チベット仏教におけるマハーカーラ(Mahākāla)(=大黒天)。名前はサンスクリットの訳で「大いなる黒」を意味する。また「グンポ(mGon po, Gönpo="主人"の意)」という名でも知られる。護法尊で怒りの執行者「ダクシェ(Drag gshed, Drakshé)」の一尊であり、チベットではよく寺院の守護神として祀られている。「七十五の化身がある」と言われるほど多くの姿で描かれるが、中でも一面六臂の「グンポ・チャクダク(mGon po phyag drug, Gönpo chakdruk)」と、一面四臂の「グンポ・チャクシ「(mGon po phyag bzhi, Gönpo chakzhi)」が一般的。 グンポ・チャクダクは像の神ガネーシャ(Ganeśa)を踏み敷き、象の皮を羽織った三目一面六臂の黒身の忿怒相を示し、右手にカルトリ(曲刀)、髑髏の数珠、ダマル(打楽器)を、左手にカパーラ(髑髏杯)、三叉戟、索を持った姿で描かれ、しばしば「タッキラージャ(Takkirāja)」、「クシェートラパーラ(Kshetrapāla)」、「ジナミトラ(Jinamitra)」、「タクシャド(Takshad)」、パルデンラモ(dPal ldan lha mo, Penden lhamo)の五人の眷属を伴う。このうちパルデンラモ(dPal ldan lha mo, Penden lhamo)はナクポチェンポ(Nag po chen po, Nakpo chenpo)の妃ともされ、二尊でヤムユム像をとることもある。 グンポ・チャクシは死体の上に立ち象の皮を羽織った三目一面四臂で青黒身の忿怒相を示し、右手にカルトリ(曲刀)ないしココアの実(あるいは両方)、剣を、左手にカパーラ(髑髏杯)、カトヴァーンガ(髑髏杖)ないし三叉戟を持つ姿で描かれる。 この二例の他にも、一面二臂でヴァジュラパンジャラタントラを本軌とする「クルキ・グンポ(Gur gyi mgon po, Gurgyi gönpo)(Gur gyi mgon po, Gurgyi gönpo)」、一面二臂で黒い法衣を着た「グンポ・ペルナクチェン(mGon po ber nag can, Gönpo bernakchen)(mGon po ber nag can, Gönpo bernakchen)」、白身で一面六臂の「グンカル・イーシンノルブ(mGon dkar yid bzhin nor bu, Gönkar yizhin norbu)(mGon dkar yid bzhin nor bu,Gönkar yizhin norbu)」など多くのバリエーションがある。 クルキ・グンポの彫像 Mahakala Panjaranatha (Protector of the Tent) メトロポリタン美術館(The Metropolitan Museum of Art)蔵 14~15世紀頃 Copyright: public domain (OASC) グンポ・チャクダクのタンカ Six-Armed Mahakala メトロポリタン美術館(The Metropolitan Museum of Art)蔵 18世紀頃 Copyright: public domain (OASC)
ページにリダイレクトします。