ヴェーレス

東スラヴにおける家畜神であり軍神。「ヴォーロス(Volos)」ともいう。キエフやロシアで信仰された。元は動物を守り家畜を増やしてくれる神だったが、スカンジナビアの軍神崇拝に影響を受けたものか、軍神ともされるようになった。このため古代のキエフ・ロシアでは、戦士たちは「雷神と獣の神ヴェーレス(Veles)の加護を祈って」敵と戦ったという。その後、キエフ大公であるウラジーミルの時代に、ウラジーミルがキリスト教に帰依したため、キエフの丘に立っていた雷神ペルーン(Perun)以下六柱の神像はことごとく河中に投じられたが、この中にヴェーレス(Veles)の像はなかった。これはペルーン(Perun)が戦士階級の神であったのに対し、ヴェーレス(Veles)はもともと庶民の神であったためその神像は丘の上ではなく、ふもとにあったためと考えられている。このためロシアのキリスト教化以後もヴェーレス(Veles)信仰は残り、19世紀以降になっても農婦たちによって収穫の際「ヴェーレス(Veles)の髪を縮らす」といわれる、一束の麦を畑に残す風習があった。

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