マート

マート

Maat

エジプト神話における法と正義の女神で"レーの娘"の一人。名前は「生命の息吹」を意味する。宇宙の秩序や天体の運行、或いは神や人間が従うべき法と正義などの根底にある絶対的な真理を人格したものであり、マートは真理や法と同義である。法則そのものであるこの女神は神話上に人間臭いエピソードを全く持たないが、時に知恵の神トトの妻とされることがある。ただこれさえも「真理(マート)を理解するための知識(トト)」を表すとすればやはり観念的なものでしかない。

エジプト人の生活はマートによって律されていたと言ってよいが、特にエジプト人にとって重要だったのは死後の再生であった。冥界の王オシリスが取り仕切る死者の裁判では、死者の心臓とマート(あるいはマートを象徴する真実の羽)とが天秤に掛けられる。この時マートと釣り合わない心臓の持ち主は現世で正義を通さなかった者であり、その場で怪物アメミットに食べられてしまうとされた。マートは頭にダチョウの羽を一本飾った人間の女性の姿で、手にアンクを持ったり背中に翼を生やした姿で描かれる。死者の裁判においては天秤の計りの上で膝を抱えて座った姿で描かれる。

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  • This Page Last Updated: 2016-01-28