チェンレーシク・チャクシパ
sPyan ras gzigs phyag bzhi pa, Chenré zikchak zhipa
チベット仏教における観音菩薩=チェンレーシクの一形態で変化観音のひとつ。「チャクシパ(phyag bzhi pa)」は「四本の御手を有する」を意味し、このため漢訳では「四臂観音(しひかんのん)」、「六字観音(ろくじかんのん)」(後述)、「六字世自在(ろくじぜじざい)」と呼ばれる。またチェンレーシク・チャクシパはネパールヤチベットで観音信仰の根本経典とされる「カーランダヴューハ(Kāraṇḍavyūha)」に説かれる六字真言「オンマニペメフン(om mani padmé hung)」の威力を仏格として表したものとされるため、「チェンレーシク・イゲドゥクパ(sPyan ras gzigs yi ge drug pa, Chenrézik yigé drukpa)="六字観音"の意」とも呼ばれる。
その像容は一面四臂で、一般的に左右第一手を青い宝珠を挟んで合掌し、右第二手は念珠、左第二手は蓮華を持った姿で表される。チベットでは最もポピュラーな観音像であり、単独で多数造像されるほか、「ジャンペルヤン('Jam dpal dbyangs, Jampelyang)=文殊菩薩」、「チャクナドルジェ(phyag na rdo rje, chakna dorjé)=金剛手菩薩(→執金剛神)」とともに「リクスム・グンポ(Rigs gsum dgon po, Riksum gönpo)=三部主尊」の一尊として、あるいは白ターラー(ドゥルマ・カルポ)と緑ターラー(ドゥルマ・ジャンク)を伴った観音三尊の主尊として表される。