エジプト神話における冥界の主宰神。「ウシル(Wsir)」とも呼ばれる。天空の女神ヌート(Nut)と大地の神ゲブ(Geb)の間に生まれた。イシス(Isis)、ネフティス(Nephthys)、セト(Set, Seth)とは兄弟にあたる。また自分の妹であるイシス(Isis)を妻にしてホルス(Horus)やウェプワウェト(Wepwawet)を、セト(Set, Seth)の妻であるはずのネフティス(Nephthys)との間にはアヌビス(Anubis)をもうけている。 ゲブ(Geb)の地位を次いで地上の支配者となったオシリス(Osiris)は、まだ文化を知らなかった人間に作物の育て方や音楽・芸術を教えた。武力行使を嫌ったオシリス(Osiris)はこうして知識と文化を諸国を巡って人間たちに伝えていったが、これが戦争の神である弟のセト(Set, Seth)の癇に障った。セト(Set, Seth)は計略により兄であるオシリス(Osiris)を殺して復活しないようにその死体をエジプト中にばら撒いたのである(あるいは棺桶に閉じ込めナイル川に流して溺死させたとする神話もある)。オシリス(Osiris)は妻イシス(Isis)の尽力もあって一度は復活するが、イシス(Isis)との間にホルス(Horus)をもうけると冥界に戻っていってしまった。こうしてオシリス(Osiris)は冥界に君臨する王となった。死者の善悪を定めるのはオシリス(Osiris)の役目であるため、神でさえ死後はオシリス(Osiris)の支配下におかれるという。これを恐れた神々はオシリス(Osiris)の望むとおりホルス(Horus)を王位に継がせたのである。 オシリス(Osiris)はエジプトの最古の神と考えられているが、その出自ははっきりせず、下エジプトの穀物の育成を司る神を起源とする説や、先王朝時代(B.C.5500~B.C.3100)のシリアの王をモデルとする説などがある。しかしオシリス(Osiris)に対する信仰は古王国時代(B.C.2686~B.C.2181)にはすでに存在しており、その後多くの神格を取り込み勢力を拡大していったものと思われる。オシリス(Osiris)は人間、或いは白い衣をまとったミイラの姿で表される。王権の象徴である鞭と牧杖を持ち、上エジプトの王の証しである白い冠もしくはアテフ冠をかぶる。
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