Tonantzin
アステカにおいて、地母神で人類の母であるシワコアトルの善なる性格に付けられた名称。名前は「小さな母親」の意。アステカのテノチティトランには、トナンツィンに捧げられた神殿が存在する。
Tŭ-bó
中国神話において地下にある死者の世界「幽都」の門番。土地神后土の配下とされる。虎のような頭に牛のような身体で角が生え目が三つある姿をしており、その角で害ある者を刺し殺すという。
Tobadjishtchini
北アメリカ大陸の南西地方に住むネイティブアメリカン、ナヴァホ族に伝わる双子の戦神。「トバデスツィニ(Tobadzistsini)」とも呼ばれる。もう一人はナイェネズガニ。エスツァナットレーヒが裸身を水と太陽に晒すことで生まれた。ナヴァホ族の始祖たちが出現したとき、大地には怪物だらけだったため、彼らの祖母ナ・アシュ・ジェイ・アスダァアは二人に力を授け、父親である太陽を探し出し助けを求めるようにと頼んだ。父親を見つけた二人は、父親に怪物を退治する方法を教わり、巨人イエッイーツオーや人食いのテルゲスなどの多くの怪物を退治して世界に平和をもたらした。
Dobie, Dobbie
Dobby
ヨークシャーやランカシャーといったイングランド北部とサセックス、及びスコットランドに伝わる妖精の一種。「ドビー(Dobby)」はヨークシャー、ランカシャーでの呼び名であり、スコットランドでは「ドービー(Dobie, Dobbie)」、サセックスでは「ミスター・ドッブ(Mr. Dobb)」と呼ばれる。もともとは男性名称の「ロバート(Robert)」の愛称に由来する。間抜けなブラウニーを特にこう呼ぶ、あるいは間抜けなブラウニーがドビーに変じるという。あるいはホブゴブリンの愛称ともされる。多くの場合、怠け者だったり頭が悪かったり、のろま、間抜けなどとされており、家事や労働を手伝ってくれるものの、かえって邪魔になってしまうという。ヨークシャー西部ではドビーは邪悪な存在であり馬に乗った旅人の首を絞めるという。
Dobiel
とびもの
日本の茨城県多賀郡高岡村(現在は高萩市の一部)に伝わる怪火。大間知篤三著「常陸国高岡村民俗誌」に紹介されたもので、蒟蒻玉が黄色い光を発して飛ぶのだという。
Tohil
マヤの一部族キチェ・マヤ族に伝わる聖書「ポポル・ヴフ(Popol Vuh)」に見える神。それによればトヒルは民族の移動時代にキチェ・マヤ族を高地へ率いた神とされる。しかしトヒルは人身供犠を要求する神であり、戦争によって得られた捕虜ばかりか部族内の人間もがトヒルに捧げられた。トヒルの主神殿はキチェの主都ウタトランにあった。
Dominion
Dom José, Dom Jose
Tomtar, Tomte
スウェーデンの民間伝承に登場する小さな精霊。「トムトロ(Tomtrå)」とも呼ばれる。元々はアイルランドのトゥアハ・デ・ダナーンのように、ヴァイキングの侵略を逃れ古代の砦や環状列石に隠れ住むようになった先住民族のなれの果てと考えられていた。彼らの出自を考えれば当然だが、トムテは人間達を憎んでいるだけに性質が悪く、長く人間達を悩ました。そこで人間たちは彼らに贈り物をすることによって彼らをなだめることに成功した。やがてトムテ達は人間たちのくれた贈り物のお返しとして、夜の間に畑仕事をしたり家事をやってくれたりするようになった。こうして各農場の家庭に一人ずつ守護霊としてトムテが住み着くようになった。綺麗好きで働き者なので、家事をサボる家政婦には怒って罰を与えようとするいう。今ではトムテはクリスマスの行事と関連付けられ、ユーレニッセ(サンタクロース)の手伝いをして働き子供たちにプレゼントを配る役を担っているとされる。またトムテへの仕事の報酬は一杯のお粥と少量のパン、そして煙草が良いとされているが、これらはクリスマスの朝にだけ供した方が良いとされる。何故なら、こうした報酬をねだる妖精の常として、過剰なプレゼントは妖精の助けはもう要らない、という意味になり、トムテを怒らせることにつながるからである。ただしトムテに対する妥当な報酬の種類と与える頻度には色々な説があるはっきりしない。
Tumburu
Domovoï, Domovoi, Domovoj
スラヴ地方における家の精霊。天から落ちた天使のうち、人家の近くに堕ちたものがドモヴォーイになるとされ、個々の家庭に守護霊として住み着いているという。名前はロシア語で「家」や「家庭」を意味するドムに由来する。「ドモヴィーハ(Domobikha)」という名の妻がいるが、彼女はドモヴォーイと違って決して人に姿を見せようとはしない。全身(手のひらまで)白い毛に包まれた人のような姿をしているものの、犬や猫、羊といった家畜や、時にはわら束などに化けているとされる。ドモヴォーイの本当の姿を見たときは不吉の前兆であるとされる。ロシアでは普通家の中央部に竈と兼用の大きな暖炉があり、ドモヴォーイはそのそばに住み着いている。暖かい場所が好きであり、ドモヴォーイを怒らせるとその家は火災に遭うとされる。ドモヴォーイを怒らせないように、ロシアの家庭では夕食の一部を彼に捧げる。またドモヴォーイは家族の未来を伝える役目も持っている。夜になるとドモヴォーイの声が聞こえる事があり、ぺちゃくちゃと言っている時は、家が平和である印で、反対にすすり泣きや悲しい声が聞こえてくる時は良くない事が起こる印で、たいてい身内に不幸があるという。また暗がりでドモヴォーイに触られたとき、暖かく毛深い感触がしたら幸運に恵まれ、湿っぽく冷たい感触がしたら悪いことが起こるともされる。
ともかずき
日本の三重県志摩地方に伝わる、海に出現するとされる妖怪。「潜(かず)き」とは水中に潜って魚介類などをとることを言う。曇りの日に海女が一人で海に潜っていると、その海女と同じ恰好で出現するとされる。海上に顔を出すと、自分の乗ってきた船しか見当たらないのに海に潜るとまた出現する。近づいてきてもっと深いところへ誘うときもあるという。不吉な妖怪で、共潜きに遭った海女は海に潜るのを辞め、これを聞いた人も2,3日は海に潜ることを控えると言う。また共潜きが鮑などをくれる時があるが、貰う際には必ず後ろ手で受け取れねばならないとされる。共潜きは一見ただの人のようだが、鉢巻の尻(余り)を不自然に長くしているのでそれと分かるという。
とやまつみのかみ
Dullahan
アイルランドやイギリスなどに棲む不吉な妖精の一種。人が死ぬ前になると出現し、町中を走り回る。首のない女、或いは騎士の姿をしており、コシュタ・バワーに引かれた二輪馬車に乗っている。町のあちこちを走り回った後目的の家の前に止まり、馬車の音に不審に思った家の者がドアをあけると桶一杯の血を浴びせるのだという。
とよいわまどのかみ
「延喜式」や「古語拾遺」などに見える門を司る神の一柱。延喜式では「豊石窓神」、「豊磐間門命(とよいわまとのみこと)」、古語拾遺では「豊磐間戸命(とよいわまとのみこと)」という名で記載される。また「豊石窓命(とよいわまどのみこと)」、「豊磐窓命(とよいわまどのみこと)」、「豊磐間戸神(とよいわまとのかみ)」などの名でも呼ばれる。神名の「トヨ」は豊穣を表す敬称、「イワ」は岩の様に堅固であること、「マト/マド」は「真の門」を表すと考えられる。「古事記」においては櫛石窓神とともに天石門別神の別名と解されているが、古語拾遺に拠れば布刀玉命の子神であり、天照大御神の岩戸隠れにおいて櫛石窓神とともに瑞殿(みずのみあらか=天照大御神のために新しく作った新宮)の門の守衛に任じられたという。櫛石窓神、豊石窓神の両神は「御門神(みかどのかみ)」として皇居の四方にある御門全てを昼夜問わず守護するとされ、「御門巫祭神八座」として四方全てに両神が祀られる。
兵庫県篠山市にある式内社「櫛石窓神社(くしいわまどじんじゃ)」、奈良県橿原市忌部町にある「天太玉命神社(あめのふとたまのみことじんじゃ)」、賀茂別雷神社の摂社である「棚尾神社(たなおじんじゃ)」などに櫛石窓神とともに祀られる。
Śani, Śanaiścara
仏教における九曜及び七曜の一尊。土星のことで、サンスクリットでは「シャニ(Śani)」ないし「シャナイシュチャラ(Śanaiścara)」と称する。漢訳では土曜のほか「土曜星(どようしょう)」、「土星(どしょう)」、「土精(どしょう)」、「土大曜(どたいよう)」、「鎮星(ちんしょう)」、「土宿星(としゅくしょう)」などの名で呼ばれるほか、「賒乃以室折囉(しゃないいしせつら)」と音写される。中方を司り、胎蔵界曼荼羅での像容は鹿皮の裙(くん=腰衣)を着け右手に仙杖をもつ上半身が裸の老人の姿。あるいは瓶を持った菩薩形の姿や、左手に錫杖を持ち牛に乗った老人の姿。
種子は「श(śa)」、「पृ(pṛ)」、真言は「唵捨泥殺作 羅曩乞殺 怛羅 跛羅 訶摩曩嚕波野 普瑟底 迦里 莎訶(おんしゃにししゃ らなうきししゃ たら はら かまなうろばや ほしゅち しやり そわか)」、三昧耶形は錫杖。
「大正新脩大藏經図像部 第7巻」
京都東寺観地院蔵「護摩爐壇様」より
大蔵出版
©大蔵出版及びSAT大蔵経データベース研究会(Licensed under CC BY-SA 4.0)
「鷄緩(けいえん)」はペルシア語で土星及び「ズルワーン(Zurvan)」(→ズルヴァン・アカラナ)を指す「ケーヴァーン(Kēvān)」の音写。「कंपन(kaṃpana)」は不詳(おなじくKēvānを還梵したものか)。
「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v03p014
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
九曜星(九曜)の一尊(第二)として
とようけのおおかみ
とようけびめのかみ
日本神話に登場する穀物を司る女神。「古事記」によれば和久産巣日神の御子神とされている。天孫降臨の際に随伴する「登由宇気神(とようけのかみ)」、つまり伊勢神宮の外宮にまつられる「豊受大神(とようけのおおかみ)」と同体とされる。また「丹後国風土記」に見える「豊宇賀能売神(とようかのめのかみ)」、「摂津国風土記」逸文に見える「止与可乃売神(とようかのめのかみ)」、「陸奥国風土記」逸文に見える「豊岡姫命(とよおかひめのみこと)」なども同一の神と考えられる。「延喜式」の大殿祝(おおとのほがい)の祝詞には「屋船豊宇気姫命(やふねとようけひめのかみ)」という神が登場し、これを注して「俗の詞(ことば)に宇賀能美多麻(うかのみたま)といふ」と記載されている。この事から宇迦之御魂神と同意の稲霊(いなだま)、つまり稲の豊穣に関わる神であると考えられる。
どようぼうず
神奈川県津久井郡において、土用になると庭に現われるという妖怪。土用の間に土用坊主のいる場所の土を動かしたりするのは土用坊主の頭を引っかくことになるので避けられた。これは土公神の変化したもので陰陽道で土用中は土を犯すことを忌事としたことに由来すると考えられる。
とよくむぬのかみ
日本記紀神話に登場する神。「豊斟渟尊(とよくむぬのみこと)」、「豊国主尊(とよくにぬしのみこと)」、「葉木国野尊(はごくにぬのみこと)」、「国見野尊(くにみぬのみこと)」等、さまざまな異名がある。「日本書紀」「古事記」どちらにも別天神に次いで生じた神世七代として登場する。別名である「豊国主尊」は「豊かに満ち足りた国」の意味であり、おそらく、神世七代を通して油脂の如く漂っていたものは次第に形をなしていく様子を名前を通して表現したものであると考えられる。
江戸後期
玉蘭斎貞秀著
「神佛図會」より
国立国会図書館蔵
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天神㐧三代
豊斟渟尊󠄂 御歳百億万 以上号ス純男神ト御名有
万民ニ大道ヲ教ヘ國ヲ賑セ玉フ御名ニ有リ/其德廣大成リ/民神君ノ教ヲ守リ天地ニ法五常ノ道自ニ備ル/ユヱニ神ノ道神國ト号ス/國常立尊󠄂國狭搥尊󠄂豊斟渟尊󠄂此三代ノ君立テ男ヲナシ玉フ是君有テ今ダ臣ト言者定メ無シ/天下ニ火德ヲ以テ帝王ニ立セ玉フ/米無レバ濃人ト云者モ百姓モ然リ火食ヲ不知山ニ草木ノ實ヲ取テ野ニ生ズル草ノ實海岸ニテ魚貝河流湖水ノ中ノ芽ヲ採リ生ニテ食用ス/是ハ阿佐浬ト云フ/人ミナ食物ヲ山ノ穴ニ入草ヲ編テ戶サス/然レバ山戶國ト云/天神七代此國ニ都ス/後世大和ノ國/帝王ノ住セ玉フ所スナハチ髙天原ト云/近江ノ國日吉三之宮由畄●(不明)大明神是ナリ
とよたまびめのみこと
日本記紀神話に登場する女神。「豊玉毘売命」は古事記での表記で、日本書紀では同訓で「豊玉姫命」と書かれる。綿津見神(或いは大綿津見神)の娘であり、日子穂穂手見命(山幸彦)の妻であり、玉依毘売命の姉とされる。海の中にある綿津見神の宮にやってきた日子穂穂手見命と結婚し、夫に「潮涸瓊/潮干珠(しおひるたま)」と「潮満瓊/潮満珠(しおみつたま)」という潮を引かせる力と潮を引かせる力をもった神宝を授け、兄の火照命(海幸彦)を降伏させた。その後、日子穂穂手見命との間に鵜葺草葺不合命を産むが、約束を破られ日子穂穂手見命に正体(鰐の姿)を見られたことを恥じて海に帰ってしまったため。鵜葺草葺不合命は妹の玉依毘売命が育てることになった。
とよひわけ
Tlahuizcalpantecuhtli, Tlauixcalantecuhtli
アステカにおける破壊神。名前の原義は「曙の主」。明けの明星たるケツァルコアトルと宵の明星たるショロトルの化身とされる金星の神。古代メキシコでは、金星の光は負傷をもたらすものと考えられ、この星の出現を人々はひどく恐れた。彼は槍投げ器で激しく燃え盛る光線を投げつける姿で書かれる。あらゆる災い、破壊をもたらす者とされた。穀物の不作、戦争での敗北、王族に加えられる危害、女たちの危機など、全ての災いは金星(=トラウィスカルパンテクートリ)に起因するものと信じられ、そのためアステカでは金星の運行が熱心に研究された。太陽神トナティウが天に登った時、この太陽は神々にいけにえを求めた。トラウィスカルパンテクートリはこれにひどく腹を立て、太陽に向かって災いの光線を放った。しかしこの光線は太陽には無力であり、逆に彼は自分の放った矢で頭蓋を刺し貫かれてしまい、その瞬間から彼は石と冷気の神(イツトラコリウキ)に変えられてしまった。夜明け前が冷え込むのはそのためである。
13ある昼の時間を支配するトナルテウクティンの12番目であり、暦上では「13のイツクイントリ」は彼の日とされる。
1901
「テリェリアーノ・レメンシス絵文書(Codex Telleriano-Remensis)」より
ロストック大学図書館(Universitätsbibliothek Rostock)蔵
Copyright: public domain
1898
「ボルギア絵文書(Codex Borgia)」より
ロストック大学図書館(Universitätsbibliothek Rostock)蔵
Copyright: public domain
Tlaelquani
Drug
インドの聖典「ヴェーダ」の悪魔がイラン神話に取り入れられたもの。虚偽を司る悪魔であり、暗い洞窟に住んでいるといわれる。
Draco
ラテン語におけるドラゴン。現在考えられているようなドラゴンとは異なり、いわばコウモリ状の翼を持った蛇のような姿だと考えられた。これは時代を下るにつれ変化し、12世紀半ばに描かれた動物寓話集などには頭にトサカ状の突起のついた、巨大だが口の小さい蛇の姿をした生物になった。このドラコは全身から放つ光で獲物の目をくらませることが出来たという。
「自然の魅力(Der naturen bloeme/The Flower of Nature)」(1350)より
ページ:f104rb
ヤーコブ・ファン・マールラント(Jacob van Maerlant)著
オランダ国立図書館(Koninklijke Bibliotheek/Royal Library of the Netherlands)蔵
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「自然の魅力(Der naturen bloeme/The Flower of Nature)」(1350)より
ページ:f124ra
ヤーコブ・ファン・マールラント(Jacob van Maerlant)著
オランダ国立図書館(Koninklijke Bibliotheek/Royal Library of the Netherlands)蔵
Copyright : public domain
「動物寓話集(ジェラルド・オブ・ウェールズのトポグラフィア・ヒベルニカからの追加を含む)(A bestiary with additions from Gerald of Wales's Topographia Hibernica)」(12世紀後半-13世紀前半)より
ページ:f058v
著者不明
大英図書館(British Library)蔵
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「動物寓話集(Bestiary Bodleian Library MS. Bodl. 764)」(1226–1250)より
ページ:f091v
著者不明
ボドリアン図書館(Bodleian Library)蔵
Copyright : public domain
「動物寓話集(Bestiary Bodleian Library MS. Bodl. 764)」(1226–1250)より
ページ:f092v
著者不明
ボドリアン図書館(Bodleian Library)蔵
Copyright : public domain
Draco Indus
大プリニウス(A.D.23~79)の「博物誌」(77)などに言及される、インドに棲むと言うドラコ。10mはあるエチオピアのドラゴン(ドラコ・エチオピカス)より更に大きいという。食べるためしばしば象を襲うと考えられた。特に夏の乾いた盛りなどには象の血を欲して襲うことも多いが、殺した象の下敷きになって死ぬドラゴンもいたという。
ドラコ・インダスが象の血を欲すると考えられたのは、象の血が以上に冷たい(と当時信じられていた)ためである。
Draco Ethiopicus, Draco Æthiopicus
大プリニウス(A.D.23~79)の「博物誌」(77)などに言及される、エチオピアに棲むというドラコ。インドのドラゴン(ドラコ・インダス)よりも小さいものの、それでも20キュービット(約10m)程の大きさで、象を主食とするという。彼らの棲息するエチオピアの海岸は旱魃になると象がいなくなってしまうため、体をよじり絡ませあって自分たちの体で筏(いかだ)を作り、対岸のアラビアまで象を求めに行くとされる。
ウリッセ・アルドロバンディが「怪物史」に残した図版によれば、前足はあるものの後ろ足が無く、前足の付け根から飛ぶのに適すとは思えない大きさのコウモリ状の翼が生えた格好をしている。
「蛇とドラゴンの博物誌(Serpentum, et draconum historiæ libri duo/The History of Serpents and Dragons)」(1640)より
ページ:p422
ウリッセ・アルドロヴァンディ(Ulisse Aldrovandi)著
スミソニアン協会図書館(Smithsonian Libraries)蔵
Copyright : public domain
Dragon
ヨーロッパを始めとした英語圏で広く知られる怪物。トカゲや蛇のように鱗に覆われた体を持ち、四足歩行ながら前足の他にコウモリのような翼を持っている。細長い首と尻尾を持ち、頭には大抵とさか状の突起か角が生えている。以上の特徴は必ずしもドラゴン全てに当てはまるわけではなく、地域や年代によってその姿や性質は大きく異なる。例えば多くのドラゴンは人よりもはるかに大きいとされるが、中には人より小さいドラゴンも存在する。また大抵のドラゴンは人間や神に対して反抗的で暴力的な描写をされることが多いが、中には善良なドラゴンも存在する。
「ドラゴン」という言葉自体の語源は古代ギリシャ語に端を発する。古ギリシャ語で「明確に見る、凝視する」という意味を持つ動詞「derkesthai」から派生した「ドラコーン(drakon)」という名を持つ怪物は黄金の林檎を見張る怪物だった。このdrakonがラテン語化したのが「ドラコ(draco)」であるが、現在のドラゴンとはまだ異なり、翼を持った蛇のような出で立ちだった。このドラコが更に古フランス語化されて「ドラゴン(dragon)」となり、13世紀初頭にはそのまま英語に輸入された。
ギリシア神話やローマ神話上では、ドラゴンは何かを守る、番人の役目をしていることが多い。ケルトの伝承では人間に敵対するドラゴンもいれば味方になって守ってくれるドラゴンもいた。キリスト教が入ってくるとドラゴンは悪魔の使いとして認知されるようになり、聖人の起こす奇跡の一つとして「ドラゴンの退治」が挙げられるようになった。例えば聖ジョージはドラゴンを倒した聖人として名高い。その後もドラゴンは悪の象徴として、或いは倒すべき暴力の権化としてのイメージを保ち続けた。現在でもヨーロッパ各国の軍旗を始めとした紋章に広く使われている。
Draconcopes
Draconcopedes
中世ヨーロッパの動物寓話集に登場する混成獣。「ドラコンコペス(Draconcopes)」と呼ばれる。ドラゴンあるいは蛇に人間の女性の頭がついた、人頭獣身の姿をしている。エデンの園でエヴァをそそのかし、善悪の知識の木の実を食べさせた蛇は、このドラコンコペデスであったとされる場合があり、エデンの園を題材にした絵画では木に絡みついた姿のドラコンコペデスが見られる。
「自然の魅力(Der naturen bloeme/The Flower of Nature)」(1350)より
ページ:f124va
ヤーコブ・ファン・マールラント(Jacob van Maerlant)著
オランダ国立図書館(Koninklijke Bibliotheek/Royal Library of the Netherlands)蔵
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アイヌ民族における魔物でマリモのこと。名前は「湖の苔の心臓」という意味。昔、湖にベカンベ(浮かんでいたもの=浮き藻のことか)が自分たちの仲間を増やしたいと湖の神に相談したところ、お前達が増えると湖が見苦しくなり、また人間たちがお前達を取りに来るようになるから駄目だ、と断られた。怒ったベカンベは湖に藻を投げ入れ、これがトラサンペ=マリモになったという。湿地にもトラサンペと似た魔物がいて、これはニタッラサンペという。
Tlazolteotl
アステカにおける欲望と肉体的愛を司る女神。また地母神でありシワコアトルやコアトリクエと関連がある。中央アメリカ諸族に広く知られているが、もともとワステカ起源の女神であり、アステカ湾岸北部の征服後にアステカの神体系の中に組み込まれた。名前はナワトル語で「不浄の女王」を意味する。ワステカ族においては「綿の女王」と呼ばれることもある。愛の女神にしてトウモロコシの母であり、また古くから伝わる大地の女神でもある。トラソルテオトルは「あらゆる不浄な行為の陰に潜む力」であり、罪をあがないたいと願う者と全能神テスカトリポカとの間を取り持ってくれる女神だと考えられた。特に「不潔」な行為を具現化した「トラエルクアニ」という別称を持っている。トラソルテオトル自信は特に性的な罪との関係が深く、アステカの湖上都市テノチティトランにおいて戦士達のために一般家庭から集められた娼婦達は、トラソルテオトルないしトラエルクアニに帰依した。彼女達はトラソルテオトルの道具として務めを果たしたあと、口を黒く塗られ、儀式において殺された。
20ある暦日(センポワリ)の14番目「オセロトル(ジャガーの意)」の守護神であり、また「昼の神々」トナルテウクティンの5番目であると同時に「夜の神々」ヨワルテウクティンの7番目でもあった。さらに暦上でのトラソルテオトルの祭日は「6のシパクトリ」であった。365日暦の第12月にはチコメコアトルやテテオインナンとともに、「オチュパニストリ」という祭りで祀られた。原始的な地母神トシと結びついており、ワステカ起源の地母神「イシュクイナン(Ixcuinan)」、塩の神ウィシュトシワトルはトラソルテオトルの化身ないし関連する神と考えられる。またある意味でマヤのイシュチェルを対応神とみなすことも出来る。
トラソルテオトルはコデックス(絵文書)では綿のバンドと2つの紡錘ないし糸巻きを頭飾りとする姿で描かれている。時にはシペ・トテックのように生贄から剥いだ皮をきている姿でも表され、これは子宮からの新しい命の誕生を象徴したものだと考えられる。
1898
「ボルギア絵文書(Codex Borgia)」より
ロストック大学図書館(Universitätsbibliothek Rostock)蔵
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1898
「ボルギア絵文書(Codex Borgia)」より
ロストック大学図書館(Universitätsbibliothek Rostock)蔵
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1898
「ボルギア絵文書(Codex Borgia)」より
ロストック大学図書館(Universitätsbibliothek Rostock)蔵
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Dorraghow
Trash
Trapani Fratuzzo
イタリアにシチリア島に伝わる小さな妖精。修道士のような服装で赤い帽子をかぶっており、また姿を隠すために巨大な屋根瓦を背負っているとされる。トラパーニ・フラトゥッツォは地下の宝を守る妖精であり、彼の赤い帽子を手に入れることができれば、その宝の在り処を知ることができるという。ただし、トラパーニ・フラトゥッツォは赤い帽子無しでは生きることができないため、奪われればなんとしてでも帽子を奪い返そうとするし、地上に出るまでに帽子を取り返されるようなことがあれば二度と地上には戻れないとされる。
とらみやのひ
日本の摂津国(現兵庫県と大阪府の境周辺)に出現したという火の玉。「諸国里人談」や「摂津名所図会」などに紹介されている。この怪火は別府村(現摂津市別府付近)にあった虎の宮という神祠の古跡の森から雨夜に出現し、飛び回った後に片山村(現吹田市片山町)の樹の上に止まるのだという。虎宮火は火縄の火を見せるとたちまち消えるという。
Tlalchitonatiuh
古代都市テオティワカンにおいて崇拝されたメソアメリカ初期の神に後世つけられたナワトル語の名称。字義は「トナティウ(太陽)の国」。この神はジャガーの太陽ないし日没の太陽であり、アステカの鷲とジャガーの戦士集団の守護神とされ、鷲の戦士の通過儀礼を司っていた。紀元1世紀7世紀のテオティワカンにおける主要な神の一人として、その信仰はグァテマラ高地にまで浸透していた。
Tlaltecuhtli
メソアメリカ中央部における両性具有神の一人。字義は「大地の神」。男・女両性の側面をもつとされていたが、通常は女神とされていた。この女神は大地の怪物で、巨大で太ったカエルのような獣として描写され、大きな口、2本の飛び出た牙、そして鋭いかぎ爪の突いた足を持っていた。また、肘といい膝といい全ての関節には歯ぎしりする口がついているという。「昼の神々」トナルテウクティンの2番目を担っている。夕方の沈む太陽を飲み込み、朝に登る太陽を吐き出していた。生贄の心臓を食べる神であり、胸を切り裂かれた生贄の心臓を置くためのクアウシカリと呼ばれる石の容器の裏底に好んで刻まれた。
第五の太陽(現在の世界の太陽)の世界が創造されるとき、トラルテクートリの体は世界を作るための材料とされた。世界の海にまたがって存在していたトラルテクートリを見たケツァルコアトルとテスカトリポカは驚いて、このような怪物がいる限り世界が存続できないだろうと考えた。そこで彼らは2匹の巨大な蛇に変身し、一方がトラルテクートリの右手と左足を、もう一方が左手と右足をつかんだ。テスカトリポカが片足を失うという長い苦闘の末、ついには彼らはトラルテクートリをバラバラに引きちぎった。トラルテクートリの上半身は大地となり、下半身は空に放り上げられて天となった。しかし他の神々はこうした自体を喜ばず、トラルテクートリの体から人間の生存に必要な植物を生み出すことにした。その髪は木や花となり、皮膚は草や小さな花が成長するための栄養となった。眼は泉や井戸や洞窟の源に変えられ、口は大きな洞穴や川の源となった。鼻は山や谷となった。こうして神々はトラルテクートリの霊を慰めたのだった。
1898
「ボルギア絵文書(Codex Borgia)」より
ロストック大学図書館(Universitätsbibliothek Rostock)蔵
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Tlaloc
メキシコ中央部、ティオティワカンの神。メソアメリカの神々のうちで最も古くかつ根源的な神であり、生命の付与者であるとともに破壊の源泉として信仰されていたが、何にもまして雨の神として信仰された。語形はトラリ(tlalli「大地」)とオク(oc「表面にあるもの」)から。オルメカの神"第IV神"がその祖形と考えられている。マヤのチャク、ミシュテカのザウィ、トトナカのタヒン、サポテカのコシーオ、(そしておそらく)タラスコのチュピティリペメを直接の対応神とする。
アステカの首都テノチティトランでは、純粋にアステカの神であるウィツィロポチトリと同等の地位を与えられており、この2神は双神殿で祀られた。トラロックの神殿は漆喰で覆われ、(水を象徴する)明るい青と白で彩色されていた。双方の神官達はアステカ社会において同等の地位を与えられていた。チャルチウィトリクエを姉妹神、あるいは配偶神とし、トラロックはこの女神とともにトラロケ(トラロック一族)を支配した。トラロケとは、二人の妻、つまり神話上でテスカトリポカに誘拐されたとされているマクウィルショチトルとマトラルクエイトル、そして羽毛の蛇ケツァルコアトルなどの神をさす。
アステカの暦日(センポワリ)の中の7番目である「マサトル(Mazatl=鹿)」を司り、また365日暦の暦上では9のオセロトル(9のジャガー)である。さらに昼の時刻を示すトナルテウクティンの8番目、夜の時刻を示すヨワルテウクティンの9番目を司る。雨や雲、雷を司り、彼の力の顕れは、ある時は恵みの雨となり、またある時は人々に害をもたらす嵐となる。山の何箇所かの洞穴に住み、それらの洞穴は富と栄華に満ちた素晴らしい宝物殿であるという。稲妻、トウモロコシや水と共に描かれ、ギョロリとした目とジャガーの歯を持っている。水と海に関係した神で、時によって寛大にも無慈悲にもなるとされた。また、トラロックはトラロカン(Tlalocan)という死後の楽園を支配する神でもあった。トラロカンは「霧と水の国」とも呼ばれ、大きな変化も無く牧歌的に日々が過ぎ行く平和な場所であるという。そこに集った魂は、トウモロコシなどの豊富な食物や花々に囲まれた安穏とした生活を四年ほど送った後、再び現世に戻ってくると信じられた。トラロカンにいける資格をもつの者は、雷、水害、伝染病、癩病で命を落としたものであるという。
1898
「ボルギア絵文書(Codex Borgia)」より
ロストック大学図書館(Universitätsbibliothek Rostock)蔵
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1898
「ボルギア絵文書(Codex Borgia)」より
ロストック大学図書館(Universitätsbibliothek Rostock)蔵
Copyright: public domain
1898
「ボルギア絵文書(Codex Borgia)」より
ロストック大学図書館(Universitätsbibliothek Rostock)蔵
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水に関する神である男神トラロック(左)と女神チャルチウィトリクエ(右)
Trikurat
ミャンマーの民間伝承に登場するナットの一種。狩猟の対象となる野生動物の守護霊とされる。普通の意地悪いナットと違ってトリクラットは慈悲深く、狩人が食用とするのに十分な獲物をしとめられるように助けてくれるとされる。
Dhṛḍādhyāśaya, Dṛdhādhyāśaya
Trit-a-trot
アイルランドに伝わる妖精の一種で、ホルツリューアライン・ボンネフューアラインやルンペルシュティルツキンのように、自分の名前当てを強制する妖精のバリエーションの一つ。
とりなるみのかみ
「古事記」において、大国主神の子孫の系譜が語られる段に記されている名義不詳の神。大国主神と鳥耳神の間に生まれた子神であり、日名照額田毘道男伊許知邇神とともに国忍富神の親神とされる。
とりのいわくすぶねのかみ
記紀神話に見える神の一柱。「鳥磐櫲樟船」と書かれる事もある。また、「天鳥船(あめのとりぶね)」とも呼ばれる。名前は「楠で作られた岩のように堅固で速く進む船」といった意味で、その名の通り船と海上運輸を司る神だと考えられる。伊邪那岐命と伊邪那美命の間に生まれた子神の一人であり、「古事記」において大国主神に国譲りを了承させるために建御雷之男神と共に高天原より地上に遣わされる(「日本書紀」でこの任を担うのは建御雷之男神と経津主神になっている)。しかし、経津主神のように建御雷之男神と並び勇んで戦ったのではなく、建御雷之男神を乗せて移動する役目を負っていたようである。また「日本書紀」において水蛭子が流し捨てられた船の名前も鳥磐櫲樟船となっている。
Tripoderoo
アメリカの噂話やほら話を起源とする怪物、フィアサム・クリッターの一種。「トリポデロ(Tripodero)」とも呼ばれる。名前は「Tripod(三脚)」から来ていると思われる。ウィリアム・トーマス・コックス(William Thomas Cox)著「Fearsome Creatures of the Lumberwoods, With a Few Desert and Mountain Beasts」(1910)などに紹介されている。伸縮自在な脚と、カンガルーのように強靭な尾を持っており、これを利用してチャパラル(低木林)の上まで頭を出したり、逆にコンパクトに茂みの中に隠れたりすることができる。頭の大部分を占める鼻は、強力な噴出力で泥の塊を射出することができ、これを遠方から獲物に当てて、失神させて食べてしまうのだという。泥の塊は連続して射出できるように左顎に蓄えられるという。トリポデルーは、「Collapsofemuris geocatapeltes」という「学名」を与えられている。
ウィリアム・トーマス・コックス(William Thomas Cox)著
「木こりの森の恐ろしい動物たち(砂漠と山の獣たちをわずかに含む)(Fearsome creatures of the lumberwoods :
with a few desert and mountain beasts)」(1910)より
ミシガン大学(University of Michigan)蔵
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ヘンリー・H・トライオン(Henry H. Tryon)著
マーガレット・ラムゼイ・トライオン(Margaret Ramsay Tryon)画
「フィアサムクリッター(Fearsome critters)」(1939)より
ミシガン大学(University of Michigan)蔵
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とりみみのかみ
Dryad
ギリシア、ローマ神話に登場するニンフの中の一グループ。ギリシア語の「樫の木(ドリュス)」が名前の起源とする。樹木や森の守護霊であり、森に害を成す生物に罰を与えるという。また錬金術師パラケルススの提唱したエレメンタルの中で、自然の二分して象徴する精霊のうち、「植物」を象徴するとされる精霊のグループ名でもある。
þórr, Thor
北欧神話においてアサ神族に属する雷神にして戦神、強力無双の神。名前も「雷」を意味する。結婚と農作物の実りを守護する神でもある。一般的に主神オーディンとヨルズとの間に出来た子供であるとされている。顔一面を赤い髭が覆っているため「赤ひげ」と称されることもある。すべてを粉砕する魔法の槌「ミョルニル」とその柄を握るための鉄の手袋、締めれば全身の力が倍加するという腹帯を所有している。姦計の神ロキと仲が良く、よく二人で旅に出かける。その時はたいていロキをベルトにぶら下げて歩いた。他のアサ神族の神のように馬には乗らず、徒歩か或いは雄山羊タングノストとタングリスニルの牽く戦車に乗って出かけた。
豪腕を頼みとする性格なので鋭敏さや賢さにかけ、単純で愚直な神であり、いきなり怒ったりすぐ機嫌が直ったりする。また大食漢で大酒呑みでもあるという奔放な人間らしい性格から、古代ゲルマンの数多くの農民や戦士に愛され信仰を集めた。巨人族との最終的な戦いである「ラグナロク」においては、世界蛇「ミズガルズオルム」と相打ちになり死ぬと予言されている。
Torvatus
テュアナのアポロニウス(Apollonius of Tyana)が著したとされる「ヌクテメロン(Nuctemeron)」中の「魔術的黄道十二宮に類似する十二の象徴的な時間」を支配する守護霊(Genius)、いわゆる「時間の鬼神」の一人。2時の霊の一人で不和を司る。
Torquaret
Druj, Drujs
ゾロアスター教における悪魔の一人。女の悪魔で、6人のアメサ・スペンタに対抗する6人の悪魔の一人(ただし諸説あるせいで全員挙げると6人以上いる)と考えられた。特にアシャ・ヴァヒシュタに対抗する悪魔とされた。名前は「虚偽」を意味する。後世には女悪魔の総称としてこの名が使われた。例えばジェーやナスはドルジの一人とされる。
rDo rje 'jigs byed, Dorjéjikjé
チベット仏教における忿怒尊の一種でサンスクリット名「ヴァジュラバイラヴァ(Vajrabhairava)」がチベット語に訳されたもの。名前のドルジェは「金剛」を、ジクチェは「破壊者」や「恐るべき者」を意味する。ドルジェジクチェはシンジェシェ(→ヤマーンタカ=大威徳明王)の一形態で、チベットでは三態のシンジェシェが伝わっており、これら三尊をまとめて「シンジェシェ・マルナクジク・スム(gShin rje gshed dmar nag 'jigs gsum, Shinjéshe marnanjik sum)=ヤマーンタカ(シンジェシェ)の赤(マル)、黒(ナク)、怖畏(ジク)の三神(スム)」と呼んでいる。ドルジェジクチェはこの中でも最も凶暴な化身であり、怨敵調伏などの修法に用いられたとされる。ゲルク派では宗祖ツォンカパの守護尊とされ、ドルジェジクチェを本尊とし種々の護法神を配した「グンカン(mGon khang, gönkhang)」が主要な寺院に建立された。
ドルジェジクチェは色々な姿で描かれるが、このうち最も多いのは青黒色の九面三十四臂十六足像で、単独尊として描かれるほか、曼荼羅の主尊としても描かれる(持物は下表参考)。九面は中央が角のある水牛で、その上に赤い羅刹面、一番上に本地とされるジャムペルヤン(=マンジュシュリー=文殊菩薩)の瞋怒面、また水牛面の左右に三面ずつ(右内側から黄色、青色、赤色、左内側から灰色、白色、黒色)忿怒面の合計九面でいずれも額に第三眼を持つ。左右第一手でカパーラ(髑髏杯)とカルトリ(曲刀)を持ちながら両手を交差し、妃である青黒色の体の「ドルジェ・ロランマ(rDo rje ro lang ma, Dorjé rolangma)」=「ヴァジュラヴェーターリー(Vajravetālī)」を抱擁する。十六本の足は右の八足で人間、水牛、象、騾馬、駱駝、犬、山羊、狐などを、また左の八足で鷲、梟、小烏鴉、鸚鵡、隼、ガルダ、八哥鳥、大白鳥などを踏みつける。
右手 | 左手 | |
---|---|---|
第一手 | カパーラ(髑髏杯) | カルトリ(曲刀) |
第二手 | 象の皮 | 象の皮 |
第三手 | 独鈷橛 | |
第四手 | 杵 | 盾 |
第五手 | 匕首 | 人間の足 |
第六手 | 独鈷杵 | 索 |
第七手 | 斧鉞 | 弓 |
第八手 | 短槍 | 腸索 |
第九手 | 矢 | 鈴 |
第十手 | 鉤 | 人間の手 |
第十一手 | 杖 | 屍衣(死体を包む布) |
第十二手 | カトヴァーンガ(髑髏杖) | 刑杖(罪人を串刺しにする棒) |
第十三手 | 輪 | 火炉 |
第十四手 | 五鈷杵 | 頭蓋骨 |
第十五手 | 金剛錘 | 祈克印 |
第十六手 | 剣 | 三連幡 |
第十七手 | ダマル(打楽器) | 帆 |
Vajrabhairava with His Consort Vajravetali
メトロポリタン美術館(The Metropolitan Museum of Art)蔵
18世紀 チベット
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rDo rje shugs ldan, Dorjé shunden
チベット仏教における独自のチョキョン(=護法神=ダルマパーラ)で怨霊神。ドルジェは「金剛」、シュクデンは「力ある者」を意味する。ダライラマ5世(1617-1682)の時代にデープン寺いたラマで、パンチェン・スーナムタクパの3世とされたトゥルク・タクパ・ギャルツェン(sPrul sku grags pa rgyal mtshan) は同僚の讒言により迫害を受け、自分の無罪を証明するため自ら窒息死した。その後チベットは多くの災害に見舞われ、ダライラマの身にも不吉な出来事が起こったので「ドルジェ・シュクデン」の名を与えて護法神として祀るようになったと伝わっている。
ドルジェ・シュクデンは怨敵を調伏する修法の本尊であり、供物に死体から採取した脂や毛髪、血が用いられる。このような反社会的要素を含んでいるため、現在ダライラマ政庁によって信仰を禁止されており、ドルジェ・シュクデンを祀る人物が追放されるなどの事件も起こっているものの、現在でもドルジェ・シュクデンの修法を行っている寺も少なくない。
その姿は三目で赤黒色の身色に僧侶の法衣を身に着け白獅子に乗り、右手で黄金の剣を振り上げ左手で怨敵の心臓を持って口ですする姿で描かれる。また時に「身(東・白象に乗る白色身)」、「徳(南・馬に乗る黄色身)」、「語(西・紅獅子ないし龍に乗る赤色身)」、「業(北・虎ないしガルダに乗る褐色身)」の4人の眷属を伴って描かれる。
rDo rje phag mo, Dorjé pakmo
Drude
南ドイツやオーストリアに伝わる悪夢を見させる精霊。ドルーダは単数形で複数形では「ドルーデン(Druden)」と呼ばれる。睡眠中の人を苦しめるとされ、これを防ぐための五芒星の護符は「ドルーデンフュース(Drudenfuss=ドルーダたちの足)」と呼ばれる。
Torto
フランス南西部やスペイン北西部に住むバスク人の民間伝承に登場する怪物。人間の姿をしているが目は真ん中に一つだけしかない。人間、特に若者が好物で、待ち伏せしてさらいむさぼり食うとされる。
Trelquehuecuve
チリのアラウカノ族の伝承に登場する水棲の怪物。大きく平らに広がった白い斑点のある茶色の皮に、目がついているいう奇妙な姿で、縁にはぐるりと鉤爪が並んでいるとされる。水辺にいる人間を巨大な渦巻きで巻き込み、自分のからだで覆って食べてしまう。水棲といっても水の中でしか生きられないわけではなく、陸に上がって自分の体を広げ日向ぼっこをすることもあるという。トレルケフエクヴェは湖底の洞窟に住むインブンチェの手下でもあり、巣を出ないインブンチェの代わりに彼の獲物を調達してくる。
Tǔ-lóu
中国において最古の地理書とされる「山海経」に記されている獣。西山の昆侖の丘に棲んでいる、四つの角の生えた羊のような姿の獣で、人を食うとされる。
「山海經(せんがいきょう)」(不明)より
ページ:v01p047
郭璞(伝)著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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Tloque Nahuaque
15世紀半ばのメキシコ盆地中部テスココの王、ネサワルコヨトルにより信奉された神。名前は「遍在する神」を意味する。宇宙における最高の力であり、始まりも終わりもない存在という極めて抽象的な神。メソアメリカにおいて最も一神教に近い概念といえる。トロケ・ナワケは知覚することの出来ない存在であり、そのため神殿にも神像の類いは置かれなかった。ネサワルコヨトルは国民の心情を考慮し、伝来の神々を排除しなかったためトロケ・ナワケに対しての信仰は広まらず王の死後徐々に忘れ去られることとなった。
どろたぼう
鳥山石燕の「今昔百鬼拾遺」に見える妖怪。石燕と創作と見られる。頭に毛がなく、一つ目で(片目は爛れている)、指は三本しかない。泥の中に住んでいるので身体は黒く、地面から上半身を出して「田を返せ~、田を返せ~」と悲しげな叫び声をあげる。必死に働いて田を買いためた老人が、死後に道楽者の息子に酒代のために田を売り払われてしまったため、これを恨んで泥田坊になったという。
「百鬼夜行拾遺(ひゃっきやぎょうしゅうい)」(1805)より
ページ:v01p011
鳥山石燕著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
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むかし北国に翁あり/子孫のためにいささかの田地をかひ置て寒暑風雨をさけず時々の耕作おこたらざりしに/この翁死してよりその子/酒にふけりて農業を事とせず/はてにはこの田地を他人にうりあたへれば/夜な々々目の一つあるくろきものいでて/田をかへせ々々とののしりけり/これを泥田坊といふとぞ
Dwarf, Dwaeff, Dwerf, Dwerff
北欧のドヴェルグを起源とする小人の妖精。ヨーロッパで広く知られ、様々な名称で呼ばれる。1m前後の背丈で赤毛や栗毛の長毛を生やし、子供でも老人のように見えるが200歳以上の寿命があるとか不死身であるとされる。地下世界や洞窟、或いは深い森の奥などの暗い場所に住んでいて、暗がりでも目がよく見える。優れた細工師であり、彼らの作った物は不思議な魔力や呪いを秘めていることが多い。酒と音楽を愛する性格で月光を浴びながら皆で陽気に踊るが、太陽の光には弱く、浴びると動けなくなったり石になってしまうとされることもある。
Tonga
ニュージーランドに住む先住民族、マオリ族におおいて信じられている、超自然的存在で「アトゥア」の一種。人間の額に住んでいるアトゥアで頭痛や吐き気を引き起こすとされる。
Tonga-iti
Dongo
ナイジェリアのニジェール川上流域に住むソンガイ族の信仰に登場する気象を司る精霊。雷鳴と稲妻を起こすとされている。
Tonttu
フィンランドの民間伝承における家に憑く妖精。「トンティ(Tontti)」とも呼ばれる。富をもたらしてくれる妖精だが善良とは言えない。先ずトントゥを手下にするには墓場に行って悪魔や悪霊と契約を結ぶ必要がある。こうして手に入れたトントゥは家の中で最も良い部屋と居間のテーブルの最も良い席を与えることで金貨や穀物といった財産を家主に与えてくれる。しかしこういったものは何もないところから生じるわけではなく、トントゥが近所から盗んできたものであることが多いのだ。「トントゥ」という名はスウェーデンの妖精トムテから派生した可能性がある。
Dom Pedro Angaço
アフロ・ブラジリアンカルトのバトゥーキ(Batuque)において重要なエンカンタードの一人。聖ペトロとその祝日に当たる6月29日に関連付けられる。妻である「ラインハ・ロサ(Rainha Rosa)」との間に、「エスメラルダ・エディチ(Esmeralda Edite)」、「モサ・ダ・グイア(Moça da Guia)」、「アンガシーノ(Angacino)」、「ボムビエロ(Bombiero)」、「フロリアーノ(Floriano)」、「ペドロ・エストレロ(Pedro Estrelo)」、「レグア・ボギ・ダ・トリニダーデ(Legua Bogi da Trinidade)」といった子供をもうけた。息子である「カボクロ・ノブリ(Caboclo Nobre)」がセウ・トゥルキアに降伏し養子となったため、ドン・ペドロ・アンガソの子孫たちはセウ・トゥルキアの一族に属する。
Tānláng xīng
仏教において北斗七星の一尊で第一星。陰陽道では「天枢(てんすう)」、「天魁(てんかい)」と呼ばれる。西南を司り日曜と月曜の精とされ、本地仏は東方にある最勝世界の「運意通証如来(うんいつうしょうにょらい)」(→善名称吉祥王如来)あるいは千手観音とされる。像容は「尊星王軌」をひいた「覚禅鈔」に拠れば、赤黒色の身で左手に日を持つ。
種字は「वै(vai)」、「रो(ro)」、「हुं(huṃ)」、真言は「唵陀羅尼陀羅尼吽娑嚩呵(おんだらにだらにうんそわか)」ないし「都迷都迷娑縛賀(とめとめそわか)」。
「大正新脩大藏經図像部 第7巻」
京都教王護国寺蔵「火羅圖」より
大蔵出版
©大蔵出版及びSAT大蔵経データベース研究会(Licensed under CC BY-SA 4.0)
「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v03p013
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain
北斗(北斗七星)の一尊(第一)として