トラルテクートリ

メソアメリカ中央部における両性具有神の一人。字義は「大地の神」。男・女両性の側面をもつとされていたが、通常は女神とされていた。この女神は大地の怪物で、巨大で太ったカエルのような獣として描写され、大きな口、2本の飛び出た牙、そして鋭いかぎ爪の突いた足を持っていた。また、肘といい膝といい全ての関節には歯ぎしりする口がついているという。「昼の神々」トナルテウクティン(Tonalteuctin)の2番目を担っている。夕方の沈む太陽を飲み込み、朝に登る太陽を吐き出していた。生贄の心臓を食べる神であり、胸を切り裂かれた生贄の心臓を置くためのクアウシカリと呼ばれる石の容器の裏底に好んで刻まれた。 第五の太陽(現在の世界の太陽)の世界が創造されるとき、トラルテクートリ(Tlaltecuhtli)の体は世界を作るための材料とされた。世界の海にまたがって存在していたトラルテクートリ(Tlaltecuhtli)を見たケツァルコアトル(Quetzalcoatl)とテスカトリポカ(Tezcatlipoca)は驚いて、このような怪物がいる限り世界が存続できないだろうと考えた。そこで彼らは2匹の巨大な蛇に変身し、一方がトラルテクートリ(Tlaltecuhtli)の右手と左足を、もう一方が左手と右足をつかんだ。テスカトリポカ(Tezcatlipoca)が片足を失うという長い苦闘の末、ついには彼らはトラルテクートリ(Tlaltecuhtli)をバラバラに引きちぎった。トラルテクートリ(Tlaltecuhtli)の上半身は大地となり、下半身は空に放り上げられて天となった。しかし他の神々はこうした自体を喜ばず、トラルテクートリ(Tlaltecuhtli)の体から人間の生存に必要な植物を生み出すことにした。その髪は木や花となり、皮膚は草や小さな花が成長するための栄養となった。眼は泉や井戸や洞窟の源に変えられ、口は大きな洞穴や川の源となった。鼻は山や谷となった。こうして神々はトラルテクートリ(Tlaltecuhtli)の霊を慰めたのだった。 トラルテクートリ(Tlaltecuhtli) 1898 「ボルギア絵文書(Codex Borgia)」より ロストック大学図書館(Universitätsbibliothek Rostock)蔵 Copyright: public domain

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