レー

古代エジプトにおける太陽神。「ラー(Ra)」とも。原初の神ヌン(Nun)から生まれたとされ、また自らはくしゃみ、或いは唾によってシュー(Shu)とテフヌト(Tefnut)を生んだ。ヘリオポリスで栄えた太陽信仰において最高神とされた。太陽そのものとも言える神で、毎日「数百万の船」と呼ばれる船に乗って天空を登り、昼の間は地上の12州(12時間)を照らし、夜の間は冥界の12州を旅したという。航海の間、レー(Re)は蛇の悪魔アポピス(Apophis)と戦わなければならず、アポピス(Apophis)がレー(Re)を苦しめると荒天になり、呑みこむと日蝕が起こると考えられた。レー(Re)は神々の王でもあり、古代エジプトの神の物語には必ずといってもいいほど登場する。真理マート(Maat)の実行者であり、天上、地上、地下(冥界)のあらゆる場における審判者であった。セト(Set, Seth)とホルス(Horus)の王位継承問題においては裁判官を務め、また死者の裁判においてもオシリス(Osiris)とともに裁定を下す立場にあるとされる。 しかしレー(Re)は神の中でも絶対の力を持っていたがために他の神を代理者を自称するファラオや神官、信者に疎まれるようになっていった。そこでレー(Re)の権力を貶めるための神話が新たに作られた。例えば前述セト(Set, Seth)とホルス(Horus)との争いでは自分を守護するセト(Set, Seth)の肩を持ったとしてホルス(Horus)の父オシリス(Osiris)から恫喝を受けている。またオシリス(Osiris)の妻であるイシス(Isis)の策略にはまり、知られてはいけない自分の真の名前を自ら漏らしてしまったことになっている。こうした新たな物語によって権威を失墜したレー(Re)は、神々の王の位を月と知恵の神トト(Totho)に譲り引退した(ことにされた)。数々の失敗の末の引退劇、という情けない顛末を辿ったレー(Re)だが、王位を失っても暖かさの明るさを地上に与える太陽の神であることには変わりなく、人々の信仰を受け続けた。 レー(Re)は太陽円盤を頭に戴く男性或いは隼の頭を持った人間の姿で表される。また雄猫やライオン、ジャッカル、雄羊、雄牛の姿をとることもある。

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