伊斯許理度売命
いしこりどめのみこと
日本記紀神話における金属器の神。「伊斯許理度売命」は古事記での表記で、日本書紀では同訓で「石凝姥命」と表記される。神名の「石凝」は石の鋳型に金属を流しいれ凝固させる、といった金属の鋳造を表している。天岩屋戸の場面に登場する神であり、岩戸に隠れた天照大御神を誘い出すために三種の神器の一つである「八咫鏡(やたのかがみ)」を作った。また天香久山で採れた金を用いて日矛(立派な矛)を作ったともされている。八咫鏡も日矛も、この場合実際に使うものではなく祭祀用の祭具であり、それ自体に悪霊を退ける力を持つと考えられた。そのため、伊斯許理度売命も金属鋳造の職能を守護するというより、鏡や矛の悪霊を退ける力が神格化された神であろう。鍛冶を司る日本の神は伊斯許理度売命のほかにも天目一箇神や金山毘古神などがいるが、鏡・矛を作る伊斯許理度売命は青銅器時代の神だと考えられ、それらの神よりさらに古い起源を持つと考えられる。