𧏛貝比売

古事記に登場する貝と治療を司る女神。「きさかいひめ」とも読む。「キサガイ」がどういった貝を指すかは諸説あるが、「刻(きさ)のある貝」、つまり刻み目の入った貝を指し、今でいう赤貝のことではないかと考えられている。古事記では𧏛貝比売、「先代旧事本紀」は「黒貝姫(くろかいひめ)」、「出雲国風土記」では「支佐加比売命」ないし「枳佐加比売命」(どちらも読みは"きさかひめのみこと")などの名で見える。古事記に拠れば大国主神が八十神(大国主神の兄神たちの総称)の姦計により死んでしまった時に神産巣日神により蛤貝比売とともに遣わされた神であり、大国主神に治療を施し蘇生させたという。また出雲国風土記では神魂命(=神産巣日神)の子で佐太大神を産んだ母神とされている。支佐加比売命は嶋根郡加賀郷の神埼にあった洞窟で佐太大神を産んだが、産むときに持っていた弓箭(弓と矢のこと)がなくなってしまった。そこで支佐加比売命が「御子が麻須羅神(ますらがみ=雄々しく勇ましい神)の子であるならば弓矢よ出てこい」と呼びかけたところ、角弓箭(角でできた弓矢)が流れてきた。支佐加比売命が「これは私の弓矢ではない」とその弓矢を投げ捨てると、今度は金弓箭(金属製の弓矢)が流れてきた。支佐加比売命がこの弓矢を手にとり、矢を放ったところ、洞窟の壁を貫通し、洞窟の中が光り輝いたという。この洞窟は松江市島根町加賀にある「潜戸(くけど)」のことで、「加賀(かが)」の地名は矢で射通した時「"かが"やいた」ことからであるという。 式内社「加賀神社(かがじんじゃ)」はこの枳佐加比売命を祭神とする。また静岡県浜松市の「岐佐神社(きさじんじゃ)」では蛤貝比売と𧏛貝比売二神が祀られている。

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