マルドゥーク
Marduk
バビロニア神話における英雄神にして事実上の主神。エアとニンキの間に生まれた長男。原初の真水の海アプスの水の中で誕生したという。名は「太陽の神の子牛」を表す。元々は農耕を司る豊穣神であり、三角の刃のついた「マール」と呼ばれる農耕器具を象徴していた。しかし後代になって恐れ知らずの戦神であると考えられるようになり、武装した姿で描かれるようになった。木星と結び付けられ、4つの目、4つの耳を持ち、神々の中で最も輝かしい存在だとされる。
マルドゥークは元々主神ではなく、世界は最高神アヌによって支配されていた。アヌはマルドゥークを始めとする新世代の神々と疎ましく思い、ティアマトに彼等を滅ぼす計略を持ちかけた、ティアマトは最初乗り気ではなかったが、彼等に夫であるアプスと従者であった波の神ムンムを殺されて怒り狂い、新世代の神々を攻撃し始めた。そこで神々はマルドゥークに稲妻を武器として与え、ティアマトを殺す任を負わせた。マルドゥークは勇猛果敢に戦い、ティアマトの二番目の夫キングやティアマトがマルドゥーク達に対抗するために産みだした11匹の怪物らを倒し、ついにはティアマトをも倒すことに成功する。マルドゥークはティアマトの死体を二つに引き裂くと一つを上に投げ上げ、もう一つを下に押し下げた。これによって天と地が誕生した。またティアマトの両目はチグリス川とユーフラテス川に、尾は天の河になったという。また星座を作り、太陽と月を空のそれぞれの場所に置いた。キングの血と土を混ぜて人間を作ったのもマルドゥークである。ティアマトに勝ったマルドゥークは様々な能力と権限、称号を与えられ実質上神々の王となり、アヌやエンリルの座を脅かすようになった。エンリルの持っていた至高の支配者である証「トゥプシマティ(運命の石版)」は、神殿の門番であるズーに持ち去られたことがあったが、この石版が最終的にマルドゥークの手に渡ったとする説もある。