日本、中国に見える狐が化けた女の妖怪。「金毛九尾の狐(きんもうきゅうびのきつね)」とも呼ばれる。中国の地理書「山海経」の南山経によれば、青弓山という山に棲んでおり、赤ん坊のような声で泣き、人を食うという。また、海外東経には青丘国の北(ないし青丘国)に、また大荒東経では青丘国に九尾狐がいるという記述が見られる。日本においては古くは、平和の世に出るめでたい獣とされたが、後世になって、多くの年を経た妖狐とされた。本体は狐の姿だが、九本に分かれた尾と黄金色の美しい毛並みを持つ。紀元前千年ごろに妲妃という美女に化けて殷の紂王の妃となり、寵愛をたのんで淫楽に耽り、残忍な行為を多く行い、殷の滅亡の因となった。その後、インドを経て日本に来ると、玉藻前(たまものまえ)という美女に化け、寵愛してくれた鳥羽上皇を熱病で苦しめたが、安倍泰成の法力で正体を見破られ、三浦義明に射止められ、下野国那須野に飛び去り殺生石(栃木県那須郡那須町の、那須岳の寄生火山御段山東腹にあり、付近の硫気孔から有毒ガスが噴出する)となったという。また、その後も殺生石は近づいた人間や動物たちを殺したが、後深草天皇のときに、玄翁和尚が杖で打って、石の霊を成仏させたという。 玉藻前実ハ九尾妖狐(たまものまえじつはきゅうびのきつね) 「大日本歴史錦繪」中、香蝶樓豊國画「安倍泰成調伏妖怪圖」より 国立国会図書館蔵 Copyright : public domain 金毛九尾の狐(きんもうきゅうびのきつね) 一寿斎芳員画「百種怪談妖物雙六」より 国立国会図書館蔵 Copyright : public domain 玉藻前(たまものまえ) 李冠光賢画 「怪物画本(かいぶつえほん)」より 国際日本文化研究センター蔵 Copyright: public domain
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