リヴァイアサン
Leviathan
もともとはシリア・パレスチナの神話に見られる「レヴィアタン」という大蛇で、その名は、「自分自身を取り巻く者、とぐろを巻く者」といった意味がある。レヴィアタンは7つの頭を持ち、くねくねと曲がりくねっていて、すさまじい怪力の持ち主であったが、バールに討ち取られたといわれている。しかしユダヤに入ると海に棲む化け物のことをさすようになり、「līwyāthān」(lawaねじれる,巻く+-than=ねじれた尾を持つヘビ)に代わる。一般にカバ、大魚、サメ、ワニなどの姿をしていたといわれる。
聖書においては天地創世の5日目に、光と水と食料として、つがいで作られたのがリヴァイアサンで、彼は水に住む全ての生物の王とされている。またイザヤ書では「歪んだ蛇」と称され、ヨブ記では「心臓は石のように固い」と記され、旧約聖書外典「第1エノク書」によれば「海の水の湧き出す場所に棲んでいる」と記述されている。リヴァイアサンのヒレは、太陽の光を暗くする「黒い光」を発していたので、神はそれを不満に思い、オスのリヴァイアサンのヒレの上に大地と大海を乗せ、全世界を背負わせた。メスのリヴァイアサンは、放っておかれたので、しばらくはエジプト近海に出没していたが、しばらくしてから神に打ち殺され、野獣(或いは砂漠の遊牧民)の食料となったといわれる。原初の海の天使ラハブやベヒーモスと関連視される。
中世ヨーロッパではリヴァイアサンは魔神として「高慢なる者の王」という称号を与えられ、もともとは天使の中でもルキフェル、ベルゼブブに次ぐ第三位の地位を持っていた熾天使であったが堕天して地獄の大公の一人となったと説明される。ここでは彼は7つの大罪のうち「嫉妬」をつかさどる王とされる。