緊那羅きんなら
Kiṃnara
仏教において言及される一種族。「緊那羅天(きんならてん)」、「緊那羅衆(きんならしゅう)」とも。サンスクリット名を「キンナラ(Kiṃnara)」といい、これを音写して「緊那羅」とするほか、「真陀羅(しんだら)」、「甄陀羅(けんたら)」、「甄陀(けんだ)」、「緊捺洛(きんならく)」などとも音写する。また「キンナラ」とは「人か何か」という意味を持っているため、「人非人(にんひにん)」、「擬人(ぎにん)」などと訳す。他にも「擬神(ぎじん)」、「歌神(かじん)」、「歌楽神(かがくじん)」、「音楽天(おんがくてん)」などの名で呼ばれる。女性形の場合は「緊那羅女(きんならにょ)」と呼ばれる。天竜八部の一つであり、また二十八部衆の一尊として「緊那羅王(きんならおう)」、十二神将の一尊として「真達羅大将(しんだらたいしょう)」の名が見える。胎蔵界曼荼羅では外金剛部院(最外院)の北方(左側)に二像〜五像が配置され、男形は立って舞うもの、女形は座って篳篥を吹く、壺の鼓を右手に持ち左手の棒で叩く、大鼓を両手で打つ、などの姿で表される(楽天・歌天との混同が見られる)。「一切経音義」によれば、美しい声を持っており、男は馬首人身で歌を得意とし、女は端正で舞を得意とするという。経典には何人か名前を持った緊那羅王が登場する。例えば法華経には「法緊那羅王」、「妙法緊那羅王」、「大法緊那羅王」、「持法緊那羅王」という四人の緊那羅王の名が挙げられている。また「大樹緊那羅王所問経」では釈迦の前で八万四千の伎楽を奏でたという「大樹緊那羅王」の話が語られている。種字は「कि(ki)」、「किं(kiṃ)」、真言は「南麼三曼多勃馱喃訶散難微訶散難(なうまくさまんだぼだなんかさんなんびかさんなん)」(諸緊那羅真言・T0848)。
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緊那羅王(きんならわう)
「増補諸宗 佛像図彙(ぞうほしょしゅう ぶつぞうずい)」(1900)より
ページ:v04p006
土佐秀信著
国立国会図書館(National Diet Library)蔵
Copyright : public domain觀音廾八部衆(→二十八部衆)の一尊として