チベット仏教におけるヴァイシュラヴァナ(Vaiśravaṇa)でギェルポチェンポ・シ(rGyal po chen po bzhi, Gyelpo chenpo zhi)(=四天王(Cātur-mahā-rāja-kāyika))のうち北方を守護する多聞天=毘沙門天(Vaiśravaṇa)のチベットでの尊名。名前は「多くを聞く子」(つまり多聞天と同義)を意味する。またこれを略して「ナムセー(rNam sras, Namsé)」と呼ばれるほか、「ナムトゥーキプ(rNam thos kyi bu, Namtö kyibu)」とも呼ばれる。日本では毘沙門天(Vaiśravaṇa)を四天王(Cātur-mahā-rāja-kāyika)として祀るのとは別に単独でも信仰するが、チベットでもナムトゥーセー(rNam thos sras, Namtösé)は独立して扱われることがある。 単独でナムトゥーセー(rNam thos sras, Namtösé)を扱う場合、白獅子に乗り黄色身で右手に宝幢、左手にマングースを持つ「ナムセー・セルチェン(rNam sras gser chen, Namsé serchen)」(="金色の偉大なナムセー")、青馬に乗り右手に赤い槍、左手にマングースを持ち武装した「ナムセー・ドゥンマル・タグンチェン(rNam sras mdung dmar rta sngon can, Namsé dungmar tangön chen)」(="赤い槍と青い馬のナムセー")、両手に法螺貝を持つ「ナムセー・スンチョク(rNam sras gsung mchog, Namsé sungchok)」(="最上の音声のナムセー")などが描かれた。またナムセー・セルチェンを主尊としてその周囲にナムトゥーセー(rNam thos sras, Namtösé)の眷属である八人の夜叉(ヌージン)を列する曼荼羅も描かれるが、日本の八大夜叉大将とその尊名が若干異なる。これらの八人の夜叉は伝統的に騎士の姿で描かれるため「タダク・ギェー(rTa bdag brgyad, Tadakgyé)」(="八人の騎馬武者")と呼ばれる。
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