コカトリス

中世ヨーロッパの伝承や伝説に登場する、バシリスク(Basilisk)と同一視される想像上の動物。名前であるコカトリス(Cockatrice)の元々の語源は、エジプトのマングースに当てたギリシャ語の「イクネウモン(Ichneumon=追跡者の意)」であり、これが後期ラテン語で「カルカトリクス(Calcatrix=踏みならす者の意)」と訳された後、古フランス語化「コカトリス(Cockatrice)(Cocatris)」を経て英語になったもので、語源的にはクロコダイル(Crocodile)と同源を持った語である(異説もある)。このような複雑な経緯を辿ったため、本来の言葉の意味があいまいになり、怪物の名前とされるようになったと考えられる。 頭部は雄鶏に似ているが人の顔をしていて、ドラゴン(Dragon)の黄色い体と翼を持っている。足は雄鶏に、尾は蛇に似ている。文献によっては尾にも頭があるとされることもある。またアイトワラス(Aitvaras)のように七歳の雄鶏が産んだ卵をヒキガエルが九年温め続けると生まれるとされる。上記のようにコカトリス(Cockatrice)には雄鶏に因んだ特色が随所に見られるが、これは名前に「cock=雄鶏」という語を含むことからの連想であると思われる。コカトリス(Cockatrice)の持つ毒はバシリスク(Basilisk)と酷似しており、突いた槍を毒が伝わり槍の持ち手が死ぬほどの猛毒であり、見るだけでも生物を殺したりできたという。また触れずに木に生っている実を腐らせて落としたりすることもできたとされている。コカトリス(Cockatrice)の寄る水飲み場は毒で汚染されており、この毒は何世紀も消えないという。コカトリス(Cockatrice)とバシリスク(Basilisk)は結局同一視され、「バシリ・コック(Basili-Coc)」ないし「バシルコック(Basilcoc, Basilcok)」などの合成語で呼ばれることにもなった。中世の旅行者はコカトリス(Cockatrice)やバシリスク(Basilisk)に遭遇した時に備えて雄鶏を連れて旅行した。これは雄鶏がこれらの怪物の毒を消したり、雄鶏の声がこれらの怪物に痙攣を起こさせるとされていたからである。コカトリス(Cockatrice)はバシリスク(Basilisk)とともに紋章の図案としてしばしば使用される。

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