サマエル
Samael
ヘブライ神話における天使のひとり。「サミル(Samil)」、「サタニル(Satanil)」、「セイル(Seir)」、「サルマエル(Salmael)」などの名でも呼ばれる。セラフに属するとされる。名前は「神の毒」という意味を持っており、時として堕天使の一人とされたり、サタンと同一視されたりすることもある(例えば旧約聖書偽典「第2エノク書(スラブ語エノク書)」では悪霊達の王と称されている)。これは彼が「死」を担当する天使だからである。天国、現世、地獄で行動する霊の中で最も邪悪で最も崇高、つまり善でもあり悪でもあると考えられている。「ヨハネの黙示録」においては12枚の翼を持つ大いなる蛇であり、堕天する時に「太陽系を引き寄せた」という。モーセの魂を天に運ぶとき、ガブリエル、ミカエル、ザグザゲルがその役目を神から命じられたが、三人ともこれを断ったためサマエルがこの役目を果たすこととなった。任務を与えられたサマエルは喜んでモーセの魂を迎えに行ったが、モーセの輝く顔に目が眩んで手ぶらで戻ってきてしまい、神の怒りを買ってしまう。サマエルは再びモーセのもとに向かうが、今度は逆に杖で打ち据えられて盲目になってしまったという。また、アダムとイブに子孫の作り方を教えたのもサマエルだとされる。
グリモア「ヘプタメロン(Heptameron)」や、フランシス・バレット(Francis Barrett)の「魔術師(The Magus)」では、アマビエル、サタエルとともに火曜日の大気を司る天使、トゥリエル(Turiel)の「秘密のグリモア(The Secret Grimoire)」では、同じくアマビエル、サタエルとともに火星を統括する霊(スピリット)だとされる。アーク・シーデーモンのナアマ、エイシェト・ゼヌニム、アグラト・バト・マラトらはサマエルの妻とされることがある。