インド神話のガルダ(Garuḍa)が仏教に取り入れられ、音訳された名称。「迦楼羅天(かるらてん)」とも呼ばれる。また「迦留羅(かるら)」、「迦婁羅(かるら)」、「掲路荼(かろだ)」、「蘖嚕拏(がろな)」などの音写も見られる。ガルダ(Garuḍa)の神格から「食吐悲苦声(じきとひくしょう)」とも訳される。またその姿から「金翅鳥(こんじちょう)」、「妙翅鳥(みょうじちょう)」、「頂癭(ちょうえい)」とも称される。インド神話においてはヴィシュヌ(Visnu)の乗り物とされるが、仏教においては天竜八部の一尊であり、梵天(Brahmā)、大自在天(Maheśvara)、文殊菩薩(Mañjuśrī)などの化身とされる。両翼をのばすと三三六万里もあり、金色の体で、口から火を吐き竜を取って食うとされる。雨乞いや治病、怨敵降伏などを司り、「ナーガ(Nāga, Naga)を喰らうが如く人々の煩悩を撲滅する」とされる。 迦楼羅を一種族としてとらえる場合、これを「迦楼羅衆(かるらしゅう)」、「金翅鳥衆(こんじちょうしゅう)」などと呼び、その主領を「迦楼羅王(かるらおう)」、「金翅鳥王(こんじちょうおう)」などと呼ぶ。妙法蓮華経には「大威徳迦樓羅王(だいいとくかるらおう)」、「大身迦樓羅王(だいしんかるらおう)」、「大満迦樓羅王(だいまんかるらおう)」、「如意迦樓羅王(にょいかるらおう)」の四人、あるいはの「大身王(だいしんのう)」、「大具足王(だいぐそくおう)」、「得神足王(とくしんそくおう)」、「不可動王(ふかどうおう)」の四人の迦樓羅王が見える。また大方等無想経には「堅固金翅鳥王(けんごこんじちょうおう)」、「鼓声金翅鳥王(こしょうこんじちょうおう)」、「壊一切龍王力金翅鳥王(えいっさいりゅうおうりきこんじちょうおう)」などの名が見える。 胎蔵界曼荼羅外金剛部院には鳥頭人身の「迦楼羅王(かるらおう)」と「迦楼羅女(かるらにょ)」の二尊が南方(右側)に配される。また口が嘴で有翼の人の姿などでも描かれるほか、単に鳥そのものの姿でも描かれる。たとえば那羅延天(Nārāyaṇa)の乗る鳥も迦楼羅(Garuḍa)である。 種字は「ग(ga)」、「हूं(hūṃ)」、「रो(ro)」、印相は両手を親指で組んで残りの指を伸ばして広げる、広げた羽を模したもの、真言は「唵誐樓拏野娑婆呵(おんがろなやそわか)」、三昧耶形は宝螺、篳篥。 karura 「大正新脩大藏經図像部 第1巻」 「大悲胎藏大曼荼羅 仁和寺版」より 大蔵出版 ©大蔵出版及びSAT大蔵経データベース研究会(Licensed under CC BY-SA 4.0) 胎蔵界曼荼羅外金剛部院における図像。鳥頭人身で翼があり坐し、螺貝や横笛、篳篥を奏する。 金翅鳥王 「大正新脩大藏經図像部 第3巻」 高野山真別院処円通寺蔵「図像抄」より 大蔵出版 ©大蔵出版及びSAT大蔵経データベース研究会(Licensed under CC BY-SA 4.0) 迦楼羅密言経などを元にした図像。四臂で上半身は天王形だが鼻は鷹の嘴に似て、顔は緑色、下半身は鷹のようで羽と尾を延ばし海中の岩上に立つ。
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