仏教において天部(→天(Deva, Dēva))に属する神の一尊。「倶摩羅(くまら)」、「拘摩羅(くまら)」、「矩摩羅天(くまらてん)」、「鳩摩羅伽天(くまらかてん)」、「童子天(どうじてん)」、「鳩摩羅童子(くまらどうじ)」などの名でも呼ばれる。名前はサンスクリットでスカンダ(Skanda)の別名である「クマーラ(Kumāra)」ないし「クマーラカ(Kumāraka)」の音写で、童子や少年を意味する。このため、韋駄天(=スカンダ(Skanda))を同体とされることがある。またこの関係で大自在天(Maheśvara)(=シヴァ(Siva, Shiva, Śiva))あるいは火天(Agni)(=アグニ(Aguni))の子ともされる。 童子や少年を意味する名前の通り童子の姿で表され、子供の如く無垢で清浄であり、「執着心を持たない」という徳を体現する存在とされる。色界の初禅天の王、つまり「初禅梵王(しょぜんぼんのう)」(→梵天(Brahmā))は鳩摩羅天(Kumāra)のこととされる場合がある。インドや中国では信仰されたが、日本では曼荼羅などに名を連ねるのみである。胎蔵界曼荼羅では外金剛部院の西方(下部)に、金剛界曼荼羅には二十天の一人として東方(下部)に配される。その像容は胎蔵界曼荼羅では黄色の身色、童顔の六面二臂で右手に三股戟を持ち左手でその柄を受け、孔雀(座)に右足だけ垂れて座る。金剛界曼荼羅では白肉色の身色の一面二臂で三鈷鈴を持ち荷葉に坐す。 種字は「कु(ku)」、「स्क(ska)」、三昧耶形は槊、三鈷鈴、印相は左手の五指を垂らし中指を中ほどに置く鈴印、真言は「唵嚩日羅健吒」(倶摩羅天真言・T2400)。 鳩摩羅天(Kumāra) 「大正新脩大藏經図像部 第1巻」 「大悲胎藏大曼荼羅 仁和寺版」より 大蔵出版 ©大蔵出版及びSAT大蔵経データベース研究会(Licensed under CC BY-SA 4.0) 胎蔵界曼荼羅外金剛部院の西方(下側)における図像。 拘摩羅天 「大正新脩大藏經図像部 第1巻」 「金剛界九會大曼荼羅 仁和寺版」より 大蔵出版 ©大蔵出版及びSAT大蔵経データベース研究会(Licensed under CC BY-SA 4.0) 金剛界曼荼羅成身会の外金剛部における図像。
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