バステト
Basted, Bastet, Bestt
エジプト神話において"レーの娘"の一人とされる女神。猫の守護神であり、彼女にちなんだ名を持つ都市、下エジプトのブバスティス("バステトの館"の意)で主に信仰された。初期王朝時代には雌ライオンの姿をした神だったが紀元前1000年頃から猫そのものの姿、あるいは猫の頭をもった女性の姿で表されるようになった。同じく雌ライオンの頭をもったセクメトのように武力を発揮しファラオを守護する神だったが、猫の神となるとその神力も変遷し、家内安全や愛、多産を司る神となった。これは正に蛇や鼠といった家に近づく害虫を退治し、多くの子を産む猫の特徴を神格化したものである。またハトホルと結びつくことで音楽や舞踏の神ともされるようになった。戦神でもあり家庭神でもあり、かつ音楽神でもある、という複雑な神格と象徴するように、バステトは「アイギス」と呼ばれる盾と「シストラム」という楽器、それに籠を左手に下げた姿で表される。猫の神となってからも戦神的な性格は残り、レーの敵であるアポピスを倒す神とされた。またファラオ達が好んでいたスポーツであるライオン狩りをバステトの祭りの期間中にすることは、不信心極まりない行為とされていた。ジャッカル神アヌビスを生んだのはバステトだとする伝承がある。