稲氷命
いなひのみこと
日本記紀神話において鵜葺草葺不合命と玉依毘売命の間に生まれた第二子で、神倭伊波礼毘古命の兄の一人。「稲氷命」は古事記の表記で日本書紀では同訓で「稲飯命」、或いは「彦稲氷命(ひこいなひのみこと)」と記されている。「稲(いな)」は稲穂、「氷(ひ)」は霊(ひ)のことで霊威や霊力を示すので穀霊神の一柱といえる。
神武天皇の東征の折、兄弟は神武天皇に同行したが先に長男五瀬命を矢傷を元で失い、また紀伊を航海していた時には暴風雨で舟が進まなくなった。稲氷命は「何故父(鵜葺草葺不合命)は天の神で、母(玉依毘売命)は海の神であるのに、子である我々が陸でも海でも苦しめられるのか」と嘆いて、剣を抜いて海に飛び込んだとされる。この後稲氷命は鋤持神(さいもちのかみ=佐比持神)になったとされる。