野槌
のづち
妖怪の一種。寺島良安の「和漢三才図会」や仏教説話集である「沙石集」などに言及がある。「のづち」とは「野津霊」、つまり野の精霊を意味し「野之霊」の字を当てることもある。「乃豆知」とも書く。古事記や日本書紀に登場する野椎神は大山津見神の妹でありまた妻であるが、大山津見神が蛇の姿をしているとする説から、野椎神も蛇神とされるようになり、「野にいる槌のような蛇」という観念が生まれたと考えられる。「和漢三才図会」によれば幅五寸(約15cm)、身の丈三尺(90cm)ほどの蛇に似た生物で、頭と尾が同じ太さをしているという。奈良県の吉野山中の夏見川や蜻螟滝などで見かけられ、人を見ると坂を転がってきて足に噛みついてくる。ただ坂を降りるのは早くても登るのは遅いので、野槌を見かけたらすぐに高いところに逃げれば難を逃れられるとされている。槌の子と同一視される。