イランにおけるシリウス星の神。「ティストリン(Tistrin)」とも呼ばれる。イランで古くから崇拝された。拝火教(ゾロアスター教)の改革者ゾロアスターは、こうした多くの神々への信仰を廃し、もっぱらアフラ・マズダ(Ahura Mazdāh)に帰依することを説いた。だが時がたつとティシュトリヤ(Tishtrya)は再び拝火教の神の一柱と見なされるようになった。古代イランではシリウス星が日の出の直前に見え始めると雨期がやってくるのは常だった。このためティシュトリヤ(Tishtrya)は雨をもたらす神であり、旱魃の悪魔を追い払う神とされた。神話によればこの神は、雨期と乾期の変わり目ごとに翼ある白馬の姿になって天に現れ、悪神アンラ・マンユ(Angra Mainyu)(アーリマン)の放った旱魃の黒馬アパオシャ(Apauša, Apaoša, Apaosha)を相手に戦う。ティシュトリヤ(Tishtrya)は一度負けることもある。だが人々がティシュトリヤ(Tishtrya)に供物を捧げ、祈ると、ティシュトリヤ(Tishtrya)は「十の馬、十の駱駝、十の牛、十の山、十の大河の力」を得て再び戦いに出向く。そうしてアパオシャ(Apauša, Apaoša, Apaosha)を打ち負かしたあとで、ティシュトリヤ(Tishtrya)は大海に飛び込む。すると彼のすさまじい体熱に海は沸き立ち、蒸気が雲となって立ち上り雨をもたらすのである。降雨を邪魔するとされる流星の悪魔パリカー(Pairilas)と敵対する。
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