ぬらりひょん
日本の妖怪で、「ぬうりひょん」とも言う。見た感じは頭の禿げた老人と何ら変わりはなく、上品な着物を着ていて商家の旦那風にも見える。悪いことはしないが、夕方になると何処からともなくやってきて人の家に上がり、皆が忙しくしている中で呑気にお茶などを飲んでいるという。そしてまた来た時と同じようにぬらりくらりとどこかへいってしまう。
こういった「勝手に他人の家に上がりこむが何もしないでお茶をすすっている」や「妖怪の総大将」といった説明は古い文献には見当たらないため、近代になってから付加された創作だと考えられる。鳥山石燕の「画図百鬼夜行」には「ぬうりひょん」の名前で紹介されているものの、説明は一切ない。また岡山県には「ぬらりひょん」という名の妖怪の話が伝わっているが、これは石燕の書いた「ぬうりひょん」とは別物のようである。このぬらりひょんは備讃灘辺りの海上に出現する人の頭くらいの玉で、船を寄せて取ろうとするとヌラリと逃れて底に沈み、またヒョンを浮かんでくるという海坊主の類いの妖怪である。
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ぬらりひょん
1805
鳥山石燕著
「百鬼夜行(前篇風)」より
国立国会図書館蔵
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