仏教における菩薩(Bodhisattva)の一尊。サンスクリットの「ターラー(Tārā)(Tārā)」を音写したもの。観音菩薩(Avalokiteśvara)の妃とされたことから「観世音母(かんぜおんも)」とも呼ばれる。また「救度仏母(くどぶつも)」、「多羅仏母(たらぶつも)」、「多利菩薩(たりぼさつ)」、「聖多羅菩薩(しょうたらぼさつ)」などの名でも呼ばれる。ターラーはアヴァローキテーシュヴァラ(Avalokiteshvara, Avalokiteśvara)と比べても劣らないほど信仰され、その信仰はチベットでも絶大なものであったが、日本においては伝来が遅くあまり一般化しなかった。「ターラー」は「眼精」を意味し、観音菩薩の眼から発せられる大光明より生じた菩薩とされ、衆生を彼岸に渡す「救度」の仏尊として信仰された。胎蔵界曼荼羅では観音院(蓮華部院)に配される。胎蔵界曼荼羅での像容は羯磨衣を着け合掌し蓮華座に坐す姿だが、異像も多い。三十三観音の一尊としては「多羅観音(たらかんのん)」ないし「多羅尊観音(たらそんかんのん)」と呼ばれ、妙法蓮華経の一節「或値怨賊繞/各執刀加害/念彼観音力/咸即起慈心(=或いは剣を持った賊に囲まれ害されそうになったとしても、彼の観音の力を念ずれば、髪の毛一本として損なわずにすむ)」に対応する仏尊とされる。 密号は「悲生金剛(ひしょうこんごう)」、「行願金剛(ぎょうがんこんごう)」、種字は「ता(tā)」、「त्र(tra)」、「तं(taṃ)」、「त्रं(traṃ)」、「त्रॐ(troṃ)」、印相は両手を内縛(内側へ組む)して人差し指と親指を立てるもの、真言は「南麼三曼多勃馱喃哆囇哆○抳羯嚕拏嗢婆吠莎訶(なもさんまんたぼだなんたらたりにきゃろとうんばべいそわか)(○は口偏に履ないし屨)」、「南麼三曼多勃馱喃耽(なうまくさまんだぼだなんたん)」(多羅尊真言・T0848)、「曩莫三滿多沒馱喃耽羯嚕呶嗢婆吠多隷多哩抳娑嚩賀」、三昧耶形は青蓮華。 多羅菩薩(Tārā) 「大正新脩大藏經図像部 第1巻」 「大悲胎藏大曼荼羅 仁和寺版」より 大蔵出版 ©大蔵出版及びSAT大蔵経データベース研究会(Licensed under CC BY-SA 4.0) 胎蔵界曼荼羅蓮華部院における図像。
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