ズルヴァン・アカラナ

古代ペルシア神話で、善の原理アフラ・マズダ（Ahura Mazdāh）と悪の原理アンラ・マンユ（Angra Mainyu）を生んだ超越的存在とされるもの。「ズルワーン（Zurvan）」とも呼ばれる。両性具有で、ライオンの頭を持ち人間の体に蛇が巻きついた姿で表される。ゾロアスター教ではアフラ・マズダ（Ahura Mazdāh）こそ唯一の真の神で、アンラ・マンユ（Angra Mainyu）と永遠に対立していると説く。この明快な二元論は、時を経ると共に鮮明になったが、アフラ・マズダ（Ahura Mazdāh）が絶対唯一全能の存在であるならば、アンラ・マンユ（Angra Mainyu）も彼によって創造されたものでなければならない。この矛盾を回避するのがズルヴァン・アカラナ（Zurvan Akarana）、つまり「無限の時」という概念である。 ズルヴァン・アカラナ（Zurvan Akarana）は元々、古代ペルシア神話の重要な神であったかもしれない。しかしゾロアスター教以後の何百年かが経過するうちに、ズルヴァン教と称される一派の信者たちは、ズルヴァン・アカラナ（Zurvan Akarana）を善悪を超越した大初の永遠の存在であり、ズルヴァン・アカラナ（Zurvan Akarana）によってアフラ・マズダ（Ahura Mazdāh）とアンラ・マンユ（Angra Mainyu）は創られ、両者は被創造物を支配しようとして戦うようになったのだと考えた。ズルヴァン・アカラナ（Zurvan Akarana）は永遠と続く円環のような時間構造そのものであり、他に何一つ無い唯一の存在であった。宇宙の創造を思い立ったズルヴァン・アカラナ（Zurvan Akarana）は1000年に及ぶ 供犠によって創造神（つまりアフラ・マズダ（Ahura Mazdāh））を生み出そうとしたが、長年に渡った供犠の途中で自分の企みが本当に成功するのか、という疑念を生じた。疑念はズルヴァン・アカラナ（Zurvan Akarana）の体内で形を取り、やがて醜悪な神の姿（つまりアンラ・マンユ（Angra Mainyu））をとった。ズルヴァン・アカラナ（Zurvan Akarana）は自分の子宮から最初に出てきた者を後継者にすると宣言した。これを聞いたアンラ・マンユ（Angra Mainyu）がズルヴァン・アカラナ（Zurvan Akarana）の子宮を食い破って一番に飛び出したため、ズルヴァン・アカラナ（Zurvan Akarana）はアンラ・マンユ（Angra Mainyu）に宇宙の支配者の権利を授けた。このため現在にまで渡る1万2000年の宇宙の歴史のうち、最初の9000年はアンラ・マンユ（Angra Mainyu）の支配する闇の時代だった。その後はアフラ・マズダ（Ahura Mazdāh）がアンラ・マンユ（Angra Mainyu）に勝利し善の世界が創造されたとされる。