後古典期メキシコ中央部、アステカの神で特にテスココの守護神とされる。大熊座の神であり、夜空の神であり、支配者、妖術師、戦士を司る全能の神で、名前には「煙の立つ鏡」という意味がある。二元性を体現するオメシワトル(Omecíhuatl)とオメテクートリ(Ometecuhtli)の子供であり、ケツァルコアトル(Quetzalcoatl)やシペ・トテックとは兄弟にあたる。赤(東を支配する)、青(南を支配する)、白(西を支配する)、黒(北を支配する)の4兄弟神があり、それぞれにテスカトリポカ(Tezcatlipoca)と呼ばれるが、「黒のテスカトリポカ(Tezcatlipoca)」が特にこの名で呼ばれ、北の方位の神とされている。「赤のテスカトリポカ(Tezcatlipoca)」とはシペ・トテック、「白のテスカトリポカ(Tezcatlipoca)」とはケツァルコアトル(Quetzalcoatl)、「青のテスカトリポカ(Tezcatlipoca)」とはウィツィロポチトリ(Huitzilopochtli)を指す。 アステカ神話で、今まで5回交代したといわれる太陽の1番目の「大地の太陽」を司り、2番目の太陽である「水の太陽」を司る神、ケツァルコアトル(Quetzalcoatl)との間で戦いを繰り広げたという。ケツァルコアトル(Quetzalcoatl)によって打ち負かされ、テスカトリポカ(Tezcatlipoca)はジャガーにされてしまうが、その後今度はテスカトリポカ(Tezcatlipoca)がケツァルコアトル(Quetzalcoatl)を破って「風の太陽」に終止符を打ったという。破壊者であると同時に創造者であり、災難と同時に幸運をもたらす。どこにでも存在し、彼のいる場所にことごとく不和や争いをもたらすという。「ヤオトル(Yáotl=敵のこと)」と称されるように、闇や死、不幸といった二元性における負の部分のほとんどをはテスカトリポカ(Tezcatlipoca)によって体現される。大地の怪物との争いで片足の足首から先を失ったため、片足の先は蛇になっている。頭や足に煙の立った黒曜石の鏡を身につけ、顔に黒と黄色の縞を持った姿で描かれる。 アステカのトナルポワリ(260日暦)で20ある暦日(センポワリ)の13番目である「アカトル(Ácatl=葦)」の守護神であり、13の昼の時間を司るトナルテウクティン(Tonalteuctin)の10番目にあたる。またシウトル(365日暦)の第6暦月「トシュカトル(Tóxcatl="渇いたもの"の意)」はテスカトリポカ(Tezcatlipoca)を祀る月だった。チャルチウテコロトル(Chalchiuhtecólotl)、チャルチウトトリン(Chalchiuhtotolin)、イツトリ(Itztli)、イツトラコリウキ(Itztlacoliuhqui)などは彼の異なる姿であった。 テスカトリポカ(Tezcatlipoca) 1898 「ボルギア絵文書(Codex Borgia)」より ロストック大学図書館(Universitätsbibliothek Rostock)蔵 Copyright: public domain テスカトリポカ(Tezcatlipoca) 1898 「ボルギア絵文書(Codex Borgia)」より ロストック大学図書館(Universitätsbibliothek Rostock)蔵 Copyright: public domain 肌が黄色いがケツァル(キヌバネドリ)を従えているため「赤いテスカトリポカ=シペ・チテック」を表していると思われる。 テスカトリポカ(Tezcatlipoca) 1898 「ボルギア絵文書(Codex Borgia)」より ロストック大学図書館(Universitätsbibliothek Rostock)蔵 Copyright: public domain 肌が赤いが盾と矢を持っているため「黒いテスカトリポカ=狭義のテスカトリポカ」を表すと思われる。 テスカ
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