記紀神話における食物の起源とされる女神。「保食神」は日本書紀の表記で、古事記では「大宣都比売神(おおげつひめのかみ)」と表記される。「ウケモチ」の「ウケ」は「食(ウケ・ウカ)」、「オオゲツヒメ」の「ケツ」は「食つ(ケツ)」の意。伊邪那岐命と伊邪那美命の間に生まれた神の一柱。ただ、古事記では大宜都比売が生まれる記述は二回出てくる。その一つは国産みの際に生まれた、「阿波の国」の尊称として、である(「阿波」とはつまり粟であり、穀物であることからの連想と考えられる)。 月読命(須佐之男命だとされる場合もある)が天照大御神の命によって保食神を訪ねた時、保食神は大いに張り切って月読命のための食事を用意した。つまり米や魚、獣を自分の口から出して、それを机の上に盛った。これは保食神にとって最高のもてなし方だったが、月読命は「口から出した汚いものを私に食べさせるのか」と激怒し、保食神を持っていた剣で切り伏せてしまった。当然保食神は死んでしまったが、その体からは穀物や食糧となる獣が生じた(いわゆるハイヌウェレ(Hainuwele)型神話)。また繭を口に入れて引き出すと糸となった。この説話により、保食神は食物神ひいては料理一般を司る神であり、また養蚕を司る神とされる。食物を司る神は「御食つ神(みけつかみ)」と呼ばれ、保食神と宇迦之御魂神はこの代表的なもので、二柱は同一神とされることもある。
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