マーラ

仏教において、人の善事を妨げる悪神。音写では「魔羅(まら)」、「摩羅(まら)」、「魔(ま)」などと表される。初期仏典では別称として「ナムチ(Namuci)」が用いられているが、後にこのナムチという呼称は別の神格のことをさすようになった。呼称であるパーピーヤスをつけて、「マーラ・パーピーヤス(Māra Pāpīyās)」と呼ばれることが多い。またこの名前の音写からから「波旬(はじゅん)」、「天魔波旬(てんまはじゅん)」、「魔王波旬(まおうはじゅん)」と呼ばれることもある。 元々唯一の魔王的存在であり、六道における天道(天上道)に属する、六欲天の「第六天(→他化自在天(Paranirmitavaśavartin, Paranirmitavaśavartino Devāḥ))」に住し、人間の悟りを開く妨げとなる煩悩、つまり性的な欲望を象徴する存在。今でも日本で男性生殖器を「マラ(魔羅)」と呼ぶのはマーラ(Māra)の名称によるとされる。マーラ(Māra)が人間の修行を邪魔するのは、人間が解脱、つまり煩悩から解放されると、自分が滅亡してしまうからである。三人の娘がいて、それぞれ名を「愛執(タンハー(Tanhā)、漢訳で愛欲)」、「不快(アラティ(Arati)、漢訳で愛念)」、「快楽(ラガー(Ragā)、漢訳で愛楽)」と言う。また原始仏典の一つ「スッタニパータ」第3篇第2章によれば、マーラ(Māra)には8つの軍勢があり、それぞれ「欲望」、「嫌悪」、「飢渇」、「妄執」、「睡魔や物憂さ」、「恐怖」、「疑惑」、「虚栄や強情」と言う。

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