テシュブ
Teshub
西アジア全域において信仰されていた嵐の神。配偶神は天界の女王ヘパト。元々はフリ人(カスピ海南沿岸の山岳地帯に住んでいた民族)に信仰されていた神だと考えられている。その神格や逸話はヒッタイトに伝えられ、ヒッタイト神話に取り込まれた。父であるクマルビを退け、神々の王になった神である。ヒッタイト神話では「神々の王」の座はアラル→アヌ→クマルビと何回も交代している。クマルビはアヌを神々の王から退ける際、アヌのペニスを噛み切った。このペニスの精液によりクマルビが孕んだ子がテシュブを末子とする三人だった(三人はテシュブの異なる3つの性格をあらわすとされている)。アヌの予言どおり、クマルビはテシュブによって王位を追われたが、復讐心に燃え、閃緑岩で出来た子供ウルリクムミという子供を産みだした。ウルリクムミはとてつもない大きさまで育ち、彼の全身を見るためには高い山の頂に登らねば見えないほどだった。ウルリクムミに恐れを抱いたテシュブは他の神々を説き伏せてウルリクムミを殺そうと試みたが、これはすべて失敗に終わり、ウルリクムミはテシュブを王位から引きずり下ろした。テシュブは知恵の神エアに助けを請った。エアはテシュブの願いを聞き届け、かつて天と地を引き裂くために使った鋸を用いてウルリクムミの足を切断した。この物語の顛末は資料が散逸しており定かではないが、最後にはテシュブが王位を取り戻したという説が有力である。
テシュブは気象、特に嵐を司る神であり、斧と三叉の稲妻の鋤によって象徴される。棍棒を持ち、山の神々の上に足を載せた姿、二匹の雄牛に引かせた戦車に乗った姿などで表される。
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