摩多羅神

比叡山の常行堂に守護神として祀られる神で、三大秘法の一つとされる檀那流玄旨帰命檀の灌頂本尊。「摩怛羅(またら)」、「摩怛利(またり)」、「摩都羅(まとら)」とも呼ばれる。天台宗の円仁(慈覚大師)が唐から戻る際に、船中で感得した神を帰国後常行堂に勧請したものだとされる。羅山文集に拠ると摩多羅神は烏帽子をかぶり袴を着た姿で胡坐をかいたような姿勢で鼓を持った姿をしており、左脇侍として「丁禮多/丁令多(ていれいた)」、右脇侍として「爾子多(にした)」という名の二童子を伴うという。「摩多羅」がどういった意味かは判然としないが、音の類似から摩訶迦羅天(→大黒天)や摩訶迦羅天に降った荼枳尼天(Ḍākiṇī)と同体とされることがある。「玄旨灌頂私記」によると摩多羅神が八識を、丁禮多が七識を、爾子多が六識を表し、三体揃って一心三観を表していると解釈される。

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