黒闇天(こくあんてん)

Kālarātrī

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説明

仏教において吉祥天の妹とされる仏尊。サンスクリット名を「カーララートリー(Kālarātrī)」といい、「カーラ(Kāla)」は黒、「ラートリ(Rātri)」は夜を意味するため、黒闇天と称する。また「黒闇天女(こくあんてんにょ)」、「黒闇女(こくあんにょ)」、「黒夜神(こくやじん)」、「暗夜天(あんやてん)」、「闇夜天(あんやてん)」などに意訳されるほか、「迦攞囉底哩(かららていり)」と音写される。また「黒い耳」を意味する「カーラカルニー(Kālakarṇī)」という別称があり、このため「黒耳(こくに)」、「黒耳天(こくにてん)」、「黒耳吉祥天(こくにきっしょうてん)」の名でも呼ばれる。

その性質は吉祥天と相反しており、容姿は醜く、あらゆる功徳を打消し、人に災禍を及ぼすとされる。常に吉祥天に随伴しているため吉祥天を祈願する場合、必ずこの黒闇天も供養せねばならないとされる。その一方で黒闇天は中夜や暗黒を司り、鬼魅(幽霊や化物のこと)による害を防ぐ仏尊ともされる。また密教では閻魔の妃の一人とされるため、「閻羅侍后(えんらじこう)」、「閻摩后(えんまこう)」、「死后(しこう)」の名でも呼ばれる。胎蔵界曼荼羅の外金剛部院に閻魔の侍尊として描かれる。その姿は肉色に身色で、左手に人頭杖を持ち右手を掬う形にする。

種字は「क(ka)」、「तं(taṃ)」、印相は左手を胎拳にして人差し指と中指を伸ばすもの、あるいは普印、真言は「曩莫三満多 沒駄喃迦攞囉底哩曳娑嚩賀(のうまくさんまんたぼだなんかららていりえいそわか)」、「唵迦羅室哩莎呵(おんからしりそわか)」。三昧耶形は幢。

画像一覧

焔摩羅王、黑闇天女

「大正新脩大藏經図像部 第1巻」
「大悲胎藏大曼荼羅 仁和寺版」より
大蔵出版
©大蔵出版及びSAT大蔵経データベース研究会(Licensed under CC BY-SA 4.0)

胎蔵界曼荼羅外金剛部院における図像。閻魔黒闇天が侍るもの。どちらも人頭杖を持っている。

関連項目

キーワード

参考文献

  • 57佛教大辭典
    • 著者:望月信了
    • 発行者:坂田良弘
    • 発行所:佛教大辭典發行所

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