マート

エジプト神話における法と正義の女神で"レー(Re)の娘"の一人。名前は「生命の息吹」を意味する。宇宙の秩序や天体の運行、或いは神や人間が従うべき法と正義などの根底にある絶対的な真理を人格したものであり、マート(Maat)は真理や法と同義である。法則そのものであるこの女神は神話上に人間臭いエピソードを全く持たないが、時に知恵の神トト(Totho)の妻とされることがある。ただこれさえも「真理(マート(Maat))を理解するための知識(トト(Totho))」を表すとすればやはり観念的なものでしかない。 エジプト人の生活はマート(Maat)によって律されていたと言ってよいが、特にエジプト人にとって重要だったのは死後の再生であった。冥界の王オシリス(Osiris)が取り仕切る死者の裁判では、死者の心臓とマート(Maat)(あるいはマート(Maat)を象徴する真実の羽)とが天秤に掛けられる。この時マート(Maat)と釣り合わない心臓の持ち主は現世で正義を通さなかった者であり、その場で怪物アメミット(Amemait)に食べられてしまうとされた。マート(Maat)は頭にダチョウの羽を一本飾った人間の女性の姿で、手にアンクを持ったり背中に翼を生やした姿で描かれる。死者の裁判においては天秤の計りの上で膝を抱えて座った姿で描かれる。

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