ナブ
Nab
バビロニア神話において、学問と書記術の神にして主神の一人。神々と生物の天命を決める力のある書版「トゥプシマティ(Dup Shimati)」を最終的に所有したとされる。元々は遊牧民であるアモリ人によってバビロニアにもたらされた神であり、当初は「ナビウム」という名前で外来神として扱われていたが、いつしかマルドゥークの息子とされるようになった。バビロニア神話ではアヌからエンリル、そしてエンリルからマルドゥークと、時代につれ「トゥプシマティ」の保管者と神々における王権が交代している。これは「トゥプシマティ」が天命を決める書版であると同時に王権の象徴となっているからで、マルドゥークから「トゥプシマティ」を譲り受けたナブも当然主神と見なされるようになった。この政権交代はマルドゥークの時とは異なり比較的平和に行われた。これはナブが当初から書記の神として信仰されていたので、「トゥプシマティ」を所有する者として自然だったからであろう。ナブは学問の神として、また主神としてバビロニア崩壊まで篤く信仰され、なおかつバビロニア崩壊後のアッシリアやパルティアに至るまで信仰は残った。