鹿児島県に伝わる伝説に登場する、鹿から生まれたという女性。「大宮姫命(おおみおやひめのみこと)」とも呼ばれる。「三国名勝図会」(巻之二十三 頴娃郡)に載る開聞神社(現枚聞神社)の縁起によれば、別名を「玉賴姫(たまよりひめ)→玉依毘売命」という。塩土老翁(→塩椎神)が法水を汲み三七日修行していたところ、この法水を舐めた鹿がたちまち懐妊し、鹿の口から美しい女の子が生まれたという。娘は幼名を「瑞照姫(みずてるひめ)」といい、翁は娘が二歳のころ上京した折に娘を藤原鎌足に預けた。娘は「大宮姫(おおみやのひめ)」と名付けられ天智天皇の妃となったが、宮女と雪合戦をしている時に、雪に残った足跡が鹿のようであったことを広められたしまい、ついには開聞岳に流されたという。その後大宮姫は追ってきた天智天皇とともに暮らしたという。枚聞神社は現在は大日孁貴命(おおひるめのむちのみこと→天照大御神)を主祭神として祀るが、昔は大宮姫や塩椎神を祀っていたという説もある。 鹿が人の子を産むという伝説はほかにも光明皇后や浄瑠璃姫などの例があるが、これらは「報恩経」や「今昔物語集」などに見える鹿母夫人の説話が基になったものと思われる。
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