那羅延天

仏教において天部(→天(Deva, Dēva))に属する神の一尊。名前の「那羅延」はサンスクリットの「ナーラーヤナ(Nārāyaṇa)」の音写であり、「ナラ(原初の人)の子」あるいは「原初の人からの」といった意味を持つ。「那羅延那(ならえんな)」、「那羅延(ならえん)」などと呼ばれる他、意味訳から「人生本(にんじょうぼん)」、「勝力(しょうりき)」などとも呼ばれる。 インド神話のヴィシュヌ(Visnu)=「毘紐天(びちゅうてん)」あるいはブラフマー(Brahma, Brahmā)、クリシュナ(Kṛiṣṇa)の別名、ないし同体と考えられる。仏教ではその大力をもって仏教を守護する護法神の一人とされる。この大力は「那羅延力(ならえんりき.サンスクリットではナーラーヤナバラ)」と呼ばれ、凡象の二万倍(=凡牛の二億倍)もの力があると言う。中国や日本では仁王の阿形像(口を開けた像)として知られ、この場合は「那羅延金剛(ならえんこんごう)」と呼ばれる。また千手観音(Sahasrabhuja)の眷属である二十八部衆に「那羅延堅固王(ならえんけんごおう)」、或いは「摩醯那羅延(まけいならえん)」の名前で列される。那羅延天(Nārāyaṇa)としては右面が猪、左面が獅子、中面が菩薩形の三面二臂に青黒い身体、右手に輪宝を持ち迦楼羅(Garuḍa)に乗った姿(胎蔵界曼荼羅外金剛部院)、或いは一面二臂で荷葉座に坐した姿(金剛界曼荼羅外金剛部院)で描かれる。また「覚禅鈔」には三面全て天王相の三面八臂や右面が象、左面が猪の三面二臂像などが記されている。 種字は「वि(vi)」(胎蔵界)、「म(ma)」(金剛界)、三昧耶形は輪、八輻鉄輪、印相は左手の人差し指と親指を相捻し輪のようにするもの、真言は「南麼三曼多勃馱喃(なうまくさまんだぼだなん)微瑟儜吠(びしゅだべい)莎訶(そわか)」(毘紐天真言・T0848)、「唵阿室哩嚩日囉播拏曳娑嚩賀」(那羅延天真言・T1129)など。 那羅延 「大正新脩大藏經図像部 第1巻」 「大悲胎藏大曼荼羅 仁和寺版」より 大蔵出版 ©大蔵出版及びSAT大蔵経データベース研究会(Licensed under CC BY-SA 4.0) 胎蔵界曼荼羅の外金剛部院西方(下部)における図像。 那羅延天 国訳秘密儀軌編纂局 編 「新纂仏像図鑑 天之巻」より 国立国会図書館蔵 Copyright: public domain

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