伊舎那天

伊舎那天いしゃなてん

Īśāna

仏教における天部(→)の一尊。名前はサンスクリット名である「イーシャーナ(īśāna=支配者の意)」を音写したもので、「いさなてん」、「いざなてん」とも読む。また他に「伊邪那天(いざなてん)」、「伊賒那天(いしゃなてん)」、「伊遮那天(いしゃなてん)」、「伊邪那(いざな)」、「伊沙天(いしゃてん)」とも音写される。また別名を「嚕捺羅(ろだら)」と言うが、これはサンスクリットの「ルドラ(Rudra=咆哮の意)」の音写である。イーシャーナはインド神話に登場するシヴァの別名であり、またルドラはシヴァの前身とされる神である。従って伊舎那天自体も大自在天(シヴァが仏教に取り込まれた姿)と同体あるいは大自在天の忿怒身とされる。

八方天および十二天の一尊として東北を護る神とされ、胎蔵界曼荼羅でも外金剛部院(最外院)の東北(左上)隅に配置される。その像容は浅青肉色の身色に三目で歯牙一対が上を向いた忿怒相で、左手に血が注がれた劫波杯(こうははい=髑髏杯)、右手に三戟剣を持ち、黄色の牛に乗り、二人の天女が侍るもの、或いは犎牛(ゼビュー牛のことか)に乗り右手に三股叉を持ち左手は腰に当てたものなどが儀軌に伝わるが、胎蔵界曼荼羅に描かれる姿は牛に乗らず筵に坐したものである。また胎蔵界曼荼羅では周囲に「伊舎那天后(いしゃなてんこう)」、「常酔天(じょうすいてん)」、「喜面天(きめんてん)」、「器手天(きしゅてん)」、「器手天后(きしゅてんこう)」、「摩訶迦羅(まかから)=大黒天」、「毘那夜迦(びなやか)=歓喜天」などが眷属として描かれる。

種字は「रु(ru)」、「ई(ī)」、三昧耶形は三股戟、印相は独鈷杵印、真言は「南莫三曼多沒馱南(なうまくさまんだぼだなん)伊舍那耶娑嚩訶(いしゃなやそわか)」(伊舍那天真言・T0908)、「南麼三曼多勃馱喃(なうまくさまんだぼだなん)嚕捺囉也(ろたらや)莎訶(そわか)」(嚕捺囉真言・T0848)、「南莫三漫多駄南伊舍曩曳娑嚩訶(なもさんまんただなんいしゃのうえいそわか)」(T1298)など。

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  • This Page Last Updated: 2022-03-09